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EP 59
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豹変の騎士、権威の重さ、そして風向きの変化
Aランク冒険者として、そしてプラチナランク商人として。二つの絶大な看板を背負った真守たちは、再び「妖精女王の悪戯」ダンジョンの入り口へとやってきた。
前回とは明らかに違う。彼らの周囲には、畏敬と緊張の空気が満ちていた。ダンジョンを警備する王国騎士団の兵士たちは、真守たちの姿を認めるや否や、直立不動で敬礼を送ってくる。
「Aランク冒険者パーティ『マイホーム』御一行のお成りだ!」
「頭を下げろ!リーダーのマモル様は、商業ギルドのプラチナ商人でもあるんだぞ!」
「まじかよ……本物の英雄じゃないか……」
兵士たちの囁き声は、もはや侮りではなく、伝説を目の当たりにしたかのような興奮に満ちていた。
その輪の中から、一人の男が慌てて駆け寄ってきた。レオパルド隊長だ。
しかし、その姿は以前の尊大で高圧的なものではなかった。彼は、真守たちの前で、まるで王にでも謁見するかのように深々と頭を下げた。
「よ、ようこそお越しくださいました、マモル様!皆様の御昇級、心よりお祝い申し上げます!」
その過剰に丁寧な言葉遣いと、作り物めいた笑顔に、真守は思わず一歩後ずさった。
「はぁ……どうも、レオパルド団長。それで、今日も入り口の警備を?」
「いえいえ!とんでもございません!」レオパルドはぶんぶんと首を横に振った。「皆様がいつ第三階層の探索にお越しになられても良いように、このレオパルド、部下を率いて、入り口から第二階層ボス部屋までの道のりにいる雑魚モンスターを掃討し、ダンジョン内を『清掃』しておりました!」
「え? あ、はぁ……ありがとうございます?」
見え透いた嘘と媚びに、真守は困惑して曖昧に礼を言うしかない。
レオパルドは、次にデュラスの方を向き、今にも土下座しそうな勢いで頭を下げた。
「デュラス様!先日は、このレオパルド、大変な非礼を働きました!魔族の方への理解が足りず、浅はかな発言をしてしまったこと、どうかご容赦ください!」
そして、フィリアとエルミナにも、にこやかな(しかし引きつった)笑顔を向ける。
「フィリア様、エルミナ様も、何かご不自由なことはございませんか?この騎士団、何なりとお使いください!」
そのあまりの豹変ぶりに、フィリアは「ひっ!」と小さく悲鳴を上げ、真守の後ろに隠れてしまった。「い、いえ……別に不自由などは……」
エルミナも、聖騎士としてどう対応すべきか分からず、「そ、そうですね~、特に……お気遣いなく……」と、困惑した笑みを浮かべるのが精一杯だった。
やがて、レオパルドは本題を切り出した。その瞳には、露骨なまでの保身と出世欲がギラついている。
「つきましては、マモル様!マモル様ほどの御方が、いずれエルドラド王国の皇帝陛下に謁見される機会もございましょう!その折には、是非とも!この騎士団と、このわたくしレオパルドが、いかに辺境の平和と民の安全のために粉骨砕身しているか、良きお言葉をかけて頂きたく……!」
「は、はぁ……」
もう十分だった。真守は、この男とこれ以上話すのは時間の無駄だと判断した。
「では、我々は先を急ぎますので、これで失礼します」
「は、はい!もちろんでございますとも!」
真守たちがダンジョンの中へと歩を進めると、レオパルドは「ハハーッ!!」と、まるで召使いのように深々と頭を下げ、その姿が見えなくなるまで見送り続けた。
ダンジョンのひんやりとした空気に包まれた通路で、真守はようやく大きなため息をついた。
「な、何だったんだ、一体……?アレ、本当に同じ人間か?」
「マモル、なんだか、すごく気持ち悪かったね……」フィリアが、まだ少し震えながら言う。
「本当ですわ。人の態度が、あそこまで変わるとは……」エルミナも、顔をしかめている。
その時、デュラスがふん、と鼻で笑った。
「分かりやすい奴だ。風向きが変わったと見るや、慌てて媚びへつらいに来たのだ」
「風向き?」
「ああ」デュラスは、呆れる真守に説明する。「商業ギルドのプラチナ商人が持つ経済力と、S級ダンジョンを攻略するAランク冒険者が持つ武力と名声。その両方を持つお前は、もはや一介の騎士団長ごときが敵に回していい相手ではない。むしろ、全力で取り入るべき権力者になったということだ。あの男は、自分の首が惜しいだけさ」
「……なるほどな」
真守は、デュラスの言葉に深く納得した。
これが、「出過ぎた杭は打たれなくなる」ということの一つの答えなのだ。
力とは、地位とは、こういう形で現れるのか。面白くもあり、少しだけ、物悲しくもある。
だが、感傷に浸っている暇はない。
目の前には、未知なる第三階層へと続く道が口を開けている。
「よし、行こうか」
真守が仲間たちに声をかける。
レオパルドの媚びへつらいなど、もはや些末なことだ。彼らには、彼らにしか進めない道がある。
その先にある真実と、そして仲間たちとの未来を掴むために。
