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EP 2
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物理最強のノートパソコン
「うわああああっ!?」
視界が真っ白に染まり、浮遊感に襲われたかと思うと、俺の体は地面へと叩きつけられた。
「ぐっ……!」
背中に走る鈍い痛み。土と草の匂い。
目を開けると、そこは鬱蒼とした森の中だった。
木々の隙間から差し込む光は弱く、空気はひんやりと冷たい。
「……マジかよ。本当に異世界か」
俺は身体を起こし、周囲を見渡した。
見慣れない植物。巨大なシダのような葉。
そして、手元には無骨な黒いノートパソコン『ルチアナ・ブック』が一台。
「あの女神、本当に手ぶらで放り出しやがった……」
食料も水もない。あるのはこのPCと、ポケットに入っていた財布、そしてスマホだけ。
まずは状況確認だ。水場を探して、それから――。
キンッ! ガキンッ!
思考を遮るように、金属がぶつかり合う甲高い音が響いた。
風に乗って、微かに焦げ臭い匂いと、男の怒声が聞こえる。
「逃がすな! 囲め!」
「生意気なガキが! 大人しくしろ!」
……嫌な予感がする。
ブラック企業の深夜シフトで培った「トラブル感知センサー」が警鐘を鳴らしている。
関わらない方がいい。俺はただの一般人だ。
そう思って踵を返そうとした時だった。
「――っ! お願い、この子たちには手を出さないで!」
凛とした、しかし必死な少女の声が聞こえた。
その声に、なぜか足が止まる。
理不尽な暴力に晒されている誰かの声。それは、かつて店内で酔っ払いに絡まれていた後輩バイトの声と重なった。
「……チッ。最悪だ」
俺は舌打ちをし、音のする方へと走り出した。
森が開けた場所に出ると、そこには凄惨な光景が広がっていた。
粗末な鎧をまとった男たちが5人。
剣や槍を構え、一人の少女を取り囲んでいる。
男たちの耳や尻尾を見るに、彼らは人間ではない。獣人だ。
包囲されている少女は、ボロボロの服を着ていたが、その瞳は燃えるように赤く、美しい白銀の髪が風になびいていた。
頭には長いウサギの耳。
彼女の背後には、怯えて震える二人の子供がいる。
「諦めろ、キャルル。貴様のような上玉、高く売れるんだよ」
リーダー格らしき狼男が、下卑た笑みを浮かべて剣を突きつける。
「断るわ! 私はもう、誰の道具にもならない!」
少女――キャルルと呼ばれたウサギ耳の子は、両手に持った短い棒(トンファー)を構え、子供たちを背に守り続けている。
だが、多勢に無勢だ。彼女の肩や太ももには切り傷があり、呼吸も荒い。
「なら、手足の一本でもへし折って連れて行くまでだ!」
狼男が剣を振り上げ、無防備な少女へと踏み込んだ。
少女は反応できない。子供たちが悲鳴を上げる。
――プツン。
俺の中で、何かが切れる音がした。
72時間のワンオペ。
理不尽なクレーム。
高圧的な上司。
そして、異世界に来てまで目にする、弱い者イジメ。
「……いい加減にしろよ、お前らァ!!」
俺は叫びながら、草むらを飛び出した。
「あぁ!? 誰だ貴様!」
狼男が驚いて振り返る。
俺の手には武器がない。あるのは、さっきルチアナから押し付けられた『ノートパソコン』だけだ。
だが、俺は元投手だ。
握り慣れたボールはないが、このPCの「重心」と「形状」は、指先にしっくりと馴染んでいた。
(ルチアナが言ってたな。『絶対破壊不能』だって)
なら、壊れる心配はない。
俺は走りながら大きく振りかぶり、全身のバネを使って右腕を振るった。
「食らえッ! ノートPC投法(ストレート)ォォォッ!!」
指先から放たれた黒い塊は、唸りを上げて空を切り裂いた。
その速度、推定150キロ。
しかも、俺の癖球である「ジャイロ回転」が掛かっている。
ヒュンッ!!
「は?」
狼男がマヌケな声を上げた瞬間。
回転するノートPCの角が、彼の構えていた鉄の剣に激突した。
ガギィィィンッ!!
信じられないことに、鉄製の剣が飴細工のようにへし折れ、粉砕された。
破壊不能(インデストラクション)の硬度は、鋼鉄すら上回る。
しかし、PCの勢いは止まらない。
剣を砕いたその軌道のまま、狼男の顔面へと吸い込まれる。
ドゴォォォォォンッ!!
「ぶべらっ!?」
鈍い音と共に、狼男の体が後方へ吹き飛んだ。
きりもみ回転しながら数メートル飛び、大木に激突して白目を剥く。
静寂。
残された4人の兵士も、助けられた少女も、ポカンと口を開けてその光景を見ていた。
俺は肩で息をしながら、地面に落ちたノートPCを拾い上げた。
恐る恐る確認する。
……傷一つない。
液晶割れはおろか、泥汚れすら付いていない。
起動してみると、Windowsのロゴが涼しい顔で立ち上がった。
「マジかよ……最強じゃねーか、これ」
俺はPCを小脇に抱え、呆然とする兵士たちを睨みつけた。
「おい、次はお前らか? 今なら『再起動(物理)』してやるぞ」
俺の挑発に、兵士たちが我に返り、顔色を変えて武器を構え直した。
「き、貴様! 何をした! 魔法使いか!?」
「ただの通りすがりのコンビニ店員だ! 文句あるか!」
多対一。
状況は依然として不利だ。
だが、俺の乱入によって生まれた「隙」。
それを見逃すような彼女ではなかった。
「……隙ありッ!」
ウサギ耳の少女、キャルルの瞳が鋭く光った。
「うわああああっ!?」
視界が真っ白に染まり、浮遊感に襲われたかと思うと、俺の体は地面へと叩きつけられた。
「ぐっ……!」
背中に走る鈍い痛み。土と草の匂い。
目を開けると、そこは鬱蒼とした森の中だった。
木々の隙間から差し込む光は弱く、空気はひんやりと冷たい。
「……マジかよ。本当に異世界か」
俺は身体を起こし、周囲を見渡した。
見慣れない植物。巨大なシダのような葉。
そして、手元には無骨な黒いノートパソコン『ルチアナ・ブック』が一台。
「あの女神、本当に手ぶらで放り出しやがった……」
食料も水もない。あるのはこのPCと、ポケットに入っていた財布、そしてスマホだけ。
まずは状況確認だ。水場を探して、それから――。
キンッ! ガキンッ!
