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EP 5
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レオンがブリーディング・ステーションの実権を握ってから、わずか三ヶ月。その成果は、数字として、そして具体的な「戦力」として現れ始めた。
かつて10%以下だったワイバーンの孵化率は、レオンの精密な栄養管理と温度制御により85%にまで跳ね上がった。幼体の死亡率はほぼゼロに。そして何より驚異的だったのは、レオンが管理する幼体の成長速度だった。通常5~7年かかっていた戦力化までの期間が、約2年に短縮されるという、異次元の効率を実現したのだ。
ステーション内の空気は一変した。以前はレオンを侮蔑していたブリーダーたちも、今や彼を「先生」と呼び、彼の指示を盲目的に実行するようになった。闘気を信じる彼らにとって、レオンの知識は理解できないが、「絶対的な結果」を生み出す魔術のように映った。
虎耳族のバルクスは、今やレオンの最も忠実な部下の一人になっていた。彼の顔には、以前の傲慢さではなく、純粋な技術への畏敬が刻まれていた。
「先生、報告です。ライトニング・シルバーが、今日の訓練で、銀色の雷撃ブレスを五連射しました。しかも、体温上昇はわずか0.5度。以前の個体では、二連射で限界でした」
バルクスは興奮気味に報告した。レオンは鼻梁を指で押さえる癖を出しながら、冷静にデータを確認する。
「ありがとうございます、バルクス様。予想通りです。蒼き結晶による冷却システムは、連続放熱にも対応できました。次は、長距離飛行時のスタミナに関する魔草の配合を調整します」
レオンは、ワイバーンを単なる生き物としてではなく、「高性能な軍事ドローン」として捉えていた。彼の視界には、常にワイバーンの「エネルギー効率」や「耐久性パラメータ」が表示され、それを改善する「パッチ」を適用する感覚でブリーディングを行っていた。
その日の午後、レオンは騎士団長ザイードの執務室に呼び出された。
ザイードの表情は、いつになく厳しかった。室内にはザイードのほかに、ガルーダ獣人国の国王、そして王の側近である人狼族の宰相が控えていた。人狼族の宰相は、獣人族一の嗅覚を持つためか、レオンの微かな緊張の匂いを嗅ぎ取り、警戒心を露わにしていた。
「レオンよ」国王が口を開いた。彼の声には、威厳と、隠しきれない興奮が滲んでいた。
「貴様が作り出した『新型』のワイバーン、その成果は朕の耳にも届いている。貴様の知識は、我がガルーダ獣人国が数十年抱えてきた空の戦力不足を一気に解決する、天からの賜物だ」
レオンは一礼した。
「恐悦至極にございます」
「だが、その知識はあまりに異質すぎる」ザイードが口を挟んだ。彼の琥珀色の瞳は、レオンの全身を射抜くように見つめる。
「国王陛下。レオンの技術は、もはやブリーディングという範疇を超えています。彼は、ワイバーンの進化を、意図的に加速させている。この事実が他国に漏れれば、我が国は『禁忌の力』を使ったとして、人間と魔族から標的にされるでしょう」
人狼族の宰相が、鋭い嗅覚で部屋の空気を分析しながら、低い声で言った。
「ルミナス帝国(人間)の諜報網は侮れません。最近、国境付近でのジオ・リザードの不自然な移動が確認されています。彼らは、我々の空の動きを探っている。陛下、レオンの存在は、これより最高位の軍事機密とし、王都の地下にある『封印されたブリーディング施設』に移すべきです」
レオンの心の中で、警告灯が点灯した。
(データ分析:【行動予測:主人公の隔離と技術の独占】。対処法:【技術の非公開性を示唆し、自身の重要性を維持すること】)
「お待ちください、陛下」レオンは毅然として進み出た。
「私の知識は、施設ではなく、私自身の思考に依存しています。地下に隔離されても、私の知識は変わりません。しかし、私の管理から外れ、ブリーダーたちに形式的なレシピだけが渡された場合、彼らはワイバーンの微妙な変化に対応できず、数ヶ月で成長が停止するか、再び死亡率が急増するでしょう」
レオンは、自分の知識の再現性の低さを逆手に取った。彼の調整は、ワイバーンの個体差に応じて、刻一刻と変わるデータに基づいていた。レシピ化は不可能だ。
「私の知識を活かすには、私自身が現場で、常に彼らと触れ合う必要があります」
国王はザイードと宰相を交互に見た。宰相は不満げに鼻を鳴らしたが、ザイードはわずかに頷いた。
「レオンの言う通りです。彼の知識は、彼自身の闘気にも似た『スキル』に依存している。彼を隔離すれば、技術はそこで途絶えます」
国王は熟慮の末、結論を下した。
「よかろう。レオン、貴様は引き続きブリーディング・ステーションで業務を続けよ。だが、これより、貴様には近衛兵による24時間の監視がつく。そして、貴様が作成した全ての文書、処方箋は、全て最高機密として処理される。貴様は我がガルーダ獣人国にとって、『秘匿された、空の魔導兵器』だ」
こうして、レオンは死体処理係から、一国の命運を握る技術者へと昇りつめた。しかし、彼の成功は、同時に彼自身の自由を奪い、国際的な陰謀の渦へと引きずり込むこととなるのだった。
