​【元三ツ星シェフの裏稼業】転生した最強の少年は、ヤバすぎるクラスメイト(竜・天使・人魚)の胃袋を料理で掌握し、学園の影の支配者となる

月神世一

文字の大きさ
24 / 44
第三章 模擬対抗戦

EP 4

眠れぬ夜、紅蓮の嫌がらせ
​魔の森に、二日目の夜が訪れた。
A班(赤チーム)の陣地は、昨夜とは打って変わって、重苦しい空気に包まれていた。
​「……お腹、空いた」
​誰かの呟きが、静寂に響く。
食料庫は空っぽ。昼間、森で木の実やキノコを探したが、この時期の魔の森にはめぼしい食料がほとんどない。
飢餓感が、生徒たちの精神をジリジリと削っていく。
​「……くっ。耐えるんだ」
​クラウスは焚き火の前で、空腹で鳴り止まない腹を押さえながら、部下たちを鼓舞していた。
​「人間、水さえあれば数日は生きられる。明日の朝、森の奥へ狩りに行こう。それまでの辛抱だ」
「でもぉ……私、もう力が出ないよぉ……」
「お肌が荒れちゃう……」
​キャルルとキュララが地面にへたり込む。
そんな中、捕虜用テントの方からは――
​『むにゃむにゃ……おかわり……ステーキでお願いしますわ……』
『グォー……プピー……』
​満腹のリーザによる、幸せそうな寝言と大いびきが聞こえてくる。
これが一番の精神攻撃かもしれない。
​「あの女……! 後で絶対、私のマカロン代を請求してやる……!」
​リリスが血走った目でテントを睨みつけた、その時だった。
​ヒュンッ!!
​夜の闇を切り裂く風切り音。
何かが、焚き火のすぐ横の地面に突き刺さった。
​「え?」
​次の瞬間。
​ドゴォォォォォンッ!!!
​「きゃあああああ!?」
「うわあぁぁぁ!?」
​爆音と共に、赤黒い炎が巻き上がった。
魔法ではない。火薬による爆発だ。土と火の粉が舞い上がり、クラウスたちの顔にかかる。
​「て、敵襲ーーッ!!」
​クラウスが剣を抜いて叫ぶ。
全員が飛び起き、臨戦態勢をとる。
​「どこだ!? どこから撃ってきた!?」
​キュララがドローンを飛ばそうとするが、暗闇の森の中、木々に遮られて敵影は見えない。
​「クラウスくん! あれ見て!」
​キャルルが地面に突き刺さった残骸を指差す。
それは、先端に小型の筒が括り付けられた矢だった。
​「……火薬付きの矢、か」
​クラウスはギリリと歯噛みした。
​「魔法禁止のルールを逆手に取り、科学の力で爆撃してくるとは……! 卑劣なり、リアン!」
​「ふふふ……。褒め言葉として受け取っておくよ」
​森の奥から、拡声器(これも自作)を通したリアンの声が響いてきた。
​『やあ、A班の諸君。腹の具合はどうだい? こちらは今、イグニスが焼いた猪肉のステーキを食べているところさ』
​「き、貴様ぁぁぁ!」
​『おっと、怒りでカロリーを消費しない方がいい。……今夜は長いぞ?』
​その言葉の意味を、クラウスたちが理解するのに時間はかからなかった。
​   ◇
​一時間後。
ようやく警戒を解き、ウトウトし始めた頃。
​ドゴォォォォォンッ!!!
​「ひぃっ!?」
​再び、陣地の端に着弾。
飛び起きる生徒たち。
​さらに一時間後。
まどろみかけた意識を、爆音が叩き起こす。
​ドゴォォォォォンッ!!!
​「もう嫌ぁぁぁ!」
「寝かせてよぉぉぉ!」
​不規則なタイミング。
予測できない着弾地点。
いつ爆発するかわからない恐怖。
​これが、リアンの仕掛けた『睡眠妨害(スリープ・ハラスメント)』だ。
ただでさえ空腹で神経が過敏になっている彼らに、休息を与えることを許さない。
​「くそっ……! 出てこいリアン! 正々堂々と戦え!」
​クラウスが森に向かって叫ぶが、返ってくるのはフクロウの鳴き声だけ。
そして、彼らが諦めて目を閉じると――
​ドゴォォォォォンッ!!!
​「あがぁぁぁぁ!!」
​   ◇
​森の中、木の上。
俺(リアン)は、あくびをしながら次の矢の準備をしていた。
隣では、イグニスが呆れた顔で肉を齧っている。
​「なぁ兄貴。これ、地味すぎねぇか? 俺様なら殴り込んで終わらせるぜ?」
「分かってないな、イグニス。これは『調理』で言うところの『低温調理』だ」
​俺は矢尻に特製の火薬(癇癪玉の強化版)をセットしながら笑った。
​「空腹と睡眠不足。この二つが重なれば、人間の判断能力は泥酔状態と同じレベルまで落ちる。……明日の朝には、彼らは立っているのもやっとの『ゾンビ』になっているはずだ」
「ひえぇ……。お前、本当に敵に回したくねぇな」
「さあ、次の一発だ。……朝まで踊ってもらおうか」
​ヒュッ。
放たれた矢が、美しい放物線を描いてA班の陣地へ吸い込まれていく。
​爆音と悲鳴をBGム(バックグラウンドミュージック)に、俺は心地よい満足感を味わっていた。
勝負は、剣を交える前に決まるのだ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

