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第二章 神、魔王、竜王の飲み会
EP 7
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襲撃者、空気読めずに爆死
『大人のポテトサラダ』による論争が鎮火し、店内には奇妙な一体感が生まれていた。
美味いものを食えば、争いは収まる。
それが小料理屋『鬼灯』の、そして龍魔呂の平和維持活動(ピースキーピング)だ。
カウンターでは、魔王ラスティアが箸でポテトサラダのベーコンを摘まみ上げ、頬を染めて龍魔呂に迫っていた。
「ねぇ龍魔呂。私の分析によると、この『黒胡椒』の刺激は、他人に食べさせてもらうことで20%増しになるらしいわ」
「……どんなポンコツ理論だ」
「いいから。ほら、口を開けて。『あ~ん』」
魔王による「あ~ん」。
世界を滅ぼせる指先が、龍魔呂の口元へと近づく。
隣では女神ルチアナが「抜け駆けよ!」とハンカチを噛み、竜王シルヴィアが「私もやりたい!」と身を乗り出している。
まさに、ハーレムコメディのクライマックス的瞬間。
平和で、少し甘酸っぱい夜。
――バァァァァァァァン!!!!
その空気を、無神経な爆音が粉々に砕いた。
店の引き戸が、乱暴に蹴破られたのだ。
「見つけたぞォォォッ! ここだな、『DEATH 4』ッ!!」
土足で踏み込んできたのは、全身をミスリル装備で固めた屈強な男たち。
五人組の冒険者パーティーだ。
彼らは武器を抜き、殺気立っていた。
「我々はSランクパーティ『紅の獅子』! 貴様の首にかかった懸賞金、いただくぞ!」
「街の英雄だか何だか知らねえが、貴族様に手を出した報いだ!」
「女連れで酒盛りとは余裕だな! その女たちも俺たちが――」
リーダー格の男が、下卑た笑みを浮かべてラスティアたちを見ようとした。
その瞬間だった。
ヒュッ。
店内の音が消えた。
時間が凍りついたかのように、静寂が落ちる。
龍魔呂は、動かなかった。
角砂糖を取り出す動作すらしていない。
ただ、カウンターに座る三人の美女たちが、ゆっくりと振り返っただけだ。
ラスティアの手が止まる。箸からベーコンがポロリと落ちた。
ルチアナがグラスを置く。
シルヴィアがフォークを止める。
三人の瞳から、ハイライトが消えていた。
「……あ?」
「……誰に?」
「……何を?」
ドス黒いオーラ。
神々しいはずの神気、妖艶なはずの魔気、雄大なるはずの竜気が、すべて「純粋な殺意」へと変換され、入り口の一点に収束した。
冒険者たちの膝がガクガクと震え出す。
本能が警鐘を鳴らす。目の前にいるのは「女」ではない。「世界の終わり」だと。
「ひ……あ、あの……?」
リーダーが何かを言いかけた時、三人が同時に動いた。
いや、動いてすらいない。
ただ、指先をわずかに動かしただけ。
ルチアナ(女神):
「……神罰(デリート)」
――カッ!!
音のない白い閃光が、冒険者たちの存在情報を世界から「消去」しようと走る。
ラスティア(魔王):
「……重力崩壊(グラビティ・プレス)」
――ギチチッ!!
局所的なブラックホールが発生し、冒険者たちを原子レベルまで圧縮しようと空間を捻じ曲げる。
シルヴィア(竜王):
「……時間加速(アクセル・エンド)」
――ヒュンッ!!
冒険者たちの時間だけを一瞬で1億年進め、風化させようとする。
三つの「即死魔法」が、狭い入り口で同時に炸裂した。
シュンッ。
爆発音すら起きなかった。
あまりに強大な力がぶつかり合い、物理法則がバグを起こして相殺されたのだ。
その結果。
そこには、誰もいなかった。
Sランク冒険者たちも、その装備も、悲鳴も。
塵一つ残さず、最初から「存在しなかった」かのように消滅していた。
残ったのは、綺麗サッパリ片付いた入り口と、静かに揺れる暖簾だけ。
「……ふぅ」
「……虫が飛んでたわね」
「……掃除完了っと」
三人は何事もなかったかのように向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「さあ龍魔呂、続きをしましょう? あ~ん♡」
「私のグラスが空よ、注いでちょうだい」
「肉追加!」
龍魔呂は、誰もいなくなった入り口をチラリと見て、深いため息をついた。
彼が気にしたのは、刺客のことではない。
「……ドアぐらい静かに閉めろ」
龍魔呂は指を鳴らし、ネギオを呼び出した。
「ネギオ。入り口の修繕だ。あと、魔力残滓が料理に移る前に換気しろ」
「はっ。……あの冒険者たち、可哀想に。魂すら残りませんでしたね」
ネギオは片眼鏡を光らせ、一瞬で消えた哀れな襲撃者たちに黙祷を捧げた。
世界最強のセコム(警備システム)が常駐する店。
『鬼灯』に手を出すということは、この世界そのものに喧嘩を売るのと同義であることを、彼らは知る由もなかったのだ。
龍魔呂はラスティアが差し出したベーコンを無表情で食べ、角砂糖を齧った。
「……騒がしい夜だ」
彼の平穏は、今日も物理的に守られた。
『大人のポテトサラダ』による論争が鎮火し、店内には奇妙な一体感が生まれていた。
美味いものを食えば、争いは収まる。
それが小料理屋『鬼灯』の、そして龍魔呂の平和維持活動(ピースキーピング)だ。
カウンターでは、魔王ラスティアが箸でポテトサラダのベーコンを摘まみ上げ、頬を染めて龍魔呂に迫っていた。
「ねぇ龍魔呂。私の分析によると、この『黒胡椒』の刺激は、他人に食べさせてもらうことで20%増しになるらしいわ」
「……どんなポンコツ理論だ」
「いいから。ほら、口を開けて。『あ~ん』」
魔王による「あ~ん」。
世界を滅ぼせる指先が、龍魔呂の口元へと近づく。
隣では女神ルチアナが「抜け駆けよ!」とハンカチを噛み、竜王シルヴィアが「私もやりたい!」と身を乗り出している。
まさに、ハーレムコメディのクライマックス的瞬間。
平和で、少し甘酸っぱい夜。
――バァァァァァァァン!!!!