真守は、新たな決意を胸に、ダンジョンの深淵へと、再び足を踏み入れた。
Aランク冒険者として、そしてプラチナランク商人として。二つの絶大な看板を背負った真守たちは、再び「妖精女王の悪戯」ダンジョンの入り口へとやってきた。
前回とは明らかに違う。彼らの周囲には、畏敬と緊張の空気が満ちていた。ダンジョンを警備する王国騎士団の兵士たちは、真守たちの姿を認めるや否や、直立不動で敬礼を送ってくる。
「Aランク冒険者パーティ『マイホーム』御一行のお成りだ!」
「頭を下げろ!リーダーのマモル様は、商業ギルドのプラチナ商人でもあるんだぞ!」
「まじかよ……本物の英雄じゃないか……」
兵士たちの囁き声は、もはや侮りではなく、伝説を目の当たりにしたかのような興奮に満ちていた。
その輪の中から、一人の男が慌てて駆け寄ってきた。レオパルド隊長だ。
しかし、その姿は以前の尊大で高圧的なものではなかった。彼は、真守たちの前で、まるで王にでも謁見するかのように深々と頭を下げた。
「よ、ようこそお越しくださいました、マモル様!皆様の御昇級、心よりお祝い申し上げます!」
その過剰に丁寧な言葉遣いと、作り物めいた笑顔に、真守は思わず一歩後ずさった。
「はぁ……どうも、レオパルド団長。それで、今日も入り口の警備を?」
「いえいえ!とんでもございません!」レオパルドはぶんぶんと首を横に振った。「皆様がいつ第三階層の探索にお越しになられても良いように、このレオパルド、部下を率いて、入り口から第二階層ボス部屋までの道のりにいる雑魚モンスターを掃討し、ダンジョン内を『清掃』しておりました!」
「え? あ、はぁ……ありがとうございます?」
見え透いた嘘と媚びに、真守は困惑して曖昧に礼を言うしかない。
レオパルドは、次にデュラスの方を向き、今にも土下座しそうな勢いで頭を下げた。
「デュラス様!先日は、このレオパルド、大変な非礼を働きました!魔族の方への理解が足りず、浅はかな発言をしてしまったこと、どうかご容赦ください!」
そして、フィリアとエルミナにも、にこやかな(しかし引きつった)笑顔を向ける。
「フィリア様、エルミナ様も、何かご不自由なことはございませんか?この騎士団、何なりとお使いください!」
そのあまりの豹変ぶりに、フィリアは「ひっ!」と小さく悲鳴を上げ、真守の後ろに隠れてしまった。「い、いえ……別に不自由などは……」
エルミナも、聖騎士としてどう対応すべきか分からず、「そ、そうですね~、特に……お気遣いなく……」と、困惑した笑みを浮かべるのが精一杯だった。
やがて、レオパルドは本題を切り出した。その瞳には、露骨なまでの保身と出世欲がギラついている。
「つきましては、マモル様!マモル様ほどの御方が、いずれエルドラド王国の皇帝陛下に謁見される機会もございましょう!その折には、是非とも!この騎士団と、このわたくしレオパルドが、いかに辺境の平和と民の安全のために粉骨砕身しているか、良きお言葉をかけて頂きたく……!」
「は、はぁ……」
もう十分だった。真守は、この男とこれ以上話すのは時間の無駄だと判断した。
「では、我々は先を急ぎますので、これで失礼します」
「は、はい!もちろんでございますとも!」
真守たちがダンジョンの中へと歩を進めると、レオパルドは「ハハーッ!!」と、まるで召使いのように深々と頭を下げ、その姿が見えなくなるまで見送り続けた。
ダンジョンのひんやりとした空気に包まれた通路で、真守はようやく大きなため息をついた。
「な、何だったんだ、一体……?アレ、本当に同じ人間か?」
「マモル、なんだか、すごく気持ち悪かったね……」フィリアが、まだ少し震えながら言う。
「本当ですわ。人の態度が、あそこまで変わるとは……」エルミナも、顔をしかめている。
その時、デュラスがふん、と鼻で笑った。
「分かりやすい奴だ。風向きが変わったと見るや、慌てて媚びへつらいに来たのだ」
「風向き?」
「ああ」デュラスは、呆れる真守に説明する。「商業ギルドのプラチナ商人が持つ経済力と、S級ダンジョンを攻略するAランク冒険者が持つ武力と名声。その両方を持つお前は、もはや一介の騎士団長ごときが敵に回していい相手ではない。むしろ、全力で取り入るべき権力者になったということだ。あの男は、自分の首が惜しいだけさ」
「……なるほどな」
真守は、デュラスの言葉に深く納得した。
これが、「出過ぎた杭は打たれなくなる」ということの一つの答えなのだ。
力とは、地位とは、こういう形で現れるのか。面白くもあり、少しだけ、物悲しくもある。
だが、感傷に浸っている暇はない。
目の前には、未知なる第三階層へと続く道が口を開けている。
「よし、行こうか」
真守が仲間たちに声をかける。
レオパルドの媚びへつらいなど、もはや些末なことだ。彼らには、彼らにしか進めない道がある。
その先にある真実と、そして仲間たちとの未来を掴むために。
真守は、新たな決意を胸に、ダンジョンの深淵へと、再び足を踏み入れた。
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