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EP 15
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イケメン騎士、許すまじ
千津 牛太(ちず ぎゅうた)の世界は、今やバラ色に輝いていた。
アイドル・リーザとの婚約(妄想)。
弁護士・リベラとの愛の契約(妄想)。
エルフ姫・ルナからの求愛(妄想)。
「(ふふふ……参ったな。俺の遺伝子が優秀すぎて、異世界の美女たちが放っておいてくれない。これが『主人公補正』ってやつか? いや、俺の日頃の行い(牛丼への感謝)が良いからだな)」
彼は上機嫌で、王都のメインストリートを歩いていた。
今日は、王立騎士団による『公開模擬戦』が行われる日だ。
名誉団長(仮)のコネを断った彼だが、タロウ国王から「参加賞で高級牛肉が出るぞ」と釣られ、ノコノコとやってきたのである。
だが。
会場である闘技場に到着した瞬間、彼のバラ色の世界は暗転した。
「キャァァァァァッ!! アレン様ぁぁぁ!!」
「こっち向いてぇぇ! 素敵ぃぃ!」
黄色い悲鳴。
地響きのような歓声。
会場の中心、スポットライトを浴びて立っていたのは、一人の青年騎士だった。
輝くようなブロンドの髪。
宝石のような碧眼。
白亜の鎧に身を包み、爽やかな笑顔を振りまくその姿は、絵本から飛び出してきたような「正統派王子様」そのもの。
彼の名はアレン。
伝説の勇者リュウの息子にして、次世代の英雄候補。
剣の腕は天才的、性格は誠実、家柄も完璧。
つまり――牛太が最も憎むべき存在、『スーパーリア充』である。
「(チッ……眩しい。光害だ。目が腐る)」
牛太は舌打ちし、忌々しげにメガネの位置を直した。
陰キャにとって、陽キャの輝きは猛毒に等しい。
だが、悲劇はここからだった。
「あら、アレン様。ごきげんよう」
「やあ、アレン君! 元気?」
「アレンさーん! 今日の試合、頑張ってくださいね!」
アレンの元に、三人の美女が駆け寄った。
リベラ、ルナ、そしてリーザだ。
彼女たちは(社交辞令や友人として)笑顔でアレンと談笑し始めた。
「リベラさん、今日のドレスも素敵ですね」
「うふふ、お上手ですこと」
「ルナさん、迷子になりませんでしたか?」
「ええ! 今日はちゃんと地図(ネギオ)を持ってますから!」
爽やかな会話。
美しい光景。
――しかし、牛太のフィルターを通すと、それは「地獄」に見えた。
「(……は?)」
牛太の足が止まる。
ドス黒いオーラが、チェックシャツの背中から立ち昇る。
「(NTR……? いや、寝取られだと? 俺という婚約者がいながら、あのチャラ男に媚びを売っているのか?)」
完全なる被害妄想である。
だが、彼の中の劣等感が、怒りの炎に油を注いだ。
「(許せない……。顔が良いだけでチヤホヤされやがって。中身を見ろよ中身を! 俺の『在庫管理能力』や『ハサミ捌き』のほうが上だろ!)」
ギリリ、と歯ぎしりの音が響く。
牛太の瞳から理性の光が消え、代わりに「嫉妬」と「殺意」の文字が浮かび上がった。
「(……分からせてやる必要があるな)」
牛太はポケットから、愛機『シャドウ・ウォーカー』を取り出した。
その指先が、カミソリのように鋭く尖る。
「(あのメッキが剥がれた時、あいつがどんな顔をするか見ものだ。……イケメンの顔面(フェイス)崩壊ショー、開演といこうか)」
◇
「さあ! 続いてのエントリーは、飛び入り参加枠です!」
実況の声が響く中、アレンが爽やかに剣(マグナギア用コントローラー)を構えた。
彼が操るのは、正統派ヒーロー機体『ブレイブ・ナイト』。
「誰でもかかってきてください! 正々堂々、良い試合をしましょう!」
キラキラした笑顔のアレン。
そこへ、ゆらりと影が近づいた。
「……へぇ。随分と余裕ですね、勇者の息子さん」
マイクを通した陰湿な声。
会場がざわつく。
現れたのは、猫背でメガネの男。
「君は……?」
「ただの……通りすがりの理髪師(バーバー)です」
牛太はニチャリと笑った。
その笑顔は、恐怖映画の殺人鬼よりも不気味だった。
「俺が相手になりますよ。ただし――」
牛太はグローブをはめた手で、アレンの「顔」を指差した。
「泣いてママのところに逃げ帰らないでくださいね? ……その甘いマスクごと、削ぎ落としてあげますから」
宣戦布告。
それは模擬戦の挨拶ではない。私怨まみれの「処刑宣告」だった。
アレンの笑顔が引きつり、会場の空気が凍りつく。
だが、牛太だけは恍惚としていた。
これから始まる「ざまぁ」展開を想像し、脳汁を垂れ流しながら。
