​拾った卵が始祖竜だった!通販スキルで育てる為、竜王とラーメン屋を始めたら、最強の3柱と契約してしまい世界が平和になった件

月神世一

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EP 5

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Amazon段ボール城と、男3人の夜
「いらっしゃいませェェェッ!! 空いてる席に座りやがれェッ!!」
森の中に、野太い怒号のような接客の声が響き渡った。
狼王フェンリルである。
彼は「ご主人(太郎)の為に働く」と宣言して以来、ホールの接客と客引き、そして食べ残し処理(つまみ食い)を精力的にこなしていた。
「おい駄犬、声がデカい。スープの表面が波立つだろうが」
厨房では、竜王デュークが不機嫌そうに麺の湯切りをしている。
最強の二柱が従業員として働くラーメン屋。
普通なら恐怖で客が逃げ出す光景だが、不思議と店は回っていた。むしろ、その「圧」が逆にスパイスとなり、噂を聞きつけた物好きな森の魔獣や、迷い込んだ冒険者たちが恐る恐る暖簾をくぐるようになっていた。
そんな中、店主代理(実質の経営者)である佐藤太郎は、店の裏手で腕組みをしていた。
「……溜まってきたな」
彼の目の前には、うず高く積まれた「Amazon」や「楽天」のロゴ入り段ボールの山があった。
通販スキルで大量の食材やオムツを購入した結果、必然的に排出される空き箱たちだ。
この世界の住人には「未知の丈夫な紙」だが、放置すればただの産業廃棄物である。
「燃やすのも勿体ないし、かといって捨てる場所もない。……よし」
太郎はポンと手を打った。
彼は電子ボードを展開し、『ガムテープ(強粘着)』『ブルーシート』『断熱材』『カッターナイフ』を購入した。
「増築しよう」
従業員が増えたのだ。今の屋台のスペースでは、休憩する場所も、クロ(始祖竜)が遊ぶスペースもない。
太郎は持ち前のDIY精神と、弓道で培った集中力を発揮し、段ボール工作を開始した。
          ◇
数時間後。
「おい太郎、裏でゴソゴソと何を……なんだこれは?」
休憩に入ったデュークが、店の裏を見て絶句した。
そこには、茶色の箱を幾重にも貼り合わせ、青いシートで屋根を覆った、奇妙な建造物が出来上がっていた。
「従業員寮兼、クロの保育室だよ」
「……紙の城か? 雨が降れば終わりではないか」
「日本の段ボールを甘く見ちゃいけないよ。それに、防水シートも完璧だ。……まあ、見た目はアレだけど」
太郎は苦笑いした。見た目は完全に、河川敷のホームレスハウスである。
だが、中に入ったフェンリルが目を輝かせた。
「すげぇ! なんだこの床、ふわふわしてやがる!」
床には通販で買った「ジョイントマット」と「断熱アルミシート」が敷き詰められている。
冬の寒さが厳しいこの森でも、中は驚くほど暖かかった。
「……ふん。まあ、悪くはないな」
デュークも中に入り、あぐらをかいた。
そして、指先を壁に向けると、微かに黄金の光を放った。
「だが強度が足りん。……『硬化(ハードニング)』」
竜王の魔法が付与された瞬間、段ボールの壁が鋼鉄以上の強度に変質した。
これで台風が来ようが、ドラゴンが体当たりしようが壊れない「最強の段ボールハウス」の完成だ。
「さあ、仕事上がりだ。一杯やろうか」
太郎は中央にちゃぶ台(通販)を置き、クーラーボックスから冷えた酒を取り出した。
「おっ! 待ってましたご主人!」
「……我は熱燗がいい」
男3人、ちゃぶ台を囲んでの宴が始まった。
太郎が出したのは、缶詰の焼き鳥、柿の種、そして乾き物の盛り合わせ。
どれも地球のコンビニなら数百円で買えるものだが、異世界では至高の珍味だ。
「んぐっ、んぐっ……この『カキノタネ』ってやつ、辛くてたまんねぇな! ビールが進むぜ!」
フェンリルが柿の種をボリボリと貪り食う。
「ふむ……この透明な酒(ワンカップ大関)、米の香りがするな。悪くない」
デュークはチビチビと日本酒を舐め、満足げに髭を揺らす。
部屋の隅では、クロが新しいおもちゃ(段ボールの切れ端)を噛んで遊んでいる。
窓代わりの隙間からは、美しい満月が見えた。
「……不思議なもんだな」
太郎は缶チューハイを開けながら、しみじみと言った。
「竜王に狼王。世界最強のアンタらが、こんな狭い段ボールの中で、俺みたいな人間と酒を飲んでるなんて」
普通なら、一瞬で消し炭にされても文句は言えない相手だ。
だが、デュークはフンと鼻を鳴らし、フェンリルはニカッと笑った。
「我らは力あるが故に、孤独だ。誰も我らに対等に口を利かん」
「そうそう。どいつもこいつも『ひぃぃ命だけは!』って逃げやがる。つまんねぇんだよ」
デュークが盃を置き、太郎を真っ直ぐに見た。
「だが、貴様は違う。貴様は我らを『ただの店員』として扱い、美味い飯と、帰る場所を用意した。……この紙の城は、どんな王宮よりも落ち着く」
「へへっ、俺もだぜご主人。ここには美味い飯と、面白い仲間がいる。最高じゃねぇか」
二柱の言葉に、太郎は照れくさそうに頬を掻いた。
特別なことをしたつもりはない。
ただ、皆で働いて、飯を食って、笑う。
それが一番幸せだと知っていたから、そうしただけだ。
「……そっか。なら、明日も頑張って仕込みをしないとな」
「おう! 明日はもっと客を呼んでくるぜ!」
「調子に乗るな駄犬。皿洗いは貴様がやれ」
笑い声が、段ボールの城に響く。
種族も立場も超えた、男3人の奇妙な絆が、月夜の下で確かに結ばれていた。
だが、彼らはまだ知らない。
この穏やかな男所帯に、明日、世界で一番「美しく」、そして「面倒くさい」女性客が訪れようとしていることを。
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