23 / 34
二十三、焼け石に舌 三
しおりを挟む
二重の回答を得て、龍左衛門はしかと足を踏んばった。しくじりは許されない。
「まず、俺の質問への回答は、口じゃなくて字にして書いて貰います。短い答えで構いません。筆も墨も紙もありますよね」
武家ならば、旅に際してそれらを所持するのは常識である。二人は等しくうなずいた。
「当然、お二人は背中を向けあってもらいます。万が一にも後ろを見たりしないよう、左右冠者が見張りにつきます」
「心得た」
「うむ」
左右冠者は、こういう場面で飲みこみが早い。
「右冠者がついている方は、回答に右と書き添えて下さい。左冠者は左です」
そうしないと、どちらがどちらの回答か、訳が分からなくなる。当然、二人とも同意した。
「お二人が書いた答えは、河童に俺まで届けさせます」
「おうっ」
河童も、断るはずがない。
「準備が出来たら始めますよ」
筆記の段取りは、即座に終わった。
「じゃあ、一つめ。赤口に、『お前はずっとそのままでいたいのか』っていいましたけど、櫛田様は内心どんな気持ちでしたか、教えて下さい」
すぐに答えが寄せられた。右は、『赤口にも赤口なりの言い分があるのだろう』。左は、『赤口の身になって考えないと糸口が見つからない』。
両方とも似たような発想で、さすがにこれだけでは分からない。まだまだ序の口にすぎない。
「二つめ。『お前の口ぶりだと、そのままでいたくてたまらないと思えたがな』という言葉に、赤口は『黙れといってるだろう』と返しましたが、黙るつもりでしたか」
これも、速やかに返事が来た。両方とも、『黙るつもりはなかった』。
龍左衛門は、櫛田の心理を吟味する前に、ふと河童を見やった。甲羅の人魚が微笑んでいる。
「三つめ。俺の与太話は、面白かったですか」
両方とも、『つまらなかった』。全力で知恵を絞って思いついたのに……と、どうでも良いところで落ちこみかけた。
河童は伝令役に徹している。こんなときこそ愚痴の一つでも聞いて欲しい。いうまでもなく、そんな状況ではない。
ただ、人魚を眺めていると、把握できた。
「これで、結論が出ました」
龍左衛門は、竿を両手で持ち、河童の後頭部を思いきり突いた。
「ぐわぁっ」
頭を櫛田達に投げだす形で、河童はうつ伏せに倒れた。
「臭い芝居だったな、偽河童」
倒れた河童の右かかとを、さらに竿でくじいた。これで、河童だろうがのっぺらぼうだろうが、川に逃げてもそれほど上手くは泳げない。
「な、何を……」
倒れたまま、河童が頭だけ起こして龍左衛門に
「いい加減にしろ。甲羅の人魚がどうして表情を変えるんだ」
頑丈な甲羅に彫りこまれた人魚の表情が、細かく移るはずがない。
普通なら見落とすような、些細な差異だった。河童と何度か相撲を取り、彼の甲羅へのこだわりも知りつくしているからこその気づきであった。
「ぎゃぁーっ」
右櫛田が絶叫した。左櫛田が、血の滴る脇差を右手に下げている。右櫛田は、脇腹を斬られ、一気に血を吹きだしていた。がくっと左膝を桟橋につけ、傷口を抑える。簪が懐から落ちて、ただの小枝になった。いや、戻ったというべきか。
「お前も、目線に注意すべきだったな。河童が倒された一瞬、お前は龍左衛門ではなく河童に注目した。河童もお前と目を合わせた。偽者は一人ではなかったということだ」
「おい、本物の河童をどこにやった」
龍左衛門は、偽河童の左かかともくじいた。無論、小細工も腹ただしい。しかし、その小細工のために仲間をどこかに隠したというのが、一瞬で怒りの上限を振りきっている。
「どちらか一方を殺してしまおう。その方が決断しやすくなるというものだ」
