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第三章 模擬対抗戦
EP 1
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地獄のサバイバル、開幕!
「えー、今日から一週間、教室での授業は中止だ」
朝のホームルーム。
担任のクルーガ先生は、いつも以上にどんよりとした顔で教卓に手をついた。
その手には、分厚いプリントの束が握られている。
「お前らには、学校の裏手に広がる『魔の森(演習エリア)』にて、サバイバル模擬戦を行ってもらう」
教室がざわめく。
サバイバル。響きは楽しそうだが、場所が『魔の森』となると話は別だ。あそこは低級とはいえ魔物が生息し、夜には気温が氷点下近くまで下がる過酷な環境だ。
「ルールを説明する。……よく聞けよ、特にリアン」
先生が俺を名指しする。失敬な、俺はいつだってルール(の抜け穴を探すの)に忠実だぞ。
【特別演習:フラッグ戦】
期間: 一週間。
勝利条件: 敵陣地にある『軍旗』を奪取すること。
禁止事項: 攻撃魔法および固有スキルの対人使用禁止。(※環境への干渉はグレーゾーンとする)
支給品: 最低限の水と食料(カンパン)、テント、そして『ランダム物資ボックス』一つ。
「今回は『個の武力』ではなく、『集団戦術』と『兵站管理』を学ぶのが目的だ。よって、魔法でドカンと解決するのは禁止だ。知恵と体力で生き残れ」
なるほど。
魔法禁止ということは、イグニスのブレスやクラウスの雷撃でゴリ押しできないということか。
むしろ、元地球人でキャンプ知識のある俺に有利なルールだ。
「チーム分けは以下の通りだ。文句は受け付けん」
先生が黒板にメンバーを書き出した。
【A班(赤チーム)】リーダー:クラウス
メンバー: キャルル、キュララ、リリス、他モブ生徒数名
【B班(青チーム)】リーダー:リアン
メンバー: イグニス、ルナ、リーザ、他モブ生徒数名
「……おいおい、ずいぶんと極端な分け方だな」
俺は対戦相手となるA班のメンツを見た。
正統派騎士のクラウス、神速のキャルル、広域索敵ができるキュララ、そして権力者のリリス。
バランスがいい。特にキャルルの機動力と、キュララの「空からの目」は脅威だ。
対して、こっちは……。
「ヒャッハー! 暴れるぜぇ!」(脳筋破壊神)
「森ですかぁ? お花さんとお話できますねぇ」(天然災害エルフ)
「お弁当……カンパン……お腹空きました……」(燃費最悪の貧乏姫)
……カオスだ。
火力と特殊能力には秀でているが、燃費が悪く、制御不能な連中ばかりだ。
「それでは、現地へ移動する。……死ぬなよ」
クルーガ先生の不吉な送り言葉と共に、俺たちの地獄の一週間が幕を開けた。
◇
『魔の森』、B班(青チーム)拠点。
鬱蒼とした木々に囲まれた開けた場所に、俺たちはテントを設営していた。
「よし、作戦会議だ」
俺は焚き火(火打ち石で苦労してつけた)を囲み、メンバーを見渡した。
「敵はクラウス率いるA班だ。奴らは間違いなく『正攻法』で来る」
「正攻法って?」
カンパンを齧りながらイグニスが首を傾げる。
「拠点を固め、見張りを置き、キャルルを遊撃に出してこちらの出方を窺う……教科書通りの戦術だ。堅実だが、面白みはない」
「ふむ。じゃあ俺様が正面から殴り込みに行けばいいんだな?」
「馬鹿野郎。魔法禁止だぞ。数で囲まれてボコボコにされて終わりだ」
俺はイグニスを制止し、地図を広げた。
「今回の勝負の鍵は二つ。『情報』と『食料』だ」
今回の支給食料は極めて少ない。
育ち盛りの(しかも燃費の悪い亜人の)俺たちが一週間生き延びるには、到底足りない量だ。
クラウス班も同じ条件のはず。
「敵も腹が減れば判断力が鈍る。結束も乱れる。……そこを突く」
