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第四章 統合幕僚、そしてDIY
EP 10
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金曜日のバターチキン、または壺の中の熱風
金曜日の夜。
イージスの裏庭には、赤い怪物が口を開けて待っていた。
完成したばかりの『ドラゴン・タンドール』だ。
内部温度は500度超。覗き込むだけで前髪がチリチリするほどの熱気が渦巻いている。
「……準備はいいか、龍魔呂」
「おう。いつでもいける」
龍魔呂は、ボウルに入った白い生地――発酵させた小麦粉の団子(ナン生地)を手に取った。
その顔は、強敵と対峙する剣闘士のように真剣だ。
「まずは『タンドリーチキン』だ」
坂上が、金串に刺さった鶏肉を渡す。
ヨーグルトと数種類のスパイス、そしてレモン汁に一晩漬け込んだ肉は、鮮やかな赤橙色に染まっている。
龍魔呂が串を壺の中に吊るす。
ジュワッ……!
肉から落ちた脂が底の炭に当たり、芳ばしい煙となって肉を燻(いぶ)す。
遠赤外線の効果で、表面は一瞬で乾き、旨味が内部に閉じ込められていく。
「次は本番だ。……ナンを焼くぞ」
龍魔呂が生地を両手でパンパンと叩き、雫型に引き伸ばした。
そして、深呼吸。
「……ふんッ!」
彼は迷いなく、灼熱の壺の中に右腕を突っ込んだ。
常人なら火傷では済まない。だが、闘気で皮膚をコーティングした彼の腕は、熱の壁を突破する。
バチンッ!!
内壁に生地を叩きつける音。
生地は熱い壁にへばりつき、重力に逆らって留まった。
数秒後。
生地がプクプクと膨らみ始め、焦げ目がついていく。
「……すげぇ。生き物みてぇだ」
龍魔呂が汗だくになりながら見守る。
わずか2分。
彼は長い鉄の鉤(かぎ)を使い、焼き上がったナンを剥がし取った。
巨大な木の葉のような形。表面はパリッと、中はふっくら。
焼きたての小麦の香りが、あたり一面に広がる。
「……完璧だ」
坂上もまた、カマドの前で仕上げに入っていた。
鍋の中には、トマトベースのオレンジ色のルー。
そこに、たっぷりのバターと生クリームを投入する。
「金曜日の定番は『辛口』だが……今夜は『甘口とコク』で攻める」
最後に、タンドールで焼き上がったチキンを一口大に切って混ぜ合わせる。
**『特製・濃厚バターチキンカレー』**の完成だ。
***
テーブルには、山盛りのナンと、オレンジ色に輝くカレーが並んだ。
アルカが目を輝かせて尻尾を振っている。
「きゅ~! おっきいパンなの!」
「いただきますぅ! アチチッ!」
ルナがナンをちぎる。
パリッという音と共に、中から湯気が立ち上る。
それをカレーにたっぷりと浸して、口へ。
「ん~~~っ! 甘いです! でもスパイシーです!」
バターの濃厚なコクとトマトの酸味、そしてカシューナッツの甘味が、複雑に絡み合う。
辛さは控えめだが、スパイスの香りは鮮烈だ。
龍魔呂も、自分が焼いたナンを齧った。
「……ッ!」
驚愕。
鉄板で焼いたパンケーキとは違う。
外側のクリスピーな食感と、内側のモチモチとした弾力。
噛めば噛むほど小麦の甘味が出てくる。
「……こいつは、いくらでも入るぞ」
龍魔呂の手が止まらない。
ナン単体でも美味いが、カレーにつけると凶悪なまでの破壊力を発揮する。
チキンの香ばしさも相まって、まさに「ご馳走」だ。
「きゅ~! アルカ、これすき!」
アルカは自分の顔ほどもあるナンを両手で持ち、器用に食べている。
口の周りがオレンジ色になっているが、気にする様子もない。
坂上は、満足げにコーヒー(今日はラッシーに変更)を飲んだ。
「……政治も料理も同じだ」
彼はウィンドウのログ(【新メニュー開発:500P】【食文化の革新:1000P】)を眺めながら呟いた。
「仕込みと、火加減。……これを見誤らなければ、大抵のことは上手くいく」
国税局との暗闘、海軍との駆け引き。
それらを乗り越えて食べるカレーは、格別の味がした。
「へっ。……次は『チーズ』を入れて焼いてみるか?」
「お、いいな。チーズナンか」
「私はチョコを入れたいですぅ!」
夢が広がるタンドール料理。
イージス商会に、また一つ強力な武器(メニュー)が加わった夜だった。
金曜日の夜。
イージスの裏庭には、赤い怪物が口を開けて待っていた。
完成したばかりの『ドラゴン・タンドール』だ。
内部温度は500度超。覗き込むだけで前髪がチリチリするほどの熱気が渦巻いている。
「……準備はいいか、龍魔呂」
「おう。いつでもいける」
龍魔呂は、ボウルに入った白い生地――発酵させた小麦粉の団子(ナン生地)を手に取った。
その顔は、強敵と対峙する剣闘士のように真剣だ。
「まずは『タンドリーチキン』だ」
坂上が、金串に刺さった鶏肉を渡す。
ヨーグルトと数種類のスパイス、そしてレモン汁に一晩漬け込んだ肉は、鮮やかな赤橙色に染まっている。
龍魔呂が串を壺の中に吊るす。
ジュワッ……!
