『「貴様の命令では犬死にだ」 50歳のイージス艦長、昭和(1935)に転生。非効率な精神論を殴り飛ばし、日本を魔改造する』

月神世一

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EP 28

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深海の「耳」
​昭和17年秋。
築地の「掃き溜め」研究所の地下室。
そこには、奇妙な集団が集められていた。
​全員、目隠しをしているわけではないが、サングラスをかけたり、白杖を持っていたりする。
彼らは、盲学校の教師、マッサージ師、あるいは邦楽の演奏家たち――視覚に障害を持つ民間人たちだった。
​「……ようこそ」
坂上真一は、彼らの前に立ち、静かに語りかけた。
「突然の招集、申し訳ない。
だが、貴官らには、常人にはない『才能(スキル)』がある」
​坂上は、一台の機械を指差した。
新型の「水中聴音機(パッシブ・ソナー)」だ。
当時のソナーは、機械が自動で敵を探知するものではない。
ヘッドホンから聞こえる微かな「音」を聞き、それがクジラなのか、波の音なのか、あるいは敵潜水艦のスクリュー音なのかを、人間の耳で判別する職人芸が必要だった。
​「海軍の兵士たちは、目がいい。だが、耳は素人だ」
坂上は言った。
「貴官らの『耳』を貸してほしい。
海の中の雑音の中から、鉄の塊が立てる、微かな殺意の音を聞き分けてほしい」
​「……私たちは、軍人ではありません」
一人の老人が、穏やかに言った。
「人を殺す手助けは、したくありません」
​「人を殺すためではない」
坂上は、即座に答えた。
「人を『守る』ためだ。
今、海の上では、武器を持たない輸送船の船員たちが、予告なく魚雷で沈められている。
……彼らが逃げるための『目』に、なってやってくれないか」
​老人は、しばらく沈黙し、やがて頷いた。
「……音を聞くだけなら、お手伝いできるかもしれません」
​こうして、異色の「ソナー部隊」が結成された。
彼らは、海軍の軍艦には乗れない。
だが、東京の司令室に詰め、無線で送られてくる「生の海中音」をリアルタイムで解析する、遠隔聴音班(リモート・ソナー・チーム)として機能することになった。
​数週間後。
最初の成果が出た。
​「……聞こえます」
ヘッドホンをした盲目の青年が、手を挙げた。
「方位2-3-0。
……ザザッという波音の裏に、規則的な金属音。
……スクリューの回転数、毎分80。
クジラじゃありません。……人工物です」
​「……位置特定!」
薫が海図にピンを打つ。
「伊豆諸島沖、輸送船団の進路上です!」
​「大和CICへ転送!」
坂上が叫ぶ。
「付近の哨戒機を急行させろ!
海防艦に『爆雷投射』を指示!」
​現場の海域。
まだ何も見えない海面に、突如として海防艦から爆雷が投下される。
ドカァァァン!
巨大な水柱。
やがて、海面に重油と、木片が浮き上がってきた。
米潜水艦「グロウラー」、撃沈。
輸送船団を待ち伏せしていた狼が、攻撃前に仕留められた瞬間だった。
​「……聞こえた」
青年が、少しだけ誇らしげにヘッドホンを直した。
「……船員さんたちの心臓の音は、守れましたか?」
​「ああ」
坂上は、青年の肩に手を置いた。
「完璧だ。貴官の『耳』は、100門の大砲より価値がある」
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