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第三章 世界の秩序
EP 29
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コンクリートの壁と、覚醒する雷竜
「ハァッ……ハァッ……!」
太郎は森の中を疾走していた。
背後から、木々をなぎ倒す轟音が迫る。
「フハハハハ! 逃げてばかりではつまらぬぞ? 勇者よ!」
魔王ヴァルスが、巨体を揺らして猛追してくる。
一歩踏み出すたびに地響きが起き、衝撃波だけで周囲の岩が砕け散る。
「くっ……!」
太郎は振り返り様に矢を放とうとするが、すぐに止めて再び走る。
「そのみすぼらしい弓で我を撃ち抜くのであろう? さっさとやらぬか!」
ヴァルスが嘲笑う。
彼には、太郎が持っている武器がただの古びた弓に見えているのだ。
だが、太郎が撃たない理由は「威力が足りない」からではない。**「威力がありすぎる」**からだ。
(馬鹿野郎! この『真・雷霆』はなぁ……!)
太郎は手の中の武器を強く握りしめた。
デューク、フェリル、フレア。最強種三柱によって魔改造されたこの武器は、うかつに放てば着弾点周囲数キロメートルを消滅させる。
至近距離で撃てば、太郎自身も爆発に巻き込まれて消し飛ぶ。それが最大の弱点だった。
(距離だ! 安全圏(セーフティ・ゾーン)まで距離を稼がないと、僕が自爆する!)
「フハハハ! つまらぬ! つまらぬぞ!」
ヴァルスの苛立ちが頂点に達した。
彼は立ち止まり、全身にドス黒い魔力をみなぎらせた。
「さっさと攻撃せぬのなら、こちらから終わらせてくれる! 我が拳で肉塊となるがいい!」
ドォォォォォン!!
ヴァルスがロケットのように地面を蹴った。
音速を超える突進。ただのタックルだが、質量と魔力が乗ったそれは、山一つを貫通する破壊力を持つ。
回避は不可能。
「そうかよ! なら、物理で止める!」
太郎は虚空にウィンドウを展開した。
愛用する『ショップスキル』。だが、選んだのはポーションでも食材でもない。
「『コンクリートブロック』! 数量99,999個!! 購入ッ!!」
太郎が叫んだ瞬間、空間が歪んだ。
彼の目の前に、膨大な質量の「灰色の壁」が出現した。
1個10キロ以上のブロックが約10万個。それが一瞬にして積み重なり、巨大な防壁となって顕現したのだ。
「な、何!? 急に物体が!?」
全速力で突っ込んでいたヴァルスは、急には止まれない。
「うおおお!?」
ズガガガガガガガガーン!!!!
凄まじい衝突音。
魔王の突進と、数千トンのコンクリートの山が激突した。
ブロックが砕け散り、粉塵が舞い上がる。
いかに魔王といえど、これだけの質量に真正面から突っ込めば、足は止まる。
「ぐぅっ……! こ、小癪な……!」
瓦礫の山からヴァルスが顔を出す。鼻血が出ていた。
「今だ!」
その隙に、太郎は十分な距離を取っていた。
彼は呼吸を整え、大地を踏みしめる。
『真・雷霆』を構える。
「……お待たせ、相棒」
キィィィィン……。
弦を引き絞ると、弓が脈動を始めた。
太郎は矢を添える。それはただの鉄の矢ではない。
主の意思を感じ取り、雷霆が蓄えられたエネルギーを注ぎ込み始める。
「まだだ! デューク達の力を貰った、お前の力はこんな物じゃ無い筈だ!」
矢が赤く輝き始めるが、まだ足りない。
太郎は叫んだ。
「雷霆よ! 真の力を解放しろ!!」
ドクンッ!!
世界の色が変わった。
『真・雷霆』の装飾――深紅、蒼銀、黄金の意匠が、眩い光を放ちながら回転し、混ざり合う。
デュークの破壊。フェリルの氷結。フレアの再生と愛。
三つの最強の力が、一本の矢に収束していく。
ゴオォォォォォ……!
太郎の周囲に、神々しい黄金のオーラが立ち昇る。
それはもはや、人間が扱える領域を超えていた。
「な、なんだその光は!? 貴様、何を持っている!?」
ヴァルスが瓦礫の中から立ち上がり、恐怖に目を見開いた。
「みすぼらしい弓」だと?
否。それは今、神をも殺す「断罪の兵器」へと変貌していた。
「行くぞ!!」
太郎は狙いを定めた。
狙うは魔王の心臓。
「雷霆雷竜の一矢(らいてい・らいりゅうのいっし)!!」
ヒュンッ。
弦が弾かれた音は、すぐに雷鳴にかき消された。
バリバリバリバリバリッ!!!
