スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 28

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暴食の後はシチュー、そして地獄の先にある楽園
【ワイズ皇国・女王私邸前跡地】
夜明けの光が、更地となった戦場を照らしていた。
魔神デデリデは消滅し、過激派の反乱は鎮圧された。残ったのは、太郎が開けた巨大なクレーターと、静寂だけ。
「凄いですわぁ! 流石私の旦那様♡」
フレアが太郎の背中に抱きつき、頬ずりをする。
「あのコンクリート責めからの雷龍……痺れましたわ! 文字通り!」
「見事なものだったわ、太郎」
ラスティアも感嘆の息を漏らす。
「物理的な拘束と魔法的な破壊。そして何より、あの躊躇のなさ。貴方、本当に怒らせると一番怖いタイプね」
「いや、そんな……」
太郎は照れくさそうに鼻をかいたが、すぐにお腹を押さえた。
グゥゥゥ……
「それより……シチュー食べようよ。お腹空いちゃった」
命のやり取りをした直後に、ご飯の心配。このマイペースさが太郎の強さかもしれない。
「えぇ。そうね、冷める前に食べましょう」
ラスティアは微笑んだが、周囲の惨状(ボコボコの地面、壊れた外壁)を見て、「あ」と思い出した。
「ちょっと待ってね……。片付けを頼まないと」
ラスティアは懐から、スマホのような形状の「魔導通信石」を取り出した。
プルルルル……ガチャッ。
『……はい。もしもしぃ……』
石の向こうから、地の底から響くような、不機嫌極まりない男の声がした。宰相ルーベンスだ。
「ルーベンス? 起きて! 秒で来て! 私邸の前よ」
『……勘弁して下さいよ、ラスティア様ぁ……』
ルーベンスの気だるげな声が返ってくる。
『今、何時だと思ってるんですか? まだ夜明け前っすよ? あのさぁ……俺、寝てるわけ。睡眠は大事なんすから。過労死ライン超えてるんすよ』
「うん、うん、分かるわよ。でも緊急事態なの」
ラスティアは悪びれもせずに続けた。
「いや、デデリデの馬鹿がさ……カチコミに来たのよ。クーデター」
『ハァァァァァ……? あの筋肉ダルマ、また仕事増やしやがって……』
絶望的な溜息が聞こえた。
『もう無理っす。俺、今日は有給取ります。デデリデの死体処理とか、もう精神的に……』
「仕方ないじゃない。……じゃあ、こうしましょう」
ラスティアはニヤリと笑い、とっておきの切り札を切った。
「この件が片付いたら……今度、『天魔窟(てんまくつ)』のVIPコースに連れてってあげるから」
一瞬の沈黙。
『マジすっか!?』
ルーベンスの声が裏返った。眠気が一瞬で吹き飛んだようだ。
『あの会員制の!? オイルマッサージ付きの!? 温泉に浸かりたいっすねぇ……! 肩こりが限界なんすよ!』
「えぇ、約束するわ。私のパスを使えばタダよ」
『了解しました! 直ちに急行します! 転移門(ゲート)起動!!』
ブツッ。
通信が切れた。恐ろしいほどの現金さだ。
太郎は首を傾げた。
「ねぇ、ラスティア。『天魔窟』って何? 何か凄い修行場なの?」
「あぁ」
ラスティアは通信石をしまいながら説明した。
「『天魔窟』っていうのはね、女神ルチアナや三柱(デュークたち)、それに私みたいな上位存在が遊びに行くダンジョンなんだけど……」
「ダンジョン?」
「うん。地下100階層ある超難関ダンジョンなんだけど、それをクリアした最下層にね……**面白い『遊楽施設』**があるのよ」
「遊楽施設……?」
横からフレアが補足した。
「凄いですのよ、旦那様。極上の温泉エステサロンとか、カジノとか、高級レストランとか、オイルマッサージとか……この世の快楽を詰め込んだような場所ですの」
「へ、へぇ……」
太郎は目をパチクリさせた。ダンジョンの最奥にエステ?
「でも、道中は地獄ですの」
フレアは真顔になった。
「S級魔物が雑魚としてウジャウジャ出てきますし、即死トラップや、頭を使わないと解けない激ムズパズルとかあって、攻略するには大変なんですの」
「えぇ。生半可な実力じゃ、温泉に辿り着く前に死ぬわね」
ラスティアが肩をすくめる。
「でも、一度クリアしてしまえば『会員カード』が発行されて、次からは入口から直通転移できる『VIPコース』を通れますの」
つまり、ルーベンスはその「VIP権」を餌に釣られたわけだ。
太郎は腕を組み、納得したように頷いた。
「激ムズダンジョンの先は……歌舞伎町みたいなもんか」
「カブキチョウ? それも異世界のダンジョンかしら?」
「うん、まあ、ある意味でね……」
欲望と癒やしが渦巻く魔窟。
神々や魔王たちも、結局のところ「癒やし」を求めてダンジョンに潜るのだ。
そう考えると、彼らが少し身近に感じられた。
「さ、ルーベンスが来る前にシチューを食べましょう」
「そうだね。冷めちゃう」
三人は廃墟と化した庭を背に、温かい湯気が待つキッチンへと戻っていった。
この後、血相を変えて飛んできたルーベンスが、シチューを食べる三人を見て「俺の扱いは!?」と叫ぶことになるのだが、それはまた別の話である。
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