スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

文字の大きさ
132 / 251
第三章 世界の秩序

EP 13

しおりを挟む
勘違いの新妻(フェニックス)と、漆黒の朝食(ナーガ)
サリーとライザによる、「王族としての品位」と「女性関係の清算」に関するお説教は、東の空が白むまで続いた。
「……はい、すいませんでした……」
解放された頃には、太郎の魂は半分ほど口から出ていた。
睡眠不足と長時間の正座で、足も腰もガクガクだ。
「はぁ……。とりあえず、何か食べよう。味噌汁が飲みたい……」
太郎はフラフラとゾンビのような足取りで、食堂へと向かった。
しかし、食堂に近づくにつれて、香ばしい……いや、何かが決定的に焦げたような匂いが漂ってきた。
そして、食堂の扉の隙間からは、モクモクと黒い煙が噴き出している。
「な、なんだ!? 火事か!?」
太郎が慌てて扉を開けると、そこは煙幕の中だった。
換気扇が悲鳴を上げている厨房の中心に、フリフリのエプロンをつけた女性が立っていた。
「あら、旦那様♡ おはようございます!」
満面の笑みで振り返ったのは、昨夜泥酔して寝落ちしたはずのフレアだった。
なぜかエプロン姿。そしてその手には、巨大なフライパン(中華鍋)が握られている。
「フ、フレア!? 何をしてるんだ? っていうか、その格好は……」
「何って、新妻の朝は早いものですわ」
フレアは頬を染めて、恥じらうように身をくねらせた。
「旦那様に元気が出る朝食を食べて頂く為に、今朝、裏山で『ナーガ(大蛇)』を捕まえて丸焼きにしてるんですの!」
「な、ナーガ……!?」
Bランク魔獣ナーガ。毒を持ち、鋼鉄の鱗を持つ大蛇だ。
それを「朝飯」として捕獲してくるとは。
「強火で一気に焼き上げましたのよ! 『ヘル・フレア』で!」
「火力が強すぎるよ! だから黒煙が上がってるのか!」
そこへ、騒ぎを聞きつけた(というか腹を空かせた)二人の居候がやってきた。
「うむ。主よ、昨日のすき焼きは中々だったな……。朝飯はまだか?」
「お腹すいたー……って、げぇぇ」
デュークとフェリルは、煙の中にいるフレアを見て顔をしかめた。
「ん? フレアよ、まだ居たのか?」
「げぇぇ……はやく帰れば良いのに。仕事どうすんのさ」
二人の辛辣な言葉にも、今のフレアは無敵だった。
彼女は愛おしそうに太郎を見つめながら答える。
「あら、どうしてですか? 愛し合う旦那様と私が、同じ屋根の下に暮らすのは当たり前ですのよ? 私達、結婚しましたもの」
「してないよ!?(昨日の記憶が改ざんされてる!?)」
太郎が心の中でツッコミを入れるが、フレアは聞く耳を持たない。
「さぁ、出来上がりましたわ! 『ナーガの黒焦げ(ウェルダン)ステーキ・愛の炎仕立て』です!」
ドンッ!!
テーブルに置かれたのは、巨大な炭の塊……もとい、原形をとどめないほど焼き尽くされたナーガだった。
炭化しすぎて、ダイヤモンドに近い硬度になっていそうだ。
「さぁ、旦那様♡ 私が食べさせてあげますわ」
フレアはフォークで「炭」の一部を突き刺し(刺さる音が『ガキン!』といった)、太郎の口元に突き出した。
「あ~ん♡」
「えぇ!?」
太郎は冷や汗を流して後ずさる。
これは食べ物ではない。可燃ゴミだ。いや、産業廃棄物だ。
「ほらほら、遠慮なさらないで! 精がつきますわよ! さぁ!」
「あ~ん♡」
逃げ場はない。
拒否すれば、「愛を拒絶された」と逆上した不死鳥によって、城ごと焼き尽くされるかもしれない。
究極の二択。
「……えぇいっ!」
太郎は覚悟を決めた。
口を大きく開け、差し出された黒い物体を受け入れる。
ガリッ! ジャリジャリ……!
口の中に広がる、圧倒的な焦げの苦味。そして炭のジャリジャリ感。
味などない。あるのは「燃えカス」という事実だけ。
(あ、これ、死ぬやつだ……)
「美味しいですか? 旦那様♡」
フレアの笑顔が歪んで見える。視界が急速に暗くなっていく。
走馬灯の中に、昨日のすき焼きの映像が浮かんだ。
「…………」
太郎の白目が剥かれた。
そして、糸が切れた操り人形のように、ドサリと床に崩れ落ちた。
「あら? 旦那様? 喜びのあまり気絶してしまいましたの? まぁ、可愛い♡」
「いや、死にかけてるぞ」
「毒耐性がないと無理だよ、アレは」
デュークとフェリルが冷静にツッコミを入れる中、太郎の意識は深い闇へと沈んでいった。
不死鳥の愛は、物理的に重く、そして熱すぎたのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...