脇差を宙に数回振って、櫛田は血を刃から弾いた。彼女の人生からすれば、龍左衛門よりは河童の方が長いつきあいである。潜伏していた神社でも、親切にしてもらっている。ましてや簪まで偽物を作った。その点、龍左衛門と同じように怒っていても不思議ではない。
「わ、分かった……」
「待て」
偽櫛田が、変身を解かないまま応じようとした時、左冠者が制した。
「お前、河童のいるところに案内しろ。わしと龍左衛門は泳げるからな。河童を助けだせたら、その血でお前の手傷を治す。駄目ならお前はそのまま血を失って死ぬ。偽河童も今すぐ変身を解け。さもなくば殺す」
ことここに至り、偽河童はのっぺらぼうに戻った。手前の忍び宿で射殺されたのと同じような格好で、男なのも共通している。顔がないので歳までははっきりしなかった。
「おい、じっとしてろよ」
釘を刺して、龍左衛門は舟から縄を持ちだした。時間をかけずに、のっぺらぼうの両手両足を縛りつける。
「こやつは私と右冠者で見張っておこう」
櫛田が、縛られたのっぺらぼうを冷たく見おろした。
「念のためだ」
そういって、櫛田は縛られたのっぺらぼうの首筋をごく薄く斬った。血は出るが、手傷というほどの物ではない。これで、万が一のっぺらぼうが縄を解いて櫛田に化けても、簡単にバレてしまうようになった。
「さてと、お前も、いつまでも櫛田様に化けるな」
龍左衛門が命じると、偽櫛田もまたのっぺらぼうに返った。こちらの外見もまた、縛られている方と大して変わらない。斬られた脇腹からはしっかり血が流れ続けており、見誤る心配はなかった。
「その体たらくなら、おかしな真似は出来ないだろう。さあ、案内しろ」
斬られたのっぺらぼうは、黙って水中に飛びこんだ。龍左衛門と左冠者もすぐに追った。
河童は、あっという間に見つかった。桟橋の柱に、両手両足をくくりつけられて気絶している。人間なら、とうに溺れ死んでいても不思議ではなかった。怪我はないようだ。
すぐに縄を解こうとする龍左衛門を、左冠者は軽く肩に触れて止めた。水面を指さしている。龍左衛門はうなずき、のっぺらぼうともどもいったん浮上した。
「場所さえ分かれば、こやつは離しておいた方が良い」
左冠者は、水面に出るなりいった。
河童は怪力で知られる。まして水中で彼を捕縛するとは、不意討ちを差しひくにしても、恐るべき格闘術だ。ゆめゆめ、油断できる相手ではない。
「ああ、その通りだな。おい、上がれ」
斬られたのっぺらぼうは、素直に桟橋に上がった。龍左衛門らも続く。かくして、元偽河童の隣に、縛って置いておくことになった。
龍左衛門は、舟から黒光りするハサミを持ちだした。かなり太い縄でも切れる品で、商売柄いつも備えてあった。
そこからは、単純な作業ですんだ。また川に入り、水中で河童の縄を切ってから肩に担いで一度舟にいく。ハサミを舟に戻し、河童を乗せてから自分も乗った。桟橋では、水面から高すぎて河童を出しにくいからである。
「おい、大丈夫か。起きろ」
河童を揺さぶると、うめきながら目を開けた。
「良かった、無事なようだな」
「うう……面目ない。赤口の最後を眺めてたんだけど、熱くて桟橋の水際に寄ったんだ。そうしたら、いきなり足首を掴まれて……」
「のっぺらぼうがやったんだ。相手は風魔衆だし、仕方ない」
「け、結局どうなったんだ」
「細かい話は、桟橋に上がってからだ。立てるか」
「当たり前だい」
見栄を張って一人で立ったものの、両手で頭を抑えてふらついた。
「無理するな」
龍左衛門は先に舟から出て、河童の手を握った。そうして、軽く引っぱって桟橋に移るのを助けた。
「は、恥ずかしいからやめてくれよ」
「もうやった後だし、大したことないだろ。それより、こいつらをどうにかしなきゃな」
龍左衛門は、縛られたままののっぺらぼう二人に顎をしゃくった。一人は脇腹からの血が止まらず、もう一人は首から血を流している。