思考を遮るように、金属がぶつかり合う甲高い音が響いた。
風に乗って、微かに焦げ臭い匂いと、男の怒声が聞こえる。
「逃がすな! 囲め!」
「生意気なガキが! 大人しくしろ!」
……嫌な予感がする。
ブラック企業の深夜シフトで培った「トラブル感知センサー」が警鐘を鳴らしている。
関わらない方がいい。俺はただの一般人だ。
そう思って踵を返そうとした時だった。
「――っ! お願い、この子たちには手を出さないで!」
凛とした、しかし必死な少女の声が聞こえた。
その声に、なぜか足が止まる。
理不尽な暴力に晒されている誰かの声。それは、かつて店内で酔っ払いに絡まれていた後輩バイトの声と重なった。
「……チッ。最悪だ」
俺は舌打ちをし、音のする方へと走り出した。
森が開けた場所に出ると、そこには凄惨な光景が広がっていた。
粗末な鎧をまとった男たちが5人。
剣や槍を構え、一人の少女を取り囲んでいる。
男たちの耳や尻尾を見るに、彼らは人間ではない。獣人だ。
包囲されている少女は、ボロボロの服を着ていたが、その瞳は燃えるように赤く、美しい白銀の髪が風になびいていた。
頭には長いウサギの耳。
彼女の背後には、怯えて震える二人の子供がいる。
「諦めろ、キャルル。貴様のような上玉、高く売れるんだよ」
リーダー格らしき狼男が、下卑た笑みを浮かべて剣を突きつける。
「断るわ! 私はもう、誰の道具にもならない!」
少女――キャルルと呼ばれたウサギ耳の子は、両手に持った短い棒(トンファー)を構え、子供たちを背に守り続けている。
だが、多勢に無勢だ。彼女の肩や太ももには切り傷があり、呼吸も荒い。
「なら、手足の一本でもへし折って連れて行くまでだ!」
狼男が剣を振り上げ、無防備な少女へと踏み込んだ。
少女は反応できない。子供たちが悲鳴を上げる。
――プツン。
俺の中で、何かが切れる音がした。
72時間のワンオペ。
理不尽なクレーム。
高圧的な上司。
そして、異世界に来てまで目にする、弱い者イジメ。
「……いい加減にしろよ、お前らァ!!」
俺は叫びながら、草むらを飛び出した。
「あぁ!? 誰だ貴様!」
狼男が驚いて振り返る。
俺の手には武器がない。あるのは、さっきルチアナから押し付けられた『ノートパソコン』だけだ。
だが、俺は元投手だ。
握り慣れたボールはないが、このPCの「重心」と「形状」は、指先にしっくりと馴染んでいた。
(ルチアナが言ってたな。『絶対破壊不能』だって)
なら、壊れる心配はない。
俺は走りながら大きく振りかぶり、全身のバネを使って右腕を振るった。
「食らえッ! ノートPC投法(ストレート)ォォォッ!!」
指先から放たれた黒い塊は、唸りを上げて空を切り裂いた。
その速度、推定150キロ。
しかも、俺の癖球である「ジャイロ回転」が掛かっている。
ヒュンッ!!
「は?」
狼男がマヌケな声を上げた瞬間。
回転するノートPCの角が、彼の構えていた鉄の剣に激突した。
ガギィィィンッ!!
信じられないことに、鉄製の剣が飴細工のようにへし折れ、粉砕された。
破壊不能(インデストラクション)の硬度は、鋼鉄すら上回る。
しかし、PCの勢いは止まらない。
剣を砕いたその軌道のまま、狼男の顔面へと吸い込まれる。
ドゴォォォォォンッ!!
「ぶべらっ!?」
鈍い音と共に、狼男の体が後方へ吹き飛んだ。
きりもみ回転しながら数メートル飛び、大木に激突して白目を剥く。
静寂。
残された4人の兵士も、助けられた少女も、ポカンと口を開けてその光景を見ていた。
俺は肩で息をしながら、地面に落ちたノートPCを拾い上げた。
恐る恐る確認する。
……傷一つない。
液晶割れはおろか、泥汚れすら付いていない。
起動してみると、Windowsのロゴが涼しい顔で立ち上がった。
「マジかよ……最強じゃねーか、これ」
俺はPCを小脇に抱え、呆然とする兵士たちを睨みつけた。
「おい、次はお前らか? 今なら『再起動(物理)』してやるぞ」
俺の挑発に、兵士たちが我に返り、顔色を変えて武器を構え直した。
「き、貴様! 何をした! 魔法使いか!?」
「ただの通りすがりのコンビニ店員だ! 文句あるか!」
多対一。
状況は依然として不利だ。
だが、俺の乱入によって生まれた「隙」。
それを見逃すような彼女ではなかった。
「……隙ありッ!」
ウサギ耳の少女、キャルルの瞳が鋭く光った。
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