156 / 209
初めてのお散歩
しおりを挟む
生後一か月を過ぎ、初めてユウを黒騎士団寮に連れて行った。
私も寮へ行くのは二か月振りでずっと楽しみにしていた。
「サキさん!お久しぶりです…!」
「お疲れ様でした…!!」
「お体は……」
一斉に囲まれて皆がどれだけ心配してくれたのかが窺える。
「お前たち、サキに詰め寄るな」
「す、すみません……」
団長に睨まれて一歩下がる皆に私は声をかける。
「本当にありがとうございました。皆さんのサポートがあって、無事子供を産むことができました。こんなに心配して助けて想ってくれる……仲間が居て、それがずっと私の支えでした」
思わず少し涙ぐんでしまった私に団員たちも鼻をすする。
「これからも色々とご迷惑をおかけすることになりますが、よろしくお願いします」
「はい!」
「出来ることは何でもします!」
明るい笑顔に迎えられ、改めて幸せを感じた。
「赤ちゃんだ……」
「めっちゃ可愛いですね……」
私はユウを抱っこし紹介すると、皆は普段接する事のない赤ん坊という存在を遠巻きに見守る。
だいぶ多くの視線を浴びて怖かったのかユウは泣き出してしまって、ハインツさんが全員仕事に戻らせた。
「ユウ、ここが黒騎士団だよ」
「う…ぅっ」
「お家のお隣。お母さんの大切な場所なの」
私の胸元の服を掴むユウに建物を見せると落ち着いたのか泣き止んでくれた。
「サキさん!お待たせしました」
「ヴェルくん、お疲れ様」
「ミスカさんはもう少しかかるので先に帰りましょう」
「うん」
その日から散歩を始めて、二か月になる頃には少し長めに出れるようになった。
「今日はしばらく寮内見せて回っても良いですか?」
「良いけれど、一人でユウを抱えるのは大変だろう。私が一緒に行こうか?」
「ハインツさん、さっき呼ばれてたじゃないですか。座って休憩しながらなので大丈夫ですよ」
「そ、そうか……。すまないね。くれぐれも気を付けて歩くんだよ。何かあったらすぐ周りに声をかけて」
「はい、いってらっしゃい」
幾度かこちらを振り返る夫を見送った。
夫が育児をするのが当たり前のこの世界で心配をしながらも私に子供を預けてくれるのは、私が皆と共に勉強をしてそのやる気を知ってくれているからだと思う。
女性は出来ないんじゃなくてやらないだけ。それを決めるのはそれぞれの家庭だから悪いとかではないけれど、私はしたいから。皆はその意向を汲んでくれている。
「まずは裏庭行こっか!お帽子被ってね」
ゆっくり歩いて行き、今は種を蒔いていて花は咲いていない花壇を眺める。
「今はまだポカポカしてるでしょ?寒くなって秋と冬が終わったらいっぱい咲くんだよ」
「あー」
「あれ、あんまり興味ない?」
飛んでいる蝶々のほうが気になるみたいだ。
男の子はやっぱりそういう系を好きになるのかな…クワガタとか。
私はあまり得意ではないので夫に任せよう。
建物内を少し回った後、食堂の椅子に座って休憩する。
妊娠中はほとんどここに居たから、安心感凄いなぁ。
「ぅ……あぁぁ!」
「あ、お腹空いたかな?」
泣き出してしまったので用意したミルクをバッグから……片手だと取りづらいな。
「さ、サキさん大丈夫ですか!?」
「ヨルアノくん!」
通りがかったら泣き声が聞こえ、びっくりして来てくれたらしい。
「お腹空いてるだけだから大丈夫だよ」
「そ、そうなんですね……。あ、俺が出しますよ」
「ありがとう!」
何事も無くて随分ホッとした様子でヨルアノくんは笑う。
「サキさんめっちゃ落ち着いてますね」
「赤ちゃんは泣くものだから。私たちが焦っても仕方ないでしょ?」
そう言っていられるのも五人の夫たちが居て心に余裕があるからだけど。
「お名前……ユウくんでしたっけ。ほんま可愛いなぁ」
「ふふ、リュークの子だから似てる名前なの」
「あ!そういうことですか!確かに顔も似とりますね……」
ぷはっとミルクを飲み干したユウは、初めて会う知らない男性をじっと見る。
「ユウ、ヨルアノくんだよ」
「そのうち覚えてもらえんかな」
「まだまだこれからだから、いっぱい話しかけたら覚えてくれるよ」
「そうですね!」
少し屈んだヨルアノくんがユウに笑いかける。
「ユウくん、覚えてな!」
「……」
しばらくの沈黙の後、彼は顔を上げた。
「ほんならサキさん、無理せんとってください!」
「ありがとう、お仕事頑張って!」
ヨルアノくんと別れ、その後はハインツさんに会いに執務室へ行ったりして楽しいお散歩を終えた。