「二人して、それぞれ櫛田様とお前に化けていたんだ。顔だけじゃなくて、身体つきから所持品まで自由自在だった」
「そ、そんなの、良く見破られたな」
「お前の人魚様が教えてくれたのさ」
「人魚様」
河童は首をひねった。
「まあ、それは置いて、ここでお前に頼みたい。こいつらの傷を治してくれ」
河童からすれば、つい先刻まで、自分を殴って縛りつけていた相手とその仲間である。そこは、龍左衛門も承知している。とはいえ、長々と同意を促す時間はない。
「良いよ。脇差を貸しておくれよ」
龍左衛門の心配をよそに、河童はあっさりうなずいた。
「すまんが、また頼む」
櫛田も、河童の寛大さに甘える形となった。
脇差を借りて、河童は自分の腕を薄く斬り、流れた血で二人を治した。
「さて。聞きたいことは山ほどあるが、まずはどちらにするかだな」
龍左衛門は、ぽきぽきと拳の骨を鳴らした。
「その前に、忍び宿に誰かいるのか確かめよう」
左冠者が提案した。これについては、無人だとすぐ判明した。同時に、ここの忍び宿も風魔衆に割れていることが明らかとなる。
「まず、俺の質問への回答は、口じゃなくて字にして書いて貰います。短い答えで構いません。筆も墨も紙もありますよね」
武家ならば、旅に際してそれらを所持するのは常識である。二人は等しくうなずいた。
「当然、お二人は背中を向けあってもらいます。万が一にも後ろを見たりしないよう、左右冠者が見張りにつきます」
「心得た」
「うむ」
左右冠者は、こういう場面で飲みこみが早い。
「右冠者がついている方は、回答に右と書き添えて下さい。左冠者は左です」
そうしないと、どちらがどちらの回答か、訳が分からなくなる。当然、二人とも同意した。
「お二人が書いた答えは、河童に俺まで届けさせます」
「おうっ」
河童も、断るはずがない。
「準備が出来たら始めますよ」
筆記の段取りは、即座に終わった。
「じゃあ、一つめ。赤口に、『お前はずっとそのままでいたいのか』っていいましたけど、櫛田様は内心どんな気持ちでしたか、教えて下さい」
すぐに答えが寄せられた。右は、『赤口にも赤口なりの言い分があるのだろう』。左は、『赤口の身になって考えないと糸口が見つからない』。
両方とも似たような発想で、さすがにこれだけでは分からない。まだまだ序の口にすぎない。
「二つめ。『お前の口ぶりだと、そのままでいたくてたまらないと思えたがな』という言葉に、赤口は『黙れといってるだろう』と返しましたが、黙るつもりでしたか」
これも、速やかに返事が来た。両方とも、『黙るつもりはなかった』。
龍左衛門は、櫛田の心理を吟味する前に、ふと河童を見やった。甲羅の人魚が微笑んでいる。
「三つめ。俺の与太話は、面白かったですか」
両方とも、『つまらなかった』。全力で知恵を絞って思いついたのに……と、どうでも良いところで落ちこみかけた。
河童は伝令役に徹している。こんなときこそ愚痴の一つでも聞いて欲しい。いうまでもなく、そんな状況ではない。
ただ、人魚を眺めていると、把握できた。
「これで、結論が出ました」
龍左衛門は、竿を両手で持ち、河童の後頭部を思いきり突いた。
「ぐわぁっ」
頭を櫛田達に投げだす形で、河童はうつ伏せに倒れた。
「臭い芝居だったな、偽河童」
倒れた河童の右かかとを、さらに竿でくじいた。これで、河童だろうがのっぺらぼうだろうが、川に逃げてもそれほど上手くは泳げない。
「な、何を……」
倒れたまま、河童が頭だけ起こして龍左衛門に
「いい加減にしろ。甲羅の人魚がどうして表情を変えるんだ」
頑丈な甲羅に彫りこまれた人魚の表情が、細かく移るはずがない。
普通なら見落とすような、些細な差異だった。河童と何度か相撲を取り、彼の甲羅へのこだわりも知りつくしているからこその気づきであった。
