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EP 3
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スライム狩りと、人類の知恵
人類が最初に手にした武器、それはおそらく「石」だった。
誰の手にも馴染み、無限に補充でき、安全な間合いから敵を討つ。
最も原始的で、最も侮れない力。
夜の帳が下りた森で、リュウは焚き火の炎を見つめながら、角ウサギの肉を頬張っていた。
「はふっ……う、うまい! 自分で狩った肉がこんなに美味いなんて……」
滴る肉汁、野趣あふれる旨味。
温かい食事は、異世界に来てからずっと張り詰めていた緊張の糸を、優しく解きほぐしてくれる。
(生きてる。俺は、ここで生きてるんだ)
満腹感と共に一息ついたリュウは、改めてステータスウィンドウを開いた。
【ステータス】
名前:リュウ
レベル:1
スキル:武器使い
「レベル1かぁ……。ウサギ一匹じゃ、さすがに上がらないか」
リュウは、掌で遊ばせている小石を見つめた。
あの威力と精度は本物だ。だが、石だけでは限界がある。
もっと強い敵、もっと複雑な状況に対応するには、自分自身のレベルを上げ、扱える武器の幅を広げなければならない。
(でも、どうやって? いきなり強い敵に挑むのは自殺行為だ。かといって、角ウサギが都合よく何匹も出てくるとは限らない)
ゲームのように親切なガイドはない。
リュウは社畜時代に培った思考力をフル回転させた。
「リスクを最小限に抑えて、確実に経験値を稼ぐ方法……」
その時、脳裏に昼間の探索で見かけた光景がよぎった。
湿った木陰に蠢いていた、ゼリー状の物体。
スライムだ。
(あいつなら動きは遅い。遠距離攻撃(投石)の的なら、うってつけの相手だ!)
リュウは行動を開始した。
食べたばかりの角ウサギの骨や残骸を、少し離れた開けた場所に置く。
そして自身は、風下の茂みに身を隠した。
「さあ、お食事の時間だぞ……」
数分後。
予想通り、匂いに釣られて緑色の半透明な塊が這い出てきた。
一匹、二匹……三匹。
スライムたちは貪欲に餌に群がり始める。
「よし……今だ!」
リュウは手頃な石を握り、スキル『武器使い』を発動。
狙うは、群れの中央。
ヒュッ!
「ピギィッ!」
水風船が割れるような音と共に、一匹のスライムが弾け飛び、粘液を撒き散らした。
だが、他のスライムは逃げようとしない。それどころか、仲間の死骸(粘液)に群がり、吸収しようとし始めた。
(やっぱり! コイツら、共食いする性質があるんだ!)
これは、安全地帯からの「ハメ狩り」が可能だ。
リュウはニヤリと笑うと、次々と石を拾っては投げ、拾っては投げた。
「ピギッ!」「ピギャッ!」
一方的な蹂躙。単調だが、確実な経験値稼ぎ。
そして、十数匹目を倒した瞬間――脳内にファンファーレが鳴り響いた。
《レベルアップしました!》
「キタッ!」
急いでウィンドウを確認する。
【ステータス】
名前:リュウ
レベル:2
HP:7/7 (+2)
力:6 (+2)
素早さ:6 (+1)
知力:5 (+2)
スキル:武器使い、投石術 Lv.1 (NEW!)
「おお……ステータスが軒並み上がってる! それに新スキル『投石術』!?」
スキル欄に増えた新しい文字。
『武器使い』という大枠から、特化した技術が派生したらしい。
「よし、力が上がったなら……アレが試せるかもしれない」
リュウは、ステータスアップの高揚感の中で、ある「道具」の制作を思い立った。
前世の知識と、今のスキルを組み合わせた、次なる一手。
手頃な太さの木の枝を拾い、鋭利な石片で削り始める。
不慣れなはずの作業だが、『武器使い』の補正が働いているのか、指先が勝手に最適な角度を知っている。
先端に石を引っ掛けるための窪みを作り、持ち手を調整する。
数十分後、即席の「投石器(スタッフ・スリング)」が完成した。
「大昔の人類は、腕の長さを擬似的に伸ばすことで、投石の威力を倍増させた……それがこれだ」
窪みに少し大きめの石をセットする。
リュウは立ち上がり、遠くの太い木の幹に狙いを定めた。
「いけっ!」
全身のバネを使い、遠心力を乗せて枝を振り抜く。
ブォンッ!
手投げとは比較にならない重厚な風切り音。
射出された石は恐るべき速度で宙を裂き――
ドゴォォォンッ!!
