元三つ星シェフ、最強の0歳児になる【ネット通販】で地球の物資を取り寄せ、夜な夜な胡桃割り人形を操って無双中〜元A級両親の英才教育が凄すぎて〜

月神世一

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第七章 6歳児の勇者

EP 6

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エルフの女王、動く
​ルナミス帝国の西方、人の立ち入りを拒む深く濃い森の奥。
天を突くほどの巨木――『世界樹』の根元に、エルフたちの都はある。
​その中心にある宮殿『白亜の聖堂』。
静謐な空気が流れる玉座の間で、エルフ族を統べる女王セフィヤは、書物を読みながら優雅な午後を過ごしていた。
​「ふむ……。今年の精霊の機嫌は良さそうですね。森の木々も健やかだこと」
​セフィヤは見た目こそ20代の美女だが、実年齢は数百歳を超える伝説のハイエルフだ。
その威厳と魔力は、一睨みでドラゴンすら退散させると言われている。
​その静寂を、一発の「砲弾」が打ち砕いた。
​ドォォォォン!!
​「お、お祖母ちゃぁぁぁぁん!!」
​聖堂の扉が物理的に吹き飛び、小さな影が音速で突っ込んできた。
孫娘のルナである。
​「ル、ルナ!? どうしました、そんなに慌てて! 怪我でもしましたか!?」
​セフィヤは書物を放り投げ、慌てて玉座から駆け下りた。
目に入れても痛くない、最愛の孫娘。
そのルナが、顔をくしゃくしゃにして泣いているのだ。
​「うぅ……ぐすっ……! リアンが! リアンがいなくなっちゃうのぉ!」
​「リアン? ……あぁ、貴方がよく遊びに行っている、人間の男の子ですね?」
​セフィヤは眉をひそめた。
孫娘が人間の子供(しかも男)に入れ込んでいるのは知っていたが、まさか泣かされるとは。
​「その小僧がどうしました? 貴方を虐めましたか? ……よし、お祖母ちゃんが今すぐその街を消し炭にしてあげましょう」
​セフィヤの背後に、本気(ガチ)の殺意を纏った極大魔法陣が展開される。
孫への愛が重すぎて、思考が過激派だ。
​「ちがう!」
​ルナは首をブンブン振った。
​「リアンは悪くないの! 『ガッコー』に行くんだって! ていとの『ルナミス学園』ってとこ!」
​「学園? ……ああ、人間にはそのような制度がありましたね」
​セフィヤは魔法陣を解除した。
​「それで? 友達が遠くへ行くのは寂しいですが、エルフと人間は生きる時間が違います。良い機会です、もう人間のことなど忘れて、森で修業を……」
​「ルナも行く!!」
​ルナが叫んだ。
​「ルナもその学園に行く! リアンと一緒に勉強するの!」
​「な……っ!?」
​セフィヤは絶句した。
エルフ族、特に王族であるハイエルフが、人間の学校に通うなど前代未聞だ。
​「なりません! 人間の都など、空気が汚れています! それに、人間たちは野蛮で狡猾です。可愛いルナが攫われたり、騙されたりしたらどうするのです!」
​「やだ! 行くの!」
​「ダメです! こればかりは譲れません!」
​セフィヤは威厳を持って叱りつけた。女王としての正しい判断だ。
しかし、ルナには最強の切り札があった。
​ルナは涙を溜めた瞳で、上目遣いにセフィヤを見上げた。
​「……お祖母ちゃん」
​「うっ……」
​「ルナのお願い……きいてくれないの……?」
​「そ、それは……」
​「リアンと一緒じゃなきゃ……ルナ、ご飯たべない」
​「なっ!?」
​「森から出てって、家出する」
​「ル、ルナ!?」
​「お祖母ちゃんのこと……きらいになる」
​ズキューーーン!!
​セフィヤの心臓(ハート)に、致命的な一撃が突き刺さった。
「きらい」。
そのたった三文字が、大陸最強の魔法使いの精神を崩壊させた。
​「あ、あわ……あわわわ……!」
​セフィヤは膝から崩れ落ちた。
世界が闇に包まれるような絶望感。孫に嫌われるくらいなら、世界が滅んだほうがマシだ。
​「ま、待ちなさいルナ! 『きらい』だけは! それだけはご勘弁を!」
​「じゃあ、学校行っていい?」
​ルナは涙を一瞬で引っ込め、小悪魔的な笑みを浮かべた。
​「……はぁ」
​セフィヤは深い、深い溜息をついた。
もはや、選択肢はない。
​「……分かりました。貴方のワガママには勝てませんね」
​「ほんと!? やったぁ! お祖母ちゃん大好きー!!」
​ルナが飛びついてくる。
「大好き」と言われた瞬間、セフィヤの顔がデレデレに溶けた。
​「よしよし、いい子ですねぇ。……ですが、ただ『行く』と言っても、人間側が受け入れないでしょう」
​セフィヤは立ち上がり、女王の顔に戻った。
瞳に冷徹な光が宿る。
​「エルフの姫を受け入れる器が、あの学園にあるかどうか……。それに、人間ごときの法律で、我が孫を縛らせるわけにはいきません」
​「どうするの?」
​「交渉です」
​セフィヤは指を鳴らした。
空間が歪み、煌びやかな礼装が現れ、彼女の体を包む。
​「ルナミス帝国の皇帝……アウラでしたか。彼に直接、話をつけに行きます」
​「お祖母ちゃん、すごーい!」
​「ふふふ。任せなさい。……もし断るようなら、帝都ごと森に沈めて、新しい校舎を建てさせますから」
​「わーい!」
​笑えない冗談(本気)を口にしながら、セフィヤは杖を手にした。
孫娘のためなら国家間の外交問題すらねじ伏せる。
最強の「モンスターペアレント(祖母)」が、今、ルナミス城へと進撃を開始しようとしていた。
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