私も寮へ行くのは二か月振りでずっと楽しみにしていた。
「サキさん!お久しぶりです…!」
「お疲れ様でした…!!」
「お体は……」
一斉に囲まれて皆がどれだけ心配してくれたのかが窺える。
「お前たち、サキに詰め寄るな」
「す、すみません……」
団長に睨まれて一歩下がる皆に私は声をかける。
「本当にありがとうございました。皆さんのサポートがあって、無事子供を産むことができました。こんなに心配して助けて想ってくれる……仲間が居て、それがずっと私の支えでした」
思わず少し涙ぐんでしまった私に団員たちも鼻をすする。
「これからも色々とご迷惑をおかけすることになりますが、よろしくお願いします」
「はい!」
「出来ることは何でもします!」
明るい笑顔に迎えられ、改めて幸せを感じた。
「赤ちゃんだ……」
「めっちゃ可愛いですね……」
私はユウを抱っこし紹介すると、皆は普段接する事のない赤ん坊という存在を遠巻きに見守る。
だいぶ多くの視線を浴びて怖かったのかユウは泣き出してしまって、ハインツさんが全員仕事に戻らせた。
「ユウ、ここが黒騎士団だよ」
「う…ぅっ」
「お家のお隣。お母さんの大切な場所なの」
私の胸元の服を掴むユウに建物を見せると落ち着いたのか泣き止んでくれた。
「サキさん!お待たせしました」
「ヴェルくん、お疲れ様」
「ミスカさんはもう少しかかるので先に帰りましょう」
「うん」
その日から散歩を始めて、二か月になる頃には少し長めに出れるようになった。
「今日はしばらく寮内見せて回っても良いですか?」
「良いけれど、一人でユウを抱えるのは大変だろう。私が一緒に行こうか?」
「ハインツさん、さっき呼ばれてたじゃないですか。座って休憩しながらなので大丈夫ですよ」
「そ、そうか……。すまないね。くれぐれも気を付けて歩くんだよ。何かあったらすぐ周りに声をかけて」
「はい、いってらっしゃい」
幾度かこちらを振り返る夫を見送った。
夫が育児をするのが当たり前のこの世界で心配をしながらも私に子供を預けてくれるのは、私が皆と共に勉強をしてそのやる気を知ってくれているからだと思う。
女性は出来ないんじゃなくてやらないだけ。それを決めるのはそれぞれの家庭だから悪いとかではないけれど、私はしたいから。皆はその意向を汲んでくれている。
「まずは裏庭行こっか!お帽子被ってね」
ゆっくり歩いて行き、今は種を蒔いていて花は咲いていない花壇を眺める。
「今はまだポカポカしてるでしょ?寒くなって秋と冬が終わったらいっぱい咲くんだよ」
「あー」
「あれ、あんまり興味ない?」
飛んでいる蝶々のほうが気になるみたいだ。
男の子はやっぱりそういう系を好きになるのかな…クワガタとか。
私はあまり得意ではないので夫に任せよう。
建物内を少し回った後、食堂の椅子に座って休憩する。
妊娠中はほとんどここに居たから、安心感凄いなぁ。
「ぅ……あぁぁ!」
「あ、お腹空いたかな?」
泣き出してしまったので用意したミルクをバッグから……片手だと取りづらいな。
「さ、サキさん大丈夫ですか!?」
「ヨルアノくん!」
通りがかったら泣き声が聞こえ、びっくりして来てくれたらしい。
「お腹空いてるだけだから大丈夫だよ」
「そ、そうなんですね……。あ、俺が出しますよ」
「ありがとう!」
何事も無くて随分ホッとした様子でヨルアノくんは笑う。
「サキさんめっちゃ落ち着いてますね」
「赤ちゃんは泣くものだから。私たちが焦っても仕方ないでしょ?」
そう言っていられるのも五人の夫たちが居て心に余裕があるからだけど。
「お名前……ユウくんでしたっけ。ほんま可愛いなぁ」
「ふふ、リュークの子だから似てる名前なの」
「あ!そういうことですか!確かに顔も似とりますね……」
ぷはっとミルクを飲み干したユウは、初めて会う知らない男性をじっと見る。
「ユウ、ヨルアノくんだよ」
「そのうち覚えてもらえんかな」
「まだまだこれからだから、いっぱい話しかけたら覚えてくれるよ」
「そうですね!」
少し屈んだヨルアノくんがユウに笑いかける。
「ユウくん、覚えてな!」
「……」
しばらくの沈黙の後、彼は顔を上げた。
「ほんならサキさん、無理せんとってください!」
「ありがとう、お仕事頑張って!」
ヨルアノくんと別れ、その後はハインツさんに会いに執務室へ行ったりして楽しいお散歩を終えた。
76
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる