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EP 19
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復興の槌音と守りの知恵
リザードマンと魔獣ガルムの襲撃から一夜。
ルナキャロット村には、勝利の安堵と、背中合わせの痛みが漂っていた。
壊された柵、踏み荒らされた人参畑。そして、公民館代わりの広場から聞こえる、負傷者たちのうめき声。
勇太は夜明け前から、キャルル、リーシャと共に治療に奔走していた。
リーシャの「水魔法による洗浄」と、キャルルの「月の加護(微弱な治癒促進)」、そして勇太の「現代医薬品と縫合技術」。
この三位一体の医療体制がなければ、数人の命は朝を迎えられなかっただろう。
「ふぅ……。これで全員、峠は越えました」
昼前。最後の包帯を巻き終えた勇太が額の汗を拭うと、見守っていた家族たちから安堵の嗚咽が漏れた。
その後、村の有力者たちによる緊急会議が開かれた。
広場の中央には、深刻な顔をしたラトルがいる。
「昨夜はユウタたちの活躍で首の皮一枚繋がった。だが、次はねえぞ」
ラトルの重い言葉に、全員が沈黙する。
ガルムのような化け物がまた来たら? 数十のリザードマンに包囲されたら?
今の低い木の柵と、粗末な見張り台では、村を守りきれないことは明白だった。
「……ラトルさん。村の守りを、作り直しましょう」
勇太が静かに手を挙げた。
「僕のスキルと知識を使えば、この村を『要塞』に変えることができます」
「要塞だと……? だが、人手も資材も足りねえぞ」
「資材は僕が出します。人手は……皆さんの力を借りたい」
勇太はボードを展開し、事前に『建築・インフラ』カテゴリで検索しておいた画像を空中に投影した。
そこに映し出されたのは、現代の軍事基地や、刑務所の防衛設備を参考にした図面だ。
『有刺鉄線と逆茂木による侵入遅延エリア』
『クロスファイア(十字砲火)を意識した櫓の配置』
『落とし穴と指向性トラップ』
「な、なんだこの凶悪な罠の配置は……」
「それに、この門の金具……どうやって作ってるんだ?」
村人たちがざわめく中、鍛冶師ウルジが投影された「蝶番(ヒンジ)」と「カンヌキ」の拡大図に食いついた。
「おいユウタ! こいつは一体どういう鋳造だ!? 継ぎ目がねえぞ!?」
「これは僕の世界の工業製品です。ウルジさんには、これを取り付けるための補強金具を作ってほしいんです」
「……はんっ、上等だ! 異世界の職人に負けてられるかよ!」
ウルジの目に、職人の魂の火がついた。
ラトルも、勇太の覚悟と具体的なプランを見て、力強く頷いた。
「よし、決まりだ! ユウタ、あんたにこの村の命運を預ける! 指揮を執れ!」
その瞬間から、ルナキャロット村は巨大な建設現場へと変貌した。
勇太は惜しみなくポイントを投入した。
『工事用資材セット』、『双眼鏡(200P)』、『ソーラー充電式LEDランタン(30P)』×5台。
その他、セメント代わりの補強剤やワイヤーなど、合計500P近い出費。だが、村の未来には代えられない。
「ロックブル隊、土嚢を右翼へ! そこはリーシャさんが魔法で地盤を固めて!」
「キャルル、その脚力で櫓(やぐら)の上までワイヤーを上げてくれ!」
勇太の指示が飛ぶ。
男たちは汗まみれになって槌を振るい、ウルジは地球製の「ステンレス蝶番」の精巧さに悪態をつきながらも、完璧に噛み合う鉄門を鍛え上げる。
キャルルは軽々と資材を運び、リーシャは「土魔法」で地面を石畳のように硬化させていく。
――数日後。
ルナキャロット村の入り口には、黒鉄と巨木を組み合わせた、城門のように堅牢な二重扉がそびえ立っていた。
周囲には銀色に輝く有刺鉄線が三重に張り巡らされ、死角のない位置に四つの見張り櫓が立っている。
「……信じられねえ。たった数日で、これが俺たちの村かよ」
ラトルが呆然と呟く。
だが、勇太のサプライズはこれで終わりではなかった。
「ラトルさん、これを」
勇太は、新品の**『双眼鏡』**を渡した。
「なんだこりゃ? 小せえ筒だが……うおっ!?」
覗き込んだラトルが飛び上がった。
「見えっ!? 遠くの森の木の葉脈まで見えやがる! なんだこりゃ、**『鷹の目』**か!?」
「双眼鏡です。これがあれば、敵が来るのを数キロ先から発見できます」
「すげぇ……これなら不意打ちは絶対に食らわねえぞ!」
自警団員たちが奪い合うように双眼鏡を覗き、歓声を上げる。
そして、夕闇が迫り、辺りが暗くなり始めた時。
勇太は最後の仕上げを行った。
「点灯(スイッチ・オン)」
勇太が操作すると、各櫓と正門に設置された**『ソーラーLEDランタン』**が一斉に輝いた。
カッ――!!
