元三つ星シェフ、最強の0歳児になる【ネット通販】で地球の物資を取り寄せ、夜な夜な胡桃割り人形を操って無双中〜元A級両親の英才教育が凄すぎて〜

月神世一

文字の大きさ
44 / 117
第四章 3歳児の勇者

EP 1

しおりを挟む
爽やかな風が吹く、ルナハンの街の公園。
今日は、リアンの3歳の誕生日だ。
「神託の儀(スキル検査)」という人生の分岐点まで、あと数日。
しかし、今日のリアンはそんな憂鬱を吹き飛ばすほど、晴れやかな気分だった。
「大丈夫ですか? リアン様、お一人で……。やはり私も影から護衛を……」
玄関先で、オニヒメが心配そうに眉を下げている。
「平気平気! 公園に行くだけだもん! いってきまーす!」
リアンは元気よく手を振り、駆け出した。
その手には、愛機の一つ『弓丸(ゆみまる)』が握られている。
(もちろん、今日の弓丸は毒薬も実弾も抜いた「安全モード」だ)
公園に到着すると、リアンは驚きの光景を目にした。
「いけー! 僕のナイトギア!」
「負けないぞ! 必殺、マグナ・スラッシュ!」
砂場や遊具の周りで、子供たちが人形を手に遊んでいる。
ニャングルが量産・販売を始めた『マグナギア(玩具版)』だ。
リアンが作った精巧な戦闘兵器の「廉価版」だが、子供たちの間では爆発的なブームになっていた。
(おぉ、やってるやってる……。俺のデザインがここまで浸透するとはな)
リアンはベンチに座り、ニヒルな笑みを浮かべた。
(もう「カリスマ玩具職人」としてソロデビューしても良いかな? ……いや、まだ3歳だからな。目立つと帝国の目にとまる。う~ん、悩ましい)
大人の余裕(中身)で子供たちを眺めていた、その時だった。
「ねぇ! 何を持ってるの!?」
鈴を転がしたような、可愛らしい声が降ってきた。
「え?」
リアンが顔を上げると、そこには異質な存在が立っていた。
透き通るような銀髪に、新緑の瞳。
そして、あからさまに長い耳。
極めつけは、彼女の身長よりも長い、捻じれた巨木のような杖を引きずっている。
(……エルフ? しかも、なんだこの「高貴」なオーラは)
「な、何だ? お前」
リアンが警戒して尋ねると、少女はプクッと頬を膨らませた。
「お前じゃない! ルナちゃんだよ☆」
キラキラしたエフェクトが見えそうな自己紹介。
あざとい。だが、圧倒的に可愛い。
「……そうか。俺はリアンだ。じゃあな」
リアンは即座に興味を失った(ふりをした)。
関わるとろくなことにならないセンサーが、ガンガン警報を鳴らしているからだ。
リアンはベンチを立ち、その場を去ろうとした。
ガシッ。
しかし、服の裾を掴まれた。
「ねぇ! 私、それ欲しい!」
少女――ルナが、キラキラした目でリアンの手元を指差した。
「それって……弓丸のことか?」
「弓丸って言うの? かっこいい! あの子達が持ってるのより、ずっと強そうで、賢そうで……素敵!」
(……ほう。見る目があるな)
リアンは少しだけ気を良くした。
量産品と、オリジナルの『弓丸』の違いが見抜けるとは。
だが、これは渡せない。中には盗聴器の受信機や、緊急用の火薬が仕込まれているのだ。
「そうか。だが、これは俺の相棒だ。あげられない。……じゃあな」
リアンは再び歩き出した。
「じゃあな」は、「もう話しかけるな」のサインだ。
だが、世間知らずの王女様(候補)には通じない。
「むぅ……。じゃあ、ねぇ! お人形さんごっこしよう!」
ルナが前に回り込み、通せんぼをする。
「はぁ? 人の話を聞けよ……。何回『じゃあな』を言わせんだよ」
リアンは呆れてため息をついた。
「それに、人形ごっこって……。おままごとかよ。勘弁してくれ。俺は忙しいんだ」
中身は元経営者で三つ星シェフ。
3歳児の「あかちゃんごっこ」に付き合うほど暇ではない。
リアンは冷たく言い放ち、ルナの横をすり抜けようとした。
その瞬間。
ルナの大きな瞳に、涙がみるみる溜まった。
「う……うぅ……」
「(ん?)」
「うわあああああん!! リアン君が虐めるぅぅぅ!!」
ルナがその場で泣き出した。
森の妖精の如き美少女の号泣。周囲の子供や親たちが「何事!?」と注目する。
(おいおい、泣くなよ! 俺が悪者みたいじゃねーか!)
リアンが焦った、次の瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
公園の地面が揺れた。
いや、地面ではない。植え込みの植物たちが、一斉に殺気を放ったのだ。
「え?」
シュバババババッ!!
植え込みの低木から、無数の「何か」が射出された。
硬い木の実だ。ドングリや豆が、ライフルのような速度でリアンを襲う。
「いったぁッ!?」
パチン! パチン!
豆鉄砲なんて生易しいものではない。BB弾のフルオート射撃だ。
さらに、足元の芝生が急激に伸びて、リアンの足首に絡みつこうとする。
(な、なんだこれ!? 植物が意思を持って攻撃してきてる!?)
「うわぁぁん! 弓丸貸してくれないぃぃ! 意地悪ぅぅ!」
ルナの泣き声が大きくなるほど、風が吹き荒れ、木の枝が鞭のようにしなり、落ち葉がカマイタチのように舞う。
「何なんだよ~!!」
リアンは弓丸を盾にして、必死に豆弾幕を防いだ。
これはただの幼児の癇癪ではない。
世界そのものが、「姫を泣かせた罪人」を処刑しようとしているのだ。
(まさかこいつ……本物の『エルフ』か!? しかも、とんでもなくヤバい個体の!)
3歳の誕生日。
公園デビューを果たしたリアンは、プレゼントの代わりに「世界樹の洗礼(豆鉄砲)」を全身に食らいながら、新たな天敵の出現を悟るのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30) 小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。 ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。 それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。 そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。 とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。 ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。 冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。 今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。 「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」 降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決! 面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。 これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

処理中です...