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シックザール学園 第三章
伝説の魔女は暴走中
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「本当に本当!? 合格したの!?」
「はい! この目でしかと、セドリック様が合格される瞬間を拝見しました!」
「やったー!! やったわー!!」
今日はセドリックの騎士団の入団試験の日である。
私が試験を受けるわけでもないのに、朝からずっと緊張しっぱなしだった。
じっとしてられず、屋敷の中を何周分歩いたかもう分からない。
一刻も早く結果が知りたくて、私はアダムに試験会場に行ってもらった。
そして、ついさっき試験が終わった。
本当に良かった……本当に!!
私は嬉しくて嬉しくて、屋敷のみんなにセドリックのことを報告する。
「お母様! 合格です! セドリックが騎士団に入団します!」
「スピカ、嬉しい気持ちはよく分かりますけど、バタバタと足音を立てない!」
「すみません……でも、お母様! セドリックの夢が叶ったんです!」
「さすが、ジェイコブの息子ね……」
お母様は今日も美しいわ!
そして、また怒られたごめんなさい!
けど、嬉しくてしょうがないの!
セドリックが努力してる姿を、ずっと隣で見てきた。
セドリックの鍛錬には一回だけ付き合ったことがあったけど、次の日の私は全身筋肉痛で起き上がれなかった。
あんな人間離れしたことをもう七年も続けているなんて、セドリックは相当な体力と精神力の持ち主だ。
学園は古い校舎の改装を行っており、生徒全員が強制的に一時帰宅だ。
だから、私は春なのにこうして我が家にいるのだ。
セドリックの合格祝いは我が家でやると半年前から友人達と決めていた。
努力が実ったんだから、友人として最高のお祝いをしてあげたい。
「ベロニカ、どうしたらいいかな?」
「普通に祝えばいいではないか」
「だーかーらー! 普通じゃなくて、こう派手に? お祝いしたいのよ!」
「派手と言ってもどうするんだ?」
「そこなんだけど……ああ!!」
「何だ、急に!?」
「ベロニカ! 魔法よ! 魔法でパーティー会場を作るのよ!」
「……面白いことを思い付くな?」
名案だとばかりに私とベロニカはすぐさま屋敷の外に出る。
屋敷全体に魔法をかけて、誰も見たことがないようなパーティーにするの!
私達はワクワクしていた。
ベロニカが両手を屋敷に向けて呪文を唱えると、屋敷は大きな水の雫のようなものに包まれる。
そして、パチンッと水が弾けるような激しい音が辺りに響いた。
「これで、屋敷の中の装飾は完了だ!」
「ありがとう、ベロニカ! じゃあ、さっそく中を見てみようよ!」
私とベロニカは期待を胸に、意気揚々と屋敷の扉を開けた。
この先には、見たこともないような素晴らしい夢の世界が広がってる。
そう信じて疑わなかったのだ。
「キャアアアッ!! 何事ですかああ!?」
「誰か、誰か助けてくれえええ!!」
「止まらない!? どいてくれええ!!」
しかし、現実は厳しいものだった。
「どういうことよ!? はあ!?」
「スピカッッ!!!!」
「ひいっ!? おかっ、お母様……」
「この屋敷の有り様はどういうこと? 説明しなさい!!」
「あ! え!? それが……」
「いいえ、説明は後ね? まずは、全部元に戻しなさい!!」
「承知しました!! ベロニカって……え? ベロニカ!? 待ってよ!!」
ベロニカは目にも止まらぬ早さで屋敷を飛び回っていた。
何かを叫んでいるが、早すぎてさっぱり分からない詰んでるぞ。
「何でこうなるのよ!?」
屋敷の中はもうめちゃくちゃだった。
家具という家具は意志を持ったかのようにそこら中を動き回り、四方八方から飛んでくるから危なくてしょうがない。
階段や床は変形を繰り返し、ぐにゃぐにゃに曲がったり、坂になったり、真っ直ぐ歩くことも出来ない。
楽器や肖像画は勝手に演奏を始めるわ歌い出すわで、しかも絶妙に下手だから頭が痛くなるし最悪だ。
みんなはパニックで走り回ってるし。
「アダム、シャーロット! 無事!?」
「愛らしいチューリップが、突然蛇に変身してそれと俺は戦ってるんです! 無事に見えますか!?」
「えっと……アダム、毒には注意よ!!」
「スピカ様! 今度は何ですか!?」
「シャーロット、それがこれはセドリックのパーティーの準備で……」
「何故、パーティーの準備で皿が流星群のように降ってくるんですか!?」
「ああ……破片には気を付けてね?」
