美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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初めてのお散歩

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 生後一か月を過ぎ、初めてユウを黒騎士団寮に連れて行った。
 私も寮へ行くのは二か月振りでずっと楽しみにしていた。

「サキさん!お久しぶりです…!」
「お疲れ様でした…!!」
「お体は……」

 一斉に囲まれて皆がどれだけ心配してくれたのかが窺える。

「お前たち、サキに詰め寄るな」
「す、すみません……」

 団長に睨まれて一歩下がる皆に私は声をかける。

「本当にありがとうございました。皆さんのサポートがあって、無事子供を産むことができました。こんなに心配して助けて想ってくれる……仲間が居て、それがずっと私の支えでした」

 思わず少し涙ぐんでしまった私に団員たちも鼻をすする。

「これからも色々とご迷惑をおかけすることになりますが、よろしくお願いします」
「はい!」
「出来ることは何でもします!」

 明るい笑顔に迎えられ、改めて幸せを感じた。

「赤ちゃんだ……」
「めっちゃ可愛いですね……」

 私はユウを抱っこし紹介すると、皆は普段接する事のない赤ん坊という存在を遠巻きに見守る。
 だいぶ多くの視線を浴びて怖かったのかユウは泣き出してしまって、ハインツさんが全員仕事に戻らせた。

「ユウ、ここが黒騎士団だよ」
「う…ぅっ」
「お家のお隣。お母さんの大切な場所なの」

 私の胸元の服を掴むユウに建物を見せると落ち着いたのか泣き止んでくれた。

「サキさん!お待たせしました」
「ヴェルくん、お疲れ様」
「ミスカさんはもう少しかかるので先に帰りましょう」
「うん」

 その日から散歩を始めて、二か月になる頃には少し長めに出れるようになった。

「今日はしばらく寮内見せて回っても良いですか?」
「良いけれど、一人でユウを抱えるのは大変だろう。私が一緒に行こうか?」
「ハインツさん、さっき呼ばれてたじゃないですか。座って休憩しながらなので大丈夫ですよ」
「そ、そうか……。すまないね。くれぐれも気を付けて歩くんだよ。何かあったらすぐ周りに声をかけて」
「はい、いってらっしゃい」

 幾度かこちらを振り返る夫を見送った。
 夫が育児をするのが当たり前のこの世界で心配をしながらも私に子供を預けてくれるのは、私が皆と共に勉強をしてそのやる気を知ってくれているからだと思う。
 女性は出来ないんじゃなくてやらないだけ。それを決めるのはそれぞれの家庭だから悪いとかではないけれど、私はしたいから。皆はその意向を汲んでくれている。

「まずは裏庭行こっか!お帽子被ってね」

 ゆっくり歩いて行き、今は種を蒔いていて花は咲いていない花壇を眺める。

「今はまだポカポカしてるでしょ?寒くなって秋と冬が終わったらいっぱい咲くんだよ」
「あー」
「あれ、あんまり興味ない?」

 飛んでいる蝶々のほうが気になるみたいだ。
 男の子はやっぱりそういう系を好きになるのかな…クワガタとか。
 私はあまり得意ではないので夫に任せよう。
 建物内を少し回った後、食堂の椅子に座って休憩する。
 妊娠中はほとんどここに居たから、安心感凄いなぁ。

「ぅ……あぁぁ!」
「あ、お腹空いたかな?」

 泣き出してしまったので用意したミルクをバッグから……片手だと取りづらいな。

「さ、サキさん大丈夫ですか!?」
「ヨルアノくん!」

 通りがかったら泣き声が聞こえ、びっくりして来てくれたらしい。

「お腹空いてるだけだから大丈夫だよ」
「そ、そうなんですね……。あ、俺が出しますよ」
「ありがとう!」

 何事も無くて随分ホッとした様子でヨルアノくんは笑う。

「サキさんめっちゃ落ち着いてますね」
「赤ちゃんは泣くものだから。私たちが焦っても仕方ないでしょ?」

 そう言っていられるのも五人の夫たちが居て心に余裕があるからだけど。

「お名前……ユウくんでしたっけ。ほんま可愛いなぁ」
「ふふ、リュークの子だから似てる名前なの」
「あ!そういうことですか!確かに顔も似とりますね……」

 ぷはっとミルクを飲み干したユウは、初めて会う知らない男性をじっと見る。

「ユウ、ヨルアノくんだよ」
「そのうち覚えてもらえんかな」
「まだまだこれからだから、いっぱい話しかけたら覚えてくれるよ」
「そうですね!」

 少し屈んだヨルアノくんがユウに笑いかける。

「ユウくん、覚えてな!」
「……」

 しばらくの沈黙の後、彼は顔を上げた。

「ほんならサキさん、無理せんとってください!」
「ありがとう、お仕事頑張って!」

 ヨルアノくんと別れ、その後はハインツさんに会いに執務室へ行ったりして楽しいお散歩を終えた。
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