放たれた矢は、空中で巨大な「雷の竜」へと姿を変えた。
紅蓮の炎を纏い、黄金の雷を撒き散らしながら、咆哮を上げて空間を喰い破る。
「グオォォォォォ!! 小賢しい真似をぉぉ!!」
ヴァルスは両手から全力の「闇のエネルギー波」を放った。
魔王の全魔力を込めた迎撃。
だが。
ガブッ!!
「なっ!?」
雷竜は、闇のエネルギーごと空間を噛み砕いた。
相殺すらしない。一方的な捕食。
そのままの勢いで、雷竜はヴァルスの胸へと突き進む。
ズドドドォォォォォォォン!!!!
「お、おのれぇぇ……!! 勇者めぇぇ……!!」
ヴァルスの胴体に風穴が空く。
傷口から黄金の光が溢れ出し、魔王の再生能力を完全に阻害する。
「ぐわああああああああ!!」
絶叫と共に、巨神の体が光の粒子となって崩壊していく。
魔王ヴァルス。
かつて世界を絶望させた恐怖の象徴は、一介の(妻の尻に敷かれている)男の手によって、跡形もなく消滅した。
風が吹く。
粉塵が晴れた森に、太郎は一人立っていた。
『真・雷霆』からはプスプスと煙が出ており、太郎の腕も痺れていた。
「はぁ……はぁ……。やった……か……?」
太郎はその場にへたり込んだ。
コンクリート代と精神力の消耗が激しい。
「……あら? 旦那様?」
そこへ、ようやく喧嘩(という名の話し合い)を終えた三人の女性がやってきた。
「すごい音がしましたけど、何かありまして?」
フレアがキョトンとしている。
「あ、あの巨大な魔王はいませんわね。逃げられましたか?」
サリーが首を傾げる。
「もう、太郎様ったら。私たちがお話している間に、どこで遊んでらしたの?」
ライザが呆れたように言う。
太郎は引きつった笑みを浮かべた。
(……君たちが痴話喧嘩してる間に、世界を救っておいたよ……)
「いや……うん。ちょっとね。……あぁ、ラーメン食べたい」
「ラーメン!? 良いですわね! 行きましょう!」
「運動した後のラーメンは格別ですわ!」
「賛成!」
世界を救った余韻など微塵もない。
太郎は妻たちに引きずられながら、
「平和って……なんだろうな……」
と、遠い空を見上げるのであった。
「ハァッ……ハァッ……!」
太郎は森の中を疾走していた。
背後から、木々をなぎ倒す轟音が迫る。
「フハハハハ! 逃げてばかりではつまらぬぞ? 勇者よ!」
魔王ヴァルスが、巨体を揺らして猛追してくる。
一歩踏み出すたびに地響きが起き、衝撃波だけで周囲の岩が砕け散る。
「くっ……!」
太郎は振り返り様に矢を放とうとするが、すぐに止めて再び走る。
「そのみすぼらしい弓で我を撃ち抜くのであろう? さっさとやらぬか!」
ヴァルスが嘲笑う。
彼には、太郎が持っている武器がただの古びた弓に見えているのだ。
だが、太郎が撃たない理由は「威力が足りない」からではない。**「威力がありすぎる」**からだ。
(馬鹿野郎! この『真・雷霆』はなぁ……!)
太郎は手の中の武器を強く握りしめた。
デューク、フェリル、フレア。最強種三柱によって魔改造されたこの武器は、うかつに放てば着弾点周囲数キロメートルを消滅させる。
至近距離で撃てば、太郎自身も爆発に巻き込まれて消し飛ぶ。それが最大の弱点だった。
(距離だ! 安全圏(セーフティ・ゾーン)まで距離を稼がないと、僕が自爆する!)
「フハハハ! つまらぬ! つまらぬぞ!」
ヴァルスの苛立ちが頂点に達した。
彼は立ち止まり、全身にドス黒い魔力をみなぎらせた。
「さっさと攻撃せぬのなら、こちらから終わらせてくれる! 我が拳で肉塊となるがいい!」
ドォォォォォン!!
ヴァルスがロケットのように地面を蹴った。
音速を超える突進。ただのタックルだが、質量と魔力が乗ったそれは、山一つを貫通する破壊力を持つ。
回避は不可能。
「そうかよ! なら、物理で止める!」
太郎は虚空にウィンドウを展開した。
愛用する『ショップスキル』。だが、選んだのはポーションでも食材でもない。
「『コンクリートブロック』! 数量99,999個!! 購入ッ!!」
太郎が叫んだ瞬間、空間が歪んだ。
彼の目の前に、膨大な質量の「灰色の壁」が出現した。
1個10キロ以上のブロックが約10万個。それが一瞬にして積み重なり、巨大な防壁となって顕現したのだ。
「な、何!? 急に物体が!?」
全速力で突っ込んでいたヴァルスは、急には止まれない。
「うおおお!?」
ズガガガガガガガガーン!!!!
