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第四章-⑴ 良い子は謎解きの時間だよ
手足の鈍さが俺達の鈍さだ
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ゾーイは、はっきりと包み隠すことなく、言い切ったのだ。
淡々としたいつもの口調と、人を金縛りにする、何度となく見たあの青の瞳と不気味なほどの笑みを添えて……
「それは……どういう意味で言っているのかしら?」
「さあ? あたしにもさっぱりだよ?」
そのゾーイの言葉に対して、ローレンさんは震える声で聞き返した。
けど、一方でゾーイは、自分で言っておきながら、まるで他人事のようなトーンで、そう返したのだった。
「そっ、そんな! なぜ、そんな紛らわしいことを言うのよ!? あなたが言ったことでしょ!? そもそも、言った本人のあなたがわからないのなら、この世の誰にもわからないじゃない! もっと、自分の言葉に責任を持つべきだわ!」
「あら、怒ってる?」
「当然だわ! まるで、私のことを疑うようなことを言っておいて……!!」
「けど、言葉の意味がわかる奴なら、この世にたった一人だけいるけど?」
「は……? そんなのいるわけが……!!」
そんなゾーイの、ここまできたらバカにされたようにも感じられる態度に、ローレンさんは怒鳴り声を上げる。
それを受けても、ゾーイはいつもの調子と変わらずに、また煽っていく。
ゾーイの問いかけにすら、ヒートアップしたままの状態でローレンさんは答えようとしていたのだが……
「バカなの? 言われた本人が、一番自分でわかるに決まってんだろうが」
それはゾーイの稀に見る、ブチ切れ寸前を意味する口調により、その場の時は止まったので、ローレンさんの言葉が最後まで紡がれることはなかった。
何より、今のその瞬間のゾーイは一段と迫力がすごいもので……
「わっ、私! 申し訳ないけど、少しだけ、風にあたってくるわ!」
当然というか……そんなことを、正面切って言われた本人のローレンさんは、これでもかと顔を強ばらせて、逃げるように走り去って行った。
今、目の前で何が起こったんだ……?
確実に今、二人の間だけで会話に似たようなものが成立したよな?
「……ねえ、昴」
「はっ、はい……!?」
「あんたがいてくれてよかったわ」
「え? あ、うん?」
状況が上手く読み込めず、俺はゾーイに呼ばれて、声が裏返ってしまうほど動揺をしていた。
そんな俺のことは受け流し、ゾーイは俺の顔を見ることなく、そう呟く。
何なんだ、さっきから何を言って……
「あたし、やっぱり、あの子のこと好きじゃないわ」
フラッシュバック、そのゾーイの言葉を聞いて、俺はその場で九か月前のナサニエルを出発した時を思い出した。
――あの子のこと好きじゃないわ
あの日、ゾーイは俺に、はっきりとローレンさんのことを、そう告げた。
あの時と同じトーン、同じ淡々としたこの感じ、すべてを繰り返している。
「ゾーイ! 聞きたいことが……!!」
「さてと、散歩も飽きたし、アラン達のとこでも行きますか!」
「え? あのさ、ゾーイ!」
「ほらほら、昴もはや、く……!?」
「ゾーイ!? え、ちょっ、大丈夫!?」
意を決して、ゾーイにローレンさんのことを問おうとしたら……ゾーイは俺の言葉をあからさまに遮った。
そんなことをされるとは思わず、俺はゾーイを引き止めるように声を上げる。
しかし、ゾーイはどんどん歩を進めると思いきや、またもや予想外のことが起き、俺は慌ててゾーイに駆け寄った。
「ゾーイ! ケガとかしてないか!?」
ゾーイが転んだのだ……いや、あれは転んだって言っていいのか?
