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第一章 0歳児の勇者
EP 18
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ルナハンに、温かな光が満ちる夜が訪れた。
シンフォニア家のダイニングルームは、色とりどりの飾り付けで彩られていた。
今日は、リアン・シンフォニアの1歳の誕生日。
元三つ星シェフの魂を持つ彼にとって、地獄のような「寝たきり生活」からの卒業であり、記念すべき日だ。
「さぁ、リアンちゃん。お誕生日おめでとう!」
テーブルの中央には、巨大なホールケーキが鎮座していた。
元A級冒険者のマーサが集めた最高級のフルーツと、メイド検定1級のオニヒメが焼き上げたふわふわのスポンジ。
プロと素材の力が融合した、宝石箱のようなケーキだ。
マーサが微笑みながら、ケーキの中央に立てられた一本のロウソクに、指先から出した小さな魔法の火を灯す。
「ハッピバースデー、リアーン♪」
オニヒメとマーサが手拍子を打ち、アークスが野太い声で歌う。
ベビーチェアに座るリアンは、その光景を眩しそうに見つめていた。
(……ありがてぇ。本当に、いい家族だ)
歌が終わり、クライマックス。ロウソクの火を消す瞬間だ。
マーサがリアンに顔を近づける。
「さあリアン、ふーってしてごらん?」
「だぁ!(任せろ! 肺活量は鍛えてある!)」
リアンが息を吸い込んだ、その時だった。
「おめでとう!! リアン!!」
ブワッ!!
感極まったアークスが、リアンの横から思いっきり息(闘気混じり)を吹きかけた。
ロウソクの火は一瞬で消し飛び、ケーキの上のクリームが少しズレた。
「……」
場が凍りつく。
「……貴方?」
マーサのこめかみに青筋が浮かぶ。
「あ……いや、その、つい嬉しくて……」
アークスが冷や汗をかいて縮こまる。
リアンは呆れつつも、そんな父の不器用な愛が愛おしくなり、小さな手を叩いて笑った。
「パパ! ママ!」
「!!」
初めてハッキリと言葉にした(ように見せた)。
その瞬間、アークスの目から涙が噴き出した。
「うおおお! 聞いたかマーサ! パパって言った! 俺を呼んだぞ!」
「えぇ、聞いたわ! ママとも言ったわ! 天才よこの子は!」
親バカ全開で抱き合って喜ぶ両親。
リアンは心の中でVサインをする。
(ふふん、1歳児の演技力も板についてきたな)
「もうリアンも1歳かぁ……早いもんだな」
「えぇ。もうハイハイだって出来るのよ。昨日なんて、凄いスピードで廊下を走っていたわ」
「だぁっ!(おうよ! センチネルとの夜間訓練で鍛えた『高速匍匐(ハイスピード・ハイハイ)』だ!)」
リアンが得意げに胸を張ると、アークスが「そうだ!」と何かを取り出した。
「よぉし、今日は特別だ。父ちゃんからのプレゼントだぞ!」
ドンッ、とテーブルに置かれたのは、無骨な木箱。
リアンの目が釘付けになる。その箱に書かれた文字は、彼が待ち焦がれていたものだった。
「街の玩具屋で一番いいやつを買ってきた。**『マグナギア・プロトタイプ素体』と、『カスタムパーツキット』**だ!」
箱の中には、精巧な金属製の骨格(フレーム)と、外装パーツがぎっしりと詰まっていた。
胡桃割り人形のセンチネルとは違う、本物の「戦闘用ホビー」だ。
「まぁ、貴方ったら。まだリアンには早いでしょう? 対象年齢を見てよ」
マーサが苦笑するが、アークスはニカッと笑う。
「いやぁ、触らせるだけなら良いだろ? 男の子はこういうメカメカしいのが好きなんだ」
リアンは箱に飛びつかんばかりに身を乗り出した。
「パパ! だぁーっ!!(でかした親父ぃぃ!! よっしゃ念願のマグナギアだ!)」
リアンの脳内では、既に設計図が展開されていた。
ネット通販で買える「ミニ四駆のモーター」や「カーボン素材」、「精密ネジ」を組み込めば、この素体は化ける。
センチネルも愛着があるが、これからはこいつがメインウェポンだ。
(待ってろよ、アッシュ。今度会ったら、この新機体でトラウマを植え付けてやるからな)
アークスは、目を輝かせる息子を見て、大きな手でその頭を撫でた。
「どんどん大きくなるんだぞ、リアン。お前は強い男になる」
「えぇ。貴方は私達の希望なんだから。……愛しているわ、リアン」
マーサが優しくキスをする。
リアンは、二人の温かさを噛み締めた。
転生前、孤独に料理と向き合っていた自分に、神様(ルチアナ)がくれた最高の贈り物。
「だぁ!(ありがとうよ、父ちゃん、母ちゃん!)」
リアンは満面の笑みで応えた。
その様子を、静かに見守っていたオニヒメが、恭しくナイフを手に取った。
「ふふ、素敵な誕生日ですね。さぁ、ケーキを切り分けましょうか。私の自信作ですよ」
「そうね。食べましょう」
「おお! 美味しそうだ!」
家族団欒の光景。
テーブルの隅では、役目を終えたわけではないが、少し出番が減りそうな胡桃割り人形『センチネル』が、静かにその幸せな光景を見つめているようだった。
1歳。
身体が動くようになる。
資金(ネット通販)がある。
技術(マグナギア)が手に入った。
準備は整った。
ここから、リアン・シンフォニアの――いや、元三つ星シェフ青田優也の、世界を巻き込む快進撃が始まるのだ。
甘いケーキの味と共に、リアンの野望は大きく膨らんでいく。
【第一章 0歳児の勇者 完】
シンフォニア家のダイニングルームは、色とりどりの飾り付けで彩られていた。
今日は、リアン・シンフォニアの1歳の誕生日。
元三つ星シェフの魂を持つ彼にとって、地獄のような「寝たきり生活」からの卒業であり、記念すべき日だ。
「さぁ、リアンちゃん。お誕生日おめでとう!」
テーブルの中央には、巨大なホールケーキが鎮座していた。
元A級冒険者のマーサが集めた最高級のフルーツと、メイド検定1級のオニヒメが焼き上げたふわふわのスポンジ。
プロと素材の力が融合した、宝石箱のようなケーキだ。
マーサが微笑みながら、ケーキの中央に立てられた一本のロウソクに、指先から出した小さな魔法の火を灯す。
「ハッピバースデー、リアーン♪」
オニヒメとマーサが手拍子を打ち、アークスが野太い声で歌う。
ベビーチェアに座るリアンは、その光景を眩しそうに見つめていた。
(……ありがてぇ。本当に、いい家族だ)
歌が終わり、クライマックス。ロウソクの火を消す瞬間だ。
マーサがリアンに顔を近づける。
「さあリアン、ふーってしてごらん?」
「だぁ!(任せろ! 肺活量は鍛えてある!)」
リアンが息を吸い込んだ、その時だった。
「おめでとう!! リアン!!」
ブワッ!!
