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第四章 新たな秩序
EP 13
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英雄の帰還、ただいまの温もり
【太郎国・城壁前戦場】
蒼き月光の粒子が空に溶け、魔王グレンデルの巨体が完全に消滅した、その直後だった。
「キ、キシャァァァ……ッ!?」
「ア、アァ……オレタチ……逃ゲロ……ッ!」
これまで死をも恐れぬ特攻を繰り返していた再生魔獣たちが、糸の切れた人形のように崩れ落ち、あるいは正気を取り戻してパニックに陥った。
統率者を失った彼らは、もはや軍隊ではない。ただの烏合の衆だ。
「魔王が……消えたぞ!!」
「敵の再生が止まった! 逃げ惑っているぞ!」
騎士団長が剣を突き上げ、叫んだ。
「総員、追撃せよ!! 太郎様が勝ったのだ!!」
「ウオオオオオオオオオッ!!!」
地響きのような歓声が上がった。
魔獣たちは蜘蛛の子を散らすように、森へ、荒野へと逃げ去っていく。
圧倒的な絶望からの逆転勝利。
「勝ったんだ! 俺たちの国が勝ったんだ!」
「太郎様万歳! 太郎国万歳!!」
兵士たちは兜を投げ捨て、互いに抱き合い、涙を流して王の名を連呼した。
そんな歓喜の渦中、空から一筋の黄金の光が降りてきた。
ヴァルキュリアだ。彼女は戦場の喧騒を避けるように、城壁の上の広場へと静かに着地した。
その腕の中には、役目を終えた太郎が抱えられている。
「ふぅ……。着いた」
太郎はヴァルキュリアに降ろしてもらうと、少し照れくさそうに乱れた髪を直した。
神殺しの弓『真・雷霆』はすでに光を失い、いつもの古びた弓に戻っている。
目の前には、心配そうに空を見上げていた仲間たちの姿があった。
「ただいま」
太郎は、散歩から帰ってきたかのように、短く言った。
その一言が、何よりの無事の証だった。
「太郎様あああぁぁぁッ!!♡」
ドスッ!!
杖を放り投げたサリーが、弾丸のような勢いで太郎の胸に飛び込んだ。
「うわっ!?」
「心配しました! 心配しましたわ! あんな無茶をして……もし貴方にもしもの事があったらと……ううっ!」
サリーは太郎の服を涙で濡らしながら、強く抱きしめた。
「よくぞ……よくぞご無事で!」
ライザが歩み寄り、安堵のあまり膝から崩れ落ちそうになるのを堪えた。
「王が単身敵陣へ突っ込むなど、二度と許しませんわよ。……ですが、見事でした。私の誇りです」
彼女の手は震えており、それがどれほどの緊張を強いられていたかを物語っていた。
「お疲れ様でした、太郎様」
サクヤが静かに近づき、温かいお絞りを差し出した。
「冷めぬうちに、お茶とお食事の用意をしておきました。……まずは、その煤けたお顔をお拭きになってください」
その表情はいつも通り穏やかだが、瞳の端には光るものがあった。
そして、ヒブネがゆっくりと進み出た。
彼女は槍を地面に置き、その場に跪いた。
「太郎様……」
エルフである彼女は、魔力の流れに敏感だ。
先ほどの『蒼き月光の一矢』が、どれほど神聖で、どれほど強大な慈悲に満ちた一撃だったか、誰よりも理解していた。
「貴方は勇者、英雄、伝説……如何なる言葉で表しても、表現出来ませんわ。力でねじ伏せるのではなく、魔王の心さえ救済してしまわれるなんて……」
ヒブネは震える声で告げた。
「貴方にお仕えできたこと、エルフ族の誇りです」
「いやいや、頭を上げてよヒブネ」
太郎は困ったように頬をかいた。
「オーバーだなぁ。僕はただ、みんなと一緒にご飯を食べたかっただけだよ。道具扱いなんて、寂しいからさ」
太郎は、泣きじゃくるサリーの頭を撫で、ライザの肩を抱き、サクヤとヒブネに微笑みかけた。
「でも、皆無事で良かった。……本当に、良かった」
王としての顔から、いつもの優しげな青年の顔に戻った太郎。
城壁の上には、心地よい風が吹いていた。
魔王グレンデル討伐完了。
しかし、まだ海の向こうには、竜王デュークたちが向かったもう一つの戦場がある。
