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第四章 新たな秩序
EP 25
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女王の指パッチンと、絶望のブラックホール
【ワイズ皇国・女王私邸前】
ドォォォン!!
再び外壁が魔法で打撃され、キッチンに土埃が舞う。
「……せっかくのシチューに埃が入るじゃない」
ラスティアは不機嫌そうに呟くと、エプロンを外し、優雅な手付きで銀髪をかき上げた。
「行きましょう。躾(しつけ)の時間よ」
太郎とフレア、そしてラスティアの三人が私邸の外に出ると、そこは数百の松明の明かりで真昼のように照らされていた。
完全武装した魔族の精鋭たち。その中心に、憎悪に顔を歪ませたデデリデがいた。
「これは如何なる狼藉かしら? デデリデ?」
ラスティアの声は、先程まで太郎と談笑していた時とは別人のように冷徹だった。絶対零度の威圧感が、周囲の気温を一気に下げる。
「ら、ラスティア様……いや! ラスティア!」
デデリデは気圧されそうになるのを必死で堪え、剣を突きつけた。
「最早貴様は、その人間……太郎の持ち込んだ『邪なる道具(胡麻ドレッシング)』で洗脳され、操り人形と化した! 我等が目を覚まさせてやる!」
「……はぁ」
ラスティアは心の底から面倒くさそうに溜息をついた。
「それで? それが貴方の遺言かしら?」
女王の余裕の態度に、兵士たちが動揺する。
デデリデは焦り、叫んだ。
「恐れるな! 敵はたった三人だ! 我等の数は五百! 数で押し潰せば我等の勝ちだ!」
デデリデの檄に、兵士たちが気力を取り戻す。
「サモン(召喚)!」
「出てこいえぇぇ!」
数百人の魔導師団が一斉に詠唱を開始。
空間が裂け、そこから翼長十メートルを超える巨大な「魔竜(ワイバーン)」が次々と召喚される。その数、数十体。空を覆い尽くす魔物の群れ。
さらに、デデリデが自身の魔力を限界まで注ぎ込み、最大の召喚魔法を発動した。
「来い! 地獄の覇者、ベヒーモス!!」
ズウゥゥゥゥン!!
大地が割れ、そこから山のように巨大な四足獣が這い出してきた。
全身が鋼鉄の筋肉と剛毛に覆われた、破壊の化身ベヒーモス。その鼻息だけで嵐が起きる。
「行け! ベヒーモス! 魔竜部隊も続け! 奴等を、あの忌々しい人間ごと皆殺しにしろ!!」
「グルルルルォォォォォォォッ!!!」
「キシャァァァァッ!!」
ベヒーモスが地響きを立てて突進を開始し、空からは魔竜の群れが急降下する。
物理的な質量と魔力の暴風が、ちっぽけな三人を飲み込まんとする。
太郎が雷霆の弓を構えようとした、その時。
「手間をかけさせるわね」
ラスティアが、軽く前に出た。
そして、まるでBGMのリズムを取るかのように、軽く指を鳴らした。
パチンッ。
その乾いた音が、戦場に響き渡った瞬間。
「いでよ……『オリハルコンゴーレム』」
ドォォォォォォォォン!!!!
ラスティアの目の前の空間が爆ぜた。
現れたのは、神話の時代にしか存在しない、神の金属「オリハルコン」で全身を構成された、黄金に輝く巨人だった。
そのサイズは、突進してくるベヒーモスとほぼ同等。
「……排除せよ」
ラスティアの静かな命令。
黄金の巨人は、一切の予備動作なく、突進してくるベヒーモスの顔面目掛けて、完璧なフォームの「正拳突き」を放った。
グシャァァァァァァッ!!!!
「ブギィィィィィッ!?」
衝突音ではない。破砕音だった。
ベヒーモスの鋼鉄の頭蓋骨が、オリハルコンの拳によって粉々に砕け散る。
山のような巨体が、たった一撃で活動を停止し、慣性でズザザザと地面を滑ってラスティアの目の前で止まった。
「な、何……!?」
デデリデが目を剥く。
だが、終わりではない。
オリハルコンゴーレムは、ベヒーモスを沈めた拳をそのまま空に向けた。
その掌が、カッと眩い光を放つ。
ジュヴォォォォォォォォン!!!!