(めちゃくちゃお説教だろうな……)
「スピカ、これがお前が言っていた最高のパーティーの準備か?」
「オリオン様!? というか、みんな!」
玄関ホールには、いつの間にか私の友人達が勢揃いしていた。
オリオン様は顔を引くつかせ、ベルは手で顔を覆っており、クラリーナ様は気絶寸前で、リリーはそんなクラリーナ様を支えており、リオンは右へ左へあわあわしている。
今日の主役のセドリックはすっかり顔を青ざめており、私は主役にそんな顔をさせてしまったことがショックだ。
「ちょっと、失敗しちゃいました!!」
「これがちょっと!? ちょっとの意味を知ってる!? もうこれ、ちょっとどころの話じゃないよ!?」
「ベルンハルト落ち着いて!? 絵画が動くことも、本が飛ぶこともよくあることでしょう!?」
「リオンも冷静じゃねえだろ!? 天才のくせに混乱でアホになってるぞ!?」
「そうよ、夢に決まってますわ……」
「クラリーナ様!! お気を確かに!!」
どうしよう、みんなのキャパを大幅にオーバーさせてしまったようだ。
まあ、確かに我が家の玄関ホールは何の冗談だというくらいファンタジーな光景だ。
毎度本当に申し訳ないな。
けど、これだけは言わないとと思って私は口を開いた。
「セドリック、合格おめでとう!!」
「この状況で言うことかよ!? 初めから思ってたけど、お前頭おかしいわ!!」
「お? サイモンではないか」
「おとう!? お父様……」
残念ながら、本当にいろいろとタイミングが悪かった。
「サイモン! どうして、ここに!?」
「ああ、ミランダ! 実は我が家が異常事態と報告を受けてね……」
「はあ……予想以上でしたでしょう?」
「100倍はひどいね……スピカ?」
「は、はいっっ!!!!」
「私に言うことがあるよね?」
「あ……その……おかえりなさいませ」
「正気か、我が娘よ!?」
(そうですよね~、あはは)
「サイモン、手遅れだ諦めろ」
「オリオン様、手遅れって何ですか!」
「スピカッ!!!!」
「私はほとほと愛想がつきました」
「お父様、お母様! もう本当に申し訳ございませんでした!!」
どうにか飛び回るベロニカを捕まえて魔法を解き、みんなでぐちゃぐちゃになった屋敷の中を元に戻した。
それから、セドリックの騎士団の入団試験合格パーティーを予定通り行った。
みんなが帰った後で、お父様とお母様にはとても怒られたけどね。
今日の天気も曇りだった。
「はい! この目でしかと、セドリック様が合格される瞬間を拝見しました!」
「やったー!! やったわー!!」
今日はセドリックの騎士団の入団試験の日である。
私が試験を受けるわけでもないのに、朝からずっと緊張しっぱなしだった。
じっとしてられず、屋敷の中を何周分歩いたかもう分からない。
一刻も早く結果が知りたくて、私はアダムに試験会場に行ってもらった。
そして、ついさっき試験が終わった。
本当に良かった……本当に!!
私は嬉しくて嬉しくて、屋敷のみんなにセドリックのことを報告する。
「お母様! 合格です! セドリックが騎士団に入団します!」
「スピカ、嬉しい気持ちはよく分かりますけど、バタバタと足音を立てない!」
「すみません……でも、お母様! セドリックの夢が叶ったんです!」
「さすが、ジェイコブの息子ね……」
お母様は今日も美しいわ!
そして、また怒られたごめんなさい!
けど、嬉しくてしょうがないの!
セドリックが努力してる姿を、ずっと隣で見てきた。
セドリックの鍛錬には一回だけ付き合ったことがあったけど、次の日の私は全身筋肉痛で起き上がれなかった。
あんな人間離れしたことをもう七年も続けているなんて、セドリックは相当な体力と精神力の持ち主だ。
学園は古い校舎の改装を行っており、生徒全員が強制的に一時帰宅だ。
だから、私は春なのにこうして我が家にいるのだ。
セドリックの合格祝いは我が家でやると半年前から友人達と決めていた。
努力が実ったんだから、友人として最高のお祝いをしてあげたい。
「ベロニカ、どうしたらいいかな?」
「普通に祝えばいいではないか」
「だーかーらー! 普通じゃなくて、こう派手に? お祝いしたいのよ!」
「派手と言ってもどうするんだ?」
「そこなんだけど……ああ!!」
「何だ、急に!?」
「ベロニカ! 魔法よ! 魔法でパーティー会場を作るのよ!」
「……面白いことを思い付くな?」
名案だとばかりに私とベロニカはすぐさま屋敷の外に出る。
屋敷全体に魔法をかけて、誰も見たことがないようなパーティーにするの!
