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EP 14
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地下1階はスーパー銭湯 ~火の精霊はサウナ熱波師~
キュルリンとの『天魔窟(アミューズメント・ダンジョン)』共同開発プロジェクトは、恐ろしいスピードで進行していた。
「設計図(プラン)A、承認! 施工開始!」
「了解だよー! 【ダンジョンクリエイト】ッ!」
地下1階。広大な空間が、キュルリンの魔法によって粘土細工のように変形していく。
タクミが描いた『昭和レトロ風スーパー銭湯』の図面が、現実のものとなっていく様は圧巻だった。
大理石の床、富士山のペンキ絵が描かれた壁、ジェットバス、電気風呂、そして寝湯。
タロー国から仕入れた『プラスチック製の風呂桶(ケロリン風)』や『シャンプーハット』も完備されている。
「すげぇ……。完璧な再現度だ。これなら日本の銭湯マニアも唸るぞ」
タクミは感動していた。
現在のHPは【1.1】。湿度が保たれているおかげで、肌の乾燥ダメージもなく絶好調だ。
「ねえねえタクミ! 次は『サウナ』だよね! ここが一番の目玉なんでしょ?」
キュルリンが空中でくるりと回りながら尋ねた。
そう、今回の目玉は、昨今のサウナブームを取り入れた『本格フィンランド式サウナ』である。
「ああ。だが問題がある。サウナストーンを熱するための『熱源』だ。薪ストーブじゃ火力が安定しないし、Dr.ギアの科学炉だと排気ガスの処理が面倒だ」
密閉空間で一酸化炭素中毒になれば、HP1のタクミなど瞬殺される。
「ふーん、熱源ねぇ……。あ、それならいい『人材』がいるよ!」
「人材?」
「うん! ボクの友達で、すっごく熱いヤツ! 呼んでくるね!」
キュルリンは指をパチンと鳴らした。
次の瞬間、サウナ室の中央に魔法陣が出現し、轟音と共に『灼熱の柱』が立ち昇った。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!! 俺の情熱(パッション)は5000度だぜぇぇぇ!!」
現れたのは、全身が燃え盛る炎で構成されたトカゲのような精霊――Sランクモンスター『火の精霊王(イフリート・サラマンダー)』だった。
「あ、あつゥゥゥゥッ!?」
タクミは悲鳴を上げて後退った。
サウナ室のドアを開けていたせいで、熱波が直撃したのだ。
HPバーが【1.1】から一気に【0.6】まで焼失した。
「ば、馬鹿野郎! 5000度ってなんだ! ここは処刑室じゃないぞ!」
「ああん? なんだこの貧弱な人間は。俺様はキュルリンに頼まれて、最高の『熱波師(アウフグース・マスター)』になりに来たんだよ!」
サラマンダーは、手に持っていた(なぜか持参した)巨大なタオルをバサリと振った。
そのタオルも燃えていた。
「俺の名は熱血のサラン! さあ客よ、座れ! 俺の『魂のロウリュ』で整わせてやるぜ!」
「整う前に灰になるわ! 帰れ!」
タクミは全力で拒否したが、キュルリンは楽しそうに手を叩いた。
「いいじゃんいいじゃん! タクミ、とりあえず『テスト入浴』してみてよ! 設計士の責任でしょ?」
「殺す気か!?」
だが、ここで引くわけにはいかない。
この施設の管理者は俺だ。安全性を確認する義務がある。
タクミはDr.ギアに特注した『超耐熱防護服(宇宙服みたいなやつ)』を着込み、決死の覚悟でサウナ室に入った。
「……いいか、サラン。温度設定は90度だ。それ以上上げたらクビだぞ」
「ケッ、ぬるいぜ。だが、オーナーの命令なら仕方ねぇ……!」
サランが体の炎を抑え、室温を90度に調整した。
防護服越しでも、じわりと汗が滲む。
ここまではいい。問題はここからだ。
「いくぜ! ロウリュタイム!」
サランが焼けた石にアロマ水を掛けた。
ジュワァァァァァッ!
蒸気が立ち昇る。心地よい柑橘系の香り。
これならいけるか? と思った瞬間、サランが巨大なタオルを振りかぶった。
「受け取れぇぇぇ! 俺の愛(ヒート・ウェイブ)ッ!!」
ブンッ!!
