善行しないと死ぬ!?医学生が【地球ショッピング】で異世界へ。現代物資と外科手術で人助けしていたら、災害級エルフと同居することになった件

月神世一

文字の大きさ
16 / 24

EP 16

しおりを挟む
黄金の弁護士と、経費という名の魔法
​「はぁ……。『次に森を燃やしたら、植林ボランティア100時間の刑』だってさ……」
​優太は重いため息をついた。
オーガ討伐の報酬は出たものの、環境修復のための罰金が差し引かれ、手元に残ったのは微々たる額だった。
​「しょうがないよ。これくらいで済んでラッキーだと思わなきゃ」
​キャルルはケロッとしている。
隣では、元凶であるルナが「テヘッ♡」と舌を出しており、優太の胃痛を加速させている。
​「うぅ……お腹すきましたわ……。罰金のせいで、今日のランチ代が……」
​リーザがフラフラと歩きながら、悲痛な声を上げた。
そこでキャルルが何かを思いつき、指をパチンと鳴らした。
​「そうだ! しょうがない、**『姉さん』**を呼ぼう!」
​「姉さん?」
​優太が聞き返すと、キャルルは魔導通信石を取り出した。
​「うん、リベラ姉さん。こういう時は、スポンサーになってもらうのが一番よ!」
​「(スポンサー……?)」
​キャルルは慣れた手つきで通話を開始した。
​「あ、もしもしリベラ姉さん? ……うん、キャルルだよ。今から『タロウキング』でランチ行くんだけど、時間空いてる? ……え? ちょうど近くの裁判所で勝訴したところ? さすがぁ! ……うん、うん、分かった。じゃあ、店前で待ってるから♡」
​通話を切ったキャルルは、ニシシと勝ち誇った顔をした。
​「来るって! これで今日の支払いは安泰よ!」
​「リベラ姉さんは忙しい方ですから、捕まえられたのは奇跡ですわ」
​リーザが安堵の表情を浮かべる。
​「ルナさん、そのリベラさんって人は何者なの?」
​「あら、ご存知ない? 彼女は弁護士ですわ。とっても賢くて、お強い方よ」
​「弁護士? 異世界に弁護士がいるのか……凄いな」
​優太が感心していると、大通りの向こうから、周囲の馬車とは明らかに格の違う一台が近づいてきた。
漆黒に塗られたボディ、金色の装飾。牽引するのは、白銀の毛並みを持つ高級魔獣・ユニコーンだ。
​「お待たせ」
​馬車が優太たちの前で静かに止まり、御者が扉を開ける。
そこから降り立ったのは、仕立ての良いスーツに身を包み、知的な眼鏡をかけたハニーブロンドの美女だった。
​「あ、リベラ姉! 来た来た!」
​キャルルが手を振る。
彼女こそが、大陸屈指の大企業「ゴルド商会」の令嬢にして、常勝無敗の弁護士、リベラ・ゴルドだった。
​「お久しぶりね、キャルル、リーザ、ルナ。……あら?」
​リベラは眼鏡の位置を指で直し、優太の方へと視線を向けた。
その碧眼が、値踏みするように鋭く光る。
​「そちらの殿方は?」
​「は、初めまして。中村優太と言います」
​優太は思わず背筋を伸ばして一礼した。
彼女からは、ただの貴族とは違う、現代社会の「エリート」特有のオーラが漂っている。
​「中村優太……日本人ね。なるほど、太郎様から伺っているわ。なんでも、医者志望の転生者が現れたとか」
​「はい。向こうでは医大生でした」
​「ふふ、話が合いそうね」
​リベラは優雅に微笑み、右手を差し出した。
​「私は桜田リベラ。慶應大学法学部卒の弁護士だったわ。今はリベラ・ゴルドと名乗っているけれど」
​「け、慶應……!? 法学部……!」
​優太は驚愕した。
ルチアナ(ジャージの女神)が適当に連れてきた自分とは違い、彼女は前世から正真正銘のエリートだったのだ。
​「奇遇ですね。僕は一応、国立の医学部です」
​「あら、インテリ仲間ができて嬉しいわ。この世界、筋肉で解決しようとする方が多すぎて、法的解釈の話ができる相手が不足していたのよ」
​リベラは優太の手を握り、知的連帯の握手を交わした。
その横で、空腹の限界を迎えたリーザが袖を引いた。
​「あのぉ……リベラ姉、感動の再会もいいのですけど……お腹が……背中とくっつきそうですわ……」
​「あら、ごめんなさいリーザ。分かったわよ、中に入りましょう」
​【タロウキング・店内】
​「いらっしゃいませ! ……あ、ゴ、ゴルド様!?」
​店に入った瞬間、猫耳ウェイトレスの顔色が変わり、店長(ドワーフ)が奥から飛び出してきた。
​「お待ちしておりました! VIP席へご案内します!」
​「いいえ、いつものボックス席で構わなくてよ。その方が落ち着くもの」
​リベラは慣れた様子で店員を制し、優太たちを席へと促した。
6人掛けの広いボックス席。
優太の隣にはルナが(当然のように)座り、向かいにはリベラ、キャルル、リーザが並んだ。
​「さぁ、好きなものを注文してちょうだい」
​リベラはタッチパネルを操作し、ブラックカードのような魔導プレートをテーブルに置いた。
​「遠慮はいりませんわ。今日は父(会長)から『接待交際費』の枠を分捕ってきましたから。全て経費で落とします♡」
​その言葉は、金欠の冒険者たちにとって「全回復魔法」よりも尊い響きだった。
​「やったーー!! じゃあ私、『タロウ・デラックス・ハンバーグ(チーズ増し)』!」
​「わ、わたくしは……『ビーフシチューセット』と、『海鮮パスタ』と、『特大パフェ』を……!」
​「私はサラダバーだけで十分ですわ(と言いつつ、ルナはメニューの『季節のケーキ全種盛り』を見ている)」
​次々と高額メニューが注文されていく。
優太は恐縮しながら、リベラに尋ねた。
​「あの、僕までいいんですか? 初対面なのに」
​「構いませんわ。貴方は『医者』。私は『弁護士』。この世界で数少ない『先生』と呼ばれる職業同士、協力関係(コネ)を築いておくのは有益ですもの」
​リベラは優雅に紅茶(ドリンクバーではなく、持参した高級茶葉を店員に淹れさせたもの)を啜り、ウインクした。
​「それに……ルナさんの『保護者』を引き受けた勇気ある男性には、これくらいの報酬があって然るべきですわ」
​「……事情をご存知で?」
​「ええ。彼女の『被害報告書』と『示談交渉』は、いつも私が担当していますから」
​優太は深く納得した。
この最強の弁護士がバックにいれば、ルナがまた何かやらかしても、社会的に抹殺されることだけは防げるかもしれない。
​【ピロン!】
​システム通知
コネクション獲得:リベラ・ゴルド(最強の法的盾)
効果:警察・ギルド・裁判所に対する防御力が著しく向上します。
獲得ポイント:500 P
​(法的盾……! これほど頼もしい装備はない!)
​優太は運ばれてきた『厚切りサーロインステーキ』にナイフを入れながら、この出会いに感謝した。
しかし、リベラの眼鏡の奥の瞳が、「その代わり、貴方の医療知識も利用させてもらいますわよ?」と語っていることに、まだ気づいてはいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...