肉から落ちた脂が底の炭に当たり、芳ばしい煙となって肉を燻(いぶ)す。
遠赤外線の効果で、表面は一瞬で乾き、旨味が内部に閉じ込められていく。
「次は本番だ。……ナンを焼くぞ」
龍魔呂が生地を両手でパンパンと叩き、雫型に引き伸ばした。
そして、深呼吸。
「……ふんッ!」
彼は迷いなく、灼熱の壺の中に右腕を突っ込んだ。
常人なら火傷では済まない。だが、闘気で皮膚をコーティングした彼の腕は、熱の壁を突破する。
バチンッ!!
内壁に生地を叩きつける音。
生地は熱い壁にへばりつき、重力に逆らって留まった。
数秒後。
生地がプクプクと膨らみ始め、焦げ目がついていく。
「……すげぇ。生き物みてぇだ」
龍魔呂が汗だくになりながら見守る。
わずか2分。
彼は長い鉄の鉤(かぎ)を使い、焼き上がったナンを剥がし取った。
巨大な木の葉のような形。表面はパリッと、中はふっくら。
焼きたての小麦の香りが、あたり一面に広がる。
「……完璧だ」
坂上もまた、カマドの前で仕上げに入っていた。
鍋の中には、トマトベースのオレンジ色のルー。
そこに、たっぷりのバターと生クリームを投入する。
「金曜日の定番は『辛口』だが……今夜は『甘口とコク』で攻める」
最後に、タンドールで焼き上がったチキンを一口大に切って混ぜ合わせる。
**『特製・濃厚バターチキンカレー』**の完成だ。
***
テーブルには、山盛りのナンと、オレンジ色に輝くカレーが並んだ。
アルカが目を輝かせて尻尾を振っている。
「きゅ~! おっきいパンなの!」
「いただきますぅ! アチチッ!」
ルナがナンをちぎる。
パリッという音と共に、中から湯気が立ち上る。
それをカレーにたっぷりと浸して、口へ。
「ん~~~っ! 甘いです! でもスパイシーです!」
バターの濃厚なコクとトマトの酸味、そしてカシューナッツの甘味が、複雑に絡み合う。
辛さは控えめだが、スパイスの香りは鮮烈だ。
龍魔呂も、自分が焼いたナンを齧った。
「……ッ!」
驚愕。
鉄板で焼いたパンケーキとは違う。
外側のクリスピーな食感と、内側のモチモチとした弾力。
噛めば噛むほど小麦の甘味が出てくる。
「……こいつは、いくらでも入るぞ」
龍魔呂の手が止まらない。
ナン単体でも美味いが、カレーにつけると凶悪なまでの破壊力を発揮する。
チキンの香ばしさも相まって、まさに「ご馳走」だ。
「きゅ~! アルカ、これすき!」
アルカは自分の顔ほどもあるナンを両手で持ち、器用に食べている。
口の周りがオレンジ色になっているが、気にする様子もない。
坂上は、満足げにコーヒー(今日はラッシーに変更)を飲んだ。
「……政治も料理も同じだ」
彼はウィンドウのログ(【新メニュー開発:500P】【食文化の革新:1000P】)を眺めながら呟いた。
「仕込みと、火加減。……これを見誤らなければ、大抵のことは上手くいく」
国税局との暗闘、海軍との駆け引き。
それらを乗り越えて食べるカレーは、格別の味がした。
「へっ。……次は『チーズ』を入れて焼いてみるか?」
「お、いいな。チーズナンか」
「私はチョコを入れたいですぅ!」
夢が広がるタンドール料理。
イージス商会に、また一つ強力な武器(メニュー)が加わった夜だった。
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