「うわあああっ!?」
「ひ、火事か!?」
「いや、煙がない! 白い光だ!?」
松明の揺らめく赤い火とは違う、直視できないほどの強烈で純白の光。
それが村の周囲を真昼のように照らし出す。
リザードマンが闇に乗じて忍び寄ることなど、もはや不可能だ。
「……太陽を、箱に閉じ込めたのか?」
リーシャが、眩しそうに目を細めて呟いた。魔法使いの彼女ですら、燃料もなしに輝き続ける「科学の光」は理解の範疇を超えている。
「太陽の光を溜めておく道具ですよ。これで、夜の見張りも安心です」
勇太が笑うと、村人たちは恐る恐る光に近づき、やがて拝むように手を合わせた。
それは、恐怖に怯えていた夜が、安全なものへと変わった瞬間だった。
【ピンポンパンポーン♪】
【ルナキャロット村の防衛レベルが『要塞』クラスに向上しました】
【多大な貢献により、500 P 加算】
【現在所持ポイント: 3755 P】
心地よい電子音が響く。
堅牢な門、千里眼の双眼鏡、そして夜を払う光。
「ユウタ……。あんたは本当に、この村の守り神だ」
ラトルが、ソーラーライトの逆光の中で、万感の思いを込めて言った。
村人たちの尊敬と感謝の視線が、勇太に集まる。
キャルルが誇らしげに勇太の腕に抱きつき、リーシャも静かに微笑んでいる。
勇太は、白く輝く光の下で、確かな充実感を噛み締めていた。
自分の知識が、力が、この温かい場所を守り抜いたのだと。
リザードマンと魔獣ガルムの襲撃から一夜。
ルナキャロット村には、勝利の安堵と、背中合わせの痛みが漂っていた。
壊された柵、踏み荒らされた人参畑。そして、公民館代わりの広場から聞こえる、負傷者たちのうめき声。
勇太は夜明け前から、キャルル、リーシャと共に治療に奔走していた。
リーシャの「水魔法による洗浄」と、キャルルの「月の加護(微弱な治癒促進)」、そして勇太の「現代医薬品と縫合技術」。
この三位一体の医療体制がなければ、数人の命は朝を迎えられなかっただろう。
「ふぅ……。これで全員、峠は越えました」
昼前。最後の包帯を巻き終えた勇太が額の汗を拭うと、見守っていた家族たちから安堵の嗚咽が漏れた。
その後、村の有力者たちによる緊急会議が開かれた。
広場の中央には、深刻な顔をしたラトルがいる。
「昨夜はユウタたちの活躍で首の皮一枚繋がった。だが、次はねえぞ」
ラトルの重い言葉に、全員が沈黙する。
ガルムのような化け物がまた来たら? 数十のリザードマンに包囲されたら?
