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第二章 邪と天然と鬼の温泉地
EP 8
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邪神VS天然エルフ~その泥、美白効果あり~
カイト農場の中央で、黒い泥の噴水が天を衝いていた。
カイトが「温泉だ!」と叫んでスコップを取りに行った隙に、その泥は意思を持ち、禍々しい巨人の姿へと形を変えていた。
『グオオオオオオ……! 愚かな人間どもよ……』
大地を揺るがす怨嗟の声。
泥の巨人は、空を覆うほどの大きさまで膨れ上がり、その身体には無数の苦悶の表情が浮かんでいる。
『我は邪神デュアダロス。かつて世界を絶望で染め上げた破壊の権化なり。……誰だ? 我を「肩こりに効く」などとほざいたふざけた小僧は?』
邪神はキレていた。
数千年の封印から目覚めた第一声が「温泉湧いた!」だった屈辱。
彼はその怒りを込めて、足元にいる神々を見下ろした。
『そこにいるのはデュークにフレアか。老いたな。今の我は、地下で蓄えた怨念により全盛期を超えている。貴様らごとき、この死の泥で骨まで溶かして……』
邪神が必殺の呪詛を放とうとした、その時。
テテテテッ!
軽い足音が戦場に響いた。
「あらあら、大変! 温泉が汚れていますわ!」
現れたのは、エプロン姿のルナだった。
彼女はカイトから「温泉が出たから掃除を手伝って」と頼まれ、張り切ってやってきたのだ。
『あ? なんだそのエルフは。死にたいのk……』
「まあ! なんてドロドロなの! これじゃあカイト様が気持ちよく入れませんわ!」
ルナは邪神の言葉を無視し、目の前の「黒い巨人」を「汚れの塊」として認識した。
彼女は世界樹の杖『ミストルティン』を高く掲げた。
「待っててくださいね、カイト様! 私がピカピカにして差し上げます!」
『は? ピカピカ? 貴様、我の瘴気に触れて正気で……』
「いけませんわ、そんなに汚れていては! さあ、綺麗になりなさい!」
ルナの瞳が、狂気的なまでの「善意」で輝いた。
彼女の全魔力が杖に収束する。
手加減? 調整? そんな機能は彼女にはない。あるのは常に「出力1000%」の暴走のみ。
「――【神域浄化魔法・清浄なる世界(ピュア・ワールド)】☆」
カッッッ!!!!
農場が、ホワイトアウトした。
それは攻撃魔法ではない。世界樹の慈愛が凝縮された、超高濃度の聖なる光。
本来なら「コップ一杯の泥水を真水にする」程度の魔法を、ルナの規格外魔力でブーストした結果、「存在そのものを漂白する」戦略兵器と化していた。
『ギャアアアアアアアアッ!?!?』
邪神の絶叫が響き渡る。
『あ、熱いッ! いや、清いッ! やめろ! 我のアイデンティティ(怨念)が消えるぅぅ!』
黒い泥の巨人が、光の中で激しくのたうち回る。
ルナの浄化魔法は、物理的な汚れだけでなく、そこに込められた「悪意」や「呪い」を根こそぎ洗い流していく。
「まだまだ! 頑固な汚れには二度洗いですわ!」
ルナは追撃の光を放つ。
『や、やめてくれぇぇ! 我は邪神だぞ! 恐怖の象徴だぞ! それが……それが……!』
邪神の悲痛な叫びと共に、彼の体を構成していたドロドロの黒いヘドロが、みるみる変質していく。
不純物が消え、悪臭が消え、代わりにキラキラと輝く微粒子を含んだ、滑らかな灰色の泥へと。
『身体が……軽い……? なんだこの爽快感は……? 憎しみが消えていく……代わりに、女子力の高い何かに生まれ変わっていく……!?』
ポンッ☆
軽い音がして、巨人が弾け飛んだ。
後に残ったのは、地面にたっぷりと溜まった、真珠のような光沢を放つ「極上の泥(ファンゴ)」の湖だけだった。
「ふぅ。綺麗になりましたわ!」
ルナは額の汗を拭い、満足げに微笑んだ。
†
一部始終を見ていた神々は、言葉を失っていた。
「……嘘だろ。邪神デュアダロスが、ただの『泥パック』にされたぞ」
竜神デュークが葉巻を落とした。
不死鳥フレアは震えながら泥に近づき、指ですくった。
「こ、これは……! 高濃度のミネラルと聖気を含んだ、奇跡の美容泥!? これをお肌に塗れば、一回で赤ちゃん肌になれるわ!」
「えっ、本当!?」
魔王ラスティアが食いついた。
そこへ、スコップを持ったカイトが戻ってきた。
「おーい、みんな。……うわっ、すごい!」
カイトは白く輝く泥の湖を見て、目を丸くした。
「真っ黒だったお湯が、こんなに綺麗な乳白色になってる! ルナちゃんがやってくれたの?」
「はい! お掃除しておきましたわ!」
「すごいよルナちゃん! これなら安心して入れるね!」
カイトは泥に手を入れた。
邪神の意識は消滅してはいない。だが、ルナの浄化によって「毒気」を完全に抜かれ、今はただの「自我を持った美容液」として漂っているだけだ。
『……解せぬ。解せぬが……この男の手、温かいな……』
邪神(泥)は、カイトに撫でられて、まんざらでもない気持ちになっていた。
数千年の孤独な封印生活より、こうして人間に感謝され、美女たちに「お肌にいいわ!」と喜ばれる余生も悪くないかもしれない……と、毒気が抜けた思考で思い始めていた。
「よし! これなら最高の露天風呂ができるぞ!」
カイトは宣言した。
「ルナちゃん、ありがとう! 君は最高の清掃係だ!」
「えへへ、それほどでもありませんわ!(カイト様が褒めてくれた!)」
ルナは嬉しさのあまり、杖をブンブン振った。
その余波で、近くにいたオークが数匹、キラキラの星になって飛んでいったが、誰も気にしなかった。
こうして、最大の脅威であった邪神は、「源泉かけ流し・泥パック温泉」の供給源として、カイト農場のインフラに組み込まれた。
だが、まだ問題は残っている。
浄化されきらなかった「邪神の核(コア)」の一部が、こっそりと逃げ出し、農場の隅にある「子供部屋」へと向かっていたのだ。
そこに、最強の処刑人が待っているとも知らずに。
――次回、赤ん坊の泣き声が、鬼神を呼び覚ます!
カイト農場の中央で、黒い泥の噴水が天を衝いていた。
カイトが「温泉だ!」と叫んでスコップを取りに行った隙に、その泥は意思を持ち、禍々しい巨人の姿へと形を変えていた。
『グオオオオオオ……! 愚かな人間どもよ……』
大地を揺るがす怨嗟の声。
泥の巨人は、空を覆うほどの大きさまで膨れ上がり、その身体には無数の苦悶の表情が浮かんでいる。
『我は邪神デュアダロス。かつて世界を絶望で染め上げた破壊の権化なり。……誰だ? 我を「肩こりに効く」などとほざいたふざけた小僧は?』
邪神はキレていた。
数千年の封印から目覚めた第一声が「温泉湧いた!」だった屈辱。
彼はその怒りを込めて、足元にいる神々を見下ろした。
『そこにいるのはデュークにフレアか。老いたな。今の我は、地下で蓄えた怨念により全盛期を超えている。貴様らごとき、この死の泥で骨まで溶かして……』
邪神が必殺の呪詛を放とうとした、その時。
テテテテッ!
軽い足音が戦場に響いた。
「あらあら、大変! 温泉が汚れていますわ!」
現れたのは、エプロン姿のルナだった。
彼女はカイトから「温泉が出たから掃除を手伝って」と頼まれ、張り切ってやってきたのだ。
『あ? なんだそのエルフは。死にたいのk……』
「まあ! なんてドロドロなの! これじゃあカイト様が気持ちよく入れませんわ!」
ルナは邪神の言葉を無視し、目の前の「黒い巨人」を「汚れの塊」として認識した。
彼女は世界樹の杖『ミストルティン』を高く掲げた。
「待っててくださいね、カイト様! 私がピカピカにして差し上げます!」
『は? ピカピカ? 貴様、我の瘴気に触れて正気で……』
「いけませんわ、そんなに汚れていては! さあ、綺麗になりなさい!」
ルナの瞳が、狂気的なまでの「善意」で輝いた。
彼女の全魔力が杖に収束する。
手加減? 調整? そんな機能は彼女にはない。あるのは常に「出力1000%」の暴走のみ。
「――【神域浄化魔法・清浄なる世界(ピュア・ワールド)】☆」
カッッッ!!!!
農場が、ホワイトアウトした。
それは攻撃魔法ではない。世界樹の慈愛が凝縮された、超高濃度の聖なる光。
本来なら「コップ一杯の泥水を真水にする」程度の魔法を、ルナの規格外魔力でブーストした結果、「存在そのものを漂白する」戦略兵器と化していた。
『ギャアアアアアアアアッ!?!?』
邪神の絶叫が響き渡る。
『あ、熱いッ! いや、清いッ! やめろ! 我のアイデンティティ(怨念)が消えるぅぅ!』
黒い泥の巨人が、光の中で激しくのたうち回る。
ルナの浄化魔法は、物理的な汚れだけでなく、そこに込められた「悪意」や「呪い」を根こそぎ洗い流していく。
「まだまだ! 頑固な汚れには二度洗いですわ!」
ルナは追撃の光を放つ。
『や、やめてくれぇぇ! 我は邪神だぞ! 恐怖の象徴だぞ! それが……それが……!』
邪神の悲痛な叫びと共に、彼の体を構成していたドロドロの黒いヘドロが、みるみる変質していく。
不純物が消え、悪臭が消え、代わりにキラキラと輝く微粒子を含んだ、滑らかな灰色の泥へと。
『身体が……軽い……? なんだこの爽快感は……? 憎しみが消えていく……代わりに、女子力の高い何かに生まれ変わっていく……!?』
ポンッ☆
軽い音がして、巨人が弾け飛んだ。
後に残ったのは、地面にたっぷりと溜まった、真珠のような光沢を放つ「極上の泥(ファンゴ)」の湖だけだった。
「ふぅ。綺麗になりましたわ!」
ルナは額の汗を拭い、満足げに微笑んだ。
†
一部始終を見ていた神々は、言葉を失っていた。
「……嘘だろ。邪神デュアダロスが、ただの『泥パック』にされたぞ」
竜神デュークが葉巻を落とした。
不死鳥フレアは震えながら泥に近づき、指ですくった。
「こ、これは……! 高濃度のミネラルと聖気を含んだ、奇跡の美容泥!? これをお肌に塗れば、一回で赤ちゃん肌になれるわ!」
「えっ、本当!?」
魔王ラスティアが食いついた。
そこへ、スコップを持ったカイトが戻ってきた。
「おーい、みんな。……うわっ、すごい!」
カイトは白く輝く泥の湖を見て、目を丸くした。
「真っ黒だったお湯が、こんなに綺麗な乳白色になってる! ルナちゃんがやってくれたの?」
「はい! お掃除しておきましたわ!」
「すごいよルナちゃん! これなら安心して入れるね!」
カイトは泥に手を入れた。
邪神の意識は消滅してはいない。だが、ルナの浄化によって「毒気」を完全に抜かれ、今はただの「自我を持った美容液」として漂っているだけだ。
『……解せぬ。解せぬが……この男の手、温かいな……』
邪神(泥)は、カイトに撫でられて、まんざらでもない気持ちになっていた。
数千年の孤独な封印生活より、こうして人間に感謝され、美女たちに「お肌にいいわ!」と喜ばれる余生も悪くないかもしれない……と、毒気が抜けた思考で思い始めていた。
「よし! これなら最高の露天風呂ができるぞ!」
カイトは宣言した。
「ルナちゃん、ありがとう! 君は最高の清掃係だ!」
「えへへ、それほどでもありませんわ!(カイト様が褒めてくれた!)」
ルナは嬉しさのあまり、杖をブンブン振った。
その余波で、近くにいたオークが数匹、キラキラの星になって飛んでいったが、誰も気にしなかった。
こうして、最大の脅威であった邪神は、「源泉かけ流し・泥パック温泉」の供給源として、カイト農場のインフラに組み込まれた。
だが、まだ問題は残っている。
浄化されきらなかった「邪神の核(コア)」の一部が、こっそりと逃げ出し、農場の隅にある「子供部屋」へと向かっていたのだ。
そこに、最強の処刑人が待っているとも知らずに。
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