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第二章 未知の世界への移住
それは血に飢えた猛獣
ゾーイが叫ぶのと、目の前の猛獣が大地に響き渡るような雄叫びをあげたのはほぼ同時だった。
「死にたくなかったら、走れー!!」
再びゾーイの叫びで、鳥がバタバタと空に一斉に飛び上がっていく。
俺達はお互いを見失わないように気を配りながらも、全速力で木々を避けて森を走り抜けていく。
「はあ、はあ……!! これはいつまで走り続ければいいんだ……!?」
「それなら止まれ。奴のエサになって時間を稼げ」
「そ、そんな……!!」
「まあまあ、アラン? そんなまっすぐに死ねなんて言うなって」
ハロルドがたまらなくなって、半分は懇願をするように質問を投げかけるが、アランによって一蹴される。
それを見かねたサトルが慰めている。
「気のせいか? 数が増えてないか?」
「クソボケ、死にてえのか!? 後ろを振り返ってる暇があったら走れ!」
あの猛獣だけじゃなく、他に何頭も追って来ているのが感覚でわかった。
しかし、俺が後ろを振り返ろうとすると、隣からそれは容赦ない力で後頭部を殴られる。
案の定、それは望だった。
「けど、あたし達、これは完全に奴らにロックオンされてるよね」
「ど、どうするんだ……!?」
「あたし達の限界が先か、向こうが見失うのが先かってね?」
「いやいや、そんな悠長なこと言ってる場合かな? 見た感じ、既に隣を走るハロルドは限界よ?」
ゾーイは後ろ向きに走りながら、器用に木を避けてそう話す。
サトルの言う通り、ハロルドはほぼ限界で、サトルに何とか手を引かれながら汗だくで足を動かしている。
というか、俺もキツいんだよな……
「そうね~? よし、木に登るか!」
「は?」
ゾーイはそう言うや否や、一本の木を選んだかと思うと、スルスルと登って行ってしまった。
俺達は思わず、急ブレーキのように足を止める。
「えっと……ゾーイ? 何してるの?」
「木登りよ。簡単だから、みんなも近くの木に登ってみなよ」
「登るって……」
「ボヤボヤしてると、そこまで来てる猛獣に美味しくいただかれるよ」
ゾーイの指差す方を振り向くと、本当にすぐそこまであの猛獣が来ていた。
アランはさっさと登り、体力の消耗が激しいハロルドをサトルが支えて一緒の木に登る。
俺も悩む暇なく、近くの木にどうにか登ってみたが……
「何で、テメーがここに登って来るんだよ!! 今すぐ下りろ!!」
「無茶言うな、状況を考えろ!!」
「じゃあ、俺が下りる!!」
「今下りるのなんて危険すぎる!! それぐらいわかるだろ!?」
嫌な偶然というやつで、俺は望と同じ木に登ってしまったようだった。
「何だかんだ仲良しなんじゃん、本能で同じ木を選んだんでしょ? さすが、双子様々だわね」
「本当にお前は、俺の神経を逆撫ですることが得意だよな~!?」
「ごめんよ、ゾーイ……本当に今だけは黙ってくれ……!! 望は枝を揺らすな! 簡単に折れるんだよ、枝って!」
この状況で、望に仲良しなんてワードを聞かせるなんて……
本当にゾーイは恐すぎるよ。
案の定、望はキレて、木を手当たり次第に揺らすから気が気じゃない。
「まあ、冗談抜きで気を付けなよ? 朝までここにいるんだから」
「あ、朝まで……?」
「はあ!? 冗談じゃねえ!!」
「そう、大真面目で冗談じゃないの。下をご覧なさいよ?」
ゾーイに言われ、俺と望は木の下を覗き込むように見てみる。
俺は思わず、息を呑んだ。
嫌な汗が背中を伝うのもわかる。
悲鳴のような声も聞こえたが、多分ハロルドのものだろう。
俺達が登った木の下には、さっきの猛獣が何頭も待ち構えていた。
六頭か……全然だ、もっといるな。
目を光らせて、爪を立てて、こちらの様子を伺うように木の近くを何度も歩き回っている。
「わかった? ということで、朝まで自由時間ね! 夜の森は危険だしね! あ、もしも寝惚けて木から落ちたら自己責任だからね~?」
「最悪だ……」
隣の望はそう静かに呟いた。
ゾーイのその言葉の後でぐっすりと眠れるわけなんてなく、ほとんど全員が夜通し起きていた。
騒ぎ続けるハロルドを、サトルが必死に宥める声がずっと聞こえていた。
俺達は、望が目が合うだけで突っかかってくるので、変に気を遣ってお互いに余計に疲れたんじゃないだろうか。
一方で、アランとゾーイの声はまったく聞こえてこなかった。
アランはいつも通りだけど……
