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第四章 新たな秩序
EP 32
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食後の運動は、国崩壊の危機
【太郎国・王城裏手 平原(演習場)】
「何故こうなった……」
太郎は頭を抱えていた。
事の発端は、ほんの数分前。ラーメン屋を出た直後の会話だった。
デュークが満足げに腹をさすりながら、ラスティアに言ったのだ。
『ラスティアよ。貴様、魔力回路の練度が中々高いな。中々強いのではないか?』
それに対し、ラスティアが不敵に微笑んで返した。
『そうですか? 竜王にそう言われると光栄ね。では……お手合わせ願えるかしら? 腹ごなしに』
そして現在。
太郎国自慢の広大な演習場(平原)に、ありったけの結界が張られ、その中心でバチバチと火花が散っていた。
「頼むから手加減してくれよ……! マジで太郎国が崩壊してしまう!」
太郎の悲痛な叫びをよそに、最強種たちは至って真剣に……
「じゃーんけーん……ポンッ!!」
「「……!!」」
「やったあああ! 僕の勝ちいい!!」
狼王フェリルがチョキを突き出し、歓喜のジャンプをした。
対する竜王デュークは、パーを出したまま拳を震わせている。
「ちっ……。不覚……!」
「ドンマイだね、メタボ竜王! じゃあ、ラァちゃん(ラスティア)の相手は僕だ! よろしくね!」
フェリルは尻尾をブンブン振りながら前へ出た。
ラスティアは優雅にドレスの裾を払って構えた。
「『ラァちゃん』……? まぁいいわ。お先にどうぞ、わんこ君」
「ふふ、レディーファーストだよ」
フェリルがニヤリと笑った瞬間。
空気が凍りついた。
「よろしい……」
ラスティアの瞳が紅く輝く。
「ならば……『デス・サンドワーム』、出ませい!」
ズズズズズズズッ!!!!
大地が悲鳴を上げ、巨大な蟻地獄のような流砂が発生した。
そこから口径数メートルの、牙だらけの巨大ミミズ(サンドワーム)が数体飛び出し、地面をかき回す。
「へぇぇ……。足場を悪くして機動力を奪う作戦か。地味に嫌らしいね」
フェリルは流砂の上を、重さを感じさせない身軽さで飛び回る。
「それだけじゃないわよ? 『魔炎竜(イグニス・ドラゴン)』、出ませい!」
ギャオオオオオオッ!!
上空の空間が裂け、漆黒の炎を纏ったドラゴンが召喚された。
魔炎竜はフェリルの動きを予測し、上空から超高熱の黒炎ブレスを吐き出した。
ドォォォォン!!
「おっと!」
フェリルは紙一重で回避するが、黒炎は地面をえぐり、演習場の一部をマグマに変える。
「やるじゃん、ラァちゃん! 足場を悪くさせて、上空から一方的な遠距離攻撃……」
フェリルは着地し、ニシシと笑った。
「でも、召喚士(サモナー)は『術者狙えば終わり』だよね♡」
ヒュンッ!!
フェリルの姿が消えた。
神速の踏み込み。一瞬でラスティアの側面へ回り込み、大気中の水分を凝固させる。
「氷槍(アイシクル・ランス)!!」
無数の巨大な氷の槍が生成され、至近距離からラスティアにお見舞いされた。
「甘い!」
ラスティアは指一本動かさない。
「『オリハルコンゴーレム』!!」
ガギィィィィィン!!
空間転移で現れた黄金の巨人が、ラスティアの盾となり、氷槍を全てその装甲で弾き返した。
傷一つ付いていない。
「マジで? 4体同時召喚かぁ……」
フェリルが距離を取る。
サンドワーム、魔炎竜、そしてオリハルコンゴーレム。一人で軍隊を相手にするようなものだ。
「でも!」
フェリルは地面に手をついた。
「この足場、気に入らないんだよね」
パキィィィィィィンッ!!!!
瞬間、世界が白く染まった。
フェリルから放たれた冷気が、流砂となっているサンドワームごと、大地を一瞬で凍結させたのだ。
蠢いていたワームたちは氷像となり、足場は強固な氷の大地へと変わった。
「なんですって!?」
ラスティアが目を見開く。
「ふふ。でぇ……鬱陶しいんだよ! お前!」
フェリルは上空を見上げ、大きく息を吸い込んだ。
「『絶対零度ブレス(コキュートス・ロア)』!!」
ゴオオオオオオオオッ!!
