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EP 4
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村長サンガと、同居の許可
「是非、父のサンガに会って下さい。村長をしていて、村のことは父に話を通しておいた方がいいですから」
サリーが笑顔で案内を申し出た。
「え? 村長? って事は、サリーは村長の娘さん?」
太郎は驚いて聞き返した。
ただの親切な村娘だと思っていたが、まさか村のトップの娘だったとは。
「はい。自慢のお父さんなんです」
サリーは嬉しそうに頷くと、先導して歩き出した。
ポポロ村は、木造の家々が並ぶのどかな村だった。すれ違う村人たちは、見慣れない格好の太郎を不思議そうに見るものの、サリーと一緒なのを見ると「ああ、あのお客さんか」と納得したように会釈をしてくれる。
やがて、村の中で一際大きな丸太作りの家の前で、サリーが足を止めた。
「ここです。お父さーん!」
サリーが呼ぶと、奥からドスドスと重い足音が響き、熊のように大柄な男性が現れた。
丸太のような腕に、立派な髭。いかにも頼れるリーダーといった風貌だ。
「やぁ、ポポロ村にようこそ! 目が覚めたかね!」
声量も並外れている。空気がビリビリと震えるようだ。
太郎は慌てて姿勢を正し、深く頭を下げた。
「この度は見知らぬ僕を助けて頂き、本当にありがとうございます。僕は佐藤太郎と言います」
「何の何の! 困ってる人が居たら助けるのが人の道です! ワハハハハ!」
サンガは豪快に笑いながら、太郎の背中をバンと叩いた。
ゴフッ、と肺から空気が漏れるほどの威力だったが、そこに悪意は微塵もない。ただ純粋に歓迎されているのが伝わってくる。
「お父さん、太郎さんね、行くあてがないみたいなの」
サリーがサンガの袖を引いて、上目遣いに頼み込んだ。
「ポポロ村に居て良いでしょ? 太郎さんには、私の家で住んで貰うから」
「……ん?」
サンガの笑い声がピタリと止まった。
彼は太郎を見、次に愛娘のサリーを見て、再び太郎を見た。その眉間に深いシワが寄る。
「むむ……若い娘と、年頃の男が二人っきりとは……」
サンガは急に涙ぐみ、遠い目をした。
「もうサリーもそんな年頃か……。いつかこんな日が来るとは思っていたが、早い物だ……」
「えっ、いや、あの、サンガさん?」
太郎が狼狽えると、サリーが真っ赤な顔で父親の背中を叩いた。
「もう! そんなんじゃ無いから! 変な勘違いしないでよ!」
「し、しかしだな、一つ屋根の下というのは……」
「太郎さんは異世界から来て、住む所もお金もないの! 住む所も必要でしょ! それに、太郎さんは悪い人じゃないもん!」
サリーの剣幕に押され、サンガはタジタジになった。
彼は改めて太郎の方に向き直り、ジッとその目を見つめた。
数秒の沈黙。サンガの鋭い眼光に晒されたが、喧嘩をしたことのない太郎の瞳には、敵意も邪念も浮かんでいない。
「……ふむ。確かに、お主からは悪人の気配は感じられん。それに、どこかひ弱そうだしな」
「う、うむ……許可しよう! 困った時はお互い様だ」
「本当ですか!?」
「おうとも! 我が家は広い。部屋の一つや二つ、好きに使えばいい」
サンガは再び豪快に笑った。
「太郎、サリー、サンガさん……ありがとう」
太郎は安堵と共に礼を言った。
異世界に来て右も左も分からない中で、寝る場所と味方を得られたことは何よりの幸運だ。
「よろしくね、太郎さん!」
サリーが花が咲いたような笑顔を向けてくる。
「あぁ、よろしく。サリー」
こうして、佐藤太郎のポポロ村での滞在、そして村長の娘サリーとの同居生活が正式に決まったのだった。
「是非、父のサンガに会って下さい。村長をしていて、村のことは父に話を通しておいた方がいいですから」
サリーが笑顔で案内を申し出た。
「え? 村長? って事は、サリーは村長の娘さん?」
太郎は驚いて聞き返した。
ただの親切な村娘だと思っていたが、まさか村のトップの娘だったとは。
「はい。自慢のお父さんなんです」
サリーは嬉しそうに頷くと、先導して歩き出した。
ポポロ村は、木造の家々が並ぶのどかな村だった。すれ違う村人たちは、見慣れない格好の太郎を不思議そうに見るものの、サリーと一緒なのを見ると「ああ、あのお客さんか」と納得したように会釈をしてくれる。
やがて、村の中で一際大きな丸太作りの家の前で、サリーが足を止めた。
「ここです。お父さーん!」
サリーが呼ぶと、奥からドスドスと重い足音が響き、熊のように大柄な男性が現れた。
丸太のような腕に、立派な髭。いかにも頼れるリーダーといった風貌だ。
「やぁ、ポポロ村にようこそ! 目が覚めたかね!」
声量も並外れている。空気がビリビリと震えるようだ。
太郎は慌てて姿勢を正し、深く頭を下げた。
「この度は見知らぬ僕を助けて頂き、本当にありがとうございます。僕は佐藤太郎と言います」
「何の何の! 困ってる人が居たら助けるのが人の道です! ワハハハハ!」
サンガは豪快に笑いながら、太郎の背中をバンと叩いた。
ゴフッ、と肺から空気が漏れるほどの威力だったが、そこに悪意は微塵もない。ただ純粋に歓迎されているのが伝わってくる。
「お父さん、太郎さんね、行くあてがないみたいなの」
サリーがサンガの袖を引いて、上目遣いに頼み込んだ。
「ポポロ村に居て良いでしょ? 太郎さんには、私の家で住んで貰うから」
「……ん?」
サンガの笑い声がピタリと止まった。
彼は太郎を見、次に愛娘のサリーを見て、再び太郎を見た。その眉間に深いシワが寄る。
「むむ……若い娘と、年頃の男が二人っきりとは……」
サンガは急に涙ぐみ、遠い目をした。
「もうサリーもそんな年頃か……。いつかこんな日が来るとは思っていたが、早い物だ……」
「えっ、いや、あの、サンガさん?」
太郎が狼狽えると、サリーが真っ赤な顔で父親の背中を叩いた。
「もう! そんなんじゃ無いから! 変な勘違いしないでよ!」
「し、しかしだな、一つ屋根の下というのは……」
「太郎さんは異世界から来て、住む所もお金もないの! 住む所も必要でしょ! それに、太郎さんは悪い人じゃないもん!」
サリーの剣幕に押され、サンガはタジタジになった。
彼は改めて太郎の方に向き直り、ジッとその目を見つめた。
数秒の沈黙。サンガの鋭い眼光に晒されたが、喧嘩をしたことのない太郎の瞳には、敵意も邪念も浮かんでいない。
「……ふむ。確かに、お主からは悪人の気配は感じられん。それに、どこかひ弱そうだしな」
「う、うむ……許可しよう! 困った時はお互い様だ」
「本当ですか!?」
「おうとも! 我が家は広い。部屋の一つや二つ、好きに使えばいい」
サンガは再び豪快に笑った。
「太郎、サリー、サンガさん……ありがとう」
太郎は安堵と共に礼を言った。
異世界に来て右も左も分からない中で、寝る場所と味方を得られたことは何よりの幸運だ。
「よろしくね、太郎さん!」
サリーが花が咲いたような笑顔を向けてくる。
「あぁ、よろしく。サリー」
こうして、佐藤太郎のポポロ村での滞在、そして村長の娘サリーとの同居生活が正式に決まったのだった。
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