凄まじい衝突音。
魔王の突進と、数千トンのコンクリートの山が激突した。
ブロックが砕け散り、粉塵が舞い上がる。
いかに魔王といえど、これだけの質量に真正面から突っ込めば、足は止まる。
「ぐぅっ……! こ、小癪な……!」
瓦礫の山からヴァルスが顔を出す。鼻血が出ていた。
「今だ!」
その隙に、太郎は十分な距離を取っていた。
彼は呼吸を整え、大地を踏みしめる。
『真・雷霆』を構える。
「……お待たせ、相棒」
キィィィィン……。
弦を引き絞ると、弓が脈動を始めた。
太郎は矢を添える。それはただの鉄の矢ではない。
主の意思を感じ取り、雷霆が蓄えられたエネルギーを注ぎ込み始める。
「まだだ! デューク達の力を貰った、お前の力はこんな物じゃ無い筈だ!」
矢が赤く輝き始めるが、まだ足りない。
太郎は叫んだ。
「雷霆よ! 真の力を解放しろ!!」
ドクンッ!!
世界の色が変わった。
『真・雷霆』の装飾――深紅、蒼銀、黄金の意匠が、眩い光を放ちながら回転し、混ざり合う。
デュークの破壊。フェリルの氷結。フレアの再生と愛。
三つの最強の力が、一本の矢に収束していく。
ゴオォォォォォ……!
太郎の周囲に、神々しい黄金のオーラが立ち昇る。
それはもはや、人間が扱える領域を超えていた。
「な、なんだその光は!? 貴様、何を持っている!?」
ヴァルスが瓦礫の中から立ち上がり、恐怖に目を見開いた。
「みすぼらしい弓」だと?
否。それは今、神をも殺す「断罪の兵器」へと変貌していた。
「行くぞ!!」
太郎は狙いを定めた。
狙うは魔王の心臓。
「雷霆雷竜の一矢(らいてい・らいりゅうのいっし)!!」
ヒュンッ。
弦が弾かれた音は、すぐに雷鳴にかき消された。
バリバリバリバリバリッ!!!
放たれた矢は、空中で巨大な「雷の竜」へと姿を変えた。
紅蓮の炎を纏い、黄金の雷を撒き散らしながら、咆哮を上げて空間を喰い破る。
「グオォォォォォ!! 小賢しい真似をぉぉ!!」
ヴァルスは両手から全力の「闇のエネルギー波」を放った。
魔王の全魔力を込めた迎撃。
だが。
ガブッ!!
「なっ!?」
雷竜は、闇のエネルギーごと空間を噛み砕いた。
相殺すらしない。一方的な捕食。
そのままの勢いで、雷竜はヴァルスの胸へと突き進む。
ズドドドォォォォォォォン!!!!
「お、おのれぇぇ……!! 勇者めぇぇ……!!」
ヴァルスの胴体に風穴が空く。
傷口から黄金の光が溢れ出し、魔王の再生能力を完全に阻害する。
「ぐわああああああああ!!」
絶叫と共に、巨神の体が光の粒子となって崩壊していく。
魔王ヴァルス。
かつて世界を絶望させた恐怖の象徴は、一介の(妻の尻に敷かれている)男の手によって、跡形もなく消滅した。
風が吹く。
粉塵が晴れた森に、太郎は一人立っていた。
『真・雷霆』からはプスプスと煙が出ており、太郎の腕も痺れていた。
「はぁ……はぁ……。やった……か……?」
太郎はその場にへたり込んだ。
コンクリート代と精神力の消耗が激しい。
「……あら? 旦那様?」
そこへ、ようやく喧嘩(という名の話し合い)を終えた三人の女性がやってきた。
「すごい音がしましたけど、何かありまして?」
フレアがキョトンとしている。
「あ、あの巨大な魔王はいませんわね。逃げられましたか?」
サリーが首を傾げる。
「もう、太郎様ったら。私たちがお話している間に、どこで遊んでらしたの?」
ライザが呆れたように言う。
太郎は引きつった笑みを浮かべた。
(……君たちが痴話喧嘩してる間に、世界を救っておいたよ……)
「いや……うん。ちょっとね。……あぁ、ラーメン食べたい」
「ラーメン!? 良いですわね! 行きましょう!」
「運動した後のラーメンは格別ですわ!」
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