スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 26

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暴食の魔神と、立ち上がる凡人
【ワイズ皇国・女王私邸前】
ブラックホールが消え、静寂が戻った更地に、デデリデの絶叫だけが響いていた。
「お、おのれぇ……! おのれぇぇぇ!!」
彼は自分の失態に震え、髪を掻きむしった。
最強の軍団を一瞬で消され、自らの権威は地に落ちた。
「遺言はそれだけかしら?」
ラスティアが冷ややかに見下ろす。その目には、もはや慈悲も怒りもなく、ただの「処理すべきゴミ」を見る色が浮かんでいた。
追い詰められたネズミは、猫を噛むどころか、狂気へと走った。
「おのれぇ! おのれぇ! こうなったら!!」
デデリデは血走った目で、近くにいた数少ない生き残りの部下――彼の身を案じて踏みとどまっていた忠臣たち――を見た。
「え?」
ズバッ!!
「ぎゃあああ!?」
デデリデの剣が、部下の魔族を袈裟懸けに斬り裂いた。
「デ、デデリデ様!? な、何故……私達は、貴方様の……」
部下が信じられないものを見る目で崩れ落ちる。
「うるさい! 俺の為に死ね! 貴様らの命は、この俺が生きて勝つための燃料だ!」
デデリデは狂ったように剣を振り回し、残っていた部下たちを次々と斬殺した。
さらに、彼は何かの禁呪を詠唱し始めた。
「捧げよ! 肉を! 魂を! この俺に!!」
デデリデは自身の体を切り裂き、その血を死んだ部下たち、そして先程破壊されたベヒーモスの巨大な死骸へと振りまいた。
ドクン……ドクン……!
死体が脈動した。
血が触媒となり、部下たちの死体とベヒーモスの肉片が、デデリデの体へと引き寄せられ、融合していく。
「グオオオオオオオッ!!」
デデリデの体が風船のように膨張する。
人の形が崩れ、ベヒーモスの鋼鉄の皮膚、部下たちの苦悶の顔が浮かぶ肉塊、そして無数の腕が生えた、おぞましい巨人と化した。
『魔神デデリデ』の誕生である。
「ぐぅ……おぅ……ぐ……ぐぅ……」
その口からは、言葉にならない呻き声が漏れる。
目は虚ろで、焦点が合っていない。
「愚かね……」
ラスティアが憐れむように呟いた。
「身の丈に合わない力を取り込んだ代償よ。キャパオーバーで自我も無くなってるわ。あれはもう、ただの暴食の怪物よ」
「アァ……ァァァァッ!!」
魔神デデリデは咆哮と共に、四方八方に暴れ始めた。
見境なく地面を叩き割り、私邸の壁を破壊する。
「汚らわしい。処分します」
ラスティアが指を振る。
「オリハルコンゴーレム! 留めを刺しなさい!」
黄金の巨人が命令に従い、魔神デデリデに向かって突進した。
ベヒーモスすら一撃で粉砕した剛腕が、魔神の腹部にめり込む。
ドゴォォォォォン!!
勝負あり。誰もがそう思った。
しかし。
ズブブブブ……
「なっ!?」
オリハルコンの拳が、魔神の肉体に「埋まった」まま抜けなくなった。
デデリデの肉体がスライムのように変化し、ゴーレムの腕を捕食し始めたのだ。
「オ……オオオ……」
魔神デデリデの体が波打ち、あっという間にオリハルコンゴーレム全体を飲み込んでしまった。
「嘘でしょう!?」
ラスティアが驚愕する。
ギギギ……ガシャァン!
魔神デデリデの皮膚が変質した。
醜い肉塊の表面が、黄金色の金属光沢――オリハルコンの装甲へと変化したのだ。
最強の金属を取り込み、物理攻撃も魔法攻撃も弾く、無敵の鎧を手に入れてしまった。
「オオオオオオオッ!!」
魔神は更に力を増し、無茶苦茶に暴れ回る。その一撃一撃が地震のような衝撃を生む。
「何をやってるのよ! ラスティア!」
フレアが叫んだ。
「貴方のゴーレムのせいで、余計に強くなりましたわよ!?」
「う、うるさいわね! あそこまで下品な能力だとは思わなかったのよ!」
「もう! 見てらっしゃい! 私が焼き尽くしてあげますわ!」
フレアは優雅に宙へと舞い上がった。
扇子を開き、夜空を舞台に舞踏を始める。
「焦がれなさい……」
フレアの周囲に、八つの巨大な火炎球が生成される。
彼女の舞いに合わせて炎は形を変え、顎(あぎと)を持つ龍へと変化していく。
「不死鳥・奥義……『紅蓮の舞(プロミネンス・ワルツ)』!!」
八つの火炎龍が、咆哮と共に魔神デデリデに殺到した。
魔王城すら灰にする超高熱の連撃。
ドォン! ドォン! チュドォォォン!!
凄まじい爆炎が魔神を包み込む。
だが、炎が晴れた後。
「ゲェップ……」
魔神デデリデの腹部に生じた巨大な「口」が、最後の火炎龍を咀嚼し、飲み込んでいた。
オリハルコンの体表は赤熱しているものの、溶解していない。それどころか、炎のエネルギーさえも吸収し、さらに巨大化している。
「そ、そんな……」
フレアが空中で立ち尽くす。
「私の浄化の炎まで……喰らったというの……?」
物理無効。魔法吸収。
部下を犠牲にし、プライドを捨てた果てに生まれたのは、全てを喰らい尽くす絶望の権化だった。
「ア……タロ……ウ……コロ……ス……」
魔神の濁った目が、かろうじて残った執念で太郎を捉えた。
ズシン、ズシンと、山のような巨体が歩み寄ってくる。
ラスティアも、フレアも、有効打を失った。
万事休す。
その時。
「やれやれ……」
ため息混じりの、間の抜けた声が聞こえた。
「やっぱり、僕の出番のようだね」
太郎が、スーパーの袋(サツマイモ入り)を置いて、一歩前へ出た。
その背中はあまりにも小さく、頼りなく見える。
「危険だわ! 太郎!」
ラスティアが叫ぶ。
「あれはもう生物じゃない! オリハルコンとエネルギーの塊よ! 生身で勝てる相手じゃ……」
「旦那様!」
フレアも悲鳴を上げる。
だが、太郎は肩を回しながら、静かに魔神を見上げた。
「部下を犠牲にして、仲間を食べて……そんな力で強くなった気になってるのか」
太郎の右手に、古びた弓『真・雷霆』が出現する。
しかし、今回は矢をつがえなかった。
「デデリデ。お前は『食べる』ことを履き違えてるよ」
太郎は弓を剣のように握りしめた。
「食事っていうのはね、命を頂いて、感謝して、明日への力に変えることだ。……お前のような『暴食』は、僕が一番嫌いな食べ方だ!」
太郎の全身から、黄金でも蒼色でもない、純白のオーラが立ち昇る。
神殺しの勇者が、本気で「躾(しつけ)」をする構えを見せた。
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