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第一章 プロローグ

■怒るハゲ、俺氏暴かれる1

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前回のあらすじ
裏社会系ハゲ。
小林はM字キング。
ドア開けたらハゲがキレてた。

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タラリ…と冷や汗が首筋をつたっていくのがわかる。
なんかわからんがめっさ怒っとるわこれ。
もうちょっと身体を前に倒したら思わずキスしてしまいそうな程の距離感。
美女じゃなくてハゲだけど。

「おいコラ、なんか言えや加納君よぉ」

え!?なんで名前知ってんの!?
俺こんな怖いハゲ知らないよ!?

ハゲの青筋がピクピクっと動く。
「お前マジでぶっ飛ばすぞ?次ハゲって言ったらわかってるな?」
あ、これもしかして、もしかするやつ…?

「あ、あの…つかぬ事をお聞きしますが、もしかして」
「おう、お前が考えてる事は全部聞こえてんぞ」

やべーーーー!!終わったーーーー!!
今こうやって考えてんのも全部聞こえてんの!?
裏社会系ハゲとか!?もうまるっと全部なの!?

「ぶっ飛ばすぞコラ。お前ほんといい性格してんのな」
そう言って部屋?の中を首でクイッと促す。
「まぁいいわ、とりあえず入れや」
「は、はい」


ふと気づく。今俺はめちゃくちゃビビってる。手とかめっちゃ震えてるもん。
でも頭の中の思考は当然必ずしも同じとは限らない。
確かにめちゃくちゃ怖い!と思っているが、眼前のハゲの印象などもつぶさに見ている。
あ、これもヤバいな。なんて呼べばいいんだ…?
ハゲさん…無いな。裏さん…?裏さんってなんだよそれ。

「いいからとりあえず座れ、ほれ茶も出してやろう」
ハゲがそう言うと、どこからともなく座布団とちゃぶ台の上に湯呑みが出てきた。
勿論中にはお茶が入っているのだろう。湯気が少し浮き上がっている。


「すいません、失礼致します」

もうこの時点で現状に対する思考は放棄した。
だってどう見ても人間じゃないじゃん。
何もないとこから座布団とお茶が出てくるんだぜ?
そりゃマジックの可能性もあるけど、うおっ座布団めちゃフカフカやん。
しかもお茶うっっま。

俺はここまで来てやっとハゲをじっくり見た。
頭のてっぺんから足までじっくり。
頭…ハゲ、スキンヘッド。
特徴…ムッキムキ、北斗神拳使えるんじゃね?ってレベルのムキムキ。
顔…ぶっとい眉に、無駄にカイゼル髭。似合ってるのが腹立つ。
服装…全身黒。上下黒スーツに黒ネクタイ。高いんだろうなーって見ただけでわかるやつ。

この状態でせんべい食いながらテレビ見てたら誰でもびびるべ?
そんでもって青筋ピキピキされた日にはもう…。
せんべいよりもチャカ持ってる方が似合ってると思いますよ。
人間って色々と臨界点超えたら落ち着くんだね。
今回で凄くよくわかりました、マル。

「お前が考えている通り、俺は人間じゃない」
あ、この人よく見たら頭のてっぺんに3本だけ生えてるわwww
田植えされてるみたいだなwww
臨界点を超えた俺はちゃんと話を聞いていなかった。

「まぁ言うなれば神ってやつだな。全知全能とでも言うかね。お前がここにいる意味はぶっちゃけたまたまだ。特に意味はない。ちなみにお前は死んでここに来たんだよ」
「マジか」
思わずタメ口聞いちゃったよ。てへぺろ。

今の話をよく考えてみる。
うん…何となくそんな気はしてたわ。
だって俺最後の記憶が駅のプラットフォームからゆっくりと落ちていくところだもん。
ぼやーっと思い出してきた。

確かなんか当たったんだよな。かばんっぽい感じか?
その衝撃でトンッて前に出ちゃったのよ。
んでもって今日に限って一番前に立ってて、しかも寝不足でうつらうつらしてたんだよ。
何で昨日の俺は、笑ってはいけないなんて見ようと思ったんだバカ。

トンッって前に出た時にそのまま踏みとどまったら良かったんだけど、前に出た右足に力は入らなかった。そしてそのままドーンかな。

「だいたいそんな感じだな。安心しろ。一発でグチャっとだから大丈夫だぞ」
何が大丈夫なのだろうか。

「ちなみにお前を押した女子高生は、お前を押した事にも気づいていなかったな。今現在も気づいていないし、このままあの女子高生は知らないままなんだろうよ」
今日一番の衝撃の事実。え?俺もしかしてやられ損ってこと?

「そんな訳ないだろ。お前が飛び込んだおかげで電車が大幅に遅延してみんな損してるぜ」
「いやいやいや!俺飛び込んでないですよ!」
「でもニュースでもそう報じられているみたいだぞ?」

そう言って神はテレビのチャンネルを切り替えた。
『本日朝、○○駅にて飛び込み自殺があり、▲▲線が大幅に遅延しております。亡くなられた方は都内にお住まいの加納 裕也さん28歳…』
コレはキツイ…。
二重の意味で終わってるやん…。

いつの間にか人生は終わってるし、しかも色んな人から恨まれるやつやん…。
俺も出勤時間の飛び込みで遅延してたらめちゃくちゃ腹立ってたもんなぁ…。
そいつらの仲間入りかぁ…。

「まぁ死んだもんはしゃぁねぇよな。切り替えていこうぜ!」
励ましてくれてるんだけどめちゃイラっとするわ。クソハゲが。

次の瞬間、額に思いっきり衝撃を受けた。

「ぁぐべっ」

そのまま俺は吹っ飛ぶ。10メートルは漫画みたいにポーン!って吹っ飛んだ。
和室の外に吹き飛んで白い空間の床に叩きつけられた。

「いってぇぇぇぇ!!!忘れてたぁぁぁ!!!」
思考読まれるのソッコーで忘れてた!
デコピンめちゃくちゃいてぇ!!

「聞こえてるって言っただろ。思考を止める事は難しいだろうが少しは自重しろバカ」
「すいませんでした…」
額を何度も摩りながら俺は謝る。
おでこじんじんしゅるぅ…。

「とりあえず話が進まん。いらん事を考えずに話を聞け」
「わかりました」

どう考えても俺悪くなかっただろ。
口からは了承の言葉を吐くが、内心は全く逆のことを思う。

神がギロリ、と俺を睨む。
「ひっ…す、すいません。考えないようにします」
「チッ、とりあえず進めるぞ」

聞こえよがしの舌打ちに内心イラッとしながらも表情には出さない。
まぁこの神には内心が見えてる時点でこんな努力意味ないけど。
社会人として身に付いてしまってるから仕方ないね。
…あれ?俺こんなに楽観的な性格だったか…?

俺が自分の思考に若干の違和感を感じていたが、神はそれらを気にするでもなく話を進めた。

神が右手を少し前に出すと、どこからともなくA4サイズのノートが出てきた。
一般的な大学ノートだな。他に特徴はない。
神がノートを手に取って表紙を俺に見せた。
あ、何か書いてる…。なになに…?

「加納 裕也ノート…?」
俺の言葉に神は頷くと、ノートを手に持ち直し、パラパラッと流し読みを始めた。
「そうだ、これは加納 裕也ノート。いわばお前の人生ノートだな。お前の生涯の全てがここに記されている。どれどれお前の生涯は…」


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