太郎たちの戦いは、もう少しだけ続くのだった。
【太郎国・城壁前戦場】
蒼き月光の粒子が空に溶け、魔王グレンデルの巨体が完全に消滅した、その直後だった。
「キ、キシャァァァ……ッ!?」
「ア、アァ……オレタチ……逃ゲロ……ッ!」
これまで死をも恐れぬ特攻を繰り返していた再生魔獣たちが、糸の切れた人形のように崩れ落ち、あるいは正気を取り戻してパニックに陥った。
統率者を失った彼らは、もはや軍隊ではない。ただの烏合の衆だ。
「魔王が……消えたぞ!!」
「敵の再生が止まった! 逃げ惑っているぞ!」
騎士団長が剣を突き上げ、叫んだ。
「総員、追撃せよ!! 太郎様が勝ったのだ!!」
「ウオオオオオオオオオッ!!!」
地響きのような歓声が上がった。
魔獣たちは蜘蛛の子を散らすように、森へ、荒野へと逃げ去っていく。
圧倒的な絶望からの逆転勝利。
「勝ったんだ! 俺たちの国が勝ったんだ!」
「太郎様万歳! 太郎国万歳!!」
兵士たちは兜を投げ捨て、互いに抱き合い、涙を流して王の名を連呼した。
そんな歓喜の渦中、空から一筋の黄金の光が降りてきた。
ヴァルキュリアだ。彼女は戦場の喧騒を避けるように、城壁の上の広場へと静かに着地した。
その腕の中には、役目を終えた太郎が抱えられている。
「ふぅ……。着いた」
太郎はヴァルキュリアに降ろしてもらうと、少し照れくさそうに乱れた髪を直した。
神殺しの弓『真・雷霆』はすでに光を失い、いつもの古びた弓に戻っている。
目の前には、心配そうに空を見上げていた仲間たちの姿があった。
「ただいま」
太郎は、散歩から帰ってきたかのように、短く言った。
その一言が、何よりの無事の証だった。
「太郎様あああぁぁぁッ!!♡」
ドスッ!!
杖を放り投げたサリーが、弾丸のような勢いで太郎の胸に飛び込んだ。
「うわっ!?」
「心配しました! 心配しましたわ! あんな無茶をして……もし貴方にもしもの事があったらと……ううっ!」
サリーは太郎の服を涙で濡らしながら、強く抱きしめた。
「よくぞ……よくぞご無事で!」
ライザが歩み寄り、安堵のあまり膝から崩れ落ちそうになるのを堪えた。
「王が単身敵陣へ突っ込むなど、二度と許しませんわよ。……ですが、見事でした。私の誇りです」
彼女の手は震えており、それがどれほどの緊張を強いられていたかを物語っていた。
「お疲れ様でした、太郎様」
サクヤが静かに近づき、温かいお絞りを差し出した。
「冷めぬうちに、お茶とお食事の用意をしておきました。……まずは、その煤けたお顔をお拭きになってください」
その表情はいつも通り穏やかだが、瞳の端には光るものがあった。
そして、ヒブネがゆっくりと進み出た。
彼女は槍を地面に置き、その場に跪いた。
「太郎様……」
エルフである彼女は、魔力の流れに敏感だ。
先ほどの『蒼き月光の一矢』が、どれほど神聖で、どれほど強大な慈悲に満ちた一撃だったか、誰よりも理解していた。
「貴方は勇者、英雄、伝説……如何なる言葉で表しても、表現出来ませんわ。力でねじ伏せるのではなく、魔王の心さえ救済してしまわれるなんて……」
ヒブネは震える声で告げた。
「貴方にお仕えできたこと、エルフ族の誇りです」
「いやいや、頭を上げてよヒブネ」
太郎は困ったように頬をかいた。
「オーバーだなぁ。僕はただ、みんなと一緒にご飯を食べたかっただけだよ。道具扱いなんて、寂しいからさ」
太郎は、泣きじゃくるサリーの頭を撫で、ライザの肩を抱き、サクヤとヒブネに微笑みかけた。
「でも、皆無事で良かった。……本当に、良かった」
王としての顔から、いつもの優しげな青年の顔に戻った太郎。
城壁の上には、心地よい風が吹いていた。
魔王グレンデル討伐完了。
しかし、まだ海の向こうには、竜王デュークたちが向かったもう一つの戦場がある。
太郎たちの戦いは、もう少しだけ続くのだった。
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