俺の目の前で、ゾーイは急にバランスを崩し、その場に手をついていた。
まるで、両足の力が突然一気に抜けてしまったかのように……
「おい! おいってば! ゾーイ!? 大丈夫だったか!? どこか痛いのか!?」
「え? あー、うん。全然平気!」
「いや、平気じゃないだろ!? この前だって、急に手が滑ったとか言って皿を落としてたし、最近多くないか?」
俺の声が届いてなかったのか、ゾーイにしては珍しいことにボーッとしていたようで、少し遅れて返事をしてきた。
こんなことが、ゾーイはここ数週間でとても増えた。
よく物を落としたり、特に何もないところで転んだり、前までのゾーイなら考えられないことばかりで……
「十日間の旅もそうだけど、最近本当に働きすぎなんじゃないか?」
「……うーん。まあ、今日寝れば少しは良くなると思うよ」
「寝ればって……寝ることは、人間には当たり前なんだからな? 少し休んだらどうだ?」
「大丈夫だって。何か、真由の心配症が伝染ったみたいだよ?」
「ゾーイ? 俺は真剣にだな……!!」
「わかったから! 無理はしないよ!」
ゾーイは、俺の忠告をことごとく、聞こうとはしなかった。
淡々としたいつもの口調と、人を金縛りにする、何度となく見たあの青の瞳と不気味なほどの笑みを添えて……
「それは……どういう意味で言っているのかしら?」
「さあ? あたしにもさっぱりだよ?」
そのゾーイの言葉に対して、ローレンさんは震える声で聞き返した。
けど、一方でゾーイは、自分で言っておきながら、まるで他人事のようなトーンで、そう返したのだった。
「そっ、そんな! なぜ、そんな紛らわしいことを言うのよ!? あなたが言ったことでしょ!? そもそも、言った本人のあなたがわからないのなら、この世の誰にもわからないじゃない! もっと、自分の言葉に責任を持つべきだわ!」
「あら、怒ってる?」
「当然だわ! まるで、私のことを疑うようなことを言っておいて……!!」
「けど、言葉の意味がわかる奴なら、この世にたった一人だけいるけど?」
「は……? そんなのいるわけが……!!」
そんなゾーイの、ここまできたらバカにされたようにも感じられる態度に、ローレンさんは怒鳴り声を上げる。
それを受けても、ゾーイはいつもの調子と変わらずに、また煽っていく。
ゾーイの問いかけにすら、ヒートアップしたままの状態でローレンさんは答えようとしていたのだが……
「バカなの? 言われた本人が、一番自分でわかるに決まってんだろうが」
それはゾーイの稀に見る、ブチ切れ寸前を意味する口調により、その場の時は止まったので、ローレンさんの言葉が最後まで紡がれることはなかった。
何より、今のその瞬間のゾーイは一段と迫力がすごいもので……
「わっ、私! 申し訳ないけど、少しだけ、風にあたってくるわ!」
当然というか……そんなことを、正面切って言われた本人のローレンさんは、これでもかと顔を強ばらせて、逃げるように走り去って行った。
今、目の前で何が起こったんだ……?
確実に今、二人の間だけで会話に似たようなものが成立したよな?
「……ねえ、昴」
「はっ、はい……!?」
「あんたがいてくれてよかったわ」
「え? あ、うん?」
状況が上手く読み込めず、俺はゾーイに呼ばれて、声が裏返ってしまうほど動揺をしていた。
そんな俺のことは受け流し、ゾーイは俺の顔を見ることなく、そう呟く。
何なんだ、さっきから何を言って……
「あたし、やっぱり、あの子のこと好きじゃないわ」
フラッシュバック、そのゾーイの言葉を聞いて、俺はその場で九か月前のナサニエルを出発した時を思い出した。
――あの子のこと好きじゃないわ
あの日、ゾーイは俺に、はっきりとローレンさんのことを、そう告げた。
あの時と同じトーン、同じ淡々としたこの感じ、すべてを繰り返している。
「ゾーイ! 聞きたいことが……!!」
「さてと、散歩も飽きたし、アラン達のとこでも行きますか!」
「え? あのさ、ゾーイ!」
「ほらほら、昴もはや、く……!?」
「ゾーイ!? え、ちょっ、大丈夫!?」
意を決して、ゾーイにローレンさんのことを問おうとしたら……ゾーイは俺の言葉をあからさまに遮った。
そんなことをされるとは思わず、俺はゾーイを引き止めるように声を上げる。
しかし、ゾーイはどんどん歩を進めると思いきや、またもや予想外のことが起き、俺は慌ててゾーイに駆け寄った。
「ゾーイ! ケガとかしてないか!?」
ゾーイが転んだのだ……いや、あれは転んだって言っていいのか?
俺の目の前で、ゾーイは急にバランスを崩し、その場に手をついていた。
まるで、両足の力が突然一気に抜けてしまったかのように……
「おい! おいってば! ゾーイ!? 大丈夫だったか!? どこか痛いのか!?」
「え? あー、うん。全然平気!」
「いや、平気じゃないだろ!? この前だって、急に手が滑ったとか言って皿を落としてたし、最近多くないか?」
俺の声が届いてなかったのか、ゾーイにしては珍しいことにボーッとしていたようで、少し遅れて返事をしてきた。
こんなことが、ゾーイはここ数週間でとても増えた。
よく物を落としたり、特に何もないところで転んだり、前までのゾーイなら考えられないことばかりで……
「十日間の旅もそうだけど、最近本当に働きすぎなんじゃないか?」
「……うーん。まあ、今日寝れば少しは良くなると思うよ」
「寝ればって……寝ることは、人間には当たり前なんだからな? 少し休んだらどうだ?」
「大丈夫だって。何か、真由の心配症が伝染ったみたいだよ?」
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