​100均グッズで快適生活してたら、世界最強の軍事帝国になっていた件~カップ麺とアルミホイルで、魔王も神獣も土下座してくるんですが~

月神世一

文字の大きさ
3 / 15

EP 3

しおりを挟む
竜王来襲! ……からの、豚骨ラーメン屋台開業
 タロー皇国に、建国以来最大の危機が訪れていた。
 空が黄金色に染まり、大気がびりびりと震える。
「グオオオオオオオッ!!」
 鼓膜を破らんばかりの咆哮と共に、城の上空に巨大な影が差した。
 全身を黄金の鱗で覆われた、山のように巨大なドラゴン。
 世界の調停者の一角、竜王デュークである。
「人間風情がぁ……! よくも我が同胞、アースドラゴンを食らったなぁぁ!!」
 激怒した竜王のプレッシャーだけで、城の窓ガラスがガタガタと鳴る。
 事の発端は数日前。タローたちが畑を荒らすアースドラゴンを討伐し、その肉を美味しくBBQにしてしまったことだ。
 城のバルコニーでは、サリーとライザが武器を構える。
「くっ、さすがは竜王……! 私の全属性防御壁(フル・バリア)が紙のようだわ!」
「タロー様、お下がりください! 研ぎたての魔剣で、私が時間を稼ぎます!」
 二人の最強の妻が死を覚悟した、その時。
「おーい、うるさいぞー。スープの煮込み加減が変わるだろ」
 背後から、のんきな声が聞こえた。
 見れば、バルコニーに七輪を持ち込み、巨大な寸胴鍋をぐつぐつと煮込んでいるタローの姿があった。
 頭には、100均のパーティグッズコーナーで買った「ねじり鉢巻」を巻いている。
「き、貴様……我を前にして料理だと!? その鍋の中身はなんだ!」
 上空のデュークがギロリと鍋を睨む。
「ん? これか? お前が怒ってるアースドラゴンの『ガラ(骨)』だよ。いい出汁が出るんだわ」
 タローは悪びれもせず答えた。
 一瞬の静寂。
 直後、デュークの怒りが沸点を超えた。
「同胞の骨を煮込むだとぉぉ!? 外道が! その国ごと消し炭にしてくれるわ!!」
 デュークの口内に、太陽のごとき黄金の光が収束する。
 必殺のブレス『アルティメット・バースト』。放たれれば、タロー皇国は地図から消滅する。
 だが、タローは慌てず騒がず、100均の「プラスチック製おたま」ですくったスープを、「メラミン樹脂のどんぶり(龍の模様入り)」に注いだ。
「はい、お待ち。特製・竜骨ラーメン。麺はバリカタな」
 タローは湯気の立つどんぶりを、空に向かってひょいと掲げた。
 ふわぁ……。
 その瞬間。
 破壊の光を放とうとしていたデュークの鼻孔を、とてつもない香りが襲撃した。
「……ぬ?」
 それは、濃厚でクリーミー、それでいて野性味あふれる芳香。
 数千年生きてきた竜王ですら、一度も嗅いだことのない「食欲の暴力」だった。
 ブレスの光が霧散する。
「な、なんだその黄金の液体は……毒か? 毒なのか?」
「毒じゃねーよ。冷めるから早く食え。それとも、猫舌か?」
 タローの挑発に、プライドの高い竜王が乗らないわけがない。
 デュークはまばゆい光に包まれると、人間の姿――渋いイケオジへと変身し、バルコニーに降り立った。
「……いい度胸だ。食ってやる。だが、不味ければ即座に貴様を殺す!」
 デュークはどんぶりを受け取った。
 そして、白濁したスープを一口すする。
 ズズッ……。
 カッ!!
 デュークの目が見開かれた。
(な、なんだこれはぁぁぁッ!!?)
 口の中に広がる、濃厚な旨味の奔流。
 アースドラゴンの強靭な生命力が、数種類の香味野菜と秘伝のタレ(※100均の醤油)によって完全に調和し、芸術的なまでのスープへと昇華されている。
(これは……弔い!? 貴様、死んだアースドラゴンの魂を、最高の形で供養するためにこのスープを!?)
 誤解である。タローはただ、美味いラーメンが食いたかっただけだ。
 だが、デュークの箸は止まらない。
「ズルッ! ズルズルッ! ……ぬおぉぉ! この黄色い縮れた紐(麺)がスープを絡め取る! チャーシューの塩気が絶妙だ!」
 あっという間に麺を啜り切り、デュークはどんぶりを両手で持ち上げ、最後の一滴まで飲み干した。
 そして、どんぶりをテーブルに叩きつける。
 ガンッ!!
「……見事だ」
 デュークは震える声で言った。
 通常、竜王の膂力で叩きつけられれば、どんな陶器も粉砕される。
 だが、タローが出した「メラミンどんぶり」は、傷一つ付いていなかった。
(我の力に耐える器だと……!? この器もまた、神器級の強度を持つというのか……!)
「で、どうすんだ? 国を消し炭にするか?」
 タローが鍋をかき混ぜながら尋ねる。
 デュークはスッと立ち上がると、タローの前に歩み寄り――ガシッとその手を握った。
「人間……いや、大将! 我にこのスープの作り方を教えろ!!」
「は?」
「我は悟った。同胞をただ埋葬するのは無意味だ。こうして至高のスープとなり、生命を繋ぐことこそが、真の『竜の道』なのだと!」
「いや、知らんけど……。まあ、手伝ってくれるならいいよ」
 こうして、世界の危機は去った。
 翌日から、タロー皇国の城の庭には、奇妙な光景が見られるようになった。
 『屋台・竜王軒』
 赤提灯が揺れる屋台の中で、ねじり鉢巻をしたイケオジ(竜王)が、真剣な眼差しで湯切りをしている。
「いらっしゃい! 今日のスープはアースドラゴンの脊髄を10時間煮込んだ自信作だぞ!」
 そのラーメンを求めて、国中の兵士や、果ては噂を聞きつけた他国の密偵までが行列を作る。
 タロー皇国は軍事力だけでなく、「食文化」においても大陸を支配しつつあった。
 そんな平和な光景を見ながら、タローは思う。
「(やっぱり、100均の『ラーメンスープの素』を入れたことは黙っておこう……)」
 竜王がインスタントの味に感動しているとは露知らず、タロー皇国の評価はまたしても神域へと達するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