タオルが空気を切り裂いた。
発生したのは『心地よい熱風』ではなく、『衝撃波を伴う爆風』だった。
「ぐふぅッ!?」
タクミの体が宙を舞い、サウナ室の壁に叩きつけられた。
防護服のアラートが鳴り響く。
【警告:内部温度上昇。衝撃検知。生命維持限界まであと3秒】
「あ、熱い……いや、痛い……!」
「どうだぁぁぁ! 整ったかぁぁぁ!?」
「整うかボケェッ!」
タクミは這いつくばって脱出した。HP残り【0.1】。
瀕死である。
「だ、駄目だ……。あいつはクビだ……。あんなの耐えられる奴、この世にいるわけが……」
その時だった。
脱衣所の方から、楽しげな声が聞こえてきた。
「あら、新しいお風呂ができたって聞いたけど」
「サウナもあるじゃない! 気が利くわね~!」
バスタオルを巻いた女神ルチアナと、魔王ラスティアだった。
二人は瀕死のタクミを「あら、こんにちは」と跨いで通り過ぎ、サウナ室へと入っていった。
「ちょ、待っ……中は危険……!」
止める間もなかった。
ドアが閉まり、中からサランの絶叫が聞こえる。
『うぉぉぉ! お客様! 俺の最大火力を食らいやがれぇぇぇ!』
数分後。
プハァ、という満足げな溜息と共に、二人が出てきた。
肌はツヤツヤ。湯上りのような血色の良さ。
「い~い汗かいたわ~。あのトカゲ、なかなかいい腕してるじゃない」
「そうね。最初はちょっとぬるかったけど、煽ったら本気出してくれたわ。5000度の熱波、毛穴が開いて最高だったわよ」
……5000度を浴びて「毛穴が開く」で済ませている。
化け物だ。いや、神と魔王だった。
その後ろから、げっそりと痩せ細り、炎が消えかかったサランが出てきた。
「……あ、ありえねぇ……。俺の全精力を注いだ熱波を……『涼しい風』扱いだと……?」
精霊王のプライドが粉々に砕かれていた。
「タクミさん、あの子採用してあげて。私、気に入ったわ」
「私もー。毎日通っちゃうかも」
ルチアナとラスティアは、脱衣所に設置された自販機(タロー国直輸入)で『フルーツ牛乳』を購入し、腰に手を当てて一気飲みした。
「んんっ、ぷはーっ! 五臓六腑に染み渡るぅ~!」
その笑顔は、世界を滅ぼす魔王のものではなく、ただの風呂好きのOLのそれだった。
タクミは床に倒れたまま、天井を見上げた。
「……採用だ。ただし、俺が入る時は温度を100分の1に下げさせる……」
こうして、地下1階『天魔の湯』がオープンした。
サウナの主(ヌシ)として君臨する火の精霊王と、それを涼しい顔で楽しむ神々。
一般人が入れば即死するそのサウナは、後に『地獄の釜茹で』として冒険者たちに恐れられることになるが、それはまた別の話である。
タクミはその後、ネギオの回復魔法とフルーツ牛乳でHPを全快させた。
風呂上がりの牛乳がHP回復アイテムになることを発見したのが、今日の唯一の収穫だった。
キュルリンとの『天魔窟(アミューズメント・ダンジョン)』共同開発プロジェクトは、恐ろしいスピードで進行していた。
「設計図(プラン)A、承認! 施工開始!」
「了解だよー! 【ダンジョンクリエイト】ッ!」
地下1階。広大な空間が、キュルリンの魔法によって粘土細工のように変形していく。
タクミが描いた『昭和レトロ風スーパー銭湯』の図面が、現実のものとなっていく様は圧巻だった。
大理石の床、富士山のペンキ絵が描かれた壁、ジェットバス、電気風呂、そして寝湯。
タロー国から仕入れた『プラスチック製の風呂桶(ケロリン風)』や『シャンプーハット』も完備されている。
「すげぇ……。完璧な再現度だ。これなら日本の銭湯マニアも唸るぞ」
タクミは感動していた。
現在のHPは【1.1】。湿度が保たれているおかげで、肌の乾燥ダメージもなく絶好調だ。
「ねえねえタクミ! 次は『サウナ』だよね! ここが一番の目玉なんでしょ?」
キュルリンが空中でくるりと回りながら尋ねた。
そう、今回の目玉は、昨今のサウナブームを取り入れた『本格フィンランド式サウナ』である。
「ああ。だが問題がある。サウナストーンを熱するための『熱源』だ。薪ストーブじゃ火力が安定しないし、Dr.ギアの科学炉だと排気ガスの処理が面倒だ」
密閉空間で一酸化炭素中毒になれば、HP1のタクミなど瞬殺される。
「ふーん、熱源ねぇ……。あ、それならいい『人材』がいるよ!」
「人材?」
「うん! ボクの友達で、すっごく熱いヤツ! 呼んでくるね!」
キュルリンは指をパチンと鳴らした。
次の瞬間、サウナ室の中央に魔法陣が出現し、轟音と共に『灼熱の柱』が立ち昇った。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!! 俺の情熱(パッション)は5000度だぜぇぇぇ!!」
