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夫たちの考え方
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「サキさん!お隣良いですか?」
「うん、どうぞ!」
ヨルアノくんに告白された次の日。特に気まずくなること無く、今まで通り彼と接することが出来ていた。
「サキさんはいつからここで働いとるんですか?」
「去年の五月からだよ」
「そなんですか!めっちゃ馴染んどるでもっと長いかと思うてました」
「ヨルアノくんも入団して二ヶ月とは思えない程馴染んでるよ」
朝食を食べながら話していると、リュークが早歩きでこちらにやって来た。彼は若干威嚇するように、仁王立ちで腰に手を当てる。
「ヨルアノ、サキに告白したんだって?」
プンプン怒るリュークに、ヨルアノくんは笑顔で答える。
「はい!フラれましたけど」
「じゃあ何で隣に座ってるの」
「サキさんと一緒に食べたいからです!」
「駄目!」
リュークは急いでご飯をよそい、私とヨルアノくんの間に割り込んでそこに置く。
「フラれたなら潔く距離取りなよ!」
「まだ好きな気持ちは無くなっとらんので」
「もっと駄目!」
ヨルアノくんを押しやったリュークは私の隣に座った。
「ヨルアノの鍛錬増やしてやるから!」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「うっ……じゃあ少なくする」
「何でですか!」
リュークも何だかヨルアノくんにペースを乱されているみたいで見ていて面白い。
ちょうどミスカさんも来て、私と向かい合う正面の席に座った。
「サキは告白を断ったんだな」
「はい」
「そうか」
黙々と食べ進めるミスカさん。少しムスッとしているようにも見えるけど……。
「ミスカさん、ご飯美味しいですか?」
「!……ああ、美味しい。今日もありがとう」
「どういたしまして」
少し表情が柔らかくなってくれたので良かった。
「それにしてもヴェルストリアがよく折れたなぁ」
「色々言うても良い奴ですよね」
「良い奴なのは否定しないけどさ。サキに関してはあの性へ…き……」
「わー!!」
私は慌ててリュークの言葉を止めた。小声で彼に伝える。
「人前でそういう話しないの!」
「ごめんごめん……」
「お二人共どしたんですか?」
「なんでもないよ!」
そうして食事を終えて、その後も夫たちから告白の件について色々言われた。
午前中、執務室で仕事中の彼の傍にいる時。
「サキ、その……」
「はい!何ですか?」
ハインツさんは私とあまり目線を合わせずに言い淀む。
「ヨルアノに……」
「ハインツさんも聞きましたか?」
「あ、ああ……」
私は告白断って何も無いのに、皆なんでそんなに気になるんだろう。
「私は……サキが望むなら他に夫が出来ても構わない」
「えっ、急にどうしちゃったんですか!」
何の話!?
「いや、付き合う男性についてはサキが選ぶものだから、私たちが口を出すことでは無いだろう?」
夫の数は決められていないからそういうことになるのかな。
「しかし気持ち的にはこれ以上他の誰かに奪われるのが嫌だと……サキの選択を狭めてしまっていると思ってな……」
「ハインツさん……」
私は彼の手を取り、正直に思ったことを伝える。
「もしかしたら、私はまた他の人を好きになるかもしれません」
「……ああ」
五人好きになったというのは事実だから、絶対にと否定は出来ない。
「でも、皆が望まないなら私はその恋を諦めます」
「!それは……」
「私がその人と結婚したら皆とも家族になるわけですから、私一人で決めることでは無いです。だから嫌だと思ったらちゃんと教えてください」
「サキ……ありがとう」
難しい顔は解け、彼は優しく嬉しそうに笑った。
そして昼過ぎ。
私は廊下掃除をしながら、会いに来てくれたラグトさんと話す。
「サキちゃん、ヨルアノに告白されたって本当!?」
「本当です」
「そうなんだ……俺全然気づかなかったよ」
「私もびっくりしました」
驚いてはいるけれど嫌な素振りは見せないラグトさん。
「ラグトさんは私がヨルアノくんに告白されたこと、どう思いますか?」
「どう?うーん……そりゃあサキちゃんと居て好きにならない方がおかしいし、当然と言えば当然だね」
それはちょっと大きく言い過ぎな気がするけど。
「私が告白を受け入れても何も思わないですか?」
「付き合うの!?」
「た、例えばの話です!」
夫たちもそれぞれ考え方が違うから、ちゃんと理解しないとと思ったけど、ラグトさんはこの世界の考え方に近いのかな。
「俺はサキちゃんの傍に居られて、笑顔が見れればそれで良い。沢山したいし回数減るのは嫌だけど」
「もう……!」
「はは!まあ、サキちゃんがまた誰かと付き合っても、その人がサキちゃんを幸せに出来るなら俺はむしろ応援するよ」
嫉妬するしないに関係なく、彼らの行動の全てに私への気持ちが詰まっている。
「この世界」で括るものでは無い。これはラグトさんの考え方だから。
「ありがとうございます!変なこと聞いちゃってごめんなさい」
「ううん!それで……ヨルアノとは付き合わないんだよね?」
「はい」
「分かった!もし困ったことがあったらいつでも言ってね」
手を振り、ラグトさんは仕事へ向かって行った。
改めて彼らと向き合うきっかけになったのかな。そんな風に色々考えていてくれたなんて、やっぱり好きだなぁ……。
