『海自一佐(50)、昭和10年のダメ記者に転生。イージス艦長の未来知識(チート)で、敗戦ルートを完全粉砕します』

月神世一

文字の大きさ
6 / 30

EP 6

しおりを挟む
技術(チート)ドーピング
二・二六事件の余波が冷めやらぬ1936年、春。
坂上真一(中身50歳)は、山本五十六から奪い取った莫大な予算を手に、日本全土を飛び回っていた。彼の目的はただ一つ。歴史(史実)を蹂躙(じゅうりん)するための「最強のチーム」を編成することだ。
第一の訪問地:仙台・東北帝国大学 工学部
埃っぽい研究室で、二人の男がうんざりした顔で坂上を迎えた。
八木秀次(やぎ ひでつぐ)教授と、宇田新太郎(うだ しんたろう)助教授。
彼らの発明「八木・宇田アンテナ」は、学会では評価されたものの、軍部からは「指向性が強すぎて通信に向かない」「使い道がない」と、事実上、放置されていた。
「海軍航空本部の坂上中佐だ」
「……海軍さんが、今さらこの『玩具(おもちゃ)』に何の御用で」
宇田が皮肉っぽく言う。
坂上は、そのアンテナの模型を手に取り、静かに言った。
「先生方。これは『通信機』ではありません」
「「……?」」
「これは『目』です」
坂上は、その場で持参した紙に、21世紀のイージス艦の基本原理(コンセプト)を殴り書きした。
「このアンテナから、強力な指向性を持った電波の『塊(パルス)』を発射する。その電波が、空を飛ぶ敵の金属(ジュラルミン)に当たれば、『反射(エコー)』が返ってくる。このアンテナで、その反射波(はねかえり)を拾う」
「……反射波を?」
「光の速度は一定です。電波が発射されてから、反射波が戻るまでの『時間』を計測すれば、敵機までの『距離』が分かる。このアンテナの『向き』で、『方角』が分かる」
八木と宇田の顔から、血の気が引いた。
彼らが夢想だにしなかった、自分たちの発明の「真の価値」。
「ば、馬鹿な! そんな微弱な反射波……どうやって増幅する! しかも、そんな芸当(げいとう)ができるほどの強力な短波(マイクロウェーブ)を発振する装置など……」
「これを使います」
坂上は、次の設計図を叩きつけた。
それは、史実では1940年に英国で発明されるはずの、**『分割陽極型・空洞マグネトロン』**の基本設計図だった。
「……っ!?」
「こ、この構造は……!?」
二人の工学者は、その設計図に釘付けになった。シンプルでありながら、既存の技術の延長線上には絶対に存在しない、異次元の「解」がそこにあった。
「先生方」
坂上は、50歳の戦略家の目で二人を射抜いた。
「この『電探(でんたん)』が完成すれば、我が国は夜間や悪天候でも、数百キロ先の敵機を発見できる」
「私に力を貸していただきたい。これは、この国を『丸焼け』にさせないための戦いだ」
八木と宇田は、震える手でその設計図を受け取った。
「……やろう。宇田君」
「はい、先生! これこそ、我々が一生を捧げるべき研究だ!」
第二の訪問地:名古屋・三菱重工業
坂上は、一人の冴えない設計技師と向き合っていた。
男の名は、堀越二郎(ほりこし じろう)。
彼は、海軍から提示された次期艦上戦闘機(九試単戦の次)の無茶な要求仕様(速度・航続距離・格闘性能の両立)に、頭を抱えていた。
「坂上中佐……。海軍のご要求は分かります。ですが、エンジン出力が限られる中、航続距離と格闘性能を両立させるには、機体を極限まで軽量化し、防御(ぼうぎょ)を全て捨て去るしか……」
「分かっている」
坂上は、堀越の悩みを一言で遮った。
「堀越君。君の悩みは3つだ。『非力なエンジン』『航続距離』『防御力とのトレードオフ』。すべて、今日ここで解決する」
「……え?」
坂上は、またも設計図を広げた。
「第一に、防御。操縦席後部(ここ)に12ミリの防弾鋼板を入れろ。前面には防弾ガラスだ。米国の12.7ミリ機銃(ブローニングM2)が、数年後には空を覆う。君の『軽量化』は、搭乗員(パイロット)を『的』にするだけだ」
「し、しかしそれでは重量が!」
「第二に、エンジン」
坂上は、別の資料を渡す。
「中島飛行機には、すでに『次世代エンジン(のちの『誉(ほまれ)』)』の開発に着手させた。航空本部(おれ)の全予算を注ぎ込む。1年半後には、今の倍近い2000馬力級のエンジンが手に入る。そのエンジンを『前提』として設計しろ」
「2000馬力……!?」
堀越の目が、信じられないものを見るように開かれた。
「そして第三に、航続距離」
坂上は、紙にサラサラとスケッチを描いた。それは、流線型の、機体から吊り下げられたタンクの絵だった。
「『増槽(ぞうそう)(ドロップタンク)』だ」
「……これは?」
「機内の燃料タンクで長大な航続距離を稼ごうとするから、機体がデブになり、格闘性能が落ちる。馬鹿げている」
「余分な燃料は、機体の『外』に積め。使い終わったら、戦闘空域で切り離し(パージ)、身軽になればいい」
堀越は、その3枚の「解」を前に、愕然としていた。
防弾鋼板。2000馬力エンジン。増槽。
この若き海軍中佐は、自分が数年間悩み抜いた全ての壁を、たった5分で、完璧な解答(チート)をもって破壊し尽くした。
「……できる」
堀越は、設計者としての魂に火が点くのを感じた。
「これならできる! 世界最強の戦闘機が……作れます!」
海軍省に戻った坂上を、山本五十六が待っていた。
「随分と派手に動いたな、坂上君。八木教授や堀越技師から、興奮した電報が届いておる。『海軍に神がかった天才が現れた』とな」
「事実を述べたまでです」
坂上は、コーヒーキャンディを口に放り込んだ。
「それで?」
「『神の目(電探)』と『最強の拳(零戦・改)』は、1年半後、同時にロールアウトします」
五十六は、満足そうに頷いた。
だが、その目は笑っていなかった。
「……ちょうどいい。貴様の『分析』通り、大陸(中国)がきな臭くなってきた」
1937年、夏。
盧溝橋(ろこうきょう)で、一発の銃声が響く。
「坂上中佐」
五十六が、坂上に辞令を渡す。
「貴様に、上海派遣軍・海軍陸戦隊の『戦術顧問』を命ずる」
「……!」
「貴様の言う『未来の戦争』とやら、机上の空論ではないことを、あの石頭揃いの陸軍(りくぐん)に、実戦(み)せてやれ」
坂上は、完璧な敬礼で応えた。
(待たせたな。最初の『ドンパチ』だ。旧時代の戦争(いくさ)に、21世紀の戦術(イージス)を見せてやる)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦 そしてそこから繋がる新たな近代史へ

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための25の技

MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。 私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。 すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。 そんな方に言いたいです。 アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。 あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。 アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。 書いたまま放ったらかしではいけません。 自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。

50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました

月神世一
ファンタジー
​「命を捨てて勝つな。生きて勝て」 50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する! ​海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。 再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は―― 「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」 ​途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。 子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。 規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。 ​「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」 ​坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。 呼び出すのは、自衛隊の補給物資。 高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。 ​魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。 これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

処理中です...