現れたのは、全身が燃え盛る炎で構成されたトカゲのような精霊――Sランクモンスター『火の精霊王(イフリート・サラマンダー)』だった。
「あ、あつゥゥゥゥッ!?」
タクミは悲鳴を上げて後退った。
サウナ室のドアを開けていたせいで、熱波が直撃したのだ。
HPバーが【1.1】から一気に【0.6】まで焼失した。
「ば、馬鹿野郎! 5000度ってなんだ! ここは処刑室じゃないぞ!」
「ああん? なんだこの貧弱な人間は。俺様はキュルリンに頼まれて、最高の『熱波師(アウフグース・マスター)』になりに来たんだよ!」
サラマンダーは、手に持っていた(なぜか持参した)巨大なタオルをバサリと振った。
そのタオルも燃えていた。
「俺の名は熱血のサラン! さあ客よ、座れ! 俺の『魂のロウリュ』で整わせてやるぜ!」
「整う前に灰になるわ! 帰れ!」
タクミは全力で拒否したが、キュルリンは楽しそうに手を叩いた。
「いいじゃんいいじゃん! タクミ、とりあえず『テスト入浴』してみてよ! 設計士の責任でしょ?」
「殺す気か!?」
だが、ここで引くわけにはいかない。
この施設の管理者は俺だ。安全性を確認する義務がある。
タクミはDr.ギアに特注した『超耐熱防護服(宇宙服みたいなやつ)』を着込み、決死の覚悟でサウナ室に入った。
「……いいか、サラン。温度設定は90度だ。それ以上上げたらクビだぞ」
「ケッ、ぬるいぜ。だが、オーナーの命令なら仕方ねぇ……!」
サランが体の炎を抑え、室温を90度に調整した。
防護服越しでも、じわりと汗が滲む。
ここまではいい。問題はここからだ。
「いくぜ! ロウリュタイム!」
サランが焼けた石にアロマ水を掛けた。
ジュワァァァァァッ!
蒸気が立ち昇る。心地よい柑橘系の香り。
これならいけるか? と思った瞬間、サランが巨大なタオルを振りかぶった。
「受け取れぇぇぇ! 俺の愛(ヒート・ウェイブ)ッ!!」
ブンッ!!
タオルが空気を切り裂いた。
発生したのは『心地よい熱風』ではなく、『衝撃波を伴う爆風』だった。
「ぐふぅッ!?」
タクミの体が宙を舞い、サウナ室の壁に叩きつけられた。
防護服のアラートが鳴り響く。
【警告:内部温度上昇。衝撃検知。生命維持限界まであと3秒】
「あ、熱い……いや、痛い……!」
「どうだぁぁぁ! 整ったかぁぁぁ!?」
「整うかボケェッ!」
タクミは這いつくばって脱出した。HP残り【0.1】。
瀕死である。
「だ、駄目だ……。あいつはクビだ……。あんなの耐えられる奴、この世にいるわけが……」
その時だった。
脱衣所の方から、楽しげな声が聞こえてきた。
「あら、新しいお風呂ができたって聞いたけど」
「サウナもあるじゃない! 気が利くわね~!」
バスタオルを巻いた女神ルチアナと、魔王ラスティアだった。
二人は瀕死のタクミを「あら、こんにちは」と跨いで通り過ぎ、サウナ室へと入っていった。
「ちょ、待っ……中は危険……!」
止める間もなかった。
ドアが閉まり、中からサランの絶叫が聞こえる。
『うぉぉぉ! お客様! 俺の最大火力を食らいやがれぇぇぇ!』
数分後。
プハァ、という満足げな溜息と共に、二人が出てきた。
肌はツヤツヤ。湯上りのような血色の良さ。
「い~い汗かいたわ~。あのトカゲ、なかなかいい腕してるじゃない」
「そうね。最初はちょっとぬるかったけど、煽ったら本気出してくれたわ。5000度の熱波、毛穴が開いて最高だったわよ」
……5000度を浴びて「毛穴が開く」で済ませている。
化け物だ。いや、神と魔王だった。
その後ろから、げっそりと痩せ細り、炎が消えかかったサランが出てきた。
「……あ、ありえねぇ……。俺の全精力を注いだ熱波を……『涼しい風』扱いだと……?」
精霊王のプライドが粉々に砕かれていた。
「タクミさん、あの子採用してあげて。私、気に入ったわ」
「私もー。毎日通っちゃうかも」
ルチアナとラスティアは、脱衣所に設置された自販機(タロー国直輸入)で『フルーツ牛乳』を購入し、腰に手を当てて一気飲みした。
「んんっ、ぷはーっ! 五臓六腑に染み渡るぅ~!」
その笑顔は、世界を滅ぼす魔王のものではなく、ただの風呂好きのOLのそれだった。
タクミは床に倒れたまま、天井を見上げた。
「……採用だ。ただし、俺が入る時は温度を100分の1に下げさせる……」
こうして、地下1階『天魔の湯』がオープンした。
サウナの主(ヌシ)として君臨する火の精霊王と、それを涼しい顔で楽しむ神々。
一般人が入れば即死するそのサウナは、後に『地獄の釜茹で』として冒険者たちに恐れられることになるが、それはまた別の話である。
タクミはその後、ネギオの回復魔法とフルーツ牛乳でHPを全快させた。
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