HP1の建築士、最強の『絶対安全圏』を創る~小石で即死する俺の為、魔王も勇者も過保護に領地防衛します~

月神世一

文字の大きさ
1 / 16

EP 1

しおりを挟む
転生したらHP1だった件 ~とりあえず核シェルター作ります~
​ 風が吹いていた。
 乾燥した、茶色い土埃を含んだ荒野の風だ。
​「……ここ、どこだ?」
​ 古城タクミ(27歳・一級建築士)は、意識を取り戻すと同時に、自分が知らない場所に立っていることに気づいた。
 確か、徹夜で図面を引いていて、コンビニに夜食を買いに行った帰り道、トラックが突っ込んできて……。
​「ああ、死んだのか俺。で、異世界転生ってやつか」
​ 状況を理解するのは早かった。ラノベ好きだったからだ。
 目の前には、見渡す限りの荒野。草木一本生えていない、殺風景な岩場が広がっている。
 とりあえず、定番のステータス確認だ。「ステータスオープン」と心の中で念じてみる。
​ ポンッ、と軽い電子音と共に、半透明のウインドウが浮かんだ。
​【名前】コジョウ・タクミ
【種族】人間
【年齢】20歳
【職業】建築士
【レベル】1
​【HP】1/1
【MP】∞
​【攻撃力】0
【防御力】0
【敏捷性】2
【運】50
​【ユニークスキル】
『絶対建築(マイ・テリトリー)』
​「…………はい?」
​ 俺は我が目を疑った。
 HP、1。
 いち? ワン? 見間違いかと思って二度見したが、どう見ても数字の『1』だ。
 さらに、備考欄に小さく注釈があった。
​※特性:スペランカー体質
(小石につまずくと骨折します。デコピンで即死します。風邪を引くと永眠します)
​「ふざけんなあああああああああっ!」
​ 俺は絶叫した。
 なんだこのクソゲー! 初期設定ミスってレベルじゃねぇぞ!
 HP1ってなんだよ! オワタ式かよ!
​ その時だった。
 ヒュオオオオオッ!
 荒野特有の突風が吹き荒れ、砂粒が俺の頬を叩いた。
​「いっ、たぁ……!?」
​ ピシッ。
 何か、嫌な音がした。
 視界の隅にあるHPバーが、一瞬だけ点滅し、『0.9』みたいな挙動を見せた気がする。
​「ま、待て待て待て! 砂が当たっただけでダメージ受けてる!? これ死ぬ! あと数分ここに立ってるだけで、風に削られて死ぬ!」
​ 冗談抜きで命の危機だった。
 モンスターに襲われるとか、そういう次元じゃない。
 『自然環境』そのものが、俺にとってはラスボス級の殺意を持っている。
​「家だ……! 家を建てないと死ぬ! 壁と屋根! 俺を守るシェルターが必要だ!」
​ 建築士としての本能が警鐘を鳴らす。
 俺は震える手で、ユニークスキル『絶対建築』の詳細を開いた。
​【絶対建築(マイ・テリトリー)】
1.亜空間建材庫:あらゆる資材を収納・取出し可能(※初期ボーナス:木材・石材・鉄材セット済み)
2.瞬間施工:設計図をイメージし、MPを消費して一瞬で建築する。
3.領域指定:建築した建物の内部を『聖域』とし、環境を完全支配する。
​「これだ……! これしかない!」
​ 俺はMPが無限なのをいいことに、即座に脳内で図面を引いた。
 お洒落なログハウス? 駄目だ、隙間風で死ぬ。
 ガラス張りのモダン住宅? 論外だ、石が飛んできたら即死だ。
​ 必要なのは、快適さではない。生存だ。
 俺は目の前にあった、高さ5メートルほどの巨大な岩塊にターゲットを絞った。
​「設計開始! 構造、鉄筋コンクリート並みの強度を持つ『岩盤一体型シェルター』! 窓なし! 入り口は二重エアロック構造! 換気システムには防塵フィルター完備!」
​ イメージを固める。
 俺の生存本能が、完璧な『引きこもり要塞』を設計した。
​「スキル発動……【瞬間施工(ビルド)】ッ!!」
​ シュワァァァァァァァンッ!!
​ 光が弾けた。
 巨大な岩塊が、まるで粘土細工のように変形していく。
 中がくり抜かれ、表面が硬化処理され、鋼鉄製の重厚な扉が出現した。
 所要時間、わずか3秒。
​「は、入るぞ!」
​ 俺は転ばないように細心の注意を払いながら(転んだら死ぬから)、重い扉を開け、中へと滑り込んだ。
 二枚目の扉を閉め、ロックを掛ける。
​ シーン……。
​ 外の風音が嘘のように消えた。
 岩盤をくり抜いて作った居住スペースには、スキルで生成されたLED風の魔法照明が灯っている。
 床には、衝撃吸収効果のあるフカフカのコルク材。
 壁には、高性能な断熱材。
​【領域指定(サンクチュアリ)効果発動】
室温:24℃(適温)
湿度:50%
空気清浄:完了
衝撃無効化:ON
​「……い、生きてる……」
​ 俺は床に大の字になった。
 背中から伝わる感触は、コンクリートのように冷たく硬いものではなく、高級ベッドのように柔らかい。
 ここなら、転んでも死なない。
 風に削られることもない。
​「最高だ……。ここが俺の城だ……もう一歩も外に出ねぇぞ……」
​ 安堵で涙が出そうになった。
 HP1の虚弱体質にとって、この空間こそが天国だ。
​ その時だった。
 入り口に取り付けた『外部監視モニター(魔法映像)』に、何かが映った。
​「ん? モンスターか?」
​ 俺はビクリとして画面を覗き込む。
 そこに映っていたのは、ボロボロの服を着て、煤(すす)だらけになった小柄な老人だった。
 背中には見たこともない奇妙な機械を背負い、長い髭は焦げている。
​ どう見ても行き倒れだ。
 しかも、俺のシェルターの入り口の前で、力尽きて倒れ込もうとしている。
​「……おいおい、嘘だろ」
​ 無視するか?
 いや、玄関前で死体になられたら、精神的ダメージで俺のHPがゼロになりそうだ。
​ 俺は恐る恐る、インターホン代わりのスピーカーをオンにした。
​「あー、もしもし。そこで死なれると困るんですけど」
​ 老人の耳がピクリと動いた。
 そして、乾燥しきった唇で、うわ言のように呟いたのだ。
​「……みず……いや、オイルをくれ……歯車が……錆びる……」
​「人間じゃねぇのかよ!?」
​ HP1の建築士と、マッドサイエンティストのドワーフ。
 これが、後に世界中から『聖域』と崇められる場所の、最初の住人との出会いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...