「うわっ!?」
木が激しく揺れ、樹皮がめくれ上がり、幹に深々とクレーターのような跡が刻まれた。
「スゲェ……! なんだこれ、大砲かよ……!」
ただの石が、殺傷能力を持った弾丸に変わった瞬間だった。
素手よりもコントロールが安定し、何より威力が段違いだ。これなら、スライムどころか、もっと硬い甲殻を持つ魔物すら貫けるかもしれない。
「いける。この調子なら、もっと強くなれる!」
投石器を握りしめ、リュウは確信に満ちた笑みを浮かべた。
知識とスキル、そして工夫。
持たざる者が最強へと至るためのロードマップが、今、明確に見え始めていた。
人類が最初に手にした武器、それはおそらく「石」だった。
誰の手にも馴染み、無限に補充でき、安全な間合いから敵を討つ。
最も原始的で、最も侮れない力。
夜の帳が下りた森で、リュウは焚き火の炎を見つめながら、角ウサギの肉を頬張っていた。
「はふっ……う、うまい! 自分で狩った肉がこんなに美味いなんて……」
滴る肉汁、野趣あふれる旨味。
温かい食事は、異世界に来てからずっと張り詰めていた緊張の糸を、優しく解きほぐしてくれる。
(生きてる。俺は、ここで生きてるんだ)
満腹感と共に一息ついたリュウは、改めてステータスウィンドウを開いた。
【ステータス】
名前:リュウ
レベル:1
スキル:武器使い
「レベル1かぁ……。ウサギ一匹じゃ、さすがに上がらないか」
リュウは、掌で遊ばせている小石を見つめた。
あの威力と精度は本物だ。だが、石だけでは限界がある。
もっと強い敵、もっと複雑な状況に対応するには、自分自身のレベルを上げ、扱える武器の幅を広げなければならない。
(でも、どうやって? いきなり強い敵に挑むのは自殺行為だ。かといって、角ウサギが都合よく何匹も出てくるとは限らない)
ゲームのように親切なガイドはない。
リュウは社畜時代に培った思考力をフル回転させた。
「リスクを最小限に抑えて、確実に経験値を稼ぐ方法……」
その時、脳裏に昼間の探索で見かけた光景がよぎった。
湿った木陰に蠢いていた、ゼリー状の物体。
スライムだ。
(あいつなら動きは遅い。遠距離攻撃(投石)の的なら、うってつけの相手だ!)
リュウは行動を開始した。
食べたばかりの角ウサギの骨や残骸を、少し離れた開けた場所に置く。
そして自身は、風下の茂みに身を隠した。
「さあ、お食事の時間だぞ……」
数分後。
予想通り、匂いに釣られて緑色の半透明な塊が這い出てきた。
一匹、二匹……三匹。
スライムたちは貪欲に餌に群がり始める。
「よし……今だ!」
リュウは手頃な石を握り、スキル『武器使い』を発動。
狙うは、群れの中央。
ヒュッ!
「ピギィッ!」
水風船が割れるような音と共に、一匹のスライムが弾け飛び、粘液を撒き散らした。
だが、他のスライムは逃げようとしない。それどころか、仲間の死骸(粘液)に群がり、吸収しようとし始めた。
(やっぱり! コイツら、共食いする性質があるんだ!)
これは、安全地帯からの「ハメ狩り」が可能だ。
リュウはニヤリと笑うと、次々と石を拾っては投げ、拾っては投げた。
「ピギッ!」「ピギャッ!」
一方的な蹂躙。単調だが、確実な経験値稼ぎ。
そして、十数匹目を倒した瞬間――脳内にファンファーレが鳴り響いた。
《レベルアップしました!》
「キタッ!」
急いでウィンドウを確認する。
【ステータス】
名前:リュウ
レベル:2
HP:7/7 (+2)
力:6 (+2)
素早さ:6 (+1)
知力:5 (+2)
スキル:武器使い、投石術 Lv.1 (NEW!)
「おお……ステータスが軒並み上がってる! それに新スキル『投石術』!?」
スキル欄に増えた新しい文字。
『武器使い』という大枠から、特化した技術が派生したらしい。
「よし、力が上がったなら……アレが試せるかもしれない」
リュウは、ステータスアップの高揚感の中で、ある「道具」の制作を思い立った。
前世の知識と、今のスキルを組み合わせた、次なる一手。
手頃な太さの木の枝を拾い、鋭利な石片で削り始める。
不慣れなはずの作業だが、『武器使い』の補正が働いているのか、指先が勝手に最適な角度を知っている。
先端に石を引っ掛けるための窪みを作り、持ち手を調整する。
数十分後、即席の「投石器(スタッフ・スリング)」が完成した。
「大昔の人類は、腕の長さを擬似的に伸ばすことで、投石の威力を倍増させた……それがこれだ」
窪みに少し大きめの石をセットする。
リュウは立ち上がり、遠くの太い木の幹に狙いを定めた。
「いけっ!」
全身のバネを使い、遠心力を乗せて枝を振り抜く。
ブォンッ!
手投げとは比較にならない重厚な風切り音。
射出された石は恐るべき速度で宙を裂き――
ドゴォォォンッ!!
「うわっ!?」
木が激しく揺れ、樹皮がめくれ上がり、幹に深々とクレーターのような跡が刻まれた。
「スゲェ……! なんだこれ、大砲かよ……!」
ただの石が、殺傷能力を持った弾丸に変わった瞬間だった。
素手よりもコントロールが安定し、何より威力が段違いだ。これなら、スライムどころか、もっと硬い甲殻を持つ魔物すら貫けるかもしれない。
「いける。この調子なら、もっと強くなれる!」
投石器を握りしめ、リュウは確信に満ちた笑みを浮かべた。
知識とスキル、そして工夫。
持たざる者が最強へと至るためのロードマップが、今、明確に見え始めていた。
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