ダンジョン銭湯 ~鎧は脱いでお入りください~

こまちゃも
ファンタジー
祖父さんから受け継いだ銭湯ごと、ダンジョンに転移してしまった俺。 だがそこは、なぜか”完全安全地帯”だった。 風呂に入れば傷は癒え、疲れも吹き飛ぶ。 噂を聞きつけた冒険者たちが集まり、宿やギルドまでできていく。 俺には最強の武器もスキルもないがーー最強のヒーラーや個性豊かな常連たちに囲まれながら、俺は今日も湯を沸かす。 銭湯を中心に、ダンジョンの中に小さな拠点が広がっていく。 ――ダンジョン銭湯、本日も営業中。

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。

妖精のお気に入り

豆狸
ファンタジー
羽音が聞こえる。無数の羽音が。 楽しげな囀(さえず)りも。 ※略奪女がバッドエンドを迎えます。自業自得ですが理不尽な要素もあります。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

この状況には、訳がある

兎田りん
ファンタジー
 どうしてこんなことになったのか…    ファルムファス・メロディアスは頭を抱えていた。  居なくてもいい場所に、しなくてもいい装いをしている事の居心地の悪さといったら!  俺の関係ない所でやってくれ!  ファルムファスの握りしめた拳の行方はどこに ○更新状況○ 2023/2/15投稿開始 毎週水曜20時頃次回投稿の予定

前世は厳しい家族とお茶を極めたから、今世は優しい家族とお茶魔法極めます

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 代々続くお茶の名家、香坂家。そこに生まれ、小さな時から名家にふさわしくなるように厳しく指導を受けてきた香坂千景。  常にお茶のことを優先し、名家に恥じぬ実力を身につけた彼女は齢六十で人間国宝とまで言われる茶人となった。  しかし、身体は病魔に侵され、家族もおらず、また家の定める人にしか茶を入れてはならない生活に嫌気がさしていた。  そして、ある要人を持て成す席で、病状が悪化し命を落としてしまう。  そのまま消えるのかと思った千景は、目が覚めた時、自分の小さくなった手や見たことのない部屋、見たことのない人たちに囲まれて驚きを隠せなかった。  そこで周りの人達から公爵家の次女リーリフィアと呼ばれて……。  これは、前世で名家として厳しく指導を受けお茶を極めた千景が、異世界で公爵家次女リーリフィアとしてお茶魔法を極め優しい家族と幸せになるお話……。   ーーーーーーーー  のんびりと書いていきます。  よかったら楽しんでいただけると嬉しいです。