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第三章 模擬対抗戦
EP 4
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眠れぬ夜、紅蓮の嫌がらせ
魔の森に、二日目の夜が訪れた。
A班(赤チーム)の陣地は、昨夜とは打って変わって、重苦しい空気に包まれていた。
「……お腹、空いた」
誰かの呟きが、静寂に響く。
食料庫は空っぽ。昼間、森で木の実やキノコを探したが、この時期の魔の森にはめぼしい食料がほとんどない。
飢餓感が、生徒たちの精神をジリジリと削っていく。
「……くっ。耐えるんだ」
クラウスは焚き火の前で、空腹で鳴り止まない腹を押さえながら、部下たちを鼓舞していた。
「人間、水さえあれば数日は生きられる。明日の朝、森の奥へ狩りに行こう。それまでの辛抱だ」
「でもぉ……私、もう力が出ないよぉ……」
「お肌が荒れちゃう……」
キャルルとキュララが地面にへたり込む。
そんな中、捕虜用テントの方からは――
『むにゃむにゃ……おかわり……ステーキでお願いしますわ……』
『グォー……プピー……』
満腹のリーザによる、幸せそうな寝言と大いびきが聞こえてくる。
これが一番の精神攻撃かもしれない。
「あの女……! 後で絶対、私のマカロン代を請求してやる……!」
リリスが血走った目でテントを睨みつけた、その時だった。
ヒュンッ!!
夜の闇を切り裂く風切り音。
何かが、焚き火のすぐ横の地面に突き刺さった。
「え?」
次の瞬間。
ドゴォォォォォンッ!!!
「きゃあああああ!?」
「うわあぁぁぁ!?」
爆音と共に、赤黒い炎が巻き上がった。
魔法ではない。火薬による爆発だ。土と火の粉が舞い上がり、クラウスたちの顔にかかる。
「て、敵襲ーーッ!!」
クラウスが剣を抜いて叫ぶ。
全員が飛び起き、臨戦態勢をとる。
「どこだ!? どこから撃ってきた!?」
キュララがドローンを飛ばそうとするが、暗闇の森の中、木々に遮られて敵影は見えない。
「クラウスくん! あれ見て!」
キャルルが地面に突き刺さった残骸を指差す。
それは、先端に小型の筒が括り付けられた矢だった。
「……火薬付きの矢、か」
クラウスはギリリと歯噛みした。
「魔法禁止のルールを逆手に取り、科学の力で爆撃してくるとは……! 卑劣なり、リアン!」
「ふふふ……。褒め言葉として受け取っておくよ」
森の奥から、拡声器(これも自作)を通したリアンの声が響いてきた。
『やあ、A班の諸君。腹の具合はどうだい? こちらは今、イグニスが焼いた猪肉のステーキを食べているところさ』
「き、貴様ぁぁぁ!」
『おっと、怒りでカロリーを消費しない方がいい。……今夜は長いぞ?』
その言葉の意味を、クラウスたちが理解するのに時間はかからなかった。
◇
一時間後。
ようやく警戒を解き、ウトウトし始めた頃。
ドゴォォォォォンッ!!!
「ひぃっ!?」
再び、陣地の端に着弾。
飛び起きる生徒たち。
さらに一時間後。
まどろみかけた意識を、爆音が叩き起こす。
ドゴォォォォォンッ!!!
「もう嫌ぁぁぁ!」
「寝かせてよぉぉぉ!」
不規則なタイミング。
予測できない着弾地点。
いつ爆発するかわからない恐怖。
これが、リアンの仕掛けた『睡眠妨害(スリープ・ハラスメント)』だ。
ただでさえ空腹で神経が過敏になっている彼らに、休息を与えることを許さない。
「くそっ……! 出てこいリアン! 正々堂々と戦え!」
クラウスが森に向かって叫ぶが、返ってくるのはフクロウの鳴き声だけ。
そして、彼らが諦めて目を閉じると――
ドゴォォォォォンッ!!!