俺は視線を、隣でカンパンの袋を逆さにして振っている少女に向けた。
「……あ、あれぇ? もう空っぽですわ? 穴が開いてましたの?」
「お前が食ったんだよ、リーザ」
開始一時間で、三日分の食料を平らげた王女。
彼女を見て、俺の脳裏に悪魔的な作戦が閃いた。
「……ふっ。使えるな」
「へ? 何がですの?」
「リーザ。お前、もっと腹いっぱい食いたいか?」
その言葉に、リーザの瞳が猛獣のように輝いた。
「食いたいですわ!! 木の皮を齧る前に、まともな食事がしたいですわ!!」
「そうか。なら、クラウスのところへ行って来い」
「へ?」
俺はニヤリと笑い、白いハンカチ(降伏旗)を彼女に持たせた。
「敵の陣地には、まだ手付かずの食料が山ほどあるはずだ。……行って、食い尽くしてこい」
「!!」
リーザがゴクリと喉を鳴らす。
彼女にとって、それは「敵陣突入」ではなく「食べ放題会場への招待」に聞こえたらしい。
「分かりましたわリアン様! 私、人質でも捕虜でも何でもなります! お腹いっぱい食べてみせますわ!」
「話が早くて助かる。……いいか、お前は『人間兵器(フード・デストロイヤー)』だ。クラウスの騎士道精神を逆手に取り、奴らの兵糧を内側から食い破れ」
「任せてください! 私の胃袋はブラックホールですわ!」
敬礼するリーザ。
頼もしいが、これほど情けない特攻隊員もいないだろう。
「ルナは川の様子を見ていてくれ。イグニスは薪拾いだ。俺は……夜に向けて『仕込み』をする」
俺は支給された『ランダム物資ボックス』を開けた。
中に入っていたのは、数本のビンと、ガラクタのような工具セット。
……十分だ。これだけあれば、魔法がなくとも「花火」くらいは作れる。
「さて、クラウス。君の綺麗な騎士道が、飢えた野獣(リーザ)を前にどこまで通用するか……見物だな」
森の向こう、赤チームの陣地がある方角を見据え、俺は静かに笑った。
サバイバルとは、綺麗事ではない。
泥を啜り、相手を蹴落とした者が勝つ。それを優等生たちに教えてやろう。
「えー、今日から一週間、教室での授業は中止だ」
朝のホームルーム。
担任のクルーガ先生は、いつも以上にどんよりとした顔で教卓に手をついた。
その手には、分厚いプリントの束が握られている。
「お前らには、学校の裏手に広がる『魔の森(演習エリア)』にて、サバイバル模擬戦を行ってもらう」
教室がざわめく。
サバイバル。響きは楽しそうだが、場所が『魔の森』となると話は別だ。あそこは低級とはいえ魔物が生息し、夜には気温が氷点下近くまで下がる過酷な環境だ。
「ルールを説明する。……よく聞けよ、特にリアン」
先生が俺を名指しする。失敬な、俺はいつだってルール(の抜け穴を探すの)に忠実だぞ。
【特別演習:フラッグ戦】
期間: 一週間。
勝利条件: 敵陣地にある『軍旗』を奪取すること。
禁止事項: 攻撃魔法および固有スキルの対人使用禁止。(※環境への干渉はグレーゾーンとする)
支給品: 最低限の水と食料(カンパン)、テント、そして『ランダム物資ボックス』一つ。
「今回は『個の武力』ではなく、『集団戦術』と『兵站管理』を学ぶのが目的だ。よって、魔法でドカンと解決するのは禁止だ。知恵と体力で生き残れ」
なるほど。
魔法禁止ということは、イグニスのブレスやクラウスの雷撃でゴリ押しできないということか。
むしろ、元地球人でキャンプ知識のある俺に有利なルールだ。
「チーム分けは以下の通りだ。文句は受け付けん」
先生が黒板にメンバーを書き出した。
【A班(赤チーム)】リーダー:クラウス
メンバー: キャルル、キュララ、リリス、他モブ生徒数名
【B班(青チーム)】リーダー:リアン
メンバー: イグニス、ルナ、リーザ、他モブ生徒数名
「……おいおい、ずいぶんと極端な分け方だな」