72時間ワンオペ死した元球児、女神の『ボッタクリ』通販と『絶対破壊不能』のノートPCで異世界最強のコンビニ・スローライフを始める

月神世一
ファンタジー
「剣? 魔法? いいえ、俺の武器は『鈍器になるノートPC』と『時速160kmの剛速球』です」 ​あらすじ ブラックコンビニで72時間連続勤務の末、過労死した元甲子園優勝投手・赤木大地。 目覚めた彼を待っていたのは、コタツでソシャゲ三昧のダメ女神・ルチアナだった。 ​「手違いで死なせちゃった☆ 詫び石代わりにこれあげる」 ​渡されたのは、地球のAmazonもGoogleも使える『絶対破壊不能』のノートPC。 ただし、購入レートは定価の10倍という超ボッタクリ仕様!? ​「ふざけんな! 俺は静かに暮らしたいんだよ!」 ​ブラック労働はもうこりごり。大地は異世界の緩衝地帯「ポポロ村」で、地球の物資とコンビニ知識、そして「うなる右腕(ジャイロボール)」を武器に、悠々自適なスローライフを目指す! ​……はずが、可愛い月兎族の村長を助けたり、腹ペコのエルフ王女を餌付けしたり、気づけば村の英雄に!? ​元球児が投げる「紅蓮の魔球」が唸り、女神の「ボッタクリ通販」が世界を変える! 異世界コンビニ・コメディ、開店ガラガラ!

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~

ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。 彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...