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EP 67
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ラーメン道、開幕! エルフと挑む黄金のスープ
「天ぷら」の成功で、アルクス城の食卓は豊かになった。
サクヤが揚げる天ぷらは絶品で、素材の味を活かすエルフの感性は素晴らしいものだった。
だからこそ、太郎は確信した。
(サクヤなら作ってくれるかも知れない! 僕が愛してやまない、あの『国民食』を!)
それは、深夜に無性に食べたくなる魔性の味。
鶏ガラや豚骨から取った濃厚なスープ、コシのある麺、そしてとろけるチャーシュー。
そう、ラーメンである。
「善は急げだ」
太郎は執務室を飛び出し、城の厨房へと向かった。
厨房では、サクヤが夕食の下準備をしていた。
彼女は太郎の姿を認めると、包丁を置いて優雅に一礼した。
「如何なさいましたか? 太郎様。お夜食でしょうか?」
「いや、ちょっと君に試してもらいたい料理があってね」
太郎はウィンドウを開き、派手なパッケージの袋を取り出した。
『激ウマ! 醤油ラーメン(5袋入り)』。
日本の技術の結晶、インスタントラーメンだ。
「これは……?」
「まぁ、騙されたと思って。裏の説明書通りに作ってみてよ」
「……はぁ。『沸騰したお湯で3分煮込む』『粉末スープを入れる』……変わった手順ですね」
サクヤは不思議そうな顔をしながらも、手際よく鍋にお湯を沸かした。
乾麺を投入し、箸でほぐす。3分後、粉末スープを入れてかき混ぜると、厨房に醤油とスパイスのジャンキーで食欲をそそる香りが充満した。
「出来ました、太郎様」
「よし、まずはサクヤ、君が食べてみてよ」
「私がですか? ……では、失礼して」
サクヤは器に盛られたラーメンを、箸で持ち上げた。
縮れた麺。透き通った茶色のスープ。
ふーふー、と冷ましてから、上品に啜る。
ズズッ……。
「……んッ!?」
サクヤの長い耳がピクリと跳ねた。
彼女の瞳が大きく見開かれる。
「美味しい! 初めての食感です! この縮れた麺にスープが絡んで……それに、このスープ! 複雑な旨味が凝縮されています!」
化学調味料(旨味成分)の暴力的な美味しさに、エルフの味覚が衝撃を受けたようだ。
サクヤは夢中で麺を啜り、スープを飲み干した。
「気に入ってもらえて何よりだ。……しかし」
太郎はニヤリと笑った。
「もっと美味しいラーメンを作ってみたくはないかね?」
「えっ? もっと!? これよりもっと美味しいラーメンがあるのですか!?」
サクヤが身を乗り出した。
インスタントでさえこの衝撃なのに、その上が存在するというのか。
「これは『インスタント』といって、手軽さを追求した仮の姿だ。本物は、スープも麺も、もっと奥深い」
太郎はウィンドウから、分厚い専門書を取り出した。
『究極! ラーメン繁盛店の作り方』
『スープの教科書』
『製麺の科学』
「これを君に託す。ここにラーメンの奥義が記されている」
「こ、これに……ラーメンの奥義が!」
サクヤは震える手で本を受け取った。
ページをめくると、鶏ガラ、豚骨、魚介、昆布……あらゆる出汁の取り方と、かんすいを使った製麺技術が網羅されていた。
「私の料理人としての血が騒ぎます……! やらせてください、太郎様! 究極の一杯を!」
「頼んだよ、サクヤ」
それから1週間。
サクヤは厨房の一角を占拠し、ラーメン作りに没頭した。
城内には毎日、鶏ガラを煮込む匂いや、魚介を炙る香ばしい匂いが漂い、騎士やメイドたちの腹の虫を鳴かせた。
「出汁のバランスが違う……」
「麺のコシが足りない……かんすいの配合を変えねば」
「チャーシューは低温調理で……」
エルフ特有の集中力と繊細な味覚で、サクヤは試行錯誤を繰り返した。
そして、約束の日。