口から放たれた極低温の波動が、空を飛ぶ魔炎竜を直撃した。
炎すら凍る絶対の世界。魔炎竜は黒炎を吐こうとした体勢のままカチコチに凍りつき、巨大な氷塊となって墜落した。
ズドォォン!!
粉々になるドラゴン。
フェリルは氷の上を滑るように移動し、ラスティアに迫る。
「さて、ラァちゃん♡ そのとろ臭いポンコツゴーレムで、僕の攻撃を防げるかな?」
フェリルの爪が、ダイヤモンドすら切り裂く冷気を帯びる。
ラスティアは唇を噛んだ。
「くっ……! 召喚獣が……ならば!」
ラスティアは両手を広げた。
凍った砂地獄の中心、フェリルの進路上に、暗黒の球体を発生させる。
「全てを飲み込め! 『事象の地平(ブラック・ホール)』!!」
ギチチチチチ……!!
空間がねじ切れる音。
重力と冷気が衝突し、演習場の結界に亀裂が走る。
このままでは、衝撃波だけで王都の窓ガラスが全部割れる。いや、城が半壊する。
「負けないもんね! 全力で行くよ!」
「受けて立つわ!」
二人の魔力が臨界点を超えようとした、その時。
「たんま! ストップ! ストップゥゥゥゥ!!」
太郎が結界の中に飛び込んだ。
「これ以上やったら、国が終わるわああああ!!」
太郎は涙目で二人の間に割って入り、手土産の「高級羊羹(ようかん)」を差し出した。
「も、もう終わり! おやつ! おやつの時間だから!」
ピタリ。
フェリルとラスティアの動きが止まった。
「……おやつ?」
「……羊羹?」
「そう! サクヤ特製の栗羊羹だ! 喧嘩……じゃなくて手合わせはおしまい!」
太郎の必死の形相と、美味しそうな羊羹の誘惑。
二人は顔を見合わせ、ふっと力を抜いた。
「……まぁ、いいよ。ラァちゃん、なかなかやるね」
「貴方もね、わんこ君。背筋が凍ったわ」
握手(のようなもの)を交わす二人。
消滅する召喚獣と、溶け始める氷。
「はぁ……寿命が縮んだよ……」
太郎はその場にへたり込んだ。
ラーメン一杯分のカロリー消費にしては、あまりにも代償が大きすぎる「食後の運動」であった。
【太郎国・王城裏手 平原(演習場)】
「何故こうなった……」
太郎は頭を抱えていた。
事の発端は、ほんの数分前。ラーメン屋を出た直後の会話だった。
デュークが満足げに腹をさすりながら、ラスティアに言ったのだ。
『ラスティアよ。貴様、魔力回路の練度が中々高いな。中々強いのではないか?』
それに対し、ラスティアが不敵に微笑んで返した。
『そうですか? 竜王にそう言われると光栄ね。では……お手合わせ願えるかしら? 腹ごなしに』
そして現在。
太郎国自慢の広大な演習場(平原)に、ありったけの結界が張られ、その中心でバチバチと火花が散っていた。
「頼むから手加減してくれよ……! マジで太郎国が崩壊してしまう!」
太郎の悲痛な叫びをよそに、最強種たちは至って真剣に……
「じゃーんけーん……ポンッ!!」
「「……!!」」
「やったあああ! 僕の勝ちいい!!」
狼王フェリルがチョキを突き出し、歓喜のジャンプをした。
対する竜王デュークは、パーを出したまま拳を震わせている。
「ちっ……。不覚……!」
「ドンマイだね、メタボ竜王! じゃあ、ラァちゃん(ラスティア)の相手は僕だ! よろしくね!」
フェリルは尻尾をブンブン振りながら前へ出た。
ラスティアは優雅にドレスの裾を払って構えた。
「『ラァちゃん』……? まぁいいわ。お先にどうぞ、わんこ君」
「ふふ、レディーファーストだよ」
フェリルがニヤリと笑った瞬間。
空気が凍りついた。
「よろしい……」
ラスティアの瞳が紅く輝く。
「ならば……『デス・サンドワーム』、出ませい!」
ズズズズズズズッ!!!!