手から放たれたのは、超高密度の魔力レーザーの奔流。
それは空を覆っていた数十体の魔竜の群れを、薙ぎ払うように焼却した。
悲鳴を上げる暇もない。空中で蒸発し、塵となって消えていく。
「そ、そんな……」
「馬鹿な、ベヒーモスと魔竜部隊が、一瞬で……!」
デデリデの膝がガクガクと震える。
彼らが頼みにしていた最強の戦力が、女王の指パッチン一つで消滅したのだ。
「ひ、ひいいい!」
「化け物だあああ! 勝てるわけがない!」
兵士たちの戦意が完全に崩壊した。
「逃げろ!」「殺される!」
彼らは武器を投げ捨て、我先に逃げ出した。
「あら? 逃がすと思って?」
ラスティアは、逃げ惑う兵士たちの背中に向けて、手のひらをかざした。
「『重力崩壊(ブラック・ホール)』」
ゴォォォォォ……!
逃げる兵士たちの中心に、直径数メートルの漆黒の球体が出現した。
それは周囲の光も、空気も、そして物質も、全てを無差別に吸い込み始めた。
「ぎゃあああ!? 足が、体が引っ張られるぅぅ!」
「助けてくれ! デデリデ様ぁぁぁ!」
「あ、ああ……」
数百人の兵士たちが、蟻地獄のようにブラックホールへと吸い込まれていく。抵抗は無意味。彼らの悲鳴は、事象の地平線の彼方へと消えていった。
数秒後。
ブラックホールが消滅すると、そこには更地となった地面と、腰を抜かして震えるデデリデ一人だけが残されていた。
静寂が戻った戦場。
ラスティアは、コツコツとヒールの音を響かせてデデリデに歩み寄った。
「あら? デデリデ?」
彼女は、ゴミを見るような冷徹な瞳で、かつての部下を見下ろした。
「『たった三人』、じゃなかったのかしら? 貴方、私1人にやられているようだけど?」
究極の屈辱と恐怖が、デデリデの心を完全にへし折った。
【ワイズ皇国・女王私邸前】
ドォォォン!!
再び外壁が魔法で打撃され、キッチンに土埃が舞う。
「……せっかくのシチューに埃が入るじゃない」
ラスティアは不機嫌そうに呟くと、エプロンを外し、優雅な手付きで銀髪をかき上げた。
「行きましょう。躾(しつけ)の時間よ」
太郎とフレア、そしてラスティアの三人が私邸の外に出ると、そこは数百の松明の明かりで真昼のように照らされていた。
完全武装した魔族の精鋭たち。その中心に、憎悪に顔を歪ませたデデリデがいた。
「これは如何なる狼藉かしら? デデリデ?」
ラスティアの声は、先程まで太郎と談笑していた時とは別人のように冷徹だった。絶対零度の威圧感が、周囲の気温を一気に下げる。
「ら、ラスティア様……いや! ラスティア!」
デデリデは気圧されそうになるのを必死で堪え、剣を突きつけた。
「最早貴様は、その人間……太郎の持ち込んだ『邪なる道具(胡麻ドレッシング)』で洗脳され、操り人形と化した! 我等が目を覚まさせてやる!」
「……はぁ」
ラスティアは心の底から面倒くさそうに溜息をついた。
「それで? それが貴方の遺言かしら?」
女王の余裕の態度に、兵士たちが動揺する。
デデリデは焦り、叫んだ。
「恐れるな! 敵はたった三人だ! 我等の数は五百! 数で押し潰せば我等の勝ちだ!」
デデリデの檄に、兵士たちが気力を取り戻す。
「サモン(召喚)!」
「出てこいえぇぇ!」
数百人の魔導師団が一斉に詠唱を開始。
空間が裂け、そこから翼長十メートルを超える巨大な「魔竜(ワイバーン)」が次々と召喚される。その数、数十体。空を覆い尽くす魔物の群れ。
さらに、デデリデが自身の魔力を限界まで注ぎ込み、最大の召喚魔法を発動した。
「来い! 地獄の覇者、ベヒーモス!!」
ズウゥゥゥゥン!!
