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第一章 プロローグ
■ハゲと小林チーフと俺
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前回のあらすじ
気づいたら白い空間にいた。
なんかドアが立ってた。
裏側から開けたらドラゴンがビーム吹いてた。周りにマグマ。世紀末。
表から開けたらハゲがせんべい食ってた。
--------------------------------------------------------------------------------------------------
おれはドアを背にして突っ立っていた。
確かにハゲがいたよな?しかもムッキムキの。
どう考えても完全にヤバい奴だろ。あのハゲ。
ああいう輩とは極力避けて生きてきたからわかる。
あいつはヤバい。何がヤバいって、オーラがヤバい。たぶんハゲ頭からなんか出てる。
もわっとしたやつ出てる。絶対に。
明らかに素人じゃねぇもん。なんか出てるって、あのハゲ。
どうしよっかなーーー。
ドラゴンも嫌だけどあのハゲも嫌だなーーーー。
後門のドラゴンに前門のハゲ。
これぞまさしく立ち往生ですねwwwってやかましいわ!
むしろ袋小路感が凄いわ!!
あー…まじでどうすっぺかな。
どちらかというと7:3でドラゴンが嫌かな。
ハゲはまだ知的生命体っぽいし。
いやでも待てよ、ラノベとかだとドラゴンって念話とか使ってるよな?
『よくぞやってきたな人間よ』的なやつ?
この『』めっちゃ見るもん。
そんでもって仲間になったら実は人間に変身が出来てしかも金髪美女もしくは美幼女とかってオチだろ?
はいはいテンプレテンプレ。
でもなぁ、とりあえずハゲはなんか喋ってたしなぁ。
RPGで言えばイベント要員だよなぁ。
とりあえず会話は出来そうな気配だから何とかするしかねぇか、あのハゲ。
……あーー!やっぱ嫌だなーーーーー!!
絶対ろくな事じゃねぇよなーーーー!!
…はぁ。
いつまでもここで粘っても仕方ないか。
これでも腐っても社会人5年目。あんなハゲ何とでもなるだろ。ハゲだし。
ドアの前で笑顔の練習をする。
口角を上げたまま口を大きく開く。顎の関節を意識的に伸ばすように。
眼も大きく見開く。傍から見たら完全に般若顔だがこれで顔全体の筋肉がほぐされるような気がする。実際はどうか知らん。
俺の仕事の基本はルート営業が最も近い。ただ当然、新規顧客も出てくるわけでそういった時には必ず取引先会社前で同じ動作を行う。この動作を行うだけで商談中の顔の動きが全然違うんだから驚きだ。これほんとみんなも真似してみてな。
…さて、ひとしきり表情筋が解されたであろうと思われるので、ドアを開けようか。
改めてドアをまじまじと見てみる。
木製のドア。ドアノブは金属製だ。たぶんそんなに高価なドアには見えない。
雰囲気でいえばドアを気軽に開けて「うぃーっす」って言いながら入っていっても全然OKな佇まいだ。
あ、いっそ本当に「うぃーっす」って言いながら入るのもアリか?
確かに仲の良い取引先ならそういったやり取りも無きにしもあらず。
そういったコミュニケーションが好まれる人も確かにいる。
上司の小林チーフなんかはノックもせずにドアを開けて、こそーっと社内を見ながら、最初に目が合った人にニコッと笑うのが特徴だと言われている。
ふと入口を見たら小林がこそっと見ていると取引先でも有名らしくて『覗き見小林』の異名をほしいままにしている。
「まず覚えてもらう事が大事だからな。小林なんてどこにでもいるし」
小林チーフは営業の帰りに誇らしそうに俺にそう言っていたのをよく覚えている。
夕日が小林チーフを照らし、その姿は眩しかった。俺はその時サラリーマンの背中を見たのだ。
そして実は小林チーフが取引先からM字キングと呼ばれている事も…。
取引先女性社員から、アイツの視線がいやらしいと言われている事も…。
救われない小林チーフの後ろ姿は輝いていた(物理的に)。
めっちゃどうでもいい事を思い出してしまった。
とりあえず小林は横に置いといて。
ドアを開けよう。このドアノブを回したらきっと新しい冒険が始まるのだ。
ドアを開けよう。本を捨てよう。旅に出よう。
ドアを開けよう。しがらみは捨てて。その先にいる自分は昨日までと違う自分だ。
ドアを開けよう。良い事も悪い事も全てを楽しむのだ。
こういうのは勢いが大事。
全力笑顔を顔に貼り付けたまま俺はドアを開けた。
「うぃー…「裏社会系ハゲですいませんねぇ…!!」…すぅ…」
そこには額に青筋をいくつも浮かべためちゃくちゃ怖いハゲが立っていた。
すぐ目の前に。
気づいたら白い空間にいた。
なんかドアが立ってた。
裏側から開けたらドラゴンがビーム吹いてた。周りにマグマ。世紀末。
表から開けたらハゲがせんべい食ってた。
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おれはドアを背にして突っ立っていた。
確かにハゲがいたよな?しかもムッキムキの。
どう考えても完全にヤバい奴だろ。あのハゲ。
ああいう輩とは極力避けて生きてきたからわかる。
あいつはヤバい。何がヤバいって、オーラがヤバい。たぶんハゲ頭からなんか出てる。
もわっとしたやつ出てる。絶対に。
明らかに素人じゃねぇもん。なんか出てるって、あのハゲ。
どうしよっかなーーー。
ドラゴンも嫌だけどあのハゲも嫌だなーーーー。
後門のドラゴンに前門のハゲ。
これぞまさしく立ち往生ですねwwwってやかましいわ!
