武器使いの成り上がり〜石ころから始める異世界無双譚〜〜社畜、女神に愛され最強の二刀流&投擲使いに覚醒す〜

月神世一

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EP 2

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目覚めと、石ころ無双
​深い水の底から浮上するように、リュウはゆっくりと瞼を開いた。
​「ん……」
​木漏れ日が、幾筋も降り注いでいる。
新緑が風にそよぐ音、遠くで聞こえる鳥のさえずり。
エアコンの駆動音も、電話のベルも聞こえない。
​(ここは……どこだ?)
​重い体を起こすと、そこは鏡のように静謐な湖の畔だった。
水面は空の青と森の緑を映し出し、幻想的なまでに美しい。
何かに導かれるように、リュウはふらりと湖面に近づいた。
​冷たい水で顔を洗おうとして――水面に映る「それ」を見て、息を呑んだ。
​「なっ……!? コレが、俺……なのか?」
​そこにいたのは、疲れ切ったオッサンではない。
十代半ばとおぼしき、見知らぬ少年の姿だった。
​艶やかな黒髪に、黒曜石のような瞳。
あどけなさはあるが、きゅっと引き締まった顎は意志の強さを感じさせる。
佐々木龍だった頃の、死んだ魚のような目はどこにもない。生命力に満ちた若者の顔だ。
​「何でこんな若返って……うぐっ、頭が……痛いっ!?」
​突如、脳天を万力で締め上げられるような激痛が走った。
ズキン、ズキンと脈打つ痛みと共に、知らない記憶が雪崩れ込んでくる。
​(はぁ……はぁ……っ、こ、これは……この身体の『前の記憶』か?)
​古びた木造の家。薪の匂い。
『リュウ、強く生きるんじゃよ』
皺くちゃの手で頭を撫でてくれた、唯一の肉親である祖父の笑顔。
​そして――その祖父を亡くし、孤独に森を彷徨う記憶。
獲物は獲れず、数日間、水しか飲んでいない絶望感。
​(そうか、こいつ……いや、『俺』は、腹が減って行き倒れたのか……)
​嵐のような頭痛が引くと同時に、状況がクリアになる。
​「俺の名前は、リュウ。歳は……多分、16歳くらい。そしてここはアースティア……剣と魔法の世界」
​額の脂汗を拭いながら、リュウは確信した。
女神様の言葉は本当だった。これが異世界転生だ。
​「よし……! まずは状況確認だ。女神様はギフトをくれるって言ってたな。えーっと、確か……ステータス!」
​心の中で強く念じる。
すると、視界の端に「ポンッ」という軽い音と共に、半透明のウィンドウが浮かび上がった。
​【ステータス】
名前:リュウ
レベル:1
HP:5/5
MP:0/0
力:4
素早さ:5
知力:3
スキル:武器使い
​「レベル1はいいとして……HP5って、スペランカー並みじゃねーか。デコピンで死ぬぞ」
​MPもゼロ。魔法使いルートは絶望的だ。
ステータスも軒並み一桁。平凡、いや、むしろ貧弱と言っていい。
​「で、この『武器使い』ってのは……どういうスキルなんだ?」
​文字面だけ見れば強そうだが、詳細説明はない。
リュウはウィンドウを消し、改めて自分の状況を整理した。
​(転生成功。チート能力ゲット。……でも、現状は『餓死寸前の行き倒れ』だ)
​その時だった。
​ぐぅぅぅううう~~~~……。
​静かな湖畔に、情けないほど盛大な腹の虫が鳴り響く。
​「はは……転生しても、腹が減るのは変わらないな。とにかく、何か食えるものを……」
​周囲を見回す。
すると、湖から少し離れた茂みのそばで、何かが動くのが見えた。
​「あ! あれは……角が生えたウサギだ!」
​普通のウサギより一回り大きい。丸々とした体躯に、額から生えた一本の白い角。
魔物の一種、「角ウサギ」だ。
だが今のリュウには、それが「極上の肉塊」にしか見えなかった。