「出来ました……太郎様」
目の下に少しクマを作ったサクヤが、湯気の立つドンブリを捧げ持ってきた。
「ほう……!」
太郎は目を見張った。
黄金色に透き通ったスープ。美しく折り畳まれたストレート麺。
具材は、鶏ムネ肉のチャーシュー、白髪ねぎ、そして半熟の煮玉子。
シンプルにして至高。『淡麗・鶏塩ラーメン』だ。
「頂きます」
太郎はレンゲでスープを一口。
「……!」
鶏の旨味が口いっぱいに広がり、その後に魚介の風味がふわりと鼻を抜ける。塩角が全くなく、まろやかだ。
麺を啜る。ツルツルとした喉越しと、噛んだ瞬間の小麦の香り。
「美味い……! インスタントとは次元が違う。素材の味がオーケストラのように調和している!」
太郎は箸が止まらず、一気に完食した。
スープまで飲み干し、ドンブリを置く。
「塩ラーメンか……。誤魔化しが効かない一番難しい味を、ここまで完成させるとは。中々美味いじゃないか」
「お褒めに預かり光栄です」
サクヤは安堵の表情を浮かべ、深く一礼した。
しかし、太郎の目は真剣だった。
「だが……ラーメン道に終わりはない!」
「えっ!?」
「今回は『塩』だが、世の中には『醤油』『味噌』『豚骨』『つけ麺』『油そば』……無限のラーメンが存在するのだ!」
太郎が熱く語ると、サクヤの瞳に再び炎が宿った。
「えぇ! まだまだ、こんな物じゃありませんか……。奥が深い、深すぎます!」
「サクヤとなら、ラーメン道を進んで行ける気がするよ」
「はい! 何処までもお供しましょう! まだ見ぬ『豚骨』の頂きへ!」
ガシッ!
太郎とサクヤは固い握手を交わした。
その様子を、厨房の陰からサリーとライザがジト目で見ていた。
「……また太郎様とサクヤさんがイチャイチャして食事してる」
「ラーメン……あんなに美味しそうな匂いをさせて……。私達にも食べさせなさいよ!」
この後、サクヤの作った試作品のラーメンを巡って、城内で争奪戦が起きたのは言うまでもない。
アルクス名物「エルフの塩ラーメン」が誕生した瞬間であった。
「天ぷら」の成功で、アルクス城の食卓は豊かになった。
サクヤが揚げる天ぷらは絶品で、素材の味を活かすエルフの感性は素晴らしいものだった。
だからこそ、太郎は確信した。
(サクヤなら作ってくれるかも知れない! 僕が愛してやまない、あの『国民食』を!)
それは、深夜に無性に食べたくなる魔性の味。
鶏ガラや豚骨から取った濃厚なスープ、コシのある麺、そしてとろけるチャーシュー。
そう、ラーメンである。
「善は急げだ」
太郎は執務室を飛び出し、城の厨房へと向かった。
厨房では、サクヤが夕食の下準備をしていた。
彼女は太郎の姿を認めると、包丁を置いて優雅に一礼した。
「如何なさいましたか? 太郎様。お夜食でしょうか?」
「いや、ちょっと君に試してもらいたい料理があってね」
太郎はウィンドウを開き、派手なパッケージの袋を取り出した。
『激ウマ! 醤油ラーメン(5袋入り)』。
日本の技術の結晶、インスタントラーメンだ。
「これは……?」
「まぁ、騙されたと思って。裏の説明書通りに作ってみてよ」
「……はぁ。『沸騰したお湯で3分煮込む』『粉末スープを入れる』……変わった手順ですね」
サクヤは不思議そうな顔をしながらも、手際よく鍋にお湯を沸かした。
乾麺を投入し、箸でほぐす。3分後、粉末スープを入れてかき混ぜると、厨房に醤油とスパイスのジャンキーで食欲をそそる香りが充満した。
「出来ました、太郎様」
「よし、まずはサクヤ、君が食べてみてよ」
「私がですか? ……では、失礼して」
サクヤは器に盛られたラーメンを、箸で持ち上げた。
縮れた麺。透き通った茶色のスープ。
ふーふー、と冷ましてから、上品に啜る。
ズズッ……。
「……んッ!?」
サクヤの長い耳がピクリと跳ねた。
彼女の瞳が大きく見開かれる。