ゾーイに関しては、何度も寝言らしきものが聞こえていたから、多分気持ちよく寝ているんだろうな……うん。
「死にたくなかったら、走れー!!」
再びゾーイの叫びで、鳥がバタバタと空に一斉に飛び上がっていく。
俺達はお互いを見失わないように気を配りながらも、全速力で木々を避けて森を走り抜けていく。
「はあ、はあ……!! これはいつまで走り続ければいいんだ……!?」
「それなら止まれ。奴のエサになって時間を稼げ」
「そ、そんな……!!」
「まあまあ、アラン? そんなまっすぐに死ねなんて言うなって」
ハロルドがたまらなくなって、半分は懇願をするように質問を投げかけるが、アランによって一蹴される。
それを見かねたサトルが慰めている。
「気のせいか? 数が増えてないか?」
「クソボケ、死にてえのか!? 後ろを振り返ってる暇があったら走れ!」
あの猛獣だけじゃなく、他に何頭も追って来ているのが感覚でわかった。
しかし、俺が後ろを振り返ろうとすると、隣からそれは容赦ない力で後頭部を殴られる。
案の定、それは望だった。
「けど、あたし達、これは完全に奴らにロックオンされてるよね」
「ど、どうするんだ……!?」
「あたし達の限界が先か、向こうが見失うのが先かってね?」
「いやいや、そんな悠長なこと言ってる場合かな? 見た感じ、既に隣を走るハロルドは限界よ?」
ゾーイは後ろ向きに走りながら、器用に木を避けてそう話す。
サトルの言う通り、ハロルドはほぼ限界で、サトルに何とか手を引かれながら汗だくで足を動かしている。
というか、俺もキツいんだよな……
「そうね~? よし、木に登るか!」
「は?」
ゾーイはそう言うや否や、一本の木を選んだかと思うと、スルスルと登って行ってしまった。
俺達は思わず、急ブレーキのように足を止める。
「えっと……ゾーイ? 何してるの?」
「木登りよ。簡単だから、みんなも近くの木に登ってみなよ」
「登るって……」
「ボヤボヤしてると、そこまで来てる猛獣に美味しくいただかれるよ」
ゾーイの指差す方を振り向くと、本当にすぐそこまであの猛獣が来ていた。
アランはさっさと登り、体力の消耗が激しいハロルドをサトルが支えて一緒の木に登る。
俺も悩む暇なく、近くの木にどうにか登ってみたが……
「何で、テメーがここに登って来るんだよ!! 今すぐ下りろ!!」
「無茶言うな、状況を考えろ!!」
「じゃあ、俺が下りる!!」
「今下りるのなんて危険すぎる!! それぐらいわかるだろ!?」
嫌な偶然というやつで、俺は望と同じ木に登ってしまったようだった。
「何だかんだ仲良しなんじゃん、本能で同じ木を選んだんでしょ? さすが、双子様々だわね」
「本当にお前は、俺の神経を逆撫ですることが得意だよな~!?」
「ごめんよ、ゾーイ……本当に今だけは黙ってくれ……!! 望は枝を揺らすな! 簡単に折れるんだよ、枝って!」
この状況で、望に仲良しなんてワードを聞かせるなんて……
本当にゾーイは恐すぎるよ。
案の定、望はキレて、木を手当たり次第に揺らすから気が気じゃない。
「まあ、冗談抜きで気を付けなよ? 朝までここにいるんだから」
「あ、朝まで……?」
「はあ!? 冗談じゃねえ!!」
「そう、大真面目で冗談じゃないの。下をご覧なさいよ?」
ゾーイに言われ、俺と望は木の下を覗き込むように見てみる。
俺は思わず、息を呑んだ。
嫌な汗が背中を伝うのもわかる。
悲鳴のような声も聞こえたが、多分ハロルドのものだろう。
俺達が登った木の下には、さっきの猛獣が何頭も待ち構えていた。
六頭か……全然だ、もっといるな。
目を光らせて、爪を立てて、こちらの様子を伺うように木の近くを何度も歩き回っている。
「わかった? ということで、朝まで自由時間ね! 夜の森は危険だしね! あ、もしも寝惚けて木から落ちたら自己責任だからね~?」
「最悪だ……」
隣の望はそう静かに呟いた。
ゾーイのその言葉の後でぐっすりと眠れるわけなんてなく、ほとんど全員が夜通し起きていた。
騒ぎ続けるハロルドを、サトルが必死に宥める声がずっと聞こえていた。
俺達は、望が目が合うだけで突っかかってくるので、変に気を遣ってお互いに余計に疲れたんじゃないだろうか。
一方で、アランとゾーイの声はまったく聞こえてこなかった。
アランはいつも通りだけど……
ゾーイに関しては、何度も寝言らしきものが聞こえていたから、多分気持ちよく寝ているんだろうな……うん。
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