「ぎゃぁーっ」
右櫛田が絶叫した。左櫛田が、血の滴る脇差を右手に下げている。右櫛田は、脇腹を斬られ、一気に血を吹きだしていた。がくっと左膝を桟橋につけ、傷口を抑える。簪が懐から落ちて、ただの小枝になった。いや、戻ったというべきか。
「お前も、目線に注意すべきだったな。河童が倒された一瞬、お前は龍左衛門ではなく河童に注目した。河童もお前と目を合わせた。偽者は一人ではなかったということだ」
「おい、本物の河童をどこにやった」
龍左衛門は、偽河童の左かかともくじいた。無論、小細工も腹ただしい。しかし、その小細工のために仲間をどこかに隠したというのが、一瞬で怒りの上限を振りきっている。
「どちらか一方を殺してしまおう。その方が決断しやすくなるというものだ」
脇差を宙に数回振って、櫛田は血を刃から弾いた。彼女の人生からすれば、龍左衛門よりは河童の方が長いつきあいである。潜伏していた神社でも、親切にしてもらっている。ましてや簪まで偽物を作った。その点、龍左衛門と同じように怒っていても不思議ではない。
「わ、分かった……」
「待て」
偽櫛田が、変身を解かないまま応じようとした時、左冠者が制した。
「お前、河童のいるところに案内しろ。わしと龍左衛門は泳げるからな。河童を助けだせたら、その血でお前の手傷を治す。駄目ならお前はそのまま血を失って死ぬ。偽河童も今すぐ変身を解け。さもなくば殺す」
ことここに至り、偽河童はのっぺらぼうに戻った。手前の忍び宿で射殺されたのと同じような格好で、男なのも共通している。顔がないので歳までははっきりしなかった。
「おい、じっとしてろよ」
釘を刺して、龍左衛門は舟から縄を持ちだした。時間をかけずに、のっぺらぼうの両手両足を縛りつける。
「こやつは私と右冠者で見張っておこう」
櫛田が、縛られたのっぺらぼうを冷たく見おろした。
「念のためだ」
そういって、櫛田は縛られたのっぺらぼうの首筋をごく薄く斬った。血は出るが、手傷というほどの物ではない。これで、万が一のっぺらぼうが縄を解いて櫛田に化けても、簡単にバレてしまうようになった。
「さてと、お前も、いつまでも櫛田様に化けるな」
龍左衛門が命じると、偽櫛田もまたのっぺらぼうに返った。こちらの外見もまた、縛られている方と大して変わらない。斬られた脇腹からはしっかり血が流れ続けており、見誤る心配はなかった。
「その体たらくなら、おかしな真似は出来ないだろう。さあ、案内しろ」
斬られたのっぺらぼうは、黙って水中に飛びこんだ。龍左衛門と左冠者もすぐに追った。
河童は、あっという間に見つかった。桟橋の柱に、両手両足をくくりつけられて気絶している。人間なら、とうに溺れ死んでいても不思議ではなかった。怪我はないようだ。
すぐに縄を解こうとする龍左衛門を、左冠者は軽く肩に触れて止めた。水面を指さしている。龍左衛門はうなずき、のっぺらぼうともどもいったん浮上した。
「場所さえ分かれば、こやつは離しておいた方が良い」
左冠者は、水面に出るなりいった。
河童は怪力で知られる。まして水中で彼を捕縛するとは、不意討ちを差しひくにしても、恐るべき格闘術だ。ゆめゆめ、油断できる相手ではない。
「ああ、その通りだな。おい、上がれ」
斬られたのっぺらぼうは、素直に桟橋に上がった。龍左衛門らも続く。かくして、元偽河童の隣に、縛って置いておくことになった。
龍左衛門は、舟から黒光りするハサミを持ちだした。かなり太い縄でも切れる品で、商売柄いつも備えてあった。
そこからは、単純な作業ですんだ。また川に入り、水中で河童の縄を切ってから肩に担いで一度舟にいく。ハサミを舟に戻し、河童を乗せてから自分も乗った。桟橋では、水面から高すぎて河童を出しにくいからである。