「美味しい! 初めての食感です! この縮れた麺にスープが絡んで……それに、このスープ! 複雑な旨味が凝縮されています!」
化学調味料(旨味成分)の暴力的な美味しさに、エルフの味覚が衝撃を受けたようだ。
サクヤは夢中で麺を啜り、スープを飲み干した。
「気に入ってもらえて何よりだ。……しかし」
太郎はニヤリと笑った。
「もっと美味しいラーメンを作ってみたくはないかね?」
「えっ? もっと!? これよりもっと美味しいラーメンがあるのですか!?」
サクヤが身を乗り出した。
インスタントでさえこの衝撃なのに、その上が存在するというのか。
「これは『インスタント』といって、手軽さを追求した仮の姿だ。本物は、スープも麺も、もっと奥深い」
太郎はウィンドウから、分厚い専門書を取り出した。
『究極! ラーメン繁盛店の作り方』
『スープの教科書』
『製麺の科学』
「これを君に託す。ここにラーメンの奥義が記されている」
「こ、これに……ラーメンの奥義が!」
サクヤは震える手で本を受け取った。
ページをめくると、鶏ガラ、豚骨、魚介、昆布……あらゆる出汁の取り方と、かんすいを使った製麺技術が網羅されていた。
「私の料理人としての血が騒ぎます……! やらせてください、太郎様! 究極の一杯を!」
「頼んだよ、サクヤ」
それから1週間。
サクヤは厨房の一角を占拠し、ラーメン作りに没頭した。
城内には毎日、鶏ガラを煮込む匂いや、魚介を炙る香ばしい匂いが漂い、騎士やメイドたちの腹の虫を鳴かせた。
「出汁のバランスが違う……」
「麺のコシが足りない……かんすいの配合を変えねば」
「チャーシューは低温調理で……」
エルフ特有の集中力と繊細な味覚で、サクヤは試行錯誤を繰り返した。
そして、約束の日。
「出来ました……太郎様」
目の下に少しクマを作ったサクヤが、湯気の立つドンブリを捧げ持ってきた。
「ほう……!」
太郎は目を見張った。
黄金色に透き通ったスープ。美しく折り畳まれたストレート麺。
具材は、鶏ムネ肉のチャーシュー、白髪ねぎ、そして半熟の煮玉子。
シンプルにして至高。『淡麗・鶏塩ラーメン』だ。
「頂きます」
太郎はレンゲでスープを一口。
「……!」
鶏の旨味が口いっぱいに広がり、その後に魚介の風味がふわりと鼻を抜ける。塩角が全くなく、まろやかだ。
麺を啜る。ツルツルとした喉越しと、噛んだ瞬間の小麦の香り。
「美味い……! インスタントとは次元が違う。素材の味がオーケストラのように調和している!」
太郎は箸が止まらず、一気に完食した。
スープまで飲み干し、ドンブリを置く。
「塩ラーメンか……。誤魔化しが効かない一番難しい味を、ここまで完成させるとは。中々美味いじゃないか」
「お褒めに預かり光栄です」
サクヤは安堵の表情を浮かべ、深く一礼した。
しかし、太郎の目は真剣だった。
「だが……ラーメン道に終わりはない!」
「えっ!?」
「今回は『塩』だが、世の中には『醤油』『味噌』『豚骨』『つけ麺』『油そば』……無限のラーメンが存在するのだ!」
太郎が熱く語ると、サクヤの瞳に再び炎が宿った。
「えぇ! まだまだ、こんな物じゃありませんか……。奥が深い、深すぎます!」
「サクヤとなら、ラーメン道を進んで行ける気がするよ」
「はい! 何処までもお供しましょう! まだ見ぬ『豚骨』の頂きへ!」
ガシッ!
太郎とサクヤは固い握手を交わした。
その様子を、厨房の陰からサリーとライザがジト目で見ていた。
「……また太郎様とサクヤさんがイチャイチャして食事してる」
「ラーメン……あんなに美味しそうな匂いをさせて……。私達にも食べさせなさいよ!」
この後、サクヤの作った試作品のラーメンを巡って、城内で争奪戦が起きたのは言うまでもない。
アルクス名物「エルフの塩ラーメン」が誕生した瞬間であった。
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