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第三章-⑶ ジェームズとコタロウ
シャウトアットザサンセット
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「喧嘩両成敗ね! これで終わり、わかった?」
そして、満足したのか、ゾーイはコタロウとジェームズの頭から手を離して、ようやく砂浜から解放されて顔を上げた二人に得意げにそう言い放った。
「く、苦しかった……」
「はあ……何だっていいよ、もう……」
若干どころか、結構ジェームズは顔が青ざめていた。
一方で、コタロウは疲労困憊で諦めたような表情をしている。
「さて、丸く収まったところで、タイミング良く日が沈みますね! 全員、あの夕日に向かって思いの丈を叫ぶよ!」
「え、まっ、ゾーイ!?」
すると、ゾーイがお次は急に叫んだかと思ったら、今度は海に走り出す。
そして、君は海にこう叫ぶのだった。
「絶対に空島に帰るぞおおおお!」
沈みゆく夕日が、君の長くフワフワな髪を真っ赤に染める。
「ほら、みんなも! 知らない? 夕日に向かって好き勝手叫ぶとか、昔のドラマの定番だよ? スッキリするよ!」
夕日と赤く染まった海を背に立つ君の姿は、俺が見てきた何よりも美しいと素直に思えた。
どうしたらいいのか……
どうすれば、俺達は君と肩を並べて歩き、君の力になれるのだろうか……
沈む夕日を見ていたら、いつの間にかそんなことを考えてしまっていて、俺はどうしようもなく切なくなる。
「早く、何のためにわざわざ海に来たと思ってんの!」
全部、何もかも君の遠回しの優しさだったんだと、やっと俺は気付いた。
俺達人類と犬族と猫族の、それぞれの気持ちのすれ違いの解消をするため。
そして、辛くなるからといつしか不安を口にしないように、我慢するようになっていた俺達への、今日だけは楽にしろという君なりの遠回しのメッセージ。
君のことがわかってきたようで、俺にはまだまだ遠いよ。
確かに、昔の青春ドラマとかで見たことはあるけどさ……
君の優しさは、いつだって遠回しで大掛かりなものばかりだ。
「うおおおおおおおおおお……!!」
「は? す、昴!?」
俺は切なくてどうしようもない寂しさを振り払うように、望が呼んでいる声を振り切り、ゾーイの隣に走る。
「母さああん! 待ってて! 俺、絶対望と真由のこと守って、三人で母さん達のところに帰るからああ!」
気付くと、俺は力の限り叫んでいた。
こんなに大声で叫んだのは、きっと初めてなんじゃないだろうか……
体もびっくりしてしまったのか、心臓のバクバクが止まらない。
息まで切れてきた気がするぞ……
けど、俺が叫んだことがみんなの中できっかけとなったのか……
最初に前に出て来たのは、仏頂面の望と、呆れたように笑う真由だった。
「守られてるだけじゃねええ! 変な意地を張るのは、金輪際やめだああ!」
「お父さああん! お母さああん! 地上の生活は大変よ! けど、私、絶対に諦めないからねええ!」
そして、次に前に出て来たのは、目が潤んでる橘さん、遠慮がちなクレア、謎に誇らしげなハロルドだった。
「パパ……ママ……!! 私、寂しくて、寂しくて死んじゃいそうだよおお!」
「わ、私! 私、絶対、絶対にみんなのところに帰るから、信じてて……!!」
「父上! 母上! このハロルド、早乙女家の名に恥じぬよう心掛けて、必ずや帰還いたしまああす!」
次は、楽しそうなソニアと、そんなソニアに手を引かれながら前に出て来たのはデルタとシン。
「あたし達は自由だああ! 誰にも邪魔させないんだからああ!」
「もう好きに生きてやるんだ……自分に素直に生きてやるからなああ!」
「彼女を作るためには、ここでくたばるわけにはいかねえんだああああ!!」
「シン。お前は、どさくさに紛れて何を叫んどるんだ」
最後のシンの叫びには、きっちりとゾーイからの鋭いツッコミが入る。
そんな風に、それぞれの叫びが水平線の向こうに消えていく横で……
「本当にごめん! 僕のせいで……!!」
「……いや、謝るのは俺も同じだ」
ジェームズとコタロウはレオとモカに見守られながら、お互いに謝ることができていた。
そして、二人は固い握手を交わす。
「ゾーイ、ありがとう……!!」
「……悪かった。あと、礼を言う」
「は? 何もしてないけど? あたしが海に来たかっただけだよ?」
そして、二人はゾーイにお礼を言ってその返事に驚き、笑顔に変わる。
どうやら、今度こそ本当にこの件は解決したようだった。
「昴、どうかした?」
すると、よそ見をする俺を不思議に思って、真由は尋ねるように俺を呼ぶ。
「……真由」
「うん……?」
「必ず、お前のこと空島に返すよ」
そして、俺は優しく真由の手を握る。
すごく驚いていた真由だけど、そっぽを向きながら真由も握り返してくれた。
きっと、今の俺の顔には、零れ出したような笑顔が浮かんでいるだろう。
「帰ろうな……」
「うん……帰ろうね」
少しの幸せに浸っていたけど、俺は同時に妙な違和感を感じていた。
アラン、モーリス、ローレンさんが叫ばないことは予想ができたけど……