「(見てろよ、俺の女たち……。誰が本当の『オス』か、教えてやる……!)」
最も動機が不純な、しかし最も技術力が高い戦いが、今始まろうとしていた。
千津 牛太(ちず ぎゅうた)の世界は、今やバラ色に輝いていた。
アイドル・リーザとの婚約(妄想)。
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エルフ姫・ルナからの求愛(妄想)。
「(ふふふ……参ったな。俺の遺伝子が優秀すぎて、異世界の美女たちが放っておいてくれない。これが『主人公補正』ってやつか? いや、俺の日頃の行い(牛丼への感謝)が良いからだな)」
彼は上機嫌で、王都のメインストリートを歩いていた。
今日は、王立騎士団による『公開模擬戦』が行われる日だ。
名誉団長(仮)のコネを断った彼だが、タロウ国王から「参加賞で高級牛肉が出るぞ」と釣られ、ノコノコとやってきたのである。
だが。
会場である闘技場に到着した瞬間、彼のバラ色の世界は暗転した。
「キャァァァァァッ!! アレン様ぁぁぁ!!」
「こっち向いてぇぇ! 素敵ぃぃ!」
黄色い悲鳴。
地響きのような歓声。
会場の中心、スポットライトを浴びて立っていたのは、一人の青年騎士だった。
輝くようなブロンドの髪。
宝石のような碧眼。
白亜の鎧に身を包み、爽やかな笑顔を振りまくその姿は、絵本から飛び出してきたような「正統派王子様」そのもの。
彼の名はアレン。
伝説の勇者リュウの息子にして、次世代の英雄候補。
剣の腕は天才的、性格は誠実、家柄も完璧。
つまり――牛太が最も憎むべき存在、『スーパーリア充』である。
「(チッ……眩しい。光害だ。目が腐る)」
牛太は舌打ちし、忌々しげにメガネの位置を直した。
陰キャにとって、陽キャの輝きは猛毒に等しい。
だが、悲劇はここからだった。
「あら、アレン様。ごきげんよう」
「やあ、アレン君! 元気?」
「アレンさーん! 今日の試合、頑張ってくださいね!」
アレンの元に、三人の美女が駆け寄った。
リベラ、ルナ、そしてリーザだ。
彼女たちは(社交辞令や友人として)笑顔でアレンと談笑し始めた。
「リベラさん、今日のドレスも素敵ですね」
「うふふ、お上手ですこと」
「ルナさん、迷子になりませんでしたか?」
「ええ! 今日はちゃんと地図(ネギオ)を持ってますから!」
爽やかな会話。
美しい光景。
――しかし、牛太のフィルターを通すと、それは「地獄」に見えた。
「(……は?)」
牛太の足が止まる。
ドス黒いオーラが、チェックシャツの背中から立ち昇る。
「(NTR……? いや、寝取られだと? 俺という婚約者がいながら、あのチャラ男に媚びを売っているのか?)」
完全なる被害妄想である。
だが、彼の中の劣等感が、怒りの炎に油を注いだ。
「(許せない……。顔が良いだけでチヤホヤされやがって。中身を見ろよ中身を! 俺の『在庫管理能力』や『ハサミ捌き』のほうが上だろ!)」
ギリリ、と歯ぎしりの音が響く。
牛太の瞳から理性の光が消え、代わりに「嫉妬」と「殺意」の文字が浮かび上がった。
「(……分からせてやる必要があるな)」
牛太はポケットから、愛機『シャドウ・ウォーカー』を取り出した。
その指先が、カミソリのように鋭く尖る。
「(あのメッキが剥がれた時、あいつがどんな顔をするか見ものだ。……イケメンの顔面(フェイス)崩壊ショー、開演といこうか)」
◇
「さあ! 続いてのエントリーは、飛び入り参加枠です!」
実況の声が響く中、アレンが爽やかに剣(マグナギア用コントローラー)を構えた。
彼が操るのは、正統派ヒーロー機体『ブレイブ・ナイト』。
「誰でもかかってきてください! 正々堂々、良い試合をしましょう!」
キラキラした笑顔のアレン。
そこへ、ゆらりと影が近づいた。
「……へぇ。随分と余裕ですね、勇者の息子さん」
マイクを通した陰湿な声。
会場がざわつく。
現れたのは、猫背でメガネの男。
「君は……?」
「ただの……通りすがりの理髪師(バーバー)です」
牛太はニチャリと笑った。
その笑顔は、恐怖映画の殺人鬼よりも不気味だった。
「俺が相手になりますよ。ただし――」
牛太はグローブをはめた手で、アレンの「顔」を指差した。
「泣いてママのところに逃げ帰らないでくださいね? ……その甘いマスクごと、削ぎ落としてあげますから」
宣戦布告。
それは模擬戦の挨拶ではない。私怨まみれの「処刑宣告」だった。
アレンの笑顔が引きつり、会場の空気が凍りつく。
だが、牛太だけは恍惚としていた。
これから始まる「ざまぁ」展開を想像し、脳汁を垂れ流しながら。
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