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第二章 新たな旅立ち
EP 25
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竜王、クレープを食し、サウナで整う
翌日。
妻たちが「対竜王用決戦兵器」の開発に勤しんでいるとは露知らず、太郎は城下町の視察――という名の散歩に出かけていた。
その隣には、漆黒の礼服を着た初老の紳士、デューク(竜王)の姿があった。
「ほう、ここが人間の街か。中々どうして、活気があるではないか」
デュークは偉そうに腕を組みながら、キョロキョロと辺りを見回している。
「でしょ? 最近は物流も良くなって、店も増えたんだ」
太郎は案内役として、並んで歩く。
すると、甘く香ばしい匂いが漂ってきた。
屋台のクレープ屋だ。鉄板で生地を焼く音と、クリームの甘い香りがデュークの鼻を刺激した。
「主(あるじ)よ。……あれはなんだ?」
デュークが指差す。
「あれはクレープだよ。薄い生地に果物やクリームを巻いたお菓子さ」
「……菓子か。食ったことはないが、我の胃袋が『食せ』と告げている」
デュークは太郎を見た。完全に「買ってくれ」という目だ。
「はいはい」
太郎は小銭を出し、一番人気の**『チョコバナナ生クリーム・アーモンドトッピング』**を二つ購入した。
「ほら、デューク」
「うむ。頂こう」
デュークはクレープを受け取ると、大きな口でガブリと齧り付いた。
「んんっ!!」
モチモチの生地、冷たい生クリーム、甘いバナナ、そしてパリパリのチョコ。
複雑な食感と甘味のハーモニーが、竜王の味覚中枢を直撃した。
「う、旨いでは無いか……! この白いふわふわ(生クリーム)は雲か!? 雲を食べているのか!?」
「ただのクリームだよ」
デュークは鼻の頭にクリームを付けながら、夢中で頬張っている。
その姿を見て、太郎は心の中で呟いた。
(……ただの食いしん坊だな)
国を滅ぼす竜王と聞いて身構えていたが、こうして見ると、甘いものが好きな普通のおじさんにしか見えない。
太郎の中に、デュークへの奇妙な親近感が湧いてきた。
「デューク。食べ終わったら、こっちに来いよ。もっと良い所に連れて行ってやる」
「む? クレープより良い所か? 何処に行くのだ?」
「男のパラダイスさ」
太郎が連れてきたのは、城下町の一角に建設した『王立公衆浴場・極楽湯』だった。
太郎の現代知識と、ドワーフの建築技術、そしてサリーの水魔法システムを融合させたスーパー銭湯である。
「な、なんだコレは。湯気が出ているが……釜茹での刑場か?」
「違うよ。お風呂だよ、お風呂。まぁ、入ろうぜ」
二人は脱衣所で服を脱ぎ(デュークは脱ぎ方が分からず、太郎が手伝った)、浴室へと入った。
「まずは体を洗って……よし、サウナだ」
太郎はデュークをサウナ室へと誘った。
薄暗い室内は、焼け石に水をかけた蒸気で満たされている。
「ほう、熱気浴か。我ら竜族は火山の火口で寝ることもある。この程度の熱さ……」
デュークは余裕の表情でベンチに座った。
しかし、数分後。
「ぬ、ぬぅ……。熱いというより、汗が止まらん……。心臓が早鐘を打つ……」
「無理しちゃダメだよ。もう出よう」
限界まで蒸された二人は、サウナ室を出た。
そして、太郎は目の前の水風呂を指差した。
「次はこれだ」
「なっ、冷水ではないか! 熱した体を冷やすなど、正気か!?」
「いいから、騙されたと思って入ってみて」
「えぇい、ままよ!」
デュークは意を決して、冷水に飛び込んだ。
「ひャあああああ!!」
情けない悲鳴が響き渡る。
竜王の威厳は完全に崩壊した。
「つ、冷たい! 我の鱗が引き締まるゥゥゥ!」