感極まったアークスが、リアンの横から思いっきり息(闘気混じり)を吹きかけた。
ロウソクの火は一瞬で消し飛び、ケーキの上のクリームが少しズレた。
「……」
場が凍りつく。
「……貴方?」
マーサのこめかみに青筋が浮かぶ。
「あ……いや、その、つい嬉しくて……」
アークスが冷や汗をかいて縮こまる。
リアンは呆れつつも、そんな父の不器用な愛が愛おしくなり、小さな手を叩いて笑った。
「パパ! ママ!」
「!!」
初めてハッキリと言葉にした(ように見せた)。
その瞬間、アークスの目から涙が噴き出した。
「うおおお! 聞いたかマーサ! パパって言った! 俺を呼んだぞ!」
「えぇ、聞いたわ! ママとも言ったわ! 天才よこの子は!」
親バカ全開で抱き合って喜ぶ両親。
リアンは心の中でVサインをする。
(ふふん、1歳児の演技力も板についてきたな)
「もうリアンも1歳かぁ……早いもんだな」
「えぇ。もうハイハイだって出来るのよ。昨日なんて、凄いスピードで廊下を走っていたわ」
「だぁっ!(おうよ! センチネルとの夜間訓練で鍛えた『高速匍匐(ハイスピード・ハイハイ)』だ!)」
リアンが得意げに胸を張ると、アークスが「そうだ!」と何かを取り出した。
「よぉし、今日は特別だ。父ちゃんからのプレゼントだぞ!」
ドンッ、とテーブルに置かれたのは、無骨な木箱。
リアンの目が釘付けになる。その箱に書かれた文字は、彼が待ち焦がれていたものだった。
「街の玩具屋で一番いいやつを買ってきた。**『マグナギア・プロトタイプ素体』と、『カスタムパーツキット』**だ!」
箱の中には、精巧な金属製の骨格(フレーム)と、外装パーツがぎっしりと詰まっていた。
胡桃割り人形のセンチネルとは違う、本物の「戦闘用ホビー」だ。
「まぁ、貴方ったら。まだリアンには早いでしょう? 対象年齢を見てよ」
マーサが苦笑するが、アークスはニカッと笑う。
「いやぁ、触らせるだけなら良いだろ? 男の子はこういうメカメカしいのが好きなんだ」
リアンは箱に飛びつかんばかりに身を乗り出した。
「パパ! だぁーっ!!(でかした親父ぃぃ!! よっしゃ念願のマグナギアだ!)」
リアンの脳内では、既に設計図が展開されていた。
ネット通販で買える「ミニ四駆のモーター」や「カーボン素材」、「精密ネジ」を組み込めば、この素体は化ける。
センチネルも愛着があるが、これからはこいつがメインウェポンだ。
(待ってろよ、アッシュ。今度会ったら、この新機体でトラウマを植え付けてやるからな)
アークスは、目を輝かせる息子を見て、大きな手でその頭を撫でた。
「どんどん大きくなるんだぞ、リアン。お前は強い男になる」
「えぇ。貴方は私達の希望なんだから。……愛しているわ、リアン」
マーサが優しくキスをする。
リアンは、二人の温かさを噛み締めた。
転生前、孤独に料理と向き合っていた自分に、神様(ルチアナ)がくれた最高の贈り物。
「だぁ!(ありがとうよ、父ちゃん、母ちゃん!)」
リアンは満面の笑みで応えた。
その様子を、静かに見守っていたオニヒメが、恭しくナイフを手に取った。
「ふふ、素敵な誕生日ですね。さぁ、ケーキを切り分けましょうか。私の自信作ですよ」
「そうね。食べましょう」
「おお! 美味しそうだ!」
家族団欒の光景。
テーブルの隅では、役目を終えたわけではないが、少し出番が減りそうな胡桃割り人形『センチネル』が、静かにその幸せな光景を見つめているようだった。
1歳。
身体が動くようになる。
資金(ネット通販)がある。
技術(マグナギア)が手に入った。
準備は整った。
ここから、リアン・シンフォニアの――いや、元三つ星シェフ青田優也の、世界を巻き込む快進撃が始まるのだ。
甘いケーキの味と共に、リアンの野望は大きく膨らんでいく。
【第一章 0歳児の勇者 完】
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◇
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