大地が割れ、そこから山のように巨大な四足獣が這い出してきた。
全身が鋼鉄の筋肉と剛毛に覆われた、破壊の化身ベヒーモス。その鼻息だけで嵐が起きる。
「行け! ベヒーモス! 魔竜部隊も続け! 奴等を、あの忌々しい人間ごと皆殺しにしろ!!」
「グルルルルォォォォォォォッ!!!」
「キシャァァァァッ!!」
ベヒーモスが地響きを立てて突進を開始し、空からは魔竜の群れが急降下する。
物理的な質量と魔力の暴風が、ちっぽけな三人を飲み込まんとする。
太郎が雷霆の弓を構えようとした、その時。
「手間をかけさせるわね」
ラスティアが、軽く前に出た。
そして、まるでBGMのリズムを取るかのように、軽く指を鳴らした。
パチンッ。
その乾いた音が、戦場に響き渡った瞬間。
「いでよ……『オリハルコンゴーレム』」
ドォォォォォォォォン!!!!
ラスティアの目の前の空間が爆ぜた。
現れたのは、神話の時代にしか存在しない、神の金属「オリハルコン」で全身を構成された、黄金に輝く巨人だった。
そのサイズは、突進してくるベヒーモスとほぼ同等。
「……排除せよ」
ラスティアの静かな命令。
黄金の巨人は、一切の予備動作なく、突進してくるベヒーモスの顔面目掛けて、完璧なフォームの「正拳突き」を放った。
グシャァァァァァァッ!!!!
「ブギィィィィィッ!?」
衝突音ではない。破砕音だった。
ベヒーモスの鋼鉄の頭蓋骨が、オリハルコンの拳によって粉々に砕け散る。
山のような巨体が、たった一撃で活動を停止し、慣性でズザザザと地面を滑ってラスティアの目の前で止まった。
「な、何……!?」
デデリデが目を剥く。
だが、終わりではない。
オリハルコンゴーレムは、ベヒーモスを沈めた拳をそのまま空に向けた。
その掌が、カッと眩い光を放つ。
ジュヴォォォォォォォォン!!!!
手から放たれたのは、超高密度の魔力レーザーの奔流。
それは空を覆っていた数十体の魔竜の群れを、薙ぎ払うように焼却した。
悲鳴を上げる暇もない。空中で蒸発し、塵となって消えていく。
「そ、そんな……」
「馬鹿な、ベヒーモスと魔竜部隊が、一瞬で……!」
デデリデの膝がガクガクと震える。
彼らが頼みにしていた最強の戦力が、女王の指パッチン一つで消滅したのだ。
「ひ、ひいいい!」
「化け物だあああ! 勝てるわけがない!」
兵士たちの戦意が完全に崩壊した。
「逃げろ!」「殺される!」
彼らは武器を投げ捨て、我先に逃げ出した。
「あら? 逃がすと思って?」
ラスティアは、逃げ惑う兵士たちの背中に向けて、手のひらをかざした。
「『重力崩壊(ブラック・ホール)』」
ゴォォォォォ……!
逃げる兵士たちの中心に、直径数メートルの漆黒の球体が出現した。
それは周囲の光も、空気も、そして物質も、全てを無差別に吸い込み始めた。
「ぎゃあああ!? 足が、体が引っ張られるぅぅ!」
「助けてくれ! デデリデ様ぁぁぁ!」
「あ、ああ……」
数百人の兵士たちが、蟻地獄のようにブラックホールへと吸い込まれていく。抵抗は無意味。彼らの悲鳴は、事象の地平線の彼方へと消えていった。
数秒後。
ブラックホールが消滅すると、そこには更地となった地面と、腰を抜かして震えるデデリデ一人だけが残されていた。
静寂が戻った戦場。
ラスティアは、コツコツとヒールの音を響かせてデデリデに歩み寄った。
「あら? デデリデ?」
彼女は、ゴミを見るような冷徹な瞳で、かつての部下を見下ろした。
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※別サイトにも掲載しています。
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