大地が悲鳴を上げ、巨大な蟻地獄のような流砂が発生した。
そこから口径数メートルの、牙だらけの巨大ミミズ(サンドワーム)が数体飛び出し、地面をかき回す。
「へぇぇ……。足場を悪くして機動力を奪う作戦か。地味に嫌らしいね」
フェリルは流砂の上を、重さを感じさせない身軽さで飛び回る。
「それだけじゃないわよ? 『魔炎竜(イグニス・ドラゴン)』、出ませい!」
ギャオオオオオオッ!!
上空の空間が裂け、漆黒の炎を纏ったドラゴンが召喚された。
魔炎竜はフェリルの動きを予測し、上空から超高熱の黒炎ブレスを吐き出した。
ドォォォォン!!
「おっと!」
フェリルは紙一重で回避するが、黒炎は地面をえぐり、演習場の一部をマグマに変える。
「やるじゃん、ラァちゃん! 足場を悪くさせて、上空から一方的な遠距離攻撃……」
フェリルは着地し、ニシシと笑った。
「でも、召喚士(サモナー)は『術者狙えば終わり』だよね♡」
ヒュンッ!!
フェリルの姿が消えた。
神速の踏み込み。一瞬でラスティアの側面へ回り込み、大気中の水分を凝固させる。
「氷槍(アイシクル・ランス)!!」
無数の巨大な氷の槍が生成され、至近距離からラスティアにお見舞いされた。
「甘い!」
ラスティアは指一本動かさない。
「『オリハルコンゴーレム』!!」
ガギィィィィィン!!
空間転移で現れた黄金の巨人が、ラスティアの盾となり、氷槍を全てその装甲で弾き返した。
傷一つ付いていない。
「マジで? 4体同時召喚かぁ……」
フェリルが距離を取る。
サンドワーム、魔炎竜、そしてオリハルコンゴーレム。一人で軍隊を相手にするようなものだ。
「でも!」
フェリルは地面に手をついた。
「この足場、気に入らないんだよね」
パキィィィィィィンッ!!!!
瞬間、世界が白く染まった。
フェリルから放たれた冷気が、流砂となっているサンドワームごと、大地を一瞬で凍結させたのだ。
蠢いていたワームたちは氷像となり、足場は強固な氷の大地へと変わった。
「なんですって!?」
ラスティアが目を見開く。
「ふふ。でぇ……鬱陶しいんだよ! お前!」
フェリルは上空を見上げ、大きく息を吸い込んだ。
「『絶対零度ブレス(コキュートス・ロア)』!!」
ゴオオオオオオオオッ!!
口から放たれた極低温の波動が、空を飛ぶ魔炎竜を直撃した。
炎すら凍る絶対の世界。魔炎竜は黒炎を吐こうとした体勢のままカチコチに凍りつき、巨大な氷塊となって墜落した。
ズドォォン!!
粉々になるドラゴン。
フェリルは氷の上を滑るように移動し、ラスティアに迫る。
「さて、ラァちゃん♡ そのとろ臭いポンコツゴーレムで、僕の攻撃を防げるかな?」
フェリルの爪が、ダイヤモンドすら切り裂く冷気を帯びる。
ラスティアは唇を噛んだ。
「くっ……! 召喚獣が……ならば!」
ラスティアは両手を広げた。
凍った砂地獄の中心、フェリルの進路上に、暗黒の球体を発生させる。
「全てを飲み込め! 『事象の地平(ブラック・ホール)』!!」
ギチチチチチ……!!
空間がねじ切れる音。
重力と冷気が衝突し、演習場の結界に亀裂が走る。
このままでは、衝撃波だけで王都の窓ガラスが全部割れる。いや、城が半壊する。
「負けないもんね! 全力で行くよ!」
「受けて立つわ!」
二人の魔力が臨界点を超えようとした、その時。
「たんま! ストップ! ストップゥゥゥゥ!!」
太郎が結界の中に飛び込んだ。
「これ以上やったら、国が終わるわああああ!!」
太郎は涙目で二人の間に割って入り、手土産の「高級羊羹(ようかん)」を差し出した。
「も、もう終わり! おやつ! おやつの時間だから!」
ピタリ。
フェリルとラスティアの動きが止まった。
「……おやつ?」
「……羊羹?」
「そう! サクヤ特製の栗羊羹だ! 喧嘩……じゃなくて手合わせはおしまい!」
太郎の必死の形相と、美味しそうな羊羹の誘惑。
二人は顔を見合わせ、ふっと力を抜いた。
「……まぁ、いいよ。ラァちゃん、なかなかやるね」
「貴方もね、わんこ君。背筋が凍ったわ」
握手(のようなもの)を交わす二人。
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