この日は一日中、胸にポカポカと温かいものを感じていた。
「うん、どうぞ!」
ヨルアノくんに告白された次の日。特に気まずくなること無く、今まで通り彼と接することが出来ていた。
「サキさんはいつからここで働いとるんですか?」
「去年の五月からだよ」
「そなんですか!めっちゃ馴染んどるでもっと長いかと思うてました」
「ヨルアノくんも入団して二ヶ月とは思えない程馴染んでるよ」
朝食を食べながら話していると、リュークが早歩きでこちらにやって来た。彼は若干威嚇するように、仁王立ちで腰に手を当てる。
「ヨルアノ、サキに告白したんだって?」
プンプン怒るリュークに、ヨルアノくんは笑顔で答える。
「はい!フラれましたけど」
「じゃあ何で隣に座ってるの」
「サキさんと一緒に食べたいからです!」
「駄目!」
リュークは急いでご飯をよそい、私とヨルアノくんの間に割り込んでそこに置く。
「フラれたなら潔く距離取りなよ!」
「まだ好きな気持ちは無くなっとらんので」
「もっと駄目!」
ヨルアノくんを押しやったリュークは私の隣に座った。
「ヨルアノの鍛錬増やしてやるから!」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「うっ……じゃあ少なくする」
「何でですか!」
リュークも何だかヨルアノくんにペースを乱されているみたいで見ていて面白い。
ちょうどミスカさんも来て、私と向かい合う正面の席に座った。
「サキは告白を断ったんだな」
「はい」
「そうか」
黙々と食べ進めるミスカさん。少しムスッとしているようにも見えるけど……。
「ミスカさん、ご飯美味しいですか?」
「!……ああ、美味しい。今日もありがとう」
「どういたしまして」
少し表情が柔らかくなってくれたので良かった。
「それにしてもヴェルストリアがよく折れたなぁ」
「色々言うても良い奴ですよね」
「良い奴なのは否定しないけどさ。サキに関してはあの性へ…き……」
「わー!!」
私は慌ててリュークの言葉を止めた。小声で彼に伝える。
「人前でそういう話しないの!」
「ごめんごめん……」
「お二人共どしたんですか?」
「なんでもないよ!」
そうして食事を終えて、その後も夫たちから告白の件について色々言われた。
午前中、執務室で仕事中の彼の傍にいる時。
「サキ、その……」
「はい!何ですか?」
ハインツさんは私とあまり目線を合わせずに言い淀む。
「ヨルアノに……」
「ハインツさんも聞きましたか?」
「あ、ああ……」
私は告白断って何も無いのに、皆なんでそんなに気になるんだろう。
「私は……サキが望むなら他に夫が出来ても構わない」
「えっ、急にどうしちゃったんですか!」
何の話!?
「いや、付き合う男性についてはサキが選ぶものだから、私たちが口を出すことでは無いだろう?」
夫の数は決められていないからそういうことになるのかな。
「しかし気持ち的にはこれ以上他の誰かに奪われるのが嫌だと……サキの選択を狭めてしまっていると思ってな……」
「ハインツさん……」
私は彼の手を取り、正直に思ったことを伝える。
「もしかしたら、私はまた他の人を好きになるかもしれません」
「……ああ」
五人好きになったというのは事実だから、絶対にと否定は出来ない。
「でも、皆が望まないなら私はその恋を諦めます」
「!それは……」
「私がその人と結婚したら皆とも家族になるわけですから、私一人で決めることでは無いです。だから嫌だと思ったらちゃんと教えてください」
「サキ……ありがとう」
難しい顔は解け、彼は優しく嬉しそうに笑った。
そして昼過ぎ。
私は廊下掃除をしながら、会いに来てくれたラグトさんと話す。
「サキちゃん、ヨルアノに告白されたって本当!?」
「本当です」
「そうなんだ……俺全然気づかなかったよ」
「私もびっくりしました」
驚いてはいるけれど嫌な素振りは見せないラグトさん。
「ラグトさんは私がヨルアノくんに告白されたこと、どう思いますか?」
「どう?うーん……そりゃあサキちゃんと居て好きにならない方がおかしいし、当然と言えば当然だね」
それはちょっと大きく言い過ぎな気がするけど。
「私が告白を受け入れても何も思わないですか?」
「付き合うの!?」
「た、例えばの話です!」
夫たちもそれぞれ考え方が違うから、ちゃんと理解しないとと思ったけど、ラグトさんはこの世界の考え方に近いのかな。
「俺はサキちゃんの傍に居られて、笑顔が見れればそれで良い。沢山したいし回数減るのは嫌だけど」
「もう……!」
「はは!まあ、サキちゃんがまた誰かと付き合っても、その人がサキちゃんを幸せに出来るなら俺はむしろ応援するよ」
嫉妬するしないに関係なく、彼らの行動の全てに私への気持ちが詰まっている。
「この世界」で括るものでは無い。これはラグトさんの考え方だから。
「ありがとうございます!変なこと聞いちゃってごめんなさい」
「ううん!それで……ヨルアノとは付き合わないんだよね?」
「はい」
「分かった!もし困ったことがあったらいつでも言ってね」
手を振り、ラグトさんは仕事へ向かって行った。
改めて彼らと向き合うきっかけになったのかな。そんな風に色々考えていてくれたなんて、やっぱり好きだなぁ……。
この日は一日中、胸にポカポカと温かいものを感じていた。
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