俺は対戦相手となるA班のメンツを見た。
正統派騎士のクラウス、神速のキャルル、広域索敵ができるキュララ、そして権力者のリリス。
バランスがいい。特にキャルルの機動力と、キュララの「空からの目」は脅威だ。
対して、こっちは……。
「ヒャッハー! 暴れるぜぇ!」(脳筋破壊神)
「森ですかぁ? お花さんとお話できますねぇ」(天然災害エルフ)
「お弁当……カンパン……お腹空きました……」(燃費最悪の貧乏姫)
……カオスだ。
火力と特殊能力には秀でているが、燃費が悪く、制御不能な連中ばかりだ。
「それでは、現地へ移動する。……死ぬなよ」
クルーガ先生の不吉な送り言葉と共に、俺たちの地獄の一週間が幕を開けた。
◇
『魔の森』、B班(青チーム)拠点。
鬱蒼とした木々に囲まれた開けた場所に、俺たちはテントを設営していた。
「よし、作戦会議だ」
俺は焚き火(火打ち石で苦労してつけた)を囲み、メンバーを見渡した。
「敵はクラウス率いるA班だ。奴らは間違いなく『正攻法』で来る」
「正攻法って?」
カンパンを齧りながらイグニスが首を傾げる。
「拠点を固め、見張りを置き、キャルルを遊撃に出してこちらの出方を窺う……教科書通りの戦術だ。堅実だが、面白みはない」
「ふむ。じゃあ俺様が正面から殴り込みに行けばいいんだな?」
「馬鹿野郎。魔法禁止だぞ。数で囲まれてボコボコにされて終わりだ」
俺はイグニスを制止し、地図を広げた。
「今回の勝負の鍵は二つ。『情報』と『食料』だ」
今回の支給食料は極めて少ない。
育ち盛りの(しかも燃費の悪い亜人の)俺たちが一週間生き延びるには、到底足りない量だ。
クラウス班も同じ条件のはず。
「敵も腹が減れば判断力が鈍る。結束も乱れる。……そこを突く」
俺は視線を、隣でカンパンの袋を逆さにして振っている少女に向けた。
「……あ、あれぇ? もう空っぽですわ? 穴が開いてましたの?」
「お前が食ったんだよ、リーザ」
開始一時間で、三日分の食料を平らげた王女。
彼女を見て、俺の脳裏に悪魔的な作戦が閃いた。
「……ふっ。使えるな」
「へ? 何がですの?」
「リーザ。お前、もっと腹いっぱい食いたいか?」
その言葉に、リーザの瞳が猛獣のように輝いた。
「食いたいですわ!! 木の皮を齧る前に、まともな食事がしたいですわ!!」
「そうか。なら、クラウスのところへ行って来い」
「へ?」
俺はニヤリと笑い、白いハンカチ(降伏旗)を彼女に持たせた。
「敵の陣地には、まだ手付かずの食料が山ほどあるはずだ。……行って、食い尽くしてこい」
「!!」
リーザがゴクリと喉を鳴らす。
彼女にとって、それは「敵陣突入」ではなく「食べ放題会場への招待」に聞こえたらしい。
「分かりましたわリアン様! 私、人質でも捕虜でも何でもなります! お腹いっぱい食べてみせますわ!」
「話が早くて助かる。……いいか、お前は『人間兵器(フード・デストロイヤー)』だ。クラウスの騎士道精神を逆手に取り、奴らの兵糧を内側から食い破れ」
「任せてください! 私の胃袋はブラックホールですわ!」
敬礼するリーザ。
頼もしいが、これほど情けない特攻隊員もいないだろう。
「ルナは川の様子を見ていてくれ。イグニスは薪拾いだ。俺は……夜に向けて『仕込み』をする」
俺は支給された『ランダム物資ボックス』を開けた。
中に入っていたのは、数本のビンと、ガラクタのような工具セット。
……十分だ。これだけあれば、魔法がなくとも「花火」くらいは作れる。
「さて、クラウス。君の綺麗な騎士道が、飢えた野獣(リーザ)を前にどこまで通用するか……見物だな」
森の向こう、赤チームの陣地がある方角を見据え、俺は静かに笑った。
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