スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 15

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最強種の時短労働、あるいは神々の威圧外交
【ルナアシア大陸・グランディス王国上空】
魔王ヴァルスは震えていた。
目の前に立つ三人の男女から放たれるプレッシャーは、自身が「魔王」であることを忘れさせるほどに強烈だったからだ。
だが、それ以上に彼を戦慄させたのは、彼らの会話内容だった。
「さて……ヴァルスとやらよ」
竜王デュークが、まるでゴミを見るような目で魔王を見下ろした。
「我は帰ってから、ラーメンのスープの仕込みがあってだな。豚骨の下処理には時間がかかるのだ。……よって、早く終わらせたい」
「僕もー。帰ってビーフジャーキー食べたいし」
狼王フェリルが欠伸をしながら同意する。
「あっちの国のジャーキー、スパイシーで美味しいんだよねぇ」
ラーメンの仕込み? ビーフジャーキー?
魔王討伐という歴史的局面で、こいつらは何を言っているんだ?
「ば、馬鹿にするなあああ!!」
ヴァルキュリアは激昂した。プライドをズタズタに引き裂かれた怒りが爆発する。
「我は魔王ヴァルスぞ! 貴様らごときに舐められてたまるかぁぁ!!」
ドォォォォン!!
ヴァルキュリアの両手から、空間を腐食させるほどの極大の「闇の波動」が放たれた。直撃すれば山脈をも消し飛ばす一撃。
しかし。
「ぬるい」
デュークは人の姿のまま、自分の尻尾(竜尾)を軽く出現させ、ハエを叩くように横に振った。
パァァァン!!
「なっ!?」
闇の波動は物理的に弾き飛ばされ、霧散した。
そして、デュークの尻尾はそのままの勢いで回転し、ヴァルスの側頭部を捉えた。
ガゴォォォォォォン!!
「グォォォォ!?」
隕石が直撃したような衝撃。魔王の体がくの字に折れ、吹き飛んだ。
だが、その先にはすでにフェリルが待ち構えていた。
「ほらほら! 僕と遊ぼうよ!」
フェリルはニカッと笑うと、宙を舞うヴァルスの尻尾にガブリと噛みついた。
「ギャッ!? は、離せ貴様!?」
「嫌だね! ぶん回してやる!」
フェリルは首を激しく振り、魔王の巨体をボロ雑巾のように振り回し始めた。
遠心力で目が回り、三半規管が破壊されるヴァルス。
「あぁもう! 遊んでないで、早く倒して!」
それを見ていたフレアが、苛ただしげに髪を掻き上げた。
「早く帰らないと、旦那様とイチャイチャする時間が減ってしまいますわ! 今頃、旦那様はお腹を空かせて、寂しい思いをしているかも知れませんのよ!?」
フレアの思考は完全に太郎中心に回っていた。
「私がいないと駄目なんだから……そうだわ! 今度、私とそっくりな『等身大抱き枕』を作って、旦那様に与えようかしら? そうすれば、私が外出中でも旦那様は寂しくないし、魔除けにもなりますわ。……どう思うかしら? デューク」
「……話がズレて来てるぞ、フレア」
デュークは呆れ果ててため息をついた。
目の前で魔王が振り回されているのに、話題は抱き枕だ。
「やれやれ……さっさと決めるぞ。スープが冷める」
「はーい!」
デューク、フレア、フェリル。
三柱が同時に手をかざした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
空間が軋みを上げる。
黄金の竜気、紅蓮の神炎、絶対零度の凍気。
三つの異なる超エネルギーが一点に収束し、世界の色を変えていく。
「ひ、ひいいい……ッ!?」
フェリルに放り投げられたヴァルスは、目の前に出現した「破滅の光」を見て、顔を引きつらせた。
「た、助けてくれぇ! 謝る! 謝るからぁぁぁ!」
「問答無用」
三柱の声が重なる。
「『王牙の一撃(キングス・ファング)』!!!」
カッッッッッ!!!!!!
放たれたのは、光の奔流。
それは音すら置き去りにし、ヴァルスの体を分子レベルで分解しながら飲み込んでいった。
「ギャァァァァァァァ…………ッ!!」
断末魔は一瞬。
空に巨大な光の道ができ、雲を割り、宇宙(そら)の彼方へと突き抜けていった。
魔王ヴァルスは、跡形もなく消滅した。
【グランディス王国・王宮テラス】
静寂が戻った。
空は澄み渡り、降り注いでいた血の雨の痕跡すら、フレアの炎で焼き清められている。
「おぉ……おぉぉ……」
アルフレッド国王と、生き残った大臣、兵士、民衆たちは、空から降りてきた三人の男女に向かって、一斉にひれ伏した。
「神々よ……! 感謝致します! 我が国をお救い下さり、誠に、誠にありがとうございます!」
アルフレッドは額を地面に擦り付けた。
彼らの力は、人知を超えていた。神としか思えなかった。
しかし、フレアは冷ややかな目で見下ろした。
「感謝するのは良いですけれど、勘違いなさらぬよう」
彼女は扇子で口元を隠し、王妃のような威厳で告げた。
「これは、愛しの**『太郎国の王である太郎様』**の命によって、私達は動いたまで。私達の意志ではありませんわ。この事を、よ~く覚えて下さいまし」
「た、太郎国の……太郎王……!?」
アルフレッドが顔を上げ、驚愕に目を見開く。
あのおにぎりの手紙。あれは脅しではなかった。
本当に、この規格外の化け物たち(神々)を使役し、派遣してくれたというのか。
「本来、我等は人間と魔族の小競り合いなどに干渉しないのだ」
デュークが腕を組み、重々しく言った。
「だが、主(あるじ)である太郎が『助けてやってくれ』と頭を下げた。だから我等は来た。それだけの事だ」
「そ、そんな……。私は、なんてことを……」
アルフレッドは震えた。彼は最強の援軍を「侵略者」と罵り、敵対しようとしていたのだ。
そこへ、フェリルが顔を近づけた。
ニッコリと笑っているが、その瞳の奥には猛獣の光が宿っている。
「ご主人は優しいんだよねぇ。僕たちに美味しい物沢山食べさせてくれるし、君たちのことも心配してたし」
フェリルはスッと目を細めた。
「だからさ~、ご主人を困らせたら、流石の僕でもキレちゃうかも。……わかるよね?」
背筋が凍るような殺気。
国一つを滅ぼせる怪物が、「次はないぞ」と釘を刺しているのだ。
「ハ、ハハッー!!」
アルフレッド国王は、もはやひれ伏すしか無かった。
「太郎王陛下に……いえ、太郎国に、永遠の忠誠と友好を誓います! 二度と、二度と逆らうような真似は致しません!!」
「よろしい」
デュークが頷いた。
「では帰るぞ。ラーメンが待っている」
「はーい!」
「旦那様~♡」
シュパァァァン!!
三柱は仕事を終えると、余韻もなく空の彼方へ飛び去っていった。
残されたグランディス王国の人々は、いつまでもその方角へ祈りを捧げていた。
こうして、太郎国は「世界最強の軍事国家」であると同時に、「世界の守護者」としての地位を(本人の知らぬ間に)不動のものとしたのであった。
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