今の低い木の柵と、粗末な見張り台では、村を守りきれないことは明白だった。
「……ラトルさん。村の守りを、作り直しましょう」
勇太が静かに手を挙げた。
「僕のスキルと知識を使えば、この村を『要塞』に変えることができます」
「要塞だと……? だが、人手も資材も足りねえぞ」
「資材は僕が出します。人手は……皆さんの力を借りたい」
勇太はボードを展開し、事前に『建築・インフラ』カテゴリで検索しておいた画像を空中に投影した。
そこに映し出されたのは、現代の軍事基地や、刑務所の防衛設備を参考にした図面だ。
『有刺鉄線と逆茂木による侵入遅延エリア』
『クロスファイア(十字砲火)を意識した櫓の配置』
『落とし穴と指向性トラップ』
「な、なんだこの凶悪な罠の配置は……」
「それに、この門の金具……どうやって作ってるんだ?」
村人たちがざわめく中、鍛冶師ウルジが投影された「蝶番(ヒンジ)」と「カンヌキ」の拡大図に食いついた。
「おいユウタ! こいつは一体どういう鋳造だ!? 継ぎ目がねえぞ!?」
「これは僕の世界の工業製品です。ウルジさんには、これを取り付けるための補強金具を作ってほしいんです」
「……はんっ、上等だ! 異世界の職人に負けてられるかよ!」
ウルジの目に、職人の魂の火がついた。
ラトルも、勇太の覚悟と具体的なプランを見て、力強く頷いた。
「よし、決まりだ! ユウタ、あんたにこの村の命運を預ける! 指揮を執れ!」
その瞬間から、ルナキャロット村は巨大な建設現場へと変貌した。
勇太は惜しみなくポイントを投入した。
『工事用資材セット』、『双眼鏡(200P)』、『ソーラー充電式LEDランタン(30P)』×5台。
その他、セメント代わりの補強剤やワイヤーなど、合計500P近い出費。だが、村の未来には代えられない。
「ロックブル隊、土嚢を右翼へ! そこはリーシャさんが魔法で地盤を固めて!」
「キャルル、その脚力で櫓(やぐら)の上までワイヤーを上げてくれ!」
勇太の指示が飛ぶ。
男たちは汗まみれになって槌を振るい、ウルジは地球製の「ステンレス蝶番」の精巧さに悪態をつきながらも、完璧に噛み合う鉄門を鍛え上げる。
キャルルは軽々と資材を運び、リーシャは「土魔法」で地面を石畳のように硬化させていく。
――数日後。
ルナキャロット村の入り口には、黒鉄と巨木を組み合わせた、城門のように堅牢な二重扉がそびえ立っていた。
周囲には銀色に輝く有刺鉄線が三重に張り巡らされ、死角のない位置に四つの見張り櫓が立っている。
「……信じられねえ。たった数日で、これが俺たちの村かよ」
ラトルが呆然と呟く。
だが、勇太のサプライズはこれで終わりではなかった。
「ラトルさん、これを」
勇太は、新品の**『双眼鏡』**を渡した。
「なんだこりゃ? 小せえ筒だが……うおっ!?」
覗き込んだラトルが飛び上がった。
「見えっ!? 遠くの森の木の葉脈まで見えやがる! なんだこりゃ、**『鷹の目』**か!?」
「双眼鏡です。これがあれば、敵が来るのを数キロ先から発見できます」
「すげぇ……これなら不意打ちは絶対に食らわねえぞ!」
自警団員たちが奪い合うように双眼鏡を覗き、歓声を上げる。
そして、夕闇が迫り、辺りが暗くなり始めた時。
勇太は最後の仕上げを行った。
「点灯(スイッチ・オン)」
勇太が操作すると、各櫓と正門に設置された**『ソーラーLEDランタン』**が一斉に輝いた。
カッ――!!
「うわあああっ!?」
「ひ、火事か!?」
「いや、煙がない! 白い光だ!?」
松明の揺らめく赤い火とは違う、直視できないほどの強烈で純白の光。
それが村の周囲を真昼のように照らし出す。
リザードマンが闇に乗じて忍び寄ることなど、もはや不可能だ。
「……太陽を、箱に閉じ込めたのか?」
リーシャが、眩しそうに目を細めて呟いた。魔法使いの彼女ですら、燃料もなしに輝き続ける「科学の光」は理解の範疇を超えている。
「太陽の光を溜めておく道具ですよ。これで、夜の見張りも安心です」
勇太が笑うと、村人たちは恐る恐る光に近づき、やがて拝むように手を合わせた。
それは、恐怖に怯えていた夜が、安全なものへと変わった瞬間だった。
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【現在所持ポイント: 3755 P】
心地よい電子音が響く。
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ラトルが、ソーラーライトの逆光の中で、万感の思いを込めて言った。
村人たちの尊敬と感謝の視線が、勇太に集まる。
キャルルが誇らしげに勇太の腕に抱きつき、リーシャも静かに微笑んでいる。
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