「あがぁぁぁぁ!!」
◇
森の中、木の上。
俺(リアン)は、あくびをしながら次の矢の準備をしていた。
隣では、イグニスが呆れた顔で肉を齧っている。
「なぁ兄貴。これ、地味すぎねぇか? 俺様なら殴り込んで終わらせるぜ?」
「分かってないな、イグニス。これは『調理』で言うところの『低温調理』だ」
俺は矢尻に特製の火薬(癇癪玉の強化版)をセットしながら笑った。
「空腹と睡眠不足。この二つが重なれば、人間の判断能力は泥酔状態と同じレベルまで落ちる。……明日の朝には、彼らは立っているのもやっとの『ゾンビ』になっているはずだ」
「ひえぇ……。お前、本当に敵に回したくねぇな」
「さあ、次の一発だ。……朝まで踊ってもらおうか」
ヒュッ。
放たれた矢が、美しい放物線を描いてA班の陣地へ吸い込まれていく。
爆音と悲鳴をBGム(バックグラウンドミュージック)に、俺は心地よい満足感を味わっていた。
勝負は、剣を交える前に決まるのだ。
魔の森に、二日目の夜が訪れた。
A班(赤チーム)の陣地は、昨夜とは打って変わって、重苦しい空気に包まれていた。
「……お腹、空いた」
誰かの呟きが、静寂に響く。
食料庫は空っぽ。昼間、森で木の実やキノコを探したが、この時期の魔の森にはめぼしい食料がほとんどない。
飢餓感が、生徒たちの精神をジリジリと削っていく。
「……くっ。耐えるんだ」
クラウスは焚き火の前で、空腹で鳴り止まない腹を押さえながら、部下たちを鼓舞していた。
「人間、水さえあれば数日は生きられる。明日の朝、森の奥へ狩りに行こう。それまでの辛抱だ」
「でもぉ……私、もう力が出ないよぉ……」
「お肌が荒れちゃう……」
キャルルとキュララが地面にへたり込む。
そんな中、捕虜用テントの方からは――
『むにゃむにゃ……おかわり……ステーキでお願いしますわ……』
『グォー……プピー……』
満腹のリーザによる、幸せそうな寝言と大いびきが聞こえてくる。
これが一番の精神攻撃かもしれない。
「あの女……! 後で絶対、私のマカロン代を請求してやる……!」
リリスが血走った目でテントを睨みつけた、その時だった。
ヒュンッ!!
夜の闇を切り裂く風切り音。
何かが、焚き火のすぐ横の地面に突き刺さった。
「え?」
次の瞬間。
ドゴォォォォォンッ!!!
「きゃあああああ!?」
「うわあぁぁぁ!?」
爆音と共に、赤黒い炎が巻き上がった。
魔法ではない。火薬による爆発だ。土と火の粉が舞い上がり、クラウスたちの顔にかかる。
「て、敵襲ーーッ!!」
クラウスが剣を抜いて叫ぶ。
全員が飛び起き、臨戦態勢をとる。
「どこだ!? どこから撃ってきた!?」
キュララがドローンを飛ばそうとするが、暗闇の森の中、木々に遮られて敵影は見えない。
「クラウスくん! あれ見て!」
キャルルが地面に突き刺さった残骸を指差す。
それは、先端に小型の筒が括り付けられた矢だった。
「……火薬付きの矢、か」
クラウスはギリリと歯噛みした。
「魔法禁止のルールを逆手に取り、科学の力で爆撃してくるとは……! 卑劣なり、リアン!」
「ふふふ……。褒め言葉として受け取っておくよ」
森の奥から、拡声器(これも自作)を通したリアンの声が響いてきた。
『やあ、A班の諸君。腹の具合はどうだい? こちらは今、イグニスが焼いた猪肉のステーキを食べているところさ』
「き、貴様ぁぁぁ!」
『おっと、怒りでカロリーを消費しない方がいい。……今夜は長いぞ?』
その言葉の意味を、クラウスたちが理解するのに時間はかからなかった。
◇
一時間後。
ようやく警戒を解き、ウトウトし始めた頃。
ドゴォォォォォンッ!!!
「ひぃっ!?」
再び、陣地の端に着弾。
飛び起きる生徒たち。
さらに一時間後。
まどろみかけた意識を、爆音が叩き起こす。
ドゴォォォォォンッ!!!
「もう嫌ぁぁぁ!」
「寝かせてよぉぉぉ!」
不規則なタイミング。
予測できない着弾地点。
いつ爆発するかわからない恐怖。
これが、リアンの仕掛けた『睡眠妨害(スリープ・ハラスメント)』だ。
ただでさえ空腹で神経が過敏になっている彼らに、休息を与えることを許さない。
「くそっ……! 出てこいリアン! 正々堂々と戦え!」
クラウスが森に向かって叫ぶが、返ってくるのはフクロウの鳴き声だけ。
そして、彼らが諦めて目を閉じると――
ドゴォォォォォンッ!!!
「あがぁぁぁぁ!!」
◇
森の中、木の上。
俺(リアン)は、あくびをしながら次の矢の準備をしていた。
隣では、イグニスが呆れた顔で肉を齧っている。
「なぁ兄貴。これ、地味すぎねぇか? 俺様なら殴り込んで終わらせるぜ?」
「分かってないな、イグニス。これは『調理』で言うところの『低温調理』だ」
俺は矢尻に特製の火薬(癇癪玉の強化版)をセットしながら笑った。
「空腹と睡眠不足。この二つが重なれば、人間の判断能力は泥酔状態と同じレベルまで落ちる。……明日の朝には、彼らは立っているのもやっとの『ゾンビ』になっているはずだ」
「ひえぇ……。お前、本当に敵に回したくねぇな」
「さあ、次の一発だ。……朝まで踊ってもらおうか」
ヒュッ。
放たれた矢が、美しい放物線を描いてA班の陣地へ吸い込まれていく。
爆音と悲鳴をBGム(バックグラウンドミュージック)に、俺は心地よい満足感を味わっていた。
勝負は、剣を交える前に決まるのだ。
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