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第三章 大和
EP 29
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ソロモンの飢餓
昭和17年冬。
日本本土周辺の守りは、坂上の海防艦とソナー部隊によって、辛うじて維持されていた。
だが、戦線は広がりすぎていた。
南太平洋、ガダルカナル島。
米軍の本格的な反攻作戦が始まっていた。
日本軍は、同島に飛行場を建設しようとしたが、米海兵隊に上陸を許し、泥沼の消耗戦に突入していた。
「……餓死者、続出」
築地の研究所で、薫が悲痛な報告書を読み上げる。
「ガダルカナルへの輸送船は、米航空機と魚雷艇に阻まれ、到達率わずか10%。
……兵士たちは、戦う前に、飢えとマラリアで死んでいます」
「……『餓島(ガとう)』か」
坂上は、苦虫を噛み潰したような顔で海図を見た。
史実通りの地獄が、そこにはあった。
本土からの補給線を守ることはできても、最前線の制空権を奪われた場所への輸送は、自殺行為だ。
「……撤退だ」
坂上は断言した。
「ガダルカナルは放棄する。
これ以上、あそこにリソースを注ぎ込むな」
「でも、陸軍は『絶対死守』と……」
「メンツのために兵を殺すな!」
坂上は、マイクを掴んだ。
大和CIC経由で、山本五十六、そして陸軍参謀本部へ、直接回線を開く。
「……坂上だ。
ガダルカナルへの増援輸送を、即時中止しろ。
駆逐艦を輸送(鼠輸送)に使うな。
……貴重な『護衛戦力』を、すり潰す気か」
『貴様! 統帥権干犯だぞ!』
陸軍参謀の怒声が響く。
『皇軍に撤退の二文字はない!
あと一回、あと一回総攻撃をかければ、米軍を海に追い落とせる!』
「……その『あと一回』で、何人が死んだ?」
坂上の声は、氷点下だった。
「いいか、よく聞け。
俺の計算では、あと2週間で、現地の生存率はゼロになる。
……全滅だ。
全滅したら、次はどうする? ニューギニアか? ラバウルか?
……ズルズルと戦線を広げ、そのたびに補給線を食い荒らされる。
それが、アメリカの思う壺だ」
坂上は、言葉を切った。
そして、冷酷な提案をした。
「……『ケ号作戦』を発動する」
「ケ号作戦?」
「撤退作戦だ。
ただし、ただ逃げるのではない。
大和のCICと、航空隊の全力を挙げて『撤退の道』を作る。
……兵士を、一兵残らず連れ帰る。
彼らは、次の『絶対国防圏』を守るための、貴重なリソースだ」
史実では、ガダルカナルからの撤退は「転進」と言い換えられ、多くの犠牲を出した末の、惨めな逃走だった。
だが坂上は、これを「戦略的再配置」として、システム的に実行しようとしていた。
「……見栄を張るな。
負けを認めろ。
そして、負けの中から『未来』を拾え」
坂上真一の介入により、ガダルカナルの地獄は、史実よりも早く、そして「組織的な撤退」という形で幕を閉じようとしていた。
だが、それは日本軍にとって、開戦以来初めての明確な「領土の喪失」であり、
「後退戦(リトリート)」という、最も難しく、苦しいフェーズの始まりでもあった。
昭和17年冬。
日本本土周辺の守りは、坂上の海防艦とソナー部隊によって、辛うじて維持されていた。
だが、戦線は広がりすぎていた。
南太平洋、ガダルカナル島。
米軍の本格的な反攻作戦が始まっていた。
日本軍は、同島に飛行場を建設しようとしたが、米海兵隊に上陸を許し、泥沼の消耗戦に突入していた。
「……餓死者、続出」
築地の研究所で、薫が悲痛な報告書を読み上げる。
「ガダルカナルへの輸送船は、米航空機と魚雷艇に阻まれ、到達率わずか10%。
……兵士たちは、戦う前に、飢えとマラリアで死んでいます」
「……『餓島(ガとう)』か」
坂上は、苦虫を噛み潰したような顔で海図を見た。
史実通りの地獄が、そこにはあった。
本土からの補給線を守ることはできても、最前線の制空権を奪われた場所への輸送は、自殺行為だ。
「……撤退だ」
坂上は断言した。
「ガダルカナルは放棄する。
これ以上、あそこにリソースを注ぎ込むな」
「でも、陸軍は『絶対死守』と……」
「メンツのために兵を殺すな!」
坂上は、マイクを掴んだ。
大和CIC経由で、山本五十六、そして陸軍参謀本部へ、直接回線を開く。
「……坂上だ。
ガダルカナルへの増援輸送を、即時中止しろ。
駆逐艦を輸送(鼠輸送)に使うな。
……貴重な『護衛戦力』を、すり潰す気か」
『貴様! 統帥権干犯だぞ!』
陸軍参謀の怒声が響く。
『皇軍に撤退の二文字はない!
あと一回、あと一回総攻撃をかければ、米軍を海に追い落とせる!』
「……その『あと一回』で、何人が死んだ?」
坂上の声は、氷点下だった。
「いいか、よく聞け。
俺の計算では、あと2週間で、現地の生存率はゼロになる。
……全滅だ。
全滅したら、次はどうする? ニューギニアか? ラバウルか?
……ズルズルと戦線を広げ、そのたびに補給線を食い荒らされる。
それが、アメリカの思う壺だ」
坂上は、言葉を切った。
そして、冷酷な提案をした。
「……『ケ号作戦』を発動する」
「ケ号作戦?」
「撤退作戦だ。
ただし、ただ逃げるのではない。
大和のCICと、航空隊の全力を挙げて『撤退の道』を作る。
……兵士を、一兵残らず連れ帰る。
彼らは、次の『絶対国防圏』を守るための、貴重なリソースだ」
史実では、ガダルカナルからの撤退は「転進」と言い換えられ、多くの犠牲を出した末の、惨めな逃走だった。
だが坂上は、これを「戦略的再配置」として、システム的に実行しようとしていた。
「……見栄を張るな。
負けを認めろ。
そして、負けの中から『未来』を拾え」
坂上真一の介入により、ガダルカナルの地獄は、史実よりも早く、そして「組織的な撤退」という形で幕を閉じようとしていた。
だが、それは日本軍にとって、開戦以来初めての明確な「領土の喪失」であり、
「後退戦(リトリート)」という、最も難しく、苦しいフェーズの始まりでもあった。
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