サトルが、見たこともない怖い顔で空を睨んでいたことは、俺の中で小さな不安を残した――
そして、満足したのか、ゾーイはコタロウとジェームズの頭から手を離して、ようやく砂浜から解放されて顔を上げた二人に得意げにそう言い放った。
「く、苦しかった……」
「はあ……何だっていいよ、もう……」
若干どころか、結構ジェームズは顔が青ざめていた。
一方で、コタロウは疲労困憊で諦めたような表情をしている。
「さて、丸く収まったところで、タイミング良く日が沈みますね! 全員、あの夕日に向かって思いの丈を叫ぶよ!」
「え、まっ、ゾーイ!?」
すると、ゾーイがお次は急に叫んだかと思ったら、今度は海に走り出す。
そして、君は海にこう叫ぶのだった。
「絶対に空島に帰るぞおおおお!」
沈みゆく夕日が、君の長くフワフワな髪を真っ赤に染める。
「ほら、みんなも! 知らない? 夕日に向かって好き勝手叫ぶとか、昔のドラマの定番だよ? スッキリするよ!」
夕日と赤く染まった海を背に立つ君の姿は、俺が見てきた何よりも美しいと素直に思えた。
どうしたらいいのか……
どうすれば、俺達は君と肩を並べて歩き、君の力になれるのだろうか……
沈む夕日を見ていたら、いつの間にかそんなことを考えてしまっていて、俺はどうしようもなく切なくなる。
「早く、何のためにわざわざ海に来たと思ってんの!」
全部、何もかも君の遠回しの優しさだったんだと、やっと俺は気付いた。
俺達人類と犬族と猫族の、それぞれの気持ちのすれ違いの解消をするため。
そして、辛くなるからといつしか不安を口にしないように、我慢するようになっていた俺達への、今日だけは楽にしろという君なりの遠回しのメッセージ。
君のことがわかってきたようで、俺にはまだまだ遠いよ。
確かに、昔の青春ドラマとかで見たことはあるけどさ……
君の優しさは、いつだって遠回しで大掛かりなものばかりだ。
「うおおおおおおおおおお……!!」
「は? す、昴!?」
俺は切なくてどうしようもない寂しさを振り払うように、望が呼んでいる声を振り切り、ゾーイの隣に走る。
「母さああん! 待ってて! 俺、絶対望と真由のこと守って、三人で母さん達のところに帰るからああ!」
気付くと、俺は力の限り叫んでいた。
こんなに大声で叫んだのは、きっと初めてなんじゃないだろうか……
体もびっくりしてしまったのか、心臓のバクバクが止まらない。
息まで切れてきた気がするぞ……
けど、俺が叫んだことがみんなの中できっかけとなったのか……
最初に前に出て来たのは、仏頂面の望と、呆れたように笑う真由だった。
「守られてるだけじゃねええ! 変な意地を張るのは、金輪際やめだああ!」
「お父さああん! お母さああん! 地上の生活は大変よ! けど、私、絶対に諦めないからねええ!」
そして、次に前に出て来たのは、目が潤んでる橘さん、遠慮がちなクレア、謎に誇らしげなハロルドだった。
「パパ……ママ……!! 私、寂しくて、寂しくて死んじゃいそうだよおお!」
「わ、私! 私、絶対、絶対にみんなのところに帰るから、信じてて……!!」
「父上! 母上! このハロルド、早乙女家の名に恥じぬよう心掛けて、必ずや帰還いたしまああす!」
次は、楽しそうなソニアと、そんなソニアに手を引かれながら前に出て来たのはデルタとシン。
「あたし達は自由だああ! 誰にも邪魔させないんだからああ!」
「もう好きに生きてやるんだ……自分に素直に生きてやるからなああ!」
「彼女を作るためには、ここでくたばるわけにはいかねえんだああああ!!」
「シン。お前は、どさくさに紛れて何を叫んどるんだ」
最後のシンの叫びには、きっちりとゾーイからの鋭いツッコミが入る。
そんな風に、それぞれの叫びが水平線の向こうに消えていく横で……
「本当にごめん! 僕のせいで……!!」
「……いや、謝るのは俺も同じだ」
ジェームズとコタロウはレオとモカに見守られながら、お互いに謝ることができていた。
そして、二人は固い握手を交わす。
「ゾーイ、ありがとう……!!」
「……悪かった。あと、礼を言う」
「は? 何もしてないけど? あたしが海に来たかっただけだよ?」
そして、二人はゾーイにお礼を言ってその返事に驚き、笑顔に変わる。
どうやら、今度こそ本当にこの件は解決したようだった。
「昴、どうかした?」
すると、よそ見をする俺を不思議に思って、真由は尋ねるように俺を呼ぶ。
「……真由」
「うん……?」
「必ず、お前のこと空島に返すよ」
そして、俺は優しく真由の手を握る。
すごく驚いていた真由だけど、そっぽを向きながら真由も握り返してくれた。
きっと、今の俺の顔には、零れ出したような笑顔が浮かんでいるだろう。
「帰ろうな……」
「うん……帰ろうね」
少しの幸せに浸っていたけど、俺は同時に妙な違和感を感じていた。
アラン、モーリス、ローレンさんが叫ばないことは予想ができたけど……
サトルが、見たこともない怖い顔で空を睨んでいたことは、俺の中で小さな不安を残した――
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