私達はワクワクしていた。
ベロニカが両手を屋敷に向けて呪文を唱えると、屋敷は大きな水の雫のようなものに包まれる。
そして、パチンッと水が弾けるような激しい音が辺りに響いた。
「これで、屋敷の中の装飾は完了だ!」
「ありがとう、ベロニカ! じゃあ、さっそく中を見てみようよ!」
私とベロニカは期待を胸に、意気揚々と屋敷の扉を開けた。
この先には、見たこともないような素晴らしい夢の世界が広がってる。
そう信じて疑わなかったのだ。
「キャアアアッ!! 何事ですかああ!?」
「誰か、誰か助けてくれえええ!!」
「止まらない!? どいてくれええ!!」
しかし、現実は厳しいものだった。
「どういうことよ!? はあ!?」
「スピカッッ!!!!」
「ひいっ!? おかっ、お母様……」
「この屋敷の有り様はどういうこと? 説明しなさい!!」
「あ! え!? それが……」
「いいえ、説明は後ね? まずは、全部元に戻しなさい!!」
「承知しました!! ベロニカって……え? ベロニカ!? 待ってよ!!」
ベロニカは目にも止まらぬ早さで屋敷を飛び回っていた。
何かを叫んでいるが、早すぎてさっぱり分からない詰んでるぞ。
「何でこうなるのよ!?」
屋敷の中はもうめちゃくちゃだった。
家具という家具は意志を持ったかのようにそこら中を動き回り、四方八方から飛んでくるから危なくてしょうがない。
階段や床は変形を繰り返し、ぐにゃぐにゃに曲がったり、坂になったり、真っ直ぐ歩くことも出来ない。
楽器や肖像画は勝手に演奏を始めるわ歌い出すわで、しかも絶妙に下手だから頭が痛くなるし最悪だ。
みんなはパニックで走り回ってるし。
「アダム、シャーロット! 無事!?」
「愛らしいチューリップが、突然蛇に変身してそれと俺は戦ってるんです! 無事に見えますか!?」
「えっと……アダム、毒には注意よ!!」
「スピカ様! 今度は何ですか!?」
「シャーロット、それがこれはセドリックのパーティーの準備で……」
「何故、パーティーの準備で皿が流星群のように降ってくるんですか!?」
「ああ……破片には気を付けてね?」
(めちゃくちゃお説教だろうな……)
「スピカ、これがお前が言っていた最高のパーティーの準備か?」
「オリオン様!? というか、みんな!」
玄関ホールには、いつの間にか私の友人達が勢揃いしていた。
オリオン様は顔を引くつかせ、ベルは手で顔を覆っており、クラリーナ様は気絶寸前で、リリーはそんなクラリーナ様を支えており、リオンは右へ左へあわあわしている。
今日の主役のセドリックはすっかり顔を青ざめており、私は主役にそんな顔をさせてしまったことがショックだ。
「ちょっと、失敗しちゃいました!!」
「これがちょっと!? ちょっとの意味を知ってる!? もうこれ、ちょっとどころの話じゃないよ!?」
「ベルンハルト落ち着いて!? 絵画が動くことも、本が飛ぶこともよくあることでしょう!?」
「リオンも冷静じゃねえだろ!? 天才のくせに混乱でアホになってるぞ!?」
「そうよ、夢に決まってますわ……」
「クラリーナ様!! お気を確かに!!」
どうしよう、みんなのキャパを大幅にオーバーさせてしまったようだ。
まあ、確かに我が家の玄関ホールは何の冗談だというくらいファンタジーな光景だ。
毎度本当に申し訳ないな。
けど、これだけは言わないとと思って私は口を開いた。
「セドリック、合格おめでとう!!」
「この状況で言うことかよ!? 初めから思ってたけど、お前頭おかしいわ!!」
「お? サイモンではないか」
「おとう!? お父様……」
残念ながら、本当にいろいろとタイミングが悪かった。
「サイモン! どうして、ここに!?」
「ああ、ミランダ! 実は我が家が異常事態と報告を受けてね……」
「はあ……予想以上でしたでしょう?」
「100倍はひどいね……スピカ?」
「は、はいっっ!!!!」
「私に言うことがあるよね?」
「あ……その……おかえりなさいませ」
「正気か、我が娘よ!?」
(そうですよね~、あはは)
「サイモン、手遅れだ諦めろ」
「オリオン様、手遅れって何ですか!」
「スピカッ!!!!」
「私はほとほと愛想がつきました」
「お父様、お母様! もう本当に申し訳ございませんでした!!」
どうにか飛び回るベロニカを捕まえて魔法を解き、みんなでぐちゃぐちゃになった屋敷の中を元に戻した。
それから、セドリックの騎士団の入団試験合格パーティーを予定通り行った。
みんなが帰った後で、お父様とお母様にはとても怒られたけどね。
今日の天気も曇りだった。
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