「10秒数えて! じっとしてると気持ちよくなってくるから!」
「い、いち、にぃ……じゅう!!」
デュークが水風呂から飛び出す。
太郎は彼を露天スペースの『ととのい椅子』へと誘導した。
「ここで座って、空を見るんだ……」
「はぁ、はぁ……死ぬかと思ったぞ……ん?」
椅子に深く腰掛けた瞬間。
デュークの脳内を、強烈な浮遊感が襲った。
血管が拡張し、血液が全身を駆け巡る。手足がジンジンと痺れ、意識がクリアになっていく。
「こ、これは……」
空の青さが、いつもより鮮明に見える。
風の音が、心地よい音楽のように聞こえる。
「気持ちいい……」
「だろ? これが『整う』ってやつさ」
「トトノウ……。あぁ、我は今、空と一体化している……」
最強の竜王、サウナにて完全に攻略完了。
風呂上がり。
脱衣所のベンチで、火照った体を冷ましている二人の前に、太郎がウィンドウからある物を取り出した。
「ほら、腰に手を当てて飲むんだ」
渡されたのは、キンキンに冷えた『瓶入りフルーツ牛乳』だ。
「……頂こう」
デュークは言われた通り腰に手を当て、瓶を煽った。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァッ!
「旨いな!!」
サウナで乾いた体に、甘いフルーツ牛乳が染み渡る。
「風呂上がりの牛乳は格別だろう?」
「うむ! 極上の馳走だ! 主よ、人間界にはこのような快楽があったのか!」
デュークは空になった瓶を見つめ、満足げに笑った。
「気に入った。この『サウナ』と『ギュウニュウ』、城にも作るべきだ」
「あはは、マルスにお願いしてみようか」
裸の付き合いを通して、二人の間には確かな友情(?)が芽生えていた。
最強の竜王は、すっかり太郎国の「お風呂会員」となり、この国の平和(と食文化)を守る最強の番犬ならぬ番竜となるのであった。
一方その頃、城ではサリーとライザが完成した「対竜兵器」を構えて帰りを待っていたのだが……それはまた別の話である。
翌日。
妻たちが「対竜王用決戦兵器」の開発に勤しんでいるとは露知らず、太郎は城下町の視察――という名の散歩に出かけていた。
その隣には、漆黒の礼服を着た初老の紳士、デューク(竜王)の姿があった。
「ほう、ここが人間の街か。中々どうして、活気があるではないか」
デュークは偉そうに腕を組みながら、キョロキョロと辺りを見回している。
「でしょ? 最近は物流も良くなって、店も増えたんだ」
太郎は案内役として、並んで歩く。
すると、甘く香ばしい匂いが漂ってきた。
屋台のクレープ屋だ。鉄板で生地を焼く音と、クリームの甘い香りがデュークの鼻を刺激した。
「主(あるじ)よ。……あれはなんだ?」
デュークが指差す。
「あれはクレープだよ。薄い生地に果物やクリームを巻いたお菓子さ」
「……菓子か。食ったことはないが、我の胃袋が『食せ』と告げている」
デュークは太郎を見た。完全に「買ってくれ」という目だ。
「はいはい」
太郎は小銭を出し、一番人気の**『チョコバナナ生クリーム・アーモンドトッピング』**を二つ購入した。
「ほら、デューク」
「うむ。頂こう」
デュークはクレープを受け取ると、大きな口でガブリと齧り付いた。
「んんっ!!」
モチモチの生地、冷たい生クリーム、甘いバナナ、そしてパリパリのチョコ。
複雑な食感と甘味のハーモニーが、竜王の味覚中枢を直撃した。
「う、旨いでは無いか……! この白いふわふわ(生クリーム)は雲か!? 雲を食べているのか!?」
「ただのクリームだよ」
デュークは鼻の頭にクリームを付けながら、夢中で頬張っている。
その姿を見て、太郎は心の中で呟いた。
(……ただの食いしん坊だな)
国を滅ぼす竜王と聞いて身構えていたが、こうして見ると、甘いものが好きな普通のおじさんにしか見えない。
