​100均グッズで快適生活してたら、世界最強の軍事帝国になっていた件~カップ麺とアルミホイルで、魔王も神獣も土下座してくるんですが~

月神世一

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EP 10

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平和主義宣言と、世界征服完了
 その日、タロー皇国の国境線は、地平線を埋め尽くすほどの「軍勢」に包囲されていた。
 東からは、鉄血帝国の重装歩兵団。
 西からは、魔法連邦の魔導師部隊。
 南からは、商業都市連合の傭兵団。
 大陸の主要な国家群が、申し合わせたようにタロー皇国へ進軍してきたのだ。
 城のバルコニーからその光景を見下ろしたタローは、心底うんざりした顔で溜息をついた。
「はぁ……。結局こうなるのかよ。みんなして寄ってたかって……」
 タローの背後には、最強の布陣が控えている。
 妻のサリーとライザ。
 そして、腕組みをする竜王デューク、あくびをする狼王フェンリル、鏡でメイクを確認している不死鳥フレア。
「タロー様、ご命令を。私の禁呪で、あの軍勢ごと地形を変えてさしあげますわ」
「俺が行こう。運動不足解消に、5分で全滅させてくる」
 サリーとフェンリルが物騒なことを言う。
 だが、タローは首を横に振った。
「ダメだ。あんな数と戦ったら、城下町のスーパー銭湯が混むだろ。それに、ラーメン屋台に行列ができるのも困る」
「「「御意(さすが陛下、民の安寧と食環境を第一に考えておられる……!)」」」
 盛大な解釈違いが発生する中、タローは手すりに足をかけ、虚空から【100円ショップ】のアイテムを取り出した。
 白と赤のプラスチックでできた『ハンドメガホン(サイレン機能付き)』である。
「あー、テステス。……聞こえるかー、お前らー」
 スイッチを入れると、タローの気怠げな声が、魔力拡声もなしに戦場全体へ響き渡った。
 進軍していた各国の王たちは、一斉に足を止めた。
(な、なんだあの魔道具は!? 詠唱なしで数万の軍勢に声を届けるとは……!)
 タローはメガホン越しに、正直な気持ちを語り始めた。
「俺はなぁ……もう疲れたんだよ。毎日毎日、報告書だの視察だのって」
 【世界の解釈】
 『聞け! 余は退屈している! 貴様らとの児戯ごとき外交には飽き飽きだとな!』
「俺がやりたいことは一つだ。ただ、旨いラーメン食って、フカフカの布団で昼寝がしたい。それだけなんだよ」
 【世界の解釈】
 『余が望むのは「食(資源)」と「寝床(領土)」の掌握のみ! 世界の全てを我が庭とし、安息を得るまで侵略は止まらぬ!』
「だからさぁ……お前らも、腹減ってんだろ? 無理して戦うことないじゃん。うちは飯だけはあるからさ、仲良く食おうぜ?」
 【世界の解釈】
 『抵抗など無意味だ。だが、余に降伏し、その膝を屈するならば……慈悲として「タロー皇国の豊かな資源」を分け与えてやろう。共に繁栄(支配)を受け入れよ!』
 タローの言葉が終わった瞬間。
 背後に控えていた神獣たちが、無意識に反応した。
「(おう、腹減ったな。ラーメン食うか)」
「(サウナの後の飯は最高だぜ)」
「(ダーリン♡ 今日はすき焼きね!)」
 「「「グオオオオオオオオッ!!!」」」
 神獣たちの「腹減った」という咆哮(同意)が、天を衝くようなプレッシャーとなって世界を震わせた。
 これ決定的だった。
 各国の王たちは、武器を捨て、震えながら地面にひれ伏した。
「こ、降伏だぁぁぁ!!」
「我らに慈悲を! 美味しいご飯をぉぉ!!」
「タロー皇帝陛下、万歳!! 世界統一、万歳!!」
 地平線の彼方まで続く土下座の波。
 白旗が海のように揺れている。
「……あれ?」
 タローはメガホンを下ろし、首をかしげた。
「なんか、みんな帰るどころか、入国審査に並び始めたぞ? ……ま、いっか。喧嘩にならなかったならヨシ!」
 タローは満足げに頷くと、ジャージのポケットに手を突っ込んで部屋に戻っていった。
 こうして、一滴の血も流れることなく、タロー皇国は名実ともに「世界最強の統一国家となったのである。
 ◇ ◇ ◇
 だが、タローはまだ知らなかった。
 平和になった世界に、退屈を持て余した**「最悪の妖精」が目をつけたことを。
 遥か上空。
 雲の上から、キラキラした粉を撒き散らす小さな影が見下ろしていた。
「あはっ☆ すごーい! あの国、神様も魔王もみーんな集まってるじゃん!」
 七色の羽を持つ妖精、キュルリンである。
 彼女の瞳は、新しいオモチャを見つけた子供のように、邪悪かつ純粋に輝いていた。
「平和すぎてつまんないよね? ね? ボクがもっと『ドキドキワクワクする場所』を作ってあげる!」
 キュルリンが指パッチンをする。
「スキル発動――【ダンジョンクリエイト(迷宮創造)】!」
 タロー皇国の地下深くに、常識外れの魔力が注ぎ込まれる。
 温泉、カジノ、絶叫マシン、そして致死率99%のトラップ。
 天国と地獄が融合した史上最悪のテーマパーク「天魔窟(てんまくつ)」が、今まさに産声を上げようとしていた。
「タローちゃん、覚悟してねっ☆ ボクの遊び場(ダンジョン)は、世界征服よりハードだよ?」
 タローの安息の日々は、まだまだ遠い。
 第2章――『激闘(遊び)! 天魔窟とパリピな妖精編』、開幕である。
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