スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 31

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女王の初体験と、最強の常連客
【太郎国・城下町 ラーメンストリート】
とある晴れた日の午後。
太郎とラスティアは、お忍び(変装なし)で城下町を散歩していた。
活気に満ちた通りを抜け、二人は独特の香りが漂う一角へと足を踏み入れた。
「ここだよ、ラスティア」
太郎が指差した先には、赤い提灯がズラリと並び、白い湯気が立ち昇る飲食店街があった。
「この前、ラーメンを紹介するって言ってたじゃない? ここが太郎国自慢の『ラーメン街』さ」
「そうだったわね……」
ラスティアはハンカチで鼻を少し抑えた。
「それにしても……この独特な、獣のような強い匂い……これがラーメンなのね?」
「あはは、驚いた? これは豚骨(とんこつ)スープの匂いだよ」
太郎は笑って説明した。
「ラーメンには醤油や塩もあるけど、まずはこの国のソウルフードである『豚骨ラーメン』から始めた方が良いと思ってね。濃厚で中毒性があるんだ」
「豚骨……他にも種類が有るのね? 奥が深そうだわ」
二人は、一際行列ができている人気店『麺屋・タロウ』の暖簾をくぐった。
「いらっしゃいっ!!」
店内に響く、威勢の良い店員の声。
ムワッとする熱気と、カチャカチャと食器がぶつかる音。ラスティアは少し気圧されながらも、太郎に続いてカウンター席に座った。
「へい! ご注文は!」
鉢巻を巻いた店員が、メモ帳片手に前のめりで聞いてくる。
太郎は慣れた口調でコールした。
「ラーメン、普通。チャーシュー増しで」
「あいよ! お連れさんは?」
店員の視線がラスティアに向く。
ラスティアは一瞬フリーズした。
(ふ、普通……? ちゃーしゅーまし……? 何かの暗号? それとも呪文の詠唱かしら?)
分からない時は、先達に従うのが王道の処世術だ。
「え、えっと……お、同じ物を」
「はいよ! ラーメン2丁! チャー増しで!」
店員が厨房へオーダーを通す。
ラスティアはほうっと息を吐いた。
「ドキドキしましたわ……。さっきの何? 『フツウチャーシューマシ』って、美味しくなる呪文かしら?」
「いや、単なる注文だよ」
太郎は苦笑した。
「麺の硬さと、トッピングの指定さ。すぐに慣れるよ」
その時だった。
ガララッ! と勢いよく引き戸が開き、見覚えのある長身の男と、銀髪の少年が入ってきた。
「む? ……主(あるじ)ではないか」
「あ、本当だ。ご主人じゃん」
竜王デュークと、狼王フェリルだ。
彼らは当然のように我が物顔で店内に入ると、太郎たちの隣の席にドカッと座った。
「デューク、フェリル。君たちも来てたのか」
デュークはジロリとラスティアを見た。
「こんな所に女を連れて……。貴様、白昼堂々『逢引(デート)』でもしてるのか?」
「やるなぁ、ご主人。フレアやライザにチクっちゃおうかな~」
フェリルがニシシと笑う。
「違うって。ただラスティアにラーメンを紹介してるだけさ。外交の一環だよ」
太郎が手を振って否定する。
そこへ、店員が水を持ってきた。
「へい、ご注文は!」
デュークは腕を組み、メニューも見ずに重低音で告げた。
「大盛り。『バリカタ』。チャーシュー増し、ネギ増し」
続いてフェリルが、身を乗り出してコールする。
「大盛り! 『ハリガネ』! チャーシュー増し増し、ネギ抜きで!」
「はいよ! 大盛りバリカタ、ハリガネ、チャー増し増しネギ抜き一丁!」
ラスティアの目が点になった。
「???」
(バリカタ……? ハリガネ……? 針金!? 食べ物に金属を入れるの!?)
彼女の常識が崩壊していく。
「お待たせしやしたー!」
ドンッ! ドンッ!
カウンターに、白濁したスープに極細麺が泳ぎ、分厚いチャーシューが花びらのように盛られた丼が置かれた。
「こ、これが……豚骨ラーメン……」
ラスティアはゴクリと喉を鳴らした。脂が光り輝き、強烈な香りが食欲を刺激する。
「熱いから気をつけて。こうやって、音を立てて啜るのがマナーなんだ」
太郎が手本を見せるように、ズズズッと麺を啜り込んだ。
ラスティアも見よう見まねで箸を持ち、麺を持ち上げる。
(熱っ……でも、良い香り……)
彼女は意を決して啜った。
ズズッ……。
「ん……ッ!?」
口の中に広がる、クリーミーで濃厚な豚の旨味。
それに負けない小麦の香り。そしてトロトロに煮込まれたチャーシューが舌の上で溶ける。
「美味しい! 本当に美味しい!」
ラスティアが目を輝かせた。
「見た目はギトギトしているのに、意外とアッサリしていて……止まらないわ!」
彼女は夢中で箸を進めた。女王の品格を一瞬忘れるほどの衝撃だった。
「良かったよ。気に入ってくれて」
太郎も嬉しそうに替え玉を注文する。
一方、隣の最強種たちは、既に一杯目を完食しそうになっていた。
「う~ん……」
デュークがスープを啜り、眉間に皺を寄せた。
「味は良いが……スープの乳化が少し足りぬな。コクの深みが先週より0.5割ほど浅い」
「だねー」
フェリルも丼を置いて、爪楊枝を咥えた。
「今日、店長いないからなぁ。バイト君が作ってるでしょ? やっぱり微妙に湯切りが甘いし、味は落ちてるね」
「手厳しいねぇ……ハハハ」
太郎は苦笑いした。
「主よ、食に対する妥協は許されんぞ」
「そうだよご主人。次は店長がいる日を狙って来ようよ」
ただのラーメン好きのオッサンと化した竜王と、グルメな狼王。
そして、汁まで飲み干しそうな勢いの魔女王。
太郎国の平和な午後は、豚骨の香りと共に過ぎていくのであった。
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