そして、その頃。ルミナス帝国の首都、上空を静かに漂う魔法文明の飛行船の中で、一人の男が「ガルーダ獣人国のワイバーンが異常増殖している」という極秘文書を、静かに読み終えるところだった。
かつて10%以下だったワイバーンの孵化率は、レオンの精密な栄養管理と温度制御により85%にまで跳ね上がった。幼体の死亡率はほぼゼロに。そして何より驚異的だったのは、レオンが管理する幼体の成長速度だった。通常5~7年かかっていた戦力化までの期間が、約2年に短縮されるという、異次元の効率を実現したのだ。
ステーション内の空気は一変した。以前はレオンを侮蔑していたブリーダーたちも、今や彼を「先生」と呼び、彼の指示を盲目的に実行するようになった。闘気を信じる彼らにとって、レオンの知識は理解できないが、「絶対的な結果」を生み出す魔術のように映った。
虎耳族のバルクスは、今やレオンの最も忠実な部下の一人になっていた。彼の顔には、以前の傲慢さではなく、純粋な技術への畏敬が刻まれていた。
「先生、報告です。ライトニング・シルバーが、今日の訓練で、銀色の雷撃ブレスを五連射しました。しかも、体温上昇はわずか0.5度。以前の個体では、二連射で限界でした」
バルクスは興奮気味に報告した。レオンは鼻梁を指で押さえる癖を出しながら、冷静にデータを確認する。
「ありがとうございます、バルクス様。予想通りです。蒼き結晶による冷却システムは、連続放熱にも対応できました。次は、長距離飛行時のスタミナに関する魔草の配合を調整します」
レオンは、ワイバーンを単なる生き物としてではなく、「高性能な軍事ドローン」として捉えていた。彼の視界には、常にワイバーンの「エネルギー効率」や「耐久性パラメータ」が表示され、それを改善する「パッチ」を適用する感覚でブリーディングを行っていた。
その日の午後、レオンは騎士団長ザイードの執務室に呼び出された。
ザイードの表情は、いつになく厳しかった。室内にはザイードのほかに、ガルーダ獣人国の国王、そして王の側近である人狼族の宰相が控えていた。人狼族の宰相は、獣人族一の嗅覚を持つためか、レオンの微かな緊張の匂いを嗅ぎ取り、警戒心を露わにしていた。
「レオンよ」国王が口を開いた。彼の声には、威厳と、隠しきれない興奮が滲んでいた。
「貴様が作り出した『新型』のワイバーン、その成果は朕の耳にも届いている。貴様の知識は、我がガルーダ獣人国が数十年抱えてきた空の戦力不足を一気に解決する、天からの賜物だ」
レオンは一礼した。
「恐悦至極にございます」
「だが、その知識はあまりに異質すぎる」ザイードが口を挟んだ。彼の琥珀色の瞳は、レオンの全身を射抜くように見つめる。
「国王陛下。レオンの技術は、もはやブリーディングという範疇を超えています。彼は、ワイバーンの進化を、意図的に加速させている。この事実が他国に漏れれば、我が国は『禁忌の力』を使ったとして、人間と魔族から標的にされるでしょう」
人狼族の宰相が、鋭い嗅覚で部屋の空気を分析しながら、低い声で言った。
「ルミナス帝国(人間)の諜報網は侮れません。最近、国境付近でのジオ・リザードの不自然な移動が確認されています。彼らは、我々の空の動きを探っている。陛下、レオンの存在は、これより最高位の軍事機密とし、王都の地下にある『封印されたブリーディング施設』に移すべきです」
レオンの心の中で、警告灯が点灯した。
(データ分析:【行動予測:主人公の隔離と技術の独占】。対処法:【技術の非公開性を示唆し、自身の重要性を維持すること】)
「お待ちください、陛下」レオンは毅然として進み出た。
「私の知識は、施設ではなく、私自身の思考に依存しています。地下に隔離されても、私の知識は変わりません。しかし、私の管理から外れ、ブリーダーたちに形式的なレシピだけが渡された場合、彼らはワイバーンの微妙な変化に対応できず、数ヶ月で成長が停止するか、再び死亡率が急増するでしょう」
レオンは、自分の知識の再現性の低さを逆手に取った。彼の調整は、ワイバーンの個体差に応じて、刻一刻と変わるデータに基づいていた。レシピ化は不可能だ。
「私の知識を活かすには、私自身が現場で、常に彼らと触れ合う必要があります」
国王はザイードと宰相を交互に見た。宰相は不満げに鼻を鳴らしたが、ザイードはわずかに頷いた。
「レオンの言う通りです。彼の知識は、彼自身の闘気にも似た『スキル』に依存している。彼を隔離すれば、技術はそこで途絶えます」
国王は熟慮の末、結論を下した。
「よかろう。レオン、貴様は引き続きブリーディング・ステーションで業務を続けよ。だが、これより、貴様には近衛兵による24時間の監視がつく。そして、貴様が作成した全ての文書、処方箋は、全て最高機密として処理される。貴様は我がガルーダ獣人国にとって、『秘匿された、空の魔導兵器』だ」
こうして、レオンは死体処理係から、一国の命運を握る技術者へと昇りつめた。しかし、彼の成功は、同時に彼自身の自由を奪い、国際的な陰謀の渦へと引きずり込むこととなるのだった。
そして、その頃。ルミナス帝国の首都、上空を静かに漂う魔法文明の飛行船の中で、一人の男が「ガルーダ獣人国のワイバーンが異常増殖している」という極秘文書を、静かに読み終えるところだった。
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