転生したら推しが王子のフリしてやってきた。

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80話 隣国の王女2

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入学式が終わった後、去年同様新入生は第1ホールに残り、在校生は各々移動を始めていると、カイン様が私を呼び止めた。

「マリアンヌ、悪いんだけど昼休みに入ったらユーフェミアを私達の所に連れてきてもらっていいかな?」
「構いませんけど、それアルベール殿下と対面する事になりませんか?」

アルベール殿下は冬休み明け頃から、バージル様と共に私達とお昼を食べるようになっていたので、今のお昼のメンバーは、カイン様、アリス、セス様、ウィル、私、アルベール殿下、バージル様と全員生徒会メンバーだ、ちなみにニコラス様はクリスと一緒にいるので別の席だ。
それと、アルベール殿下は元々キャシーの為に別で食べていただけなので、婚約解消したから元に戻ったという訳だが、ウィルは「キャサリン嬢の件から立ち直ったから戻ったんじゃない?」と言っていた。

「ユーフェミアが朝言ってた事を本当に実行するなら、アルの反応を見ておきたいからね、アルは割と思った事が口から出ちゃうから…」
「そういう事ですか、でしたら防音魔法も必要ですか?」
「うん、お願いできるかな、ユーフェミアは他国の王女だから、アルの返事の仕方次第では問題になるからね」
「分かりました、でも問題になるならどうしてユフィ様に許可を出されたんですか?」
「努力する人は嫌いじゃないからね、それに婚約者がいると分かってても諦めきれない程アルが好きで、留学までしてくるんだから応援してあげたいでしょ」
「分かります、ですがそうなるとアルベール殿下の反応が怖いですね」
「何か言っちゃいけない事を言いそうだけど、そこをフォローするのが許可を出した私の責任かな、そういう訳だからウィルもユーフェミアを迎えに行ってね」
「分かりました」
「ウィル!?」

気付いたらウィルが後ろに立っており、どうやら一緒に話を聞いていたみたいだったので驚いた。
ウィルは最初の方から全部聞いていたらしく、それからお昼まで時間を潰し、一緒にユフィ様を迎えに行った。
ユフィ様は私達が迎えに行くと喜んで食堂の席までついてきてくれて、初めて会うアリスとセス様との挨拶を終えたところで、アルベール殿下がやって来た。
私は他の生徒に聞こえないよう防音魔法を使い、ユフィ様がどう出るのか見守った。

ユフィ様が「アル様、お久しぶりです」と声をかけると、アルベール殿下は動きを止めて怪訝な顔をした後「お前誰だ?」と言った。
好きな人に認識されなかったこの時点で、普通のご令嬢なら心が折れるのだが、そこは流石ユフィ様、笑顔で「私ユーフェミア・ユグナーティスですわ」と名乗った。
それを聞いたアルベール殿下は信じられないといった表情で「は?ユフィ?お前が!?」と言った後、更に何か言おうとしたのをカイン様が「アル、彼女はユーフェミア王女で間違いないよ」と言って遮り、それ以上言わせなかった。

それからしばらくは皆で普通に食事をし、カイン様がユグナーティス王国の事を聞くと、最近始めた政策から特産や観光のプレゼン、隣の連合国との関係まで分かりやすく教えてくれたので驚いた。
私が、ユフィ様ってカイン様並みに出来る子なんじゃないだろうか、と思っていると、ユフィ様がアルベール殿下に声をかけた。

「アル様」
「何?」
「私と結婚して下さい」
「………え、何で?」
「私アル様の事ずっとお慕いしてましたの、私を選んで下さいませんか?」

ユフィ様が真剣な顔でそう言うと、アルベール殿下は眉間にしわを寄せて「まずその雪だるまみたいな体型を何とかしてから言ったらどうだ」と言い出した。
アルベール殿下の発言にアリスが「ちょっと殿下!」と言ったが、続いてユフィ様が「では痩せたら結婚して下さいますのね」と笑顔で言ったのでアリスは口を閉じた。

「なぜそうなる…」
「だって体型を何とかすればよろしいのでしょう?」
「確かにそうは言ったが、いや、無理だ」
「なぜです!心に決めた方でもいらっしゃるのですか!?」
「いや…そうではないが」
「なら諦めませんわ!私毎日でも告白しますから!」
「いや、だから…」

そんなやり取りを暫く続けた結果、アルベール殿下が押し負け「もういい、好きにしろ」と言った。

「はい、絶対私を好きにさせてみせますわ!」
「はぁ…その自信はどこからくるんだ」
「だってアル様私の体型を、雪だるまだなんて可愛い表現で言ってくれたじゃないですか」
「ユーフェミア、雪だるまも割と酷いと思うよ」
「そうですか?カイン様はそう言いますけど私自国では白豚王女とか呼ばれてますのよ」

ユフィ様の返事にその場にいた全員が驚き、アリスが「あの、ユーフェミア様、流石に面と向かってはそんな事言われませんよね?」と確認すると「お茶会等でご令嬢に囲まれれば普通に言われますわよ」と答えた。
それを聞いたアルベール殿下が「お前王女だろう、それでいいのか?」と聞くと、ユフィ様は「私は両親とお姉様達に可愛がられている自覚があります、そんな私が太っている事を嘲笑されているだなんて知れたら、言った方達が処分されてしまうではないですか、そうなれば臣下との軋轢も出てきます、それは困るので問題にしてませんわ」と言った。

「じゃあさっきの事は聞かなかった事にするね」
「カイン様、もしこちらで私の事をそう呼ぶ方が出てきても、聞かなかった事にして下さいね」
「それは出来ないかな、少なくとも私が在学中は呼ばせないよ」
「あら、では早く痩せなくてはいけませんわね、アル様応援して下さい」
「何で俺なんだ」
「アル様に応援してもらったら頑張れるからに決まっているではないですか」

それを聞いてアルベール殿下が渋々「まぁ、頑張れよ」と言うと、ユフィ様はとても嬉しそうに笑っていた。
その日は、最終的にアルベール殿下に言う事を聞いてもらっている、ユフィ様の押しの強さを実感した日となった。
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