スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します

月神世一

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第四章 新たな秩序

EP 34

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女神の二日酔いと、トラック・イン・アパートメント
【太郎国・王城 太郎の寝室】
チュンチュン……。
爽やかな朝の光がカーテンの隙間から差し込んでいる。
しかし、部屋の空気は決して爽やかではなかった。強烈なアルコール臭と、場末の居酒屋のような饐(す)えた匂いが充満していたからだ。
「んん……むにゃ……」
キングサイズのベッドを占領しているのは、ジャージ姿の美女――創造神ルチアナである。
彼女は抱き枕のように**「一升瓶(空)」**を抱きしめ、だらしなくよだれを垂らして爆睡していた。
「……はぁ」
部屋の隅で着替えを済ませた太郎が、心底嫌そうに溜息をついた。
「あの駄目女神が……まさかそのまま城に泊まるとは」
「いや、勝手に転移してきて主のベッドに潜り込んだのだぞ」
竜王デュークが呆れ顔で腕を組んでいる。
狼王フェリルも鼻をつまんで顔をしかめた。
「何故ルチアナが居るのか……。神界に帰ればいいのに」
「マジ勘弁。犬の嗅覚にはキツいよ、この安酒の匂い」
「こら! ルチアナぁ! 起きて! さっさと起きて!」
フレアがルチアナの肩を激しく揺さぶった。
「いつまで寝てますの! 旦那様のベッドが汚れますわよ!」
「んん……うるさいわねぇ……ここは?」
ルチアナが不機嫌そうに瞼を開けた。充血した目は焦点が定まっていない。
「太郎城です。ルチアナ様」
冷ややかな声と共に、濡れタオルが顔面に投げつけられた。
元・神界の補佐官、戦乙女ヴァルキュリアだ。
「よだれを拭いて下さい。さっさと顔を洗って下さい。見ていて痛々しいです」
「あ! フレアにヴァルキュリア……!」
ルチアナはタオルを剥ぎ取り、二人を睨みつけた(が、頭痛で顔をしかめた)。
「あんた達! よくもヌケヌケと! あんた達が仕事を辞めて出ていったせいで、私に全ての仕事がのしかかってるんだけど!?」
「知りませんわ」
フレアはフンと鼻を鳴らした。
「だって、私は『寿退社』しましたから♡ 旦那様と結ばれて、家庭に入ったんですの」
「ぐぬぬ……!」
「私は『ブラック労働』に耐えられなくて逃げただけです」
ヴァルキュリアが無表情で追撃する。
「残業代なし、有給なし、ワンオペで数千年。……労基署がない世界で良かったですね、ルチアナ様」
「ひ、酷いよぉ……!」
ルチアナはその場に泣き崩れた(一升瓶を抱いたまま)。
「私だってしたくてしたわけじゃないのにぃ……。予算とか人員不足とか色々あるのよぉ……。あぁ、もう! こんな面倒くさい世界を作ったのは誰よぉー!!」
「「「お前だ」」」
全員のツッコミが綺麗にハモった。
自業自得である。
「はいはい、泣かないの」
太郎が近づき、ルチアナの背中を叩いた。
「ルチアナさん。取り敢えず、めちゃくちゃ酒臭いからシャワー浴びて来て。話はそれからだ」
「うっ……! 冷たい! 太郎君まで冷たい!」
ルチアナは涙目で太郎を見上げた。
「酷いじゃない! 私、太郎君に最強の『ユニークスキル(100円ショップ)』を与えてあげたじゃない! もうちょっと優しく庇ってくれてもいいでしょ!?」
恩着せがましく言う女神に対し、太郎の表情からスッと感情が消えた。
彼は氷のような視線でルチアナを見下ろした。
「……恩?」
「ひっ」
「あのさぁ。僕、ずっと言いたかったんだけど」
太郎は淡々と、しかし怒りを滲ませて語り始めた。
「僕の死因、覚えてる?」
「え、えっと……暴走トラックから、猫を助けようとして……」
「違うだろ」
太郎が食い気味に否定した。
「僕はあの時、アパートの二階で、のんびり夕飯の『生姜焼き定食』を食べてたんだよ」
「あ……」
「そうしたら、何をトチ狂ったのか、暴走トラックがガードレールを突き破って、ジャンプして、アパートごと僕の部屋に突っ込んできたんだ」
「…………」
「アパートごとトラックに押し潰されて、気づいたら白い部屋にいた。……なのに、お前なんて言った?」
太郎はルチアナの口調を真似ておどけた。
『貴方は、トラックから猫を救った勇敢な勇者です! 感動しました!』
太郎は真顔に戻った。
「訳の分からない事を言われて、反論する間もなく異世界に放り出されて放置。……あの時、僕が一番悔しかったのはね、死んだことじゃなくて、最後の一切れの豚肉が食べられなかったことなんだよ」
「ご、ごめんなさいぃぃぃ!!」
ルチアナがジャンピング土下座をした。
神としての威厳はゼロどころかマイナスだ。
「だ、だってぇ! 『飯食ってたらトラックが空から降ってきた』じゃ、勇者としての箔がつかないから! 設定(キャラ付け)が必要だったのよぉ!」
「その設定のせいで、こっちはいい迷惑なんだよ」
太郎はルチアナの襟首を掴み、ズルズルと浴室の方へ引きずっていった。
「ほら、言い訳はいいから風呂! 臭い!」
「あぁぁぁ~! ドナドナされるぅ~! 誰か助けてぇ~!」
「……やれやれ」
デュークが肩をすくめた。
「あんなのがトップで、この世界は大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないから、ご主人が苦労してるんだよね」
フェリルがニシシと笑った。
浴室から響く女神の悲鳴とシャワーの音。
タロウ城の朝は、今日も騒がしく始まったのだった。
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