太郎の中に、デュークへの奇妙な親近感が湧いてきた。
「デューク。食べ終わったら、こっちに来いよ。もっと良い所に連れて行ってやる」
「む? クレープより良い所か? 何処に行くのだ?」
「男のパラダイスさ」
太郎が連れてきたのは、城下町の一角に建設した『王立公衆浴場・極楽湯』だった。
太郎の現代知識と、ドワーフの建築技術、そしてサリーの水魔法システムを融合させたスーパー銭湯である。
「な、なんだコレは。湯気が出ているが……釜茹での刑場か?」
「違うよ。お風呂だよ、お風呂。まぁ、入ろうぜ」
二人は脱衣所で服を脱ぎ(デュークは脱ぎ方が分からず、太郎が手伝った)、浴室へと入った。
「まずは体を洗って……よし、サウナだ」
太郎はデュークをサウナ室へと誘った。
薄暗い室内は、焼け石に水をかけた蒸気で満たされている。
「ほう、熱気浴か。我ら竜族は火山の火口で寝ることもある。この程度の熱さ……」
デュークは余裕の表情でベンチに座った。
しかし、数分後。
「ぬ、ぬぅ……。熱いというより、汗が止まらん……。心臓が早鐘を打つ……」
「無理しちゃダメだよ。もう出よう」
限界まで蒸された二人は、サウナ室を出た。
そして、太郎は目の前の水風呂を指差した。
「次はこれだ」
「なっ、冷水ではないか! 熱した体を冷やすなど、正気か!?」
「いいから、騙されたと思って入ってみて」
「えぇい、ままよ!」
デュークは意を決して、冷水に飛び込んだ。
「ひャあああああ!!」
情けない悲鳴が響き渡る。
竜王の威厳は完全に崩壊した。
「つ、冷たい! 我の鱗が引き締まるゥゥゥ!」
「10秒数えて! じっとしてると気持ちよくなってくるから!」
「い、いち、にぃ……じゅう!!」
デュークが水風呂から飛び出す。
太郎は彼を露天スペースの『ととのい椅子』へと誘導した。
「ここで座って、空を見るんだ……」
「はぁ、はぁ……死ぬかと思ったぞ……ん?」
椅子に深く腰掛けた瞬間。
デュークの脳内を、強烈な浮遊感が襲った。
血管が拡張し、血液が全身を駆け巡る。手足がジンジンと痺れ、意識がクリアになっていく。
「こ、これは……」
空の青さが、いつもより鮮明に見える。
風の音が、心地よい音楽のように聞こえる。
「気持ちいい……」
「だろ? これが『整う』ってやつさ」
「トトノウ……。あぁ、我は今、空と一体化している……」
最強の竜王、サウナにて完全に攻略完了。
風呂上がり。
脱衣所のベンチで、火照った体を冷ましている二人の前に、太郎がウィンドウからある物を取り出した。
「ほら、腰に手を当てて飲むんだ」
渡されたのは、キンキンに冷えた『瓶入りフルーツ牛乳』だ。
「……頂こう」
デュークは言われた通り腰に手を当て、瓶を煽った。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァッ!
「旨いな!!」
サウナで乾いた体に、甘いフルーツ牛乳が染み渡る。
「風呂上がりの牛乳は格別だろう?」
「うむ! 極上の馳走だ! 主よ、人間界にはこのような快楽があったのか!」
デュークは空になった瓶を見つめ、満足げに笑った。
「気に入った。この『サウナ』と『ギュウニュウ』、城にも作るべきだ」
「あはは、マルスにお願いしてみようか」
裸の付き合いを通して、二人の間には確かな友情(?)が芽生えていた。
最強の竜王は、すっかり太郎国の「お風呂会員」となり、この国の平和(と食文化)を守る最強の番犬ならぬ番竜となるのであった。
一方その頃、城ではサリーとライザが完成した「対竜兵器」を構えて帰りを待っていたのだが……それはまた別の話である。
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