​(食いたい……!)
​ごくり、と喉が鳴る。
だが、問題がある。今のリュウには剣もナイフもない。装備はボロボロの布服だけだ。
あんな俊敏そうな生き物を、素手で捕まえられるわけがない。
​「武器がない……どうする? その辺の木の枝でもへし折って使うか?」
​焦るリュウの脳内に、無機質なシステム音声が響いた。
​《スキル『武器使い』を発動しますか? YES / NO 》
​「えっ?」
​周囲を見回すが、誰もいない。女神の声とは違う、機械的な響き。
​《スキル『武器使い』を発動しますか? YES / NO 》
​今度ははっきりと聞こえた。
これは、ゲームのチュートリアルのようなものか?
​「は、はい! YESでお願いします!」
​藁にもすがる思いで答える。
その瞬間――世界が一変した。
​リュウの黒い瞳が、ふわりと淡い燐光を帯びる。
視界に映る景色の中で、足元の小石や落ちている枯れ枝だけが、まるでハイライトされたように青白く発光し始めたのだ。
​「な、何だ……? 石ころが、光ってる……?」
​導かれるように、光る小石の一つを拾い上げる。
何の変哲もない、ただの石だ。
​だが、握った瞬間――電流が走った。
​「うわっ! あ、頭の中にイメージが……!」
​重心の位置、風の抵抗、腕の振り方、投擲の角度。
そして、どう投げれば角ウサギの眉間に命中するかという「確定した未来」のイメージ。
​その全てが、まるで長年使い込んだ愛用の道具のように、瞬時にインストールされた。
​(分かる……! これなら、当てられる!)
​これがスキル『武器使い』の力。
手にした物を「武器」として最適化し、その性能を100%引き出す力。
​リュウは深く息を吸い込む。
狙うは一点、角ウサギの頭部。
迷いはない。脳内のイメージをなぞるように、腕を振り抜く!
​「シッ!」
​ヒュッ!
​風を切る鋭い音。
放たれた小石は、ライフル弾のような弾道を描き、吸い込まれるように角ウサギへと飛翔した。
​ズガンッ!
​「ギャッ!」
​鈍く重い打撃音。
角ウサギは短い悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。ピクリとも動かない。
眉間を正確に撃ち抜く、完璧な一撃必殺(ヘッドショット)。
​リュウは自分の手と、動かなくなった獲物を交互に見つめ、震えた。
​「す、すげぇ……。俺、野球経験すらないのに……」
​まぐれじゃない。
投げた瞬間、当たることは分かっていた。
まるでオートエイム機能が働いたような、全能感。
​興奮冷めやらぬまま、リュウはもう一度試してみる。
​(スキル『武器使い』、発動!)
​再び瞳が光り、周囲の石や枝をスキャンする。
だが今度は、先ほどのような強烈な「これだ!」という感覚は薄かった。
​「んー……なるほど。何でもかんでも最強武器になるわけじゃないのか」
​手頃な石ころには強い反応があるが、大きすぎる岩や、太すぎる枝には反応が鈍い。
今の「レベル1」の状態では、扱える武器のサイズや種類に制限があるらしい。
​「ということは……レベルを上げれば、剣でも槍でも、何でも達人レベルで扱えるようになるってことか?」
​可能性は無限大だ。
この過酷な世界で生き抜くための、最強の切符を手に入れたのかもしれない。
​ぐぅぅぅうう……。
​「……ま、その前に飯だな!」
​夢を膨らませるよりも先に、胃袋が現実を主張する。
リュウはニヤリと笑うと、仕留めた獲物を拾い上げた。
ずっしりとした重みが、生の実感を伝えてくる。
​「いただきます、異世界」
​武器使いリュウ。
彼の冒険は、空腹を満たすという、最高に人間らしい一歩から始まった。
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