​【マグナギア無双】チー牛の俺、牛丼食ってボドゲしてただけで、国王と女神に崇拝される~神速の指先で戦場を支配し、気づけば英雄でした~

月神世一

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EP 16

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顔面(メインカメラ)ばかり狙うな
​ 闘技場の空気は、異様だった。
​ 片や、白亜の鎧に金色の装飾が施された、正統派ヒーロー機『ブレイブ・ナイト』。
 片や、塗装を剥がされ、骨組みと配線がむき出しの不気味な機体『シャドウ・ウォーカー』。
​ そして、プレイヤーの対比はさらに残酷だ。
 爽やかイケメン騎士アレンと、猫背でニヤついている千津 牛太。
​「いきます! 正々堂々!」
「……へへっ、どうぞぉ?」
​ 試合開始のゴングが鳴る。
 同時に、アレンが華麗なステップで踏み込んだ。
​「はぁぁっ! ライトニング・スラッシュ!」
​ ブレイブ・ナイトの大剣が、光の軌跡を描いて振り下ろされる。
 会場の女性ファンから「キャーッ! 素敵ー!」と歓声が上がる。
 完璧なフォーム。教科書通りの美しい剣技だ。
​ だが、牛太にとっては「止まった的」でしかなかった。
​「(……遅い。あと、技名を叫ぶの、恥ずかしくないのか?)」
​ 牛太は無表情でスティック(指)を倒した。
 シャドウ・ウォーカーが、半身になって剣を避ける。
 紙一重。
 剣風が機体の頬を撫でるが、牛太は瞬き一つしない。
​「(まずは……その『顔』だ)」
​ 牛太の指が奇怪な動きを見せた。
 バックパックから射出されたのは、いつものワイヤーではない。
 粘着質の液体が入った風船だ。
​ バシャッ!
​「うわっ!? な、なんだこれ!?」
​ ブレイブ・ナイトの顔面――メインカメラに、ドロドロとした黒い液体が直撃した。
 視界を奪われたアレンが狼狽える。
​「泥!? 汚いぞ!」
「泥じゃないですよ。……『強力塗料剥がし液(リムーバー)』です」
​ 牛太がボソリと呟く。
 そう、彼はこの試合のために、わざわざ工業用の溶剤を持ち込んでいたのだ。
 理由は単純。「イケメンのキラキラした顔がムカつくから」。
​「ぐっ……視界が! センサー感度が低下している!」
「まだ終わりじゃないですよ。……『ピーリング』の時間だ」
​ 牛太の機体が、視界を失って棒立ちになったアレン機に肉薄する。
 右手に握られているのは、武器ではない。
 メンテナンス用の**「電動サンダー(研磨機)」**だ。
​ ギュイイイイイイイイ!!
​ 不快な金属音が会場に響き渡る。
 シャドウ・ウォーカーが、ブレイブ・ナイトの顔面にサンダーを押し当てたのだ。
​「うわぁぁぁぁ!? や、やめろぉぉぉ!!」
「肌(装甲)が荒れてますねぇ……一皮むきましょうかぁ……」
​ 牛太の目は据わっていた。
 理髪師が客の顔を剃る時の集中力。だが、そこに込められているのは奉仕の心ではなく、ドス黒い嫉妬だ。
​ ガリガリガリガリ!!
​ 美しい白亜の塗装が削り取られ、金色の装飾が弾け飛ぶ。
 イケメンロボットの顔が、見るも無惨な「傷だらけの鉄屑」へと変わっていく。
​「ひぃっ! 僕の『ブレイブ・ナイト』が! 特注の顔があぁぁ!」
「中身は空っぽですねぇ……」
​ 牛太は冷徹に作業を続ける。
 観客席は、歓声から悲鳴へと変わっていた。
​「な、なにあれ……怖い……」
「戦いっていうか、いじめ?」
「あのメガネの人、笑ってる……」
​ ドン引きである。
 だが、牛太の脳内では違っていた。
​「(見ろ、リベラ、ルナ、リーザ。こいつの化けの皮が剥がれる様を! 所詮、顔だけの男だ。それに比べて俺の技術(テク)はどうだ? 0.1ミリ単位で装甲だけを削り取る、この神業! 惚れ直しただろう?)」
​ 彼は本気で、これが「カッコいいアピール」になると思っていた。
 ヒロインたちの反応は以下の通りである。
​ リベラ:「(……器物損壊の賠償請求が面倒そうですわね)」
 ルナ:「(わぁ、すごい音! 工事現場ですか?)」
 リーザ:「(ひぇっ……あのお兄さん、やっぱり怒らせちゃいけない人だ……)」
​ 誰一人として惚れてはいなかった。
​「仕上げだ」
​ 牛太は満足すると、サンダーを止めた。
 そして、顔面を削り取られて無防備になったブレイブ・ナイトの胸板に、強烈な前蹴りを叩き込んだ。
​ ドゴォォォォン!!
​ アレンの機体が吹き飛び、闘技場の壁に激突して動かなくなる。
 勝負あり。
 だが、会場に拍手はない。あるのは、得体の知れない生物を見るような沈黙だけだった。
​「……勝者、通りすがりの理髪師!」
​ 審判が恐る恐る宣言する。
 牛太は、ボロボロになったアレンを見下ろし、メガネをクイッと押し上げた。
​「顔の手入れ(スキンケア)は大事ですよ。……出直してきな」
​ 捨て台詞を残し、彼は颯爽と去っていく。
 その背中は、「悪を成敗したヒーロー」気取りだったが、周囲からは「顔面執着ストーカー」という不名誉な称号を与えられることとなった。
​ アレンは泣いていた。
 「僕の顔がぁぁ……」と。
 このトラウマにより、彼は後に「フルフェイスヘルメット」を被らないと外出できない身体になってしまうのだが、それはまた別の話である。
​ 牛太の勘違いと暴走は、留まることを知らない。
 次なるターゲットは、まさかの「運営(神様)」であった。
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