むしろ袋小路感が凄いわ!!
あー…まじでどうすっぺかな。
どちらかというと7:3でドラゴンが嫌かな。
ハゲはまだ知的生命体っぽいし。
いやでも待てよ、ラノベとかだとドラゴンって念話とか使ってるよな?
『よくぞやってきたな人間よ』的なやつ?
この『』めっちゃ見るもん。
そんでもって仲間になったら実は人間に変身が出来てしかも金髪美女もしくは美幼女とかってオチだろ?
はいはいテンプレテンプレ。
でもなぁ、とりあえずハゲはなんか喋ってたしなぁ。
RPGで言えばイベント要員だよなぁ。
とりあえず会話は出来そうな気配だから何とかするしかねぇか、あのハゲ。
……あーー!やっぱ嫌だなーーーーー!!
絶対ろくな事じゃねぇよなーーーー!!
…はぁ。
いつまでもここで粘っても仕方ないか。
これでも腐っても社会人5年目。あんなハゲ何とでもなるだろ。ハゲだし。
ドアの前で笑顔の練習をする。
口角を上げたまま口を大きく開く。顎の関節を意識的に伸ばすように。
眼も大きく見開く。傍から見たら完全に般若顔だがこれで顔全体の筋肉がほぐされるような気がする。実際はどうか知らん。
俺の仕事の基本はルート営業が最も近い。ただ当然、新規顧客も出てくるわけでそういった時には必ず取引先会社前で同じ動作を行う。この動作を行うだけで商談中の顔の動きが全然違うんだから驚きだ。これほんとみんなも真似してみてな。
…さて、ひとしきり表情筋が解されたであろうと思われるので、ドアを開けようか。
改めてドアをまじまじと見てみる。
木製のドア。ドアノブは金属製だ。たぶんそんなに高価なドアには見えない。
雰囲気でいえばドアを気軽に開けて「うぃーっす」って言いながら入っていっても全然OKな佇まいだ。
あ、いっそ本当に「うぃーっす」って言いながら入るのもアリか?
確かに仲の良い取引先ならそういったやり取りも無きにしもあらず。
そういったコミュニケーションが好まれる人も確かにいる。
上司の小林チーフなんかはノックもせずにドアを開けて、こそーっと社内を見ながら、最初に目が合った人にニコッと笑うのが特徴だと言われている。
ふと入口を見たら小林がこそっと見ていると取引先でも有名らしくて『覗き見小林』の異名をほしいままにしている。
「まず覚えてもらう事が大事だからな。小林なんてどこにでもいるし」
小林チーフは営業の帰りに誇らしそうに俺にそう言っていたのをよく覚えている。
夕日が小林チーフを照らし、その姿は眩しかった。俺はその時サラリーマンの背中を見たのだ。
そして実は小林チーフが取引先からM字キングと呼ばれている事も…。
取引先女性社員から、アイツの視線がいやらしいと言われている事も…。
救われない小林チーフの後ろ姿は輝いていた(物理的に)。
めっちゃどうでもいい事を思い出してしまった。
とりあえず小林は横に置いといて。
ドアを開けよう。このドアノブを回したらきっと新しい冒険が始まるのだ。
ドアを開けよう。本を捨てよう。旅に出よう。
ドアを開けよう。しがらみは捨てて。その先にいる自分は昨日までと違う自分だ。
ドアを開けよう。良い事も悪い事も全てを楽しむのだ。
こういうのは勢いが大事。
全力笑顔を顔に貼り付けたまま俺はドアを開けた。
「うぃー…「裏社会系ハゲですいませんねぇ…!!」…すぅ…」
そこには額に青筋をいくつも浮かべためちゃくちゃ怖いハゲが立っていた。
すぐ目の前に。
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