その空気を、無神経な爆音が粉々に砕いた。
店の引き戸が、乱暴に蹴破られたのだ。
「見つけたぞォォォッ! ここだな、『DEATH 4』ッ!!」
土足で踏み込んできたのは、全身をミスリル装備で固めた屈強な男たち。
五人組の冒険者パーティーだ。
彼らは武器を抜き、殺気立っていた。
「我々はSランクパーティ『紅の獅子』! 貴様の首にかかった懸賞金、いただくぞ!」
「街の英雄だか何だか知らねえが、貴族様に手を出した報いだ!」
「女連れで酒盛りとは余裕だな! その女たちも俺たちが――」
リーダー格の男が、下卑た笑みを浮かべてラスティアたちを見ようとした。
その瞬間だった。
ヒュッ。
店内の音が消えた。
時間が凍りついたかのように、静寂が落ちる。
龍魔呂は、動かなかった。
角砂糖を取り出す動作すらしていない。
ただ、カウンターに座る三人の美女たちが、ゆっくりと振り返っただけだ。
ラスティアの手が止まる。箸からベーコンがポロリと落ちた。
ルチアナがグラスを置く。
シルヴィアがフォークを止める。
三人の瞳から、ハイライトが消えていた。
「……あ?」
「……誰に?」
「……何を?」
ドス黒いオーラ。
神々しいはずの神気、妖艶なはずの魔気、雄大なるはずの竜気が、すべて「純粋な殺意」へと変換され、入り口の一点に収束した。
冒険者たちの膝がガクガクと震え出す。
本能が警鐘を鳴らす。目の前にいるのは「女」ではない。「世界の終わり」だと。
「ひ……あ、あの……?」
リーダーが何かを言いかけた時、三人が同時に動いた。
いや、動いてすらいない。
ただ、指先をわずかに動かしただけ。
ルチアナ(女神):
「……神罰(デリート)」
――カッ!!
音のない白い閃光が、冒険者たちの存在情報を世界から「消去」しようと走る。
ラスティア(魔王):
「……重力崩壊(グラビティ・プレス)」
――ギチチッ!!
局所的なブラックホールが発生し、冒険者たちを原子レベルまで圧縮しようと空間を捻じ曲げる。
シルヴィア(竜王):
「……時間加速(アクセル・エンド)」
――ヒュンッ!!
冒険者たちの時間だけを一瞬で1億年進め、風化させようとする。
三つの「即死魔法」が、狭い入り口で同時に炸裂した。
シュンッ。
爆発音すら起きなかった。
あまりに強大な力がぶつかり合い、物理法則がバグを起こして相殺されたのだ。
その結果。
そこには、誰もいなかった。
Sランク冒険者たちも、その装備も、悲鳴も。
塵一つ残さず、最初から「存在しなかった」かのように消滅していた。
残ったのは、綺麗サッパリ片付いた入り口と、静かに揺れる暖簾だけ。
「……ふぅ」
「……虫が飛んでたわね」
「……掃除完了っと」
三人は何事もなかったかのように向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「さあ龍魔呂、続きをしましょう? あ~ん♡」
「私のグラスが空よ、注いでちょうだい」
「肉追加!」
龍魔呂は、誰もいなくなった入り口をチラリと見て、深いため息をついた。
彼が気にしたのは、刺客のことではない。
「……ドアぐらい静かに閉めろ」
龍魔呂は指を鳴らし、ネギオを呼び出した。
「ネギオ。入り口の修繕だ。あと、魔力残滓が料理に移る前に換気しろ」
「はっ。……あの冒険者たち、可哀想に。魂すら残りませんでしたね」
ネギオは片眼鏡を光らせ、一瞬で消えた哀れな襲撃者たちに黙祷を捧げた。
世界最強のセコム(警備システム)が常駐する店。
『鬼灯』に手を出すということは、この世界そのものに喧嘩を売るのと同義であることを、彼らは知る由もなかったのだ。
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