エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ

事件の全貌と逃げてた現実

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 しかし、その真由の質問すら、俺達にとっては懐かしいものだった。


「それは、絶対にないわね」
「え、どうして?」
「防犯カメラよ。クレア、ハロルド、モーリス、ジェームズのアーデル組がコックピットにやって来る前の約二十分間の映像と音声データが、そこだけ不自然に消去されていたの。自殺するのにそんなことする意味なんて、ないでしょ?」
「まあそれは、確かにそうね。けど、そこまで用意周到なんて……」
「計画的じゃん! 完全犯罪目指してるじゃん! 完璧にナサニエルの墜落事件まで、仕組まれてるじゃん!」
「わかったって! わかったから、菜々美ってば、落ち着いて! 深呼吸!」

 
 ゾーイは即座に否定して、丁寧に真由の疑問に答えていく。
 それを聞いた真由の顔は曇り、さらに菜々美に関しては泣きそうになりながら叫びまくるので、ソニアが必死になって宥めていた。
 あの時と同じだ、誰かがゾーイに自殺じゃないのかと質問をしたが、即座にゾーイは否定して、防犯カメラのことを説明した。
 本当に防犯カメラなんて、いつの間に調べていたんだか……
 けど、それによって俺達の中に少しだけ残されていた自殺って希望が、木っ端微塵に砕け散って、犯人って奴の存在が近くなっちゃったんだよな……


「そして、改めて聞いてきたら、薄々は勘づいてると思うけど、その殺人犯はナサニエルの生徒の誰かで、今もあたし達と一緒に生活している。そいつがこのナサニエル墜落事件の全貌を知っていることはほぼ間違いはないなと、あたしは思ってるわ」
「そうだよね……ああ、予想通りすぎて頭が痛くなってきた……!!」
「どうやっても、犯人探しをするしか道はねえってことなわけか……」
「つーか、今改めて考えたらだけど、夏休みにちょっと帰省しなかっただけでこの仕打ちって、割に合わなくねえか!?」


 そして、ゾーイは誰もが思っていた最大のタブーを口にした。
 ゾーイの言葉を聞くと、ジェームズは頭を抱えながら、これでもかと悲痛な声を上げ、望は静かに天を仰ぎ、シンは改めてこの現実を嘆いていた。
 犯人はこの中にいるなんて……永遠に使うことはないって思ってた言葉だったはずなんだけどな、俺達はどこで道を間違えたのやら――


「何より、それが空島の未来に関わるほどのとんでもない陰謀だってことが、最重要事項よ? そこを暴かないと、あたしは空島に帰ったとしても、ほとんど意味がないと思ってるわ。また同じことを繰り返すことになる……」


 そんなゾーイの言葉に、不思議とその場で驚く者はいなかったと思う。
 というより、ゾーイに呼び出された時点で、全員ある程度の覚悟はできていたはずだから。
 まあ、そうは言っても、これまでとはスケールが違いすぎるよなってことは否めないけど……これは絶対に、立ち向かわなきゃいけない壁だったんだ。
 それに薄々よりタチが悪いんだよ、俺達は目を逸らし続けていたんだ。
 犯人が内部にいるって、ナサニエルの墜落なんて大規模なものは何か大きな陰謀だって、俺達はそれに巻き込まれてるって、わかってたんだよ。
 けど、生きるのに必死だからなんて理由で、俺達は逃げ続けていた。
 来るはずのない助けなんかに希望を抱くことで、自分を保っていたのかな……
 けど、俺達はゾーイと過ごして思い知っていったのだ、綺麗事だけでは時にはどうにもならないことがあるって。
 俺達はもう、自分達の未来のために歩き出さなきゃいけなくて……何てことを思ってはいても、俺達は誰一人として頷くことができないでいた。


「……あのさ、そんな葬式まっしぐらな面構えで、あと何分いるわけ?」
「いや、ごめんよ……ゾーイ! この状況を十分わかってはいるし、理解もしてはいるんだけど……!!」
「そう急かすなよ。そこら辺のガキと喧嘩しようって規模じゃないんだぞ?」
「あなたのように、誰もがそう簡単に大切なものは捨てられないのです」


 まあ、グダグダな俺達に、案の定痺れを切らしたゾーイがため息をついた。
 そんなゾーイに対し、サトルは焦ったように謝って、デルタは呆れながらも優しく諭す。
 モーリスにいたっては、ゾーイのことを真正面から睨みつけるなんて険悪さだった。
 申し訳ない気持ちでいっぱいだし、ご最もだけど、俺達はまだまだゾーイに比べたら子どもで弱いんだ。
 そう簡単に、国家を敵に回すなんて決断できないよと、俺が三人に続いて口に出そうとした時だった……


「あんた達しかいないのよ。今のとこナサニエルの内部の人間って括りで、あたしが信用のできる奴らってさ」


 本当にゾーイ・エマーソンは、俺達の心を弄んで、操るのが誰よりも上手いと思う。
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