「おい、大丈夫か。起きろ」
河童を揺さぶると、うめきながら目を開けた。
「良かった、無事なようだな」
「うう……面目ない。赤口の最後を眺めてたんだけど、熱くて桟橋の水際に寄ったんだ。そうしたら、いきなり足首を掴まれて……」
「のっぺらぼうがやったんだ。相手は風魔衆だし、仕方ない」
「け、結局どうなったんだ」
「細かい話は、桟橋に上がってからだ。立てるか」
「当たり前だい」
見栄を張って一人で立ったものの、両手で頭を抑えてふらついた。
「無理するな」
龍左衛門は先に舟から出て、河童の手を握った。そうして、軽く引っぱって桟橋に移るのを助けた。
「は、恥ずかしいからやめてくれよ」
「もうやった後だし、大したことないだろ。それより、こいつらをどうにかしなきゃな」
龍左衛門は、縛られたままののっぺらぼう二人に顎をしゃくった。一人は脇腹からの血が止まらず、もう一人は首から血を流している。
「二人して、それぞれ櫛田様とお前に化けていたんだ。顔だけじゃなくて、身体つきから所持品まで自由自在だった」
「そ、そんなの、良く見破られたな」
「お前の人魚様が教えてくれたのさ」
「人魚様」
河童は首をひねった。
「まあ、それは置いて、ここでお前に頼みたい。こいつらの傷を治してくれ」
河童からすれば、つい先刻まで、自分を殴って縛りつけていた相手とその仲間である。そこは、龍左衛門も承知している。とはいえ、長々と同意を促す時間はない。
「良いよ。脇差を貸しておくれよ」
龍左衛門の心配をよそに、河童はあっさりうなずいた。
「すまんが、また頼む」
櫛田も、河童の寛大さに甘える形となった。
脇差を借りて、河童は自分の腕を薄く斬り、流れた血で二人を治した。
「さて。聞きたいことは山ほどあるが、まずはどちらにするかだな」
龍左衛門は、ぽきぽきと拳の骨を鳴らした。
「その前に、忍び宿に誰かいるのか確かめよう」
左冠者が提案した。これについては、無人だとすぐ判明した。同時に、ここの忍び宿も風魔衆に割れていることが明らかとなる。
0
あなたにおすすめの小説
裏長屋のあやかし(お江戸あやかし賞受賞作)
堅他不願@お江戸あやかし賞受賞
歴史・時代
主人公・銅吉(どうきち)は、品川に住む若き戯作者である。彼は、幼いころのお百度参りがきっかけで銭霊(ぜにだま)に取りつかれていた。銭霊は、彼に危機が迫ると、前触れなく程度に応じた銭を与える。
折しも田沼時代の絶頂期。銅吉は売れっ子戯作者として名を馳せているが、ここ数ヶ月は思うように筆が進まない。そこへ、銭霊が十両もの大金を部屋の天井からもたらした。
近年にない大きな危機を悟った銅吉は、少しでも功徳があればと願い、十両をそっくり寄進するべく近所にある寺……松森寺(しょうしんじ)に向かう。そこは、まだ幼かった彼が、流行り病にかかった両親のためにお百度参りをした寺である。しかし、善行虚しく両親は死んだ。松森寺とは、孤児となった彼が、大人になるまで世話になった場所でもあった。
銅吉が、こっそりと十両を寺の裏庭に投げいれようとした時。突然現れた一匹の三毛猫が、小判を一枚くわえた。そして、彼に対して『銭霊に見こまれただけあって、うまそうだねぇ。せいぜい頑張りな』と語り、すぐに消えた。
その日の晩、隣の部屋に住む魚の行商人・太助(たすけ)が部屋まで飲みにきた。銅吉は、彼から幽霊が出ると噂になっている墓場について聞かされる。すなわち新たな作品の題材を予期させられた。
これこそ、銭霊が警告する危機の発端であった。
第11回歴史・時代小説大賞にて『お江戸あやかし賞』を受賞しました! ありがとうございます!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる