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52話 魔剣

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歴史学の授業の後、私は精霊学の授業の為ヴィンス先生と精霊の泉へ向かい、いつものように待っていたアルヴィン様に瞳の件について聞いてみた。

「先程ヴィンス先生から王家の瞳の色について聞いたのですが、アルヴィン様の瞳の色が違うのは精霊の寵愛者だからですか?」
「あぁ、魔剣について聞いたのか、マリアンヌの言う通り俺は寵愛者だったからアレに呪われてない、おかげで瞳は母親と同じ色だ」
「アルヴィン様も魔剣と呼ぶんですね」
「本物見たら気味が悪くて魔剣以外の言葉は出ないと思うぞ、アレを持とうという気になった当時の異世界人の気が知れん」
「本物という事はお城にあるあの剣は偽物ですか?」
「偽物というかキースが作った複製品だから、剣としては国宝で間違いないぞ、バーナードさんに使わせても壊れないしな」
「キースとは当時精霊の寵愛者だった第2王子のキース殿下ですか?」
「そうだ」
「アルヴィン様がお知り合いのように呼ぶから別の人かと思いました」
「キースは知り合いというか家族みたいなものだが、言ってなかったか?」

アルヴィン様が800年以上前の人と家族みたいなものだと言い出したので、私は最初何を言われているのか分からなかった。

「俺がほぼ不老だって話はしたよな?キースも一緒だ、あの魔剣を封印するのに精霊王のエアと契約したから今も生きてるし、封印の番人をしているのもあいつだ」
「あっ!じゃあヴィンス先生が魔王との戦争の事に詳しいのはもしかして」
「キースに聞いたからですよ、言ったでしょう王家に友人がいると」
「いや、まさか当時の方から直接聞いてるなんて思いませんよ、てっきりアルヴィン様の事かと」
「流石に俺も800年前の詳しい事は知らん」
「そうなんですね」

そうして暫く話していると、アルヴィン様が「マリアンヌ、お前ら最近面白い事やってただろう?」と聞いてきた。

「面白い事ですか?心当たりがないのですが」
「女癖の悪い奴がもう女と遊べないようにしてただろ」
「あぁ、ディーンの件ですか」
「そうそれ、それであの異世界人がお前達の中に転生者がいる可能性に気付いたから、近々接触してくるかもしれないぞ」
「あ~…とうとう気付きましたか」

これだけ色々やっていればいつか気付くとは思っていたので構わないのだが、ふとヴィンス先生も居た事を思い出し、先生の方を向くと「私も知ってますから気にしないでいいですよ」と言われてしまった。

「知ってたんですか」
「はい、アルヴィンが普通に話すので」
「アルヴィン様口軽すぎません!?」
「ちゃんと相手は選んでるからいいだろ」
「まぁ、そうですね、それよりエレナ様に転生者だと疑われているのは誰ですか?」
「それならマリアンヌとウィリアムとカイン、それとマリアンヌの友人2人だな」
「えっ、クリスはともかくリリも疑われてるんですか」
「常時認識阻害なんて使ってたら気にもなるだろ」
「あ、確かに」

リリはディーンから素顔を隠す為に認識阻害魔法を使っているが、エレナ様から見たら不審極まりないだろう、しかも悪役令嬢の私と初期ヒロインのクリスの友人とくれば、うん、これは疑われてしまう。
でも恐らく1番怪しまれているのは私だろうなぁ、シナリオから外れ過ぎてるし、かと言って私に敵意を持つような思考誘導をかける人に、いきなり転生者だと明かす気はない。
一応入学前にヒロインとぶつかる可能性は考えていたので、エレナ様の目的を少しでも探れるように頑張ろうと思った。
私が1人意気込んでいると、ヴィンス先生がアルヴィン様に「そういえばティルステアがなぜ異世界人を召喚出来たか分かったのですか?」と聞いた。

「あ~それな、あの魔剣がやらかしたんだよ」
「魔剣ってさっき言ってたやつですか?」
「そうだ、あの魔剣本当に厄介でな、封印してても外に影響が出る時があるんだ、今回のがまさにそれ、召喚の魔法陣は今のティルステアじゃ、どんなに頑張っても発動しないはずだったんだが、魔剣が力を貸して成功させやがった」
「魔法陣はまだあるのですか?」
「いや、俺が記録ごと消しといた、あの時は他国だし後始末だけしたんだが、異世界人を監視し始めてある事が分かった」
「ある事ってなんですか?」
「あいつこっちに召喚される時に魔剣に干渉されててな、顔も歳も本来のものではないらしい」
「顔は知らないので何とも言えませんが、歳もですか?」
「何歳かは知らんが若返ってるのは間違いない、本人が独り言で言ってたしな」
「それはまた…その事カイン様もご存じなのですか?」
「もちろん教えておいた」

アルヴィン様がそう言うと、ヴィンス先生が「最近のアルヴィンは働き者ですね」と言い、それにアルヴィン様は「カインの人使いが荒いんだよ」と言っていた。

「甘えていい身内が出来て嬉しいのでしょう、関わる事を決めたのはアルヴィンなのですから、頑張って下さい」
「分かってるよ」
「カイン様が甘えるんですか」
「俺だからだろうけどな」
「どういう事ですか?」
「アルヴィンは精霊の寵愛者ですから権力に左右されませんし、性格もこんなですから分かりやすいでしょう?カイン殿下にとって、初めて心を許していいと思った大人が叔父だったという事です」
「前から思ってましたけど、カイン様の闇が深い」
「婚約者のアリスのおかげで堕ちてないだけマシだろ」

アルヴィン様の婚約者という言葉でキャシーとアルベール殿下の事を思い出した私は、アルヴィン様に「話が変わるのですが、アルベール殿下の婚約者に思考誘導がかけられてたりはしませんか?」と聞いてみた。

「アルベールの婚約者?そういえば最近アルベールと異世界人の事で仲たがいしてたな、でもあれは思考誘導じゃない」
「そう、ですか…」
「何だ?仲直りでもさせたいのか?」
「いえ、それを決めるのは本人達ですから」

私がそう言うとアルヴィン